持ち家より賃貸のリスクが高いシリコンバレー

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Fabian Blank

最近しみじみ思うのが「物価が上がっていく場所で生きていくにはリスクをとった運用をして資産形成しないとならない」ということ。

物価が普通に上昇するシリコンバレーでは、デフレ国日本の感覚からすると安全な「家は賃貸・余剰資産は銀行貯金」を実行すると実際の資産価値は下がっていく一方だ。

データで見ると、2010年から2019年にかけて、サンフランシスコの平均インフレ率は2.63%日本は0.2%2000年に100万円をタンス貯金すると、2019年には実際の価値は日本では97万円、SFでは60万円相当になる(為替無視)。毎年2-3%というちょっとの差が19年積もるとこうなる。

  • 賃貸の方が所有よりリスクの高いシリコンバレー・ベイエリア

特に当地で価格上昇が激しいのは住宅なのだが、サンフランシスコでは2000-2019年にかけて毎年6.1%ずつ上昇し、3倍になった。

(余談ながら、サンフランシスコの今年半ば時点での平均住宅価格は160万ドル、約1億7000万円。そしてそれで買える家の平均延べ床面積は150㎡。敷地面積は230㎡。日本の平均的な面積はそれぞれ注文住宅で110㎡、200㎡弱だそうなので、それほど大差ない。)

シリコンバレーはここ25年ほどの間に、歴史に残るドットコムバブル、その崩壊、リーマンショック(和製英語)、その後の全米の歴史的長期にわたる景気向上+テックバブル、と景気のアップダウンが激しいのだが、そういう当地では、ある一定期間(5ー10年くらい?)以上住むことを前提にすると賃貸の方がハイリスクだ、と実感として思った。

賃料も住宅購入価格も景気変動の余波を受ける。「今まで2500ドルだった賃料がいきなり価格改定で3800ドルになった」などという恐ろしい話もいくつも聞いた。

しかし、買って固定金利にすれば住宅費をロックインできる。

そして住宅価格の変動は株などに比べれば緩やか、かつアメリカの中古住宅の流動性は高い。なので「相場が下がり始めたら売る」という「後追い」で十分「高いうちに売り抜ける」こともできる。

アメリカの中古住宅の流動性の高さは、売買情報の透明性と表裏一体で、「住宅の実際の販売価格」、「その家が売れるまでの価格変更の有無」、「売れるまでの日数」が公開情報となっていて誰でもアクセスできるようになっている。それをよく観察して欲を出さずに値付けすれば、平均的価格帯の家だったらまず売れるはず。(2桁、3桁億円のハイエンド高級住宅は別です。)

ちなみに、中古住宅が市場に出てから売れるまでの平均日数は、この辺りではだいたい2040日くらい。150万ドル以下のお手頃物件(当社比)だとその半分くらいではないかと推測。

(ちなみに、子供の夏休みの間に引っ越す需要が高いので、この日数が夏は少なく冬は多いという季節性がある。)

物件が毎年5−6%あがり、かつほとんどの人が住宅ローンでレバレッジをかけていることを考慮すると、自分の資金(頭金+ローン返済額)の利回りは年間10%〜20%くらいになるはず。中々この利回りで運用できる資産はありませんな。

  • 経済成長率の低い国も同じようなリスクを抱えている

というわけで、周囲の人々が不動産や株など色々リスクをとって運用する中で、リスクを避けるつもりで「賃貸・普通預金」だと、価格上昇についていけずに生活が苦しくなっていくわけです。

そしてこれは国全体の経済にもいえて、「経済成長などしなくても幸せな国へ」と言うのは簡単だが、「他の国が2倍リッチになる中で無成長」ということは、大雑把にいうと海外から買うものが全て2倍の値段になるわけで、生きていく上での全資源を国内でまかなえるようにしないと厳しい。

というわけで、日本は人間が光合成でエネルギーを作れるようにする遺伝子改変技術を開発するといいのではないでしょうか。

そして社会の格差が拡大し、貧困層は遺伝子改変で緑色に、富裕層は従来のままとなり、緑色人間とその他の人間の間で抗争が勃発、従来通りの食事でエネルギー摂取するリッチ層向けの畑の土の中に集団で無断で潜り込む「緑色人間による栄養素略奪テロ」が多発するのであった。

お後がよろしいようで。

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