ロボットの王道はヒューマノイド型にあらず


今年の6月にDARPA Robotics Challengeの最終大会がサンディエゴで行われた。DARPAは「米国防省高等研究計画局」。インターネットのプロトタイプであるARPAnetを作った偉い政府機関である。そのDARPAが3年かけた賞金総額350万ドルのコンテストに、技術の粋を集めた23のロボットたちがグローバルに集結したのがこの大会だ。2日に渡って競い合い、その全容はリアルタイムでストリームされ、世界に衝撃を与えた。

ロボットができることはこの程度だったのか

という衝撃である。

ロボットたちに与えられたタスクは

  1. 車の運転(見た感じ20メートルくらい)
  2. 車を降りる
  3. ドアを開けて建物の中に入る
  4. 壁のバルブを開ける
  5. 電動ノコギリで壁に穴を開ける
  6. 秘密のタスク(1日目はスイッチ切り替え、2日目はコンセント引き抜き)
  7. 瓦礫乗り越え
  8. 階段を上る

という人間だったら5分もあればできそうなもの。しかし「車の運転」ができずに、やむなく歩いて(?)スタートラインを出るロボット続出。そして、ドアを通り抜けられず転倒するロボットたち。冒頭の写真は歩くだけで転倒しているロボットである。

さらに・・・・


よろよろがんばった軌跡を見よ。

 


建物に到達。しかしドアを開けて通り抜けようとしたところで転倒。

 

ドアを開けようと考えただけで転倒。

 

転倒後、担ぎ出される気の毒ロボ。

全体的に「ういー、とうちゃん、酔っ払っちゃったよぅ」てな感じで泥酔して帰ってきたお父さん風であった。

衝撃を受けた世界の視聴者の一人である私は、この後すぐ、飛行機の中で立て続けに2本映画を見た。Ex MachinaとChappieである。どちらもロボット・AIものなのだがロボットたちが賢すぎて泣けた。

 


Ex Machinaは、「検索エンジン会社のビリオネアファウンダーが作り出した女性ヒューマノイドロボット」のお話。歩いたり、走ったり、ダンスしたり、絵を描いたり自由自在である。(暗いけど良い映画であった。AIの元データは「世界の携帯電話情報をすべて盗みとって収集している」という設定。それってどんなセルゲイ・・・w)

 


そしてChappie。「南アフリカで強力なロボット部隊が警察に導入されるが、そのうちの一体が学習機能を身につけ進化、自我を持ちチャッピーと名乗る」という設定である。ロボット部隊は走ったりタックルしたり、運動万能。車の運転もできる。その上壊れたパーツはホットスワップ可能で、適当に付け替えれば神経が繋がる。ヨハネルブルグ全域で稼働中の部隊全部のファームウェアをover-the-airでアップデートもできる。

しかも設定は2016年である。来月じゃん。すごい、南アフリカ。

(映画としてのChappieはB級だが私は好きだ。)

+++

以上、世の中の期待と現実は大きく異なる、ということがよくわかったDARPA、Ex Machina、Chappie3連チャンであった。

+++

ちなみに私、DARPAチャレンジの実に2日間x6時間にわたるストリーム放映のほとんどを横目で見ていたのだが、このストリーミングは上記の記載よりもさらに衝撃的であった。なぜなら「ほとんど何も起こらなかった」からである。

冒頭の8つのタスクをこなす制限時間は1時間。4チームが同時に競い、それぞれが別トラックでストリームされたのだが、その全トラックで「何も起こっていない」時間がほとんど、というすごいストリーミングだったのだ。長い無を経て突然ロボットがじわじわと動き始めると、おおっと手に汗握るわけだが、その次の瞬間にどーんとこける。最終ゴールまでたどり着いて階段を上りきったロボ1機も「勝利のポーズ」で両手をあげたところで転倒。

なお、優勝チームのロボットが動いているときだけを早回ししてつなげた動画が2日分で約3分。じわじわとでも動いている時間がこの3倍あったとして9分。つまり競技中、動いている時間が10%もないわけです。しかも最初の方で壊れて脱落するロボットも多数。スタートラインから一歩踏み出そうとしたところで転倒してリタイヤしたロボもいた。なので、だいたい95%位何も起こっていない印象であった。

これを2日間見ていた私もどうかと思うが、禅の境地に至ったような気もする。

そして、一番難しそうだったのは「二足歩行」であった。指定タスクよりも、その間を2足で移動する時が最も危険。不安定な足元で風が吹く中を歩くのは危なっかしいこと極まりない。

だからGoogleが買収したBoston Dynamicsのロボットの多くは4足歩行なのでしょう。

こんなのとか↓

5年前にインターネット界の一部を席巻した不気味なBigDogとか↓

飛行機が開発される前に「鳥のように巨大な翼をバサバサと動かして飛ぶ」という形がトライされたことがあったが、結局それは無理だった。今にしてみれば愚かな試みだが、今回のDARPAチャレンジも20年くらいしたら「がはは、昔の人は人間の形したロボットを作ろうとしてたんだ」と笑いをとれるのかも。

もちろんやがてはヒューマノイド型のロボットが容易に作れる日も来るかもしれないが、当面はそんなフォームファクターに労力をつぎ込むこと自体無駄そう。もっと今すぐできるAIやロボットの形があるわけだし。

とりあえず今回のDARPAチャレンジを見た限りでは、ヒューマノイドロボットが攻めてきたら、ドアをしめれば大丈夫そうでございます。

DARPAチャレンジ失敗動画集

参考:DARPAチャレンジルールブック (April 9, 2015)

ロボットの王道はヒューマノイド型にあらず」への1件のフィードバック

  1. ロボット技術の現実を理解していただけたのは、良い事だと思います。なお、DARPAロボティクスチャレンジ決勝戦の会場はカリフォルニア州の「サンディエゴ」ではなく、「ポモナ」です。

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