アメリカが内戦に突入する可能性はあるのか:Ray DalioのThe Changing World OrderとNetflix映画のDon’t Look Up

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Ray Dalioは、ヘッジファンドのBridgewaterの創業者。Bridgewaterは運用資産が$140 billion(15兆円+)、Ray Dalio氏の個人資産は$20 billion(2兆円+)。そのRay Dalioが去年11月に出版したのがThe Changing World Orderという本である。「過去300年の世界の国家の繁栄と没落を観察し、その中から共通するファクターを洗い出して現在の社会に当てはめると、世界、中でもアメリカは最悪なサイクルの一歩手前」という暗い内容です。

本の要旨はこんな感じ。

  • 国家の繁栄はいい時と悪い時の波があるが、その波を決める大きな3つのサイクルが「国家負債と資本市場」、「国内の秩序」、「国家間の秩序」。
  • 「国家負債と資本市場」については、繁栄→気が大きくなって支出増、国家負債増→国家財政破綻、のサイクルを過去数百年繰り返している。
  • なお、国家負債が返せないほど莫大になると、デフォルト(借金返済の約束を反故にする)かお札を刷るかの二択になるが、ここでデフォルトが選ばれることはまずない。そしてお札が刷られる結果、その国の通貨の価値が下落するとともにインフレが起こる。ただし、通貨の価値については、価値下落の要因が揃ってからもしばらくは保たれる。世界の基軸通貨の場合は特にその傾向は強い。しかし、あるところで一気に暴落する。
  • 一方、「国内の秩序」の悪化では、国内の富裕層と貧困層の摩擦が大きくなり、ポピュリズムが台頭、メディアが悪用されて何が真実なのかわからなくなり、「悪いのは資本家やエリート」という世論が支持され、富裕層の国外脱出が始まり、それに対抗するために資本の海外持ち出しが制限されるようになり、やがて経済は縮小、そのパイをめぐって争いが起こり革命や内乱的な事変へとつながる。ただし、「事変」は比較的平和に起こることもある。例えばニューディール政策。
  • 今後10年の間にメジャーな戦争が起こる可能性は35%、アメリカが「事変」に至る可能性は1/6、とRay Dalioは予測している。結構大きいですよね。戦争はぜひ避けて欲しいし、「事変」は平和的バージョンでお願いしたいところ。

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さて、「ポピュリズムが台頭」し「真実がわからなくなり」「エリートは悪者」となった状態で、地球を直撃する巨大彗星が観測されたら何が起こるか、というお話しが去年の12月に出たNetflix映画の「Don’t Look Up」。デカプリオ、ジェニファ・ローレンス、ケイト・ブランシェット、メリル・ストリープに加えてアリアナ・グランデまで出ているという豪華絢爛キャスト。描かれる社会の様子にあまりに真実味があって見終わった後で辛くなりました。アメリカに住んでいる人で辛くなりたい人はぜひ見てみてください。

アメリカが内戦に突入する可能性はあるのか:Ray DalioのThe Changing World OrderとNetflix映画のDon’t Look Up」への1件のフィードバック

  1. 国家負債は国家資産と差引で考えなければならないので、一方だけを上げて危機だとか絶好調を言う専門家は、世間を誘導したい意図があるのでは?と疑う方が良いかと思います。

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