「株主との対話」ガイドブック

Yahoo! JAPAN等でIRを管掌され、現在IR・ESGコンサルタントの浜辺真紀子さんによるIR関係者に向けた著書です。

浜辺さんは、お互いにソウルドアウト社の社外取締役をしていたときのお知り合い。その浜辺さんに教えていただいて初めて知ったのですが、IRのための投資家とのミーティングはなんと年間700回も行われるとのこと(もちろんそれより多いところも少ないところもあるでしょうが)。IRがそんなに忙しい仕事だったとは。その割にどうすべきかのノウハウは少ないので、この本は実務担当者の皆さんの役に立つことでしょう。

闇雲に投資家と会うのではなく中長期視点を持つ機関投資家を探して対話を行うこと、IRはPRとは違うことを理解すること、日本株式の売買代金の6割を占める海外投資家を取り込むことの重要性などが書かれています。

中でも海外投資家の取り込みは「1000億円以上の企業価値がないと海外投資家には見向いてもらえない」という人もいますが、実際は200−300億円規模の企業でも明確な優位性があれば海外投資家を取り込むことができるとのこと。日本の上場企業の海外投資家比率の平均は3割なので、まずはそのレベルをゴールとすべきなどなど。とにかく実務担当者が明日からできることがいろいろ書いてあります。

本の内容は、帯に書いてあることが一番わかりやすそうなので以下転記。

「ありがちな誤解」10項目

  1. 株主との面談では、時間いっぱい、丁寧に自社について説明している
  2. 株主は皆、ポジティブ・サプライズが好きだ
  3. 中長期視点の投資家は短期業績にこだわらない
  4. せっかく訪問してくれた投資家には前四半期だけでなく、直近の事業進捗を教えたい
  5. 海外機関投資家と積極的に会わなくても、日本の機関投資家と密に対話していれば十分だ
  6. 既存株主は株価形成に役立たないため、新規株主を常に探す必要がある
  7. 決算発表資料の完成が発表前日なので、英語版の公開が数日遅れになるのは仕方ない
  8. 自社事業がSDGsの何番に対応しているかを明記することでESG開示を十分に行っている
  9. CSRは「社会貢献=慈善事業」を指し、ESGとは別の概念だ
  10. コーポレートガバナンスとは、内部統制やコンプライアンスを正しくオペレーションすることだ

一つでも「うっ」と思う内容があるIR関係者の皆さんは是非この本を読んでみてください。

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