Amgenの大儲け-なぜバイオはすごいのか

Amgenの第一四半期のnet incomeが、45%アップして$493M。CNNMoneyの記事はこちら

これがどうしうて凄いかというと、Amgenという会社は基本的に1種類の発明だけでこれだけ儲けているのである。

Wall Street Journalによれば
Amgen owes most of that growth to its drug Aranesp, which treats anemia, and Neulasta, which helps fight infections. Both drugs are second-generation versions of older products that brought in more than $250 million in the quarter. Amgen’s predecessor to Aranesp, an anemia drug for dialysis patients called Epogen, also racked up improved sales in the quarter.
とのこと。要はEpogenという薬を開発して、一発屋としてこれまでやってきたが、それをちょっと変えた第二世代のAranespとNeulastaという薬も売れて、利益が飛躍的に伸びた、ということ。

ということで、アナリストも、”These aren’t one-time trends; it looks like they’re lasting”という。(しかし、そのアナリストは、この文章の直後に”at least for the rest of the year” ともいっていて、金融の世界の人たちがいかに短いいスパンで物事を考えているかわかっておかしいのだが)

Amgenの今年の売上げ予想が7.1Bから7.6B。2000年が$3.6B、2001年が$4B、2002年が$5.5Bという実績なので、ここ4年間だけでも$20B、2兆円を超す売上げなのである。これが基本的にはコアとなる薬を一つ開発しただけで達成できてしまうのだから、製薬というのは信じられない業界である。いったん開発した薬はその構造そのものが特許となり、しかもここの薬が、臨床実験を含めた長い認可プロセスを必要とするので、ひとたび効く薬ができれば、長期間にわたって利益を享受できる。

信じられないほどの利益が上がるがゆえに、製薬(Pharmaceutical)はずっとbig playerの寡占が続いてきた。開発費が莫大にかかり、しかも許認可が複雑で時間がかかるため、エントリーバリアは高く、その業界構造は未来永劫崩れないと思われていた。ところが、DNAというものが発見され、しかも人間の体の中で薬のように活躍するたんぱく質をDNAを使って人工的に作れる、ということで「DNAを使って役に立つものを作る」という新たなインダストリーが誕生する。それがbiotechだ。そもそもはGenentechから始まり、Amgenがその後続なのだが、今ではGenentechの市場価値は$20B弱なのに比べて、Amgenは$80B(10兆円)弱と4倍で堂々バイオのトップ企業となっている。

と、ここまで聞くと「フムフムなるほど」という感じだが、果たしてbiotech以外の方法ではどうやって薬を作ってきたのだろう、という疑問がわく。

なんと驚いたことに、「何だか効きそうな物質」をたくさんライブラリー化しておいて、それをああでもない、こうでもない、と試してその中から探し出しているのである。「マリファナは苦痛が減る」という経験則に基づき、そこから痛み止めの成分を抽出する、というのはわかりやすい例。

人間は実は太古の昔から様々な効き目を持つ物質を自然界から抽出して使っている。例えば、Ice Man(邦題は5000年前の男)という本には5000年前に行き倒れになった男の死体が、氷河の中からまるで最近死んでちょっとミイラ化しましたという感じで表面にでてきた、という画期的な出来事の顛末がある。(ノンフィクションです)5000年前というのは、日本だったら縄文時代。この本で私が一番驚いたのは、その男が抗生物質を携帯していたこと。柳か何かの木の樹脂を小さな入れ物に入れて、腰から下げていたのだが、その樹脂は実は抗生物質(確かペニシリン)で、病気になったときのために持ち歩いていたのだあろう、という推測。うちのおじは子供の頃肺炎で死にそうになり、もはやこれまでというところでやっと医者がペニシリンを注射してくれて一命を取りとめたそうだが、それが5000年前から発見されていたとは。

私の知り合いのアメリカ人は、昔某日本の製薬会社で研究者として働いていたのだが、当時年に一回孤島出張というのがあったのだそうだ。確か屋久島かどこかに、世界でも類を見ない微生物がたくさんいる、ということで、島のあちこちで、サンプルを収集して持って帰り、そこから何か抽出できないか、とトライアンドエラーする、というのが大切な研究だったそうだ。(その島の宿では、信じられないくらい巨大なゴキブリが常にあちこちを歩き回っていて、死ぬかと思ったそうである)

基本的には製薬会社というのは、こうした「物質ライブラリ」を大量に持っていて、何か新しい病気が発見されると、「経験則的に見てこのあたりの物質が効きそう」というのを大量に病気の原因となる物質に体当たりさせてみて、効果があるかどうか試す。格好よくHigh Throughput Screeningなどと呼ばれているのだが、ITの世界の人間からすると、驚くべき場当たり的、前近代的研究に感じられないだろうか?

しかし、思うに、半導体ができる前のITも似たようなものだったはずだ。世界最初のコンピュータの一つEniacは、18,000個の真空管でできていたがゆえに、計算の途中であちこちの真空管が焼き切れてしまい、なかなか役に立つ計算を完了させることができなかったという。(軍隊向けのシュミレーションをするときは、業を煮やした軍が、買い物かごに予備の真空管を入れた兵隊を1小隊Eniacの周りに待機させたという笑い話のような逸話もある。ちなみに、当時真空管が暖かくて明るいので虫が集まりやすく、内部に入り込んだ虫が原因でショートした。そのことから、「コンピュータを直す」という意味で「debug」という言葉が使われるようになった。)

ITは半導体が発明され、それを起爆剤としてハード・ソフトも進化した結果、過去3-40年の間に精度がどんどん上がって、今のように1は1,0は0としてデジタルに扱うことが可能になった。Windowsがフリーズしやすいといっても、「同じ計算の再現性は30%」なんてことはいくらなんでもおこらない。

これから、バイオの世界でも同じことが起こっていくはずだ。DNAというのは本質的に4種類のデータによって成り立っているデジタル情報媒体であり、熱しても壊れない。ここにITが培ってきた精密製造技術、情報処理技術を適用することで、格段の進歩が実現できるはず。

ということで、これからバイオとITの融合分野が楽しみなのであります。

Amgenの大儲け-なぜバイオはすごいのか」への4件のフィードバック

  1. 製薬会社のR&Dって何やら難しいことをしているんだろうなと思っていましたが、トライアンドエラーで試していく方法も結構ベースになっているんですね。
    それにしても、エニアックの話を読んでいると、たまにフリーズするウィンドウズにも文句が言えなくなります。当時では想像すらできないほど複雑なロジックの積み重ねでこのPCのハード、そしてOSは作られているという事実をふと思い出しました。

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  2. 大儲けできる投資の極意

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    この方法は、日経225先物(miniを含む)とオプションを投資対象とし、
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    いいね

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