Jeremy Bishop
世界のダイヤモンド市場の80%を寡占するデビアス社が昨年開始した人造ダイヤモンド製造販売のLightboxが最近あちこちのポッドキャストで宣伝しているので調べてみた
こんな感じで、ネックレス、指輪、ブレスレットなどにセッティングした形で売っていて、一般的な透明以外にブルーとピンクがある。
そして、お値段は1カラット当たり800ドルという明快な値付け。写真のネックレスはシルバーのネックレス代が100ドル、1カラットのダイヤが800ドル、あわせて900ドル。そして、0.5カラット400ドル、0.25カラット200ドル、と重量比例の明朗会計である。
4Cと言われるダイヤのグレードは公表していないが、ダイヤモンド鑑別機関GIAによれば、カラーはG、クラリティはVVS2、カットはエクセレントと、総合してかなりグレードの高いダイヤ(らしい。よく知らないけど)。
同じグレードの1カラットの石をオンラインで値段比較してみると、だいたい天然物が6000ドル、従来の人造ものが2400ドル。というわけで、天然ダイヤの15%弱、既存の人造ダイヤの1/3で買えるという価格破壊。
うーむ、これは素晴らしい「ブルー・オーシャン戦略」ではありませんか?
デビアスは、「婚約したらダイヤの指輪をプレゼントする」という風習を世界に広めて、ダイヤの市場を大いに拡大した。70年代の日本では「給料3ヶ月分」というテレビCMがたくさん流れていた気がするのだが、これもデビアスの陰謀である。
「みんなが裸足のアフリカの国でスニーカーを売る」というよくあるセールスの命題はデビアスを参考にすべき。そういえば、土用の丑の日にうなぎを食べる、というのは平賀源内が鰻屋に頼まれて作ったコピーという説が有力だが、そういう感じでしょうか。
そして、アメリカのダイヤモンド販売のメジャー市場は婚約指輪。アメリカの婚約指輪ダイヤモンド市場は、音楽よりも早い時期にオンラインがリアルの店舗を駆逐、Bluenileというダイヤ販売ベンチャーが2005年に上場している。(Bluenileについては、当時ブログに書いたので興味のある方はそちらを参照ください。)
デビアス的にはリアル店舗で売られようが、オンラインで売られようが関係ないわけだが、人造ダイヤで、8倍近い値段で売れる天然ダイヤの売上が下がっては困る。そこでLightboxは従来ビジネスとの差別化のために、
- 実は非常にハイエンドなグレードのダイヤなのに品質を表示しない
- 指輪やネックレスなどアクセサリとしてセットしたものしか売らない
という2点を取り入れたのだと思う。
ファッションジュエリーっぽい売り方なので、これが実は高品質のダイヤだと分かる人は少なそう。
さらには、
- 顕微鏡で見たらすぐわかるLightboxのロゴが入っている
- 敢えて完成後の加工過程を一つ省くことで、ダイヤモンド用の蛍光イメージング機で見れば人造なことがわかる
という特徴もある。
つまり、婚約指輪のダイヤモンドをLightboxで買うと、相手が鑑定したらすぐバレるのである。
もちろん世の中には人造で十分と思う女性もたくさんいると思うが、予め
「婚約指輪だけど高品質の人造でいい?85%引きだし!」
と聞ける人・関係性はかなり限られそう。
特に、値段が3割引くらいだったらまだしも、85%引きだと
「うーむ、婚約指輪でセコイと思われたくない」
という葛藤も激しいと想像される。
そしてデビアスは今はイギリスの工場で作っているのだが、さらにアメリカはオレゴンに$97 million、100億円強で新工場を建設中。
以上、「普段使いのジュエリー」という「ブルーオーシャン」に進出する、コンサルのプレゼンから抜けて出てきたようなデビアスの戦略でした。
この記事も参考になります。コストコとかで売りに出ませんかねえ。
https://www.cubeny.com/catch19-08-3.htm
cvdダイヤでこんなものも作れるそうです。半導体と同じような製造技術なのでどんどん製造費は下がるはずです
https://diamondfoundry.com/blogs/the-foundry-journal/the-red-diamond-ring-designed-by-jony-ive-and-marc-newson-and-created-by-diamond-foundry
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友達に付き合って10年ぶりぐらいにサンマテオのGem and jewelry showに行ってみたら、人造ダイヤがあちこちでうられていました。冷やかしでイアリングの値段をきいて回ったら、一番安い所が各1.5カラット、合計3カラット、14金の台座で3250ドルでした。来年はもっとさがるかもしれません
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