Silicon Valleyで話題の本

最近ちょっと話題な本がWhat Should I Do With My Life。Nudist on the Late ShiftやFirst $20 Millionなど、Silicon Valleyの生態学的な本を書いてきたPo Bronsonの新作。

一体全体どうしたら人生を有意義に生きられるのだろう、と模索する900人を2年間かけてインタビューして書かれたもの。Silicon Valley周辺の人も登場するが、全然関係ない人もでてくる。全部読み通した感想を一言で言うと「キャリア構築の自由度が高い社会というのは、自由であるがゆえに苦しいこともいっぱいある」ということ。日本のように束縛が大きい社会だと、いろいろと責任を転嫁できる先もあるが、何事も自分で選択したとなると、全ては自分の責任。

とにかくいろいろな人がでてくる。離婚した妻が引き取った子供と過ごす時間を大切にするために、弁護士を辞めてトラックの運転手になった人。(その子供は妻の連れ後で彼とは血の繋がりがないが、彼はその子を深く愛している)Harvard Business Schoolをでて、Fortune150に入る企業の跡取りの座にありながら、Los Angelesの危険な地域で夜中のパトロールをする警察官。(この彼は、海に面した豪華なコンドミニアムに住み、ベンツで警察に通うという、まるで漫画の主人公のような生活である)バレリーナとステージモデルからStanford Business Schoolに行き、McKinsey、Sunと経て、未だ自分のしたいことにたどり着けない女性。(彼女は、私の一つ上のクラスだった)スキーに行く休暇が欲しいと、会社生活を辞めて、林業の農家事業を買い取って自分たちの事業にした夫婦。

最もアメリカらしいと思ったのは、自由であるが故の苦しさが何度も現われること。

自由意志が尊重される社会アメリカでも「人生の岐路に立った時、自分の判断を押し付けてくる親」というのがステレオタイプ。しかし作者のPoは900人にあって、「『自分のしたいようにしなさい』と自由な選択を尊重するばかりで、子供が迷いのさなかにあるときにその『自分探し』をサポートしない親」という方がずっと多い、とコメントしている。いわく
young people who were given too much leeway by parents afraid of being overbearing, when their children really needed help in identifying what was important to them.

Du Pontで将来の幹部候補として恵まれたengineerの職を得ながら、鬱病になり会社を辞めて実家に帰り、抗鬱剤を飲みながら学校教師をしていた女性が、「誰にも一度も抗鬱剤を飲んでいることすら話したことがない」とPoに言う。どうして自分だけに話したのか、とPoが聞くと
Because you’re the only one who really asked.
という答えが返ってくる。アメリカらしいなぁ、と思う。悪く言えば「詮索好きで押し付けがましい」、よく言えば「親身で親切」な人が多い日本の究極の逆側にある。

私の20代の頃の悩みは、「こうあるべき」といろいろな人(主に年上の男性)にあれこれ言われることをどうやってシャットアウトするかだった。いわく「結婚したら家に入るものだ」「男性社員に対しては年下であっても全員さん付けすべきだ」「もっと苦しい恋をしろ」などなど。今だったら「ひょえー」と言って笑って終わりだが、当時は「やはり人生長く生きている人の言うことには一理あるのではないか」と、どこまで受け止めるべきなのか図りかねていた。とは言うものの、何を選択しても、「自分の思うとおりにしなさい」としかみんなに言われなかったらそれはそれで苦しいものがあったかも。想像もできないが、アメリカで成長するというのはそういうことなのかもしれない。

さて、Po Bronsonのメッセージは「夢を閉じ込めて、生活のため、金のためにつまらない仕事をすると、苦しいばかりだよ」ということ。900人話をして「いったん事業で成功した上で、若い頃の夢に戻って実現した」という人は一人もいないんだそうだ。

ということで、不景気で自分の人生を見つめなおす人の多いSilicon Valleyでちょっとばかり流行っているWhat should I do with my lifeでした。

Silicon Valleyで話題の本」への9件のフィードバック

  1. はじめまして、こんにちは。
    ほぼ毎晩刺激を受けながら読ませてもらっています。
    ところで、
    >900人話をして「いったん事業で成功した上で、若い頃の夢に戻って実現した」という人は一人もいないんだそうだ。
    という一文を読んで、↓の『HotWired』のニュース記事が取り上げた元「PayPal」のElon Musk氏はもしかしたら↑の例外で、若い頃は宇宙関係の仕事を目指していたのかも?なんて思いました。
     ・インターネット界の寵児、宇宙事業に乗り出す
      http://www.hotwired.co.jp/news/news/20030424103.html
      http://www.hotwired.co.jp/news/news/business/story/20030425107.html
    いえ、彼のインタビュー等、読み調べたわけでなく、根拠も何もなく、ふと思っただけでした。失礼しました。

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  2. コメントありがとうございます。
    リンク、読みました。Po Bronsonの本によればですね、こういう人は結構いるらしいです。「成功して、成功したあとで、新たな興味を持ってそれに没入していく」という人です。
    Musk氏で言えばWiredの後編にこうありますね。
    「昨年ペイパル社との関係が薄れていったとき、火星にロボットを送ることで有人火星探検への関心を高めるという慈善事業に興味を持った」
    つまり、「もともと宇宙を愛していたが、それをいったん置いておいて、関係ない事業に人生をかけて、成功したので、また宇宙に戻った」わけではない。
    ということで、「今愛していることが既にある人は、それを置いておいて他のことをしていると、いつまでたっても本来愛する仕事を達成できない」、というのが本のメッセージの一つでした。とはいうものの、物事にはバランスがあって、愛着があることと得意なことは違うことも大いにあるわけで、そこはやっぱり「自分ができることを愛する」というのも大事。ムズカシイ・・・。

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  3. シュリーマンは確かにそうですよね。よく知りませんが、ゴーギャンなんかもそうなのでは?という気はします。(株の仲買人(でしたか?)から絵描き)万に一つくらいの確率で可能なのかもしれないですね。しかし、9999事象では「夢を横にのけておくとそのまま(夢または自分が)腐ってしまう」というような感じなのでしょうか。
    ちなみに、全然関係ありませんが、シュリーマンはトロイの遺跡発掘の前、江戸末期の日本に観光で訪れたそうです。(江戸時代に外国人が日本観光するなど可能だったのか、と驚きましたが)日本国民は清潔好きとか、園芸愛好家とかいろいろ記した旅行記が「シュリーマン旅行記、清国・日本」として和訳されてます。

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  4. “What Should I Do With My Life” つい最近読み始めました。面白いですね。以前医師だった人のインタビューで、
    職場があまりに忙しく旅行のお土産を同僚に配っても誰もありがとうと言ってくれなかったという話が印象に残りました。

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  5. このつまらない仕事を辞めたら、僕の人生は変わるのだろうか?

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  6. 本当に申し訳ありませんが、こちらの操作ミスで、何度もTrackBackを送ってしまいました。最後の4回分くらいがそうです。
    お暇のある時に削除いただければと思います。
    申し訳ありませんでした。

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