トヨタOnRamp2015でi-Roadを試乗してきました

先週、サンフランシスコでトヨタのOnRamp 2015という1日イベントがあった。一人乗り電気自動車のi-Roadと、水素で走るMiraiに試乗できるという素晴らしい会ゆえ、サラリーマンのように朝8時のCaltrainに乗って行ってきました。

(なぜ列車で行ったかというと、最近の高速の渋滞はハンパないからだ。人口増に加え、280という高速道路のサンフランシスコ最終出口の目の前の通りを完全通行止めにして地下鉄工事をしている。最近どこにいっても工事ばかりである)。

参加者100人ほどの小規模なイベントながら、朝食・昼食・レセプション付き、同時通訳のヘッドセット付き、プレゼン会場と試乗会場の二カ所に分散するためスタッフ多数(多分100人近かったのでは?)という、さすがトヨタ、お金持ち!という感じのイベントであった。

i-Roadはスキーやバイクのように重心によって車体が傾くのが楽しい車。「絶対倒れない」というので思い切り踏み込んだまま急ハンドルを切ったら勝手にブレーキがかかって急減速し、下手くそなロードレースのビデオゲームのようになってしまった。

ちなみにこちらはRecodeの記者の方バージョン。こういう運転をするのが常識人というものでしょう。

Miraiは水素というところは興味深いが、運転する分にはステアリングもサスペンションも柔らかい一般的な日本車で特筆することはなく。ちなみにMirai、もうアメリカで売っていて、すでに3桁台販売済みというのは知りませんでした。停電しやすいベイエリア山側民としては家庭用非常電源としても興味があり、いったいどこに水素スタンドがあるのか、と思ったら稼働済みなのは南カリフォルニアだけなんですね。しかし、我が家の近くにも予定中の場所が数カ所ある。ふむふむ。

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もとい、OnRampのサイトによれば、このイベントには3つの要素がある。一つは上述の試乗。これは参加者皆とても楽しんでいたと思う。さらに終了後冒頭のYouTubeビデオまで作成いただきました。トヨタのみなさま(そしてイベントを企画した電通のみなさま)ありがとうございます。

二つ目はキーノートスピーチ。トヨタのチーフエンジニアなる方がお2人i-RoadとMiraiの話をされ、アメリカとは違う「人口密度の高い国で考えられた未来のモビリティ」が垣間見られ興味深い。

なお、重箱の隅をあえてつつくと、プレゼン資料は字が細かすぎ、ページあたりの情報量多すぎ。配布して手元で読み込むための資料で、画面に投影する画像ものではなかった。

Toyota OnRamp2015こんな感じ

同時通訳+ヘッドセットを配るほどの気合であれば、当地のデザイナーを入れてアメリカ向けに直した方がいいのではないかと思います。せっかくの内容がもったいない。

ちなみに、このようなチャートも登場。

Toyota OnRamp2015

あれですね、きっと日本の「○△×」を頑張って訳したんですね。衝撃的事実だが、○=よい、×=ダメ、△=その中間、という解釈は日本の外では通じない・・・・という話は昔書きました。

昔エントリー:○×△の起源は

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そして3つ目はモビリティチャレンジ。いわゆる「ビジネスプランコンテスト」である。ファイナリスト10組が発表、上位入賞すると賞金と今後の製品開発に関してトヨタのサポートが得られる、というもの。

お題はモビリティ全般だと理解しているのだが、プランはことごとく「i-Roadをどう利用するか」だった。テーマが変更になったのか、単にi-Roadのインパクトが高すぎたのか。

私的に面白かったのは、「i-Roadを2台並走させる。1台は人間が運転、その運転ぶりをリアルタイムでミラーして横の1台を自動運転、これで、人間があちこちに無人i-Roadを配達してオンデマンドシェアリングを可能にする」というもの。自分が乗ってi-Roadを誰かに届けると帰りの足に困るが、並走して置いてくるだけだったら暇な時間にやってくれる人がたくさんいそう。(このアイデアは3位だった)。

しかし、全組の発表を聞くのはやや苦痛であった。

なぜなら半分以上が「i-Roadを使ったカーシェアリングのプライシングモデル」だったからだ。会費制にするとか、i-Roadがたくさんある場所に向かうときは安くなって逆は高くなることでロードバランシングするとか。・・・それって、いわゆる「That’s a feature, not a product(機能であって製品ではない)」ではないでしょうか。3組目くらいから「カーシェアリングのプライシング」とわかった瞬間に幽体離脱した。

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思うに「ビジネスプランコンテスト」は、ここ10年くらいで存在意義が低くなってしまったのではないかと思う。というのも、ソフトは当然のことながら、ハードも3Dプリンタ等の普及でプロトタイプくらいだったら低コストで作れるようになってしまったからだ。もちろん中にはアイデアだけですごい、というビジネスも存在するかもしれないが(たとえば本物のダイアモンドを育てるとかw)、それは極めて稀である。通常の案に関してはもはや「作ってなんぼ」の世界だし、実際にみんなバリバリと自前で作ってしまっている。こういう世界で単なる「アイデア」レベルのプランを集めてワクワクするようなコンテストにするのはなかなか難しいのではないか。

本イベントの主旨が「シリコンバレーのコミュニティへの参画」であるなら、昨年やったというハッカソンの方がいいんじゃないかと思います。なぜってシリコンバレーの価値の核は「優秀なソフトウェアエンジニア」。そのコミュニティに入ることこそが大事なのであって、彼らに一目置かれるような何かをしなければならない。ハッカソンには、よいハッカーが集まるように工夫すれば、あとは参加者同士の出会いが価値を作り出してくれる、という他力本願なメリットもある。ハッカソンでハードも作るのもありなので、とにかくその場で作り上げるためにエンジニアがたくさん集まるというイベントがよろしいかと。

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今回日本から参加されていたトヨタの方とお話ししていて、「アップルが車を作っているという噂は本当だと思うか」と聞いてみたのだが、「ソフトだけ。ハードとしての車を作ることはないと見ている」というお返事でちょっと驚いた。今回の研究所も含めシリコンバレーにここまでコミットしている会社ですらそうなのか・・・と。

アップルの売りは「ハードとソフトの一気通貫」である。iOSが載っているスマートフォンはiPhoneだけ。只今公開中(そして大変不人気の)ソーキンによるスティーブ・ジョブスの映画でも、Macがend-to-end closed systemでユーザは筐体を開けることすらできない、というのが最初のエピソードでフックになっている。ジョブスがいなかった90年代に公式にOSをライセンスしていたこともあったが、それもジョブスの帰還とともに取りやめになった。当時は「水平分業最高、ホリゾンタルレイヤー勝者最強」という信念が強くあった時代でもあり、頑なにクローズドな製品に賭けるアップルは例外的な存在でもあった(というか、バカなんじゃないかと思われていた)。

もちろんもうジョブスはいないわけだが、なんといってもアップルは「金ならある!」という状態である。実に2000億ドル、24兆円の現金保有高で、まぁ数兆円くらい自動車開発に投入しても問題ありませんな。そしてアップルのこれまでのやり方をみれば、ハードごと丸ごと作っている可能性は大いにある・・・というか、すでにプロジェクト名とか担当者とかいろいろWikipediaにも載っている。イーロンマスクは「Teslaでクビになったダメ社員がいくのがAppleだ」と言っているが、要はTeslaからAppleに移っている人がたくさんいるってことですね。ベンツのシリコンバレーR&DのトップもAppleに転職したし。知人がパロアルトで髪の毛を切っていたら、横の男性が「最近Appleに転職してデトロイトから引っ越してきた」と語っていたそうな。

アップルは現在「円盤社屋」を鋭意建設中だが、さらに、それを凌駕する規模の土地を買いまくっていて、開発する場所もある。

超秘密主義のアップルゆえ真実は不明だが、24兆円もあったら車くらいちょっと作ってみよう、という気になっても全然不思議ではない。(逆にAppleは「インターネット」といった「オープンな仕組み」には弱い会社なので、そちら方面でAmazonなどと戦うより、むしろハード+ソフトでの完結度が高い車のような製品の方があっている、とも言える。)

トヨタの方も、本心はどう思われていたかわかりませんが。

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さて、話をOnRampに戻すと、トヨタはシリコンバレーに研究所を作り、5年間で10億ドルを投下すると発表している。そのトップには、DARPA(国防総省高等研究計画局)から著名AIエキスパートであるところのジル・プラットを引き抜いた。彼は今回のOnRampにも参加していたが、来年のOnRampは彼のインプットが大きく入ったイベントになると思われ、どんなものになるか楽しみです。

ちなみにこのジルプラット氏が司っていたDARPA Robotics Challengeは個人的に悶絶寸前に楽しく、しばらくこの話ばかりして周りに辟易されていたのだが、それはまたの機会に。

(最近がんばって面白半分Buzzfeed風にしている「数字入りタイトル」が思いつかなかった。「トヨタOnRampに見るX個のなんとか」というのをしばらく考えてみたのですが無理でした。悪しからず。)

 

トヨタOnRamp2015でi-Roadを試乗してきました」への1件のフィードバック

  1. もしかして燃料電池投資がSunk costになって引くに引けなくなってるんじゃないかって気になってます。もう燃料電池止めてEVにしてみたら、とそっと聞いてみてください。。:)

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