熊的体力

「知力を追求するには熊的体力があった方が有利である」という話を昨日したが、それで思い出したのが、Into Thin Air。日本語版は「空へ」という気の抜けた題なのだが、これはもうとてつもない本である。1996年に、エベレスト山頂近くで8名が遭難して死亡した顛末を、それにたまたま同行していた冒険ジャーナリストが書いたもの。いろいろととてつもないことがあり、またあまたの熊的人間が登場するのだが、特に超ど級熊的なのが、12時間氷付けになってから突然起き上がって自力で帰ってきたテキサス男。

続きを読む

体力(と知力)

ロッククライマーが、岩にはさまれた右腕をポケットナイフで切り落として脱出したという出来事が先週あった。詳細はワシントンポストの記事、Climber Cuts Off Arm To Free Himselfへ。

聞くだに恐ろしい。何が恐ろしいといって、生きて帰ってきたロッククライマー氏の体力が恐ろしい。事の顛末を要約するとこんな感じだ。

1)Tシャツと短パンで狭い峡谷を登っている最中に、右手のひじから先が数百キロの岩の下敷きに
2)そのまま5日間救出を待つ(ちなみに、夜なんか結構冷え込むんじゃないか。Tシャツに短パンだったら、それだけでもう死にそうである。その上に、右手はぐっしゃり、しかも3日目には持参した水もなくなる)
3)5日目についに決断し、ポケットナイフで右手を切断、その後、20数メートル絶壁を降りて10キロ強歩いたところで救出隊に見つけられる

続きを読む

間違い訂正!!

以前シリコンバレーと自閉症というエントリーを書きましたが、そこでちょっと間違いがありますので訂正です。

「Temple GrandinというAsperger’s Syndromeの大学教授は自閉症についていくつかの本を書いているのだが、Thinking in Picturesでは、巨大な建造物を頭の中で設計、それを何度もいろいろな角度からビジュアルにシュミレートして、全てできたら、それをテレビでも見ながら紙に落とし込むだけ、という仕事振りが出てくる。彼女は自分の能力について「頭の中にSunのworkstationがある」と形容している。なお、Grandinは私の愛するOliver SacksのAn Anthropologist on Marsの主人公でもある。」

と書いたのだが、彼女の仕事振り(太字の部分)が出てくるのはThinking in Picturesではなく、An Anthropologist on Marsの方。Thinking in Picturesは彼女の生い立ちを追った自伝です。ちょっと混乱してしまいました。

実は元のエントリーを書いてすぐ勘違いに気づいていたのですが、かまけてそのままになっていました。が、実はこのエントリーは思いがけずいろいろな方に読んでいただいているようなので、反省をこめ修正します。。。(元のエントリーも修正しました)

西教授・橋本氏・能力と身のおき方

StanfordのNanofabrication Facilityを統括する西教授という方がいる。東芝でメモリの開発をした後、80年代半ばに請われてHPの研究所長となり、さらにTIに招かれてTIのR&Dの長となった。昨年からStanfordだが、TIでは創立以来はじめてのChief Scientistという役職も兼任している。私が関わるNPO,JTPAのアドバイザーにも就任いただいている。

Electronic Artsで VP of Technologyを勤める橋本氏には、昨日のセミナーでパネリストをお願いした。Square(昨日スクエアと書いたがスクウェアが正しいとのご指摘あり。失礼しました)でFinal Fantasyの開発に従事した後、EAのCEOに請われて昨年同社に移った。

お2人の共通点は、日本が世界最高の業界で頭角を現し、そこからさらにアメリカのグローバル企業に活躍の場を動かしたこと。80年代半ばといえば、製鉄や自動車のように、半導体産業もアメリカから日本に奪われてしまう、と思われていた時代だ。そして今は、デジタル・ゲームのメッカといえば日本である。

続きを読む

MBAのダウンサイド

昨日書いたとおり、先週末はMBAのクラスメートのうち女性だけの同窓会であった。
30人来てその内訳は、

子供がいる:12-3人
既婚:20人前後
会社に勤めかつ出世している:5-6人
専業主婦:3-4人

という感じ。きちんと統計を取ったわけではないのでわからないが・・・・。100人ほど女性がいるうちの30人が集まったわけだが、残りは都合がつかなくて来れない人と、人に言うほどの成功を収めていないから来たくない人の二種類に分かれると思う。実際に知り合いでも、「最初に自分の近況を一人ずつ発表するんだけど、あれが嫌だからもう行かない」と言っている人がいた。ごくごく大雑把に見て30人くらいが「人に言うほどの成功を収めていないから来たくない」に入るとすると、「会社で出世している」というのは60分の5、約8%か・・・。育児のために、パートタイムで働いているという人もいたから、男性だったらその確率はもうちょっと高いかもしれないが、それでもまぁせいぜい倍の16%というところではないか。不況のせいもあるとはいえ、履歴書上美しいスタンフォードMBAといってもこんなものだ。

続きを読む

Midlife Crisis

先週末は、ビジネススクール時代のクラスメートのうち女性だけが集まる、年に一度のWomen’s Retreatであった。サンフランシスコで30人ほどが参加。

その中で話題になった記事の一つがHarvard Business ReviewのHow to Stay Stuck in the Wrong Career。有料だがダウンロード可能。30代以降、既にある程度キャリアを構築したところで嫌気が差して異なるキャリアに移る時のコツ、というかDo’s and Dont’sについての記事だ。

ポイントは、「少しずつ試しながらだんだん何をしたいかの意志を固めていくべき」ということ。「一般的に信じられているが、実はしてはいけないこと」というのも三つある。

続きを読む

国籍と学問

今日、スタンフォード医学部で血液学のProfessorをしているJim Zehnderとランチをした。スタンフォードの医学部の外国人比率はどれくらい?と聞いたら、「facultyはほとんどアメリカうまれのアメリカ人だけど、将来研究の道に進もうと思っているFellowは9割が外国人、その多くが中国人だね」とのこと。多分、ABC(American Born Chinese)も入っている数字を言っていると思うのだが、それにしても凄い数字ではないだろうか?

「アメリカ産まれのアメリカ人は何をしているんだろう」
と聞いたら、
「うーん、それはいい質問だ。ぼくもわからない」
とのこと。(将来患者を診る医者となろうとする人では純アメリカ人比率も高いようだが)移民を莫大に受け入れる、ということは、高等教育の人口分布をこれだけ変えてしまう。白人男性が、マイノリティーをサポートするaffirmative actionが逆差別だといって反抗する気持ちもわからないではない。(ちなみに、アジア系は進学においてはマイノリティーではないので、決してスタンフォードの医学部が中国人にゲタをはかせているわけではないはず。)

ちなみに、Jimの4歳の甥は「将来なんになりたいの」と聞かれて「Caucasion!」と答えた(?)らしいが。Caucasionだと、少なくともスタンフォードでは研究できないかもしれない・・・・。

Silicon Valleyで話題の本

最近ちょっと話題な本がWhat Should I Do With My Life。Nudist on the Late ShiftやFirst $20 Millionなど、Silicon Valleyの生態学的な本を書いてきたPo Bronsonの新作。

一体全体どうしたら人生を有意義に生きられるのだろう、と模索する900人を2年間かけてインタビューして書かれたもの。Silicon Valley周辺の人も登場するが、全然関係ない人もでてくる。全部読み通した感想を一言で言うと「キャリア構築の自由度が高い社会というのは、自由であるがゆえに苦しいこともいっぱいある」ということ。日本のように束縛が大きい社会だと、いろいろと責任を転嫁できる先もあるが、何事も自分で選択したとなると、全ては自分の責任。

続きを読む

Italy & Japan (聖マリア症候群)

19世紀以降のイタリアと日本におけるリーダーシップについて比較したMachiavelli’s Childrenを最近出版したMITのRichard Samuels教授のセミナーに金曜日に行った。イタリアは、日本との比較において最近とても気になっていた国。「出生率低い」、「失業率高い」、「マザコン多い」、という3つの共通点があるからである。

セミナーの本題の日・伊比較は大変興味深かったのだが、私の「面白アンテナ」に引っかかったのは、ちょっと本題とは外れた出生率の話。レクチャーの後に、なぜイタリアの出生率が低いかという質問があり、Because women are saying “fuck you” to the society(これはProf. Samuelsの言葉)とか、Women choose career over having childrenとか、いろいろコメントがあったのだが、「またいつもの議論だなぁ」と笑ってしまった。女だけで子供が産めるわけでなし、出生率が低いのは、男女の問題じゃないのか。もちろん、シングルマザーを増やすというのも実は出生率を高める方策なので、そうなるとまぁ女性の意志が強力にきいてくるのだが、それにしても、こうしてまるで他人事のように男性が出生率の議論をするのを聞くと、なんだかおかしい。こうした「出生率低下を女性の問題とすること」を、「聖母マリアはvirginでキリストを身ごもった」と信じることにもじって、Virgin Mary Syndromeとでも名づけたいところ。

続きを読む

Newsとblogの違い

CNetがGoogle:Is all the news fit to post?という記事で、Google NewsがPress ReleaseをNewsと混ぜて載せているのはふさわしくないと指摘。ちなみにGoogle NewsはGoogleが運営しているbeta版のニュースフィードサイト。Googleは、

Google News areas “where press releases are included but not clearly marked are bugs,” a Google representative said.

ということで「バグ」なんですね、これ。もとい、面白いなと思ったのは主題とは別で、「一人で編集しているサイトはニュースではない」というGoogleのコメント。Infoshop.orgという半資本主義アナーキーサイト(!)が、いったんGoogle Newsのdatabaseに含まれたが、その後はずされた。GoogleはInfoshop.orgにこんなメールで説明したとのこと。

続きを読む