シェアリングエコノミーとマイクロアントレプレナー

Google self driving car
(内容と直接関係ないですがGoogle自走車)

8月に日帰りでサンディエゴに出張した。家とサンノゼ空港の往復、サンディエゴ空港と訪問先の往復はUberとLyftを利用。最近一人で空港に行くときはいつもそうしている。で、どんな人たちが運転手として働いているのかのレポートです。

  • ライド1:家→サンノゼ空港(Uber:16マイル、20分、25ドル)

まず最初のUber。朝6時半にアプリを立ち上げるとUberXで6分で車がくると表示されたのでリクエストボタンを押す。来る車が決まるとその車だけが画面に表示されるのだが、最初の2分くらい車の位置が全く動かない。しかも、その場所が近所の住宅地の真ん中である。

その後車は動き始めてほぼ時間通りに真新しい白いプリウスがやってきた。運転席には60代と思しきアジア人男性が乗っているが「今起きたばかり」という感じ。髪が寝癖だらけだししほのかに臭い。

「もしかしてご近所に住んでる?」

と聞いたら、案の定

「そうだよ」

という答えであった。

「最初全然車が動かなかったからそうだと思った。」

と言ったら、

「ははは、靴下はいてたからね。」

35年前から今のところに住んでいて、ずっとレストランを経営してたが1年ほど前に引退。やることもないので暇な時間にUberの運転手をしているそうだ。当地の不動産が狂乱高騰中の昨今、家を売るだけで悠々自適に暮らせるはずなので、まぁ趣味ですね。流しはせず家で待機、誰かが家の近くで呼んだら行くことにしていると。どんな人が乗るのか聞いたところ、朝空港に行く人と、近くの一軒家を5人くらいでシェアしているスタンフォードのビジネススクールの学生の通学、というのが割と多いとのこと。うーむ、ビジネススクールの学生金持ちだな。いや、もしかして車を所有するより何人かでまとまってUberで通ったほうが安くつくのか。

して、Uberの商売としての実入りは・・・・

「最初はよかったけどね、去年20%運賃が値下げされて、最近また15%下がって往復1時間かけてサンフランシスコ空港まで行っても手取りで20ドルも行かないよ。しかも、近所のスーパーまで片道5ドル、なんていう乗り手も増えてきてて、そんなのだと手元に残るのは3ドルしかない。運転手する意味がなくなってきてるね。」

とのことであった。

  • ライド2:サンディエゴ空港→訪問先(Uber:25マイル、31分、40ドル)

空港に到着、UberとLyftの両方をチェックしたら、Lyftは「空港の駐車場にLyft待機車がいるので、駐車場に行ってからリクエストしろ」と表示されたが、Uberは空港本体のドアのところまで来るので再度Uber利用。

やってきたのは赤いジェッタに乗った30前後の女性。サンディエゴではUberの車は「U」のロゴが書いてある紙がフロントガラスの内側においてあるので見つけやすい。3ヶ月ほど前から、子供が幼稚園にいる間3時間前後プラス週末にUberで働いているそうだ。

「好きな時間に働けるし、上司もいないし、気に入ってるわよ。今まで知らなかったようなところに運転していって意外な発見をすることもあるし」

一週間でガソリン代が30ドル、Uberからの収入が200ドルだそうだ。ちなみにこの「好きな時間」と「上司がいない」というのは、女性のUber運転手に聞くとみんな言う。みんな苦労してきたのね。

  • ライド3:訪問先→サンディエゴ空港(Lyft:24マイル、26分、37ドル)

気がついたら予約しているフライトの1時間 15分くらい前になっていた。私は「まだ大丈夫でしょ」と思っていたのが、訪問相手が「えっ、それはもう間に合わないんじゃ」と慌てたので、一緒に慌ててUberとLyftをチェック。Uber9分、Lyft6分となっていたのでLyftでリクエスト。GPSで自動表示される現在地の住所表示の横に、矢印があったのでそれをタップしたら訪問先の会社名が出てきたので「会社名があったほうがわかりやすいだろう」とそれをタップしリクエスト。

しかし来るはずの車がLyftの画面上で全然動かない。3分たっても5分たっても動かない。Uberだと、スクリーンで運転手の顔をタップすると運転手の携帯にテキストか通話で連絡ができるのだが、Lyftではタップできない。しばらく格闘したあと、右上のメニューから運転手に連絡できるオプションを発見、電話したら

「あぁ、5分くらい前にリクエストが入ったけど、住所がブランクになってたからどこにいっていいかわからなかったんだよね」

ということで、口頭で住所を告げたら5−6分でやってきた。

住所がブランクでわからないってどういうことかい。運転手曰く、前もこういうことがあったそうだ。Lyft、実は初めて使ったのだが、しょっぱなでこういうことがあるとくじける。住所ブランクって致命的バグじゃないですかね?

運転手氏はアラブ系の中年男性で、LyftとUber、両方登録しているそうだが、それ以外にもどこかの会社の制服っぽいシャツを着ていて、さらに助手席にはレストランデリバリーサービスの赤い箱がおいてあった。つまり彼は、いろいろな仕事をあれこれこなしている人なのである。(なお、Uberもレストランデリバリーサービスを計画中だが、こうして既に自前で兼業しているひともいるので、稼働率をあげるには有効であろう。)

ちなみに、San Diego空港には離陸15分前に到着。絶対無理かな、と思ったら、車を降りて10秒でセキュリティに到達、一瞬でセキュリティを通り抜けたら目の前がゲートで何なく乗れた。サンディエゴ空港ありがとう。

  • ライド4:サンノゼ空港→サンノゼのミツワスーパー(Uber:6マイル、16分、42ドル)

1時間ほどでサンノゼ空港に着陸。携帯アプリのLife360をチェックしたら、たまたまダンナが空港からそれほど遠くないミツワスーパーという日系スーパーにいることがわかったので、そこまで行くことにする。ちなみに、サンノゼ空港では普通の人が普通の車でやってくるUberXは呼べず、商業運転免許を持った人が黒い大きめの車でやってくるUber Blackしか呼べない(車も綺麗で大きいし運転手も割とプロフェッショナルだが高い。)

Uber Blackをリクエストしてものの1分もしないうちに運転手の方から電話がかかってきた。いわく「どこにいるの?」

「いや、アプリに入れたとおりの番号のドアの前で・・・」などと話していたら、後ろから肩を叩かれた。20代の人種不明アジア人混じり風の男性運転手が、なんと徒歩で登場w サンノゼ空港でのUberの乗車待ちは駐車場と決まっているとのこと。そこからは歩いてきた方が早いため、トコトコとやってきたそうだ。

車はまだ新車の匂いのするシボレーサバーバン。彼は3年前にUber Blackを始め、今では5台の車を所有し人を雇ってリムジン稼業をするに至ったとのこと。サンフランシスコ市内で生まれ育ち、まだサンフランシスコ州立大学に通う大学生で、次の学期でついに卒業できる予定。拠点はサンフランシスコだが、今回はサンノゼ空港まで客を乗せたので、どうせだったらちょっとでも稼いで帰ろうとUberの客待ちをオンにして駐車場で待機していたそうだ。(サンノゼ空港からサンフランシスコまでは90キロほどある)。

「短い距離でごめんね」と言ったら

「いやいや、全然問題ないよ!今日は朝からずっとお客さんが続いて実は何も食べてないんだ。ミツワスーパーのフードコートって前から一度行ってみたかったんだよね。ちょうどいいから食べて帰るよ」

という明るい返事であった。

なお、彼曰く

「Uber Xなんて全然金にならない。真面目に稼ぐならUber Blackに限る」

とのこと。さらに彼(と彼の雇っている人たち)は、Uber Blackで乗せたお客さんに「次回は自分に直接連絡してくれたら安くしまっせ」と営業し、直接取引きの個人客を増やすことで「直のリムジン屋」として利益率を上げているとのこと。そして「直のリムジン屋」として空いた時間は、Uber Blackをオンにして「流しリムジン」になる、という仕事の仕方だそうだ。

===

ちなみに、この彼のような「複数台の車を所有し、人を雇ってUberで走らせる」という人は結構いるようだ。以前乗ったUberの運転手は、「車のディーラーで働いていたんだけど、知り合いの知り合いが突然プリウスを4台買ったので『何に使うの?』と聞いたら「Uber用」と言われて興味を持ち、結局自分もUberの運転手をやってみることにした」と言っていた。ベイエリアでは自分の車でUber Xをやっても時給換算で10-12ドル程度と聞いたので、果たして商売になるのかという疑問があるのだが、どうも

1)車の燃費が利益に直結
2)サンフランシスコ市内の夜中は酔っ払いが多くて運転手としてのストレスは大きいが稼働率も乗車料金も高くなる

といった理由で、「プリウス&儲かる地域専門」で攻めればマージンが抜けるらしい。

===

なお、余談ながら今回サンディエゴからサンノゼまで乗った飛行機で隣に座った男性は「トラックの運転手」であった。普通の運送会社とは違い、「ドア to ドア」「1顧客の荷物専用」が売りだそうだ。東海岸から西海岸でも3日で届けられるとのこと。(ちなみに5千キロ、東京ーバンコク間くらいある)。昼間走ると辛いので夜ひたすらとばし最長13時間連続運転できるそうだ。

「どうしたら疲れないか、どういう時が自分の限界か、どうすれば回復するのか、それをきちんと把握するのが重要」

とのことであった。

通常は配送所を何度か経由して輸送されるため、実際の走行時間よりずっと時間がかかるわけだが、彼に頼めば速く確実に配送される。今回もベイエリアからポートランドに届ける荷物を運ぶために飛行機で移動中、とのこと。どういう人が顧客か聞いたところ、インテルなどの精密機器系の会社や、ハイエンドの家具メーカーという返事だった。

この「ドアtoドア配送」は彼が自分で始めたビジネスで、今は彼を含め3人の運転手がいるとのこと。普通のトラック運送に比べて相当なプレミアムがつくので儲かっているそうだ。

===

貧富の格差の拡大が進む中、Uberのような「シェアリングエコノミー」と、一人か数名のチームで働く「マイクロアントレプレナー」型の労働形態がこれから増加していくと考えられるが、それを1日で効率よく観察できた日帰り出張なのであった。

シェアリングエコノミーとマイクロアントレプレナー」への3件のフィードバック

  1. 日本の長野のいなか、安曇野とは世界の違いを感じました。
    ここではタクシー以外に公共の交通機関がないので、行政が住民向け(主は年寄り)にタクシーサービスを一回300円でしています。
    前日に電話で予約が必要で、時間も決まっていて、降車場所も決まってしまってますが家の前まで迎えに来てくれるので、年寄り向けのサービスとしては完璧です。雨の日に親が迎えに行けない中学生が帰宅に使ったりすることもあるそうです(通学距離が長いので歩いては1時間かかる場合があります)。
    この人たちがスマホを使ってUberを使うなんて想像もできません。
    行政がいつまでこのサービスを続けられるかは疑問ではありますが。

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  2. とっても面白い記事をありがとうございます。とってもinspringでございます。
    日本にいるとビジネスに対して保守的というか型にはまっている事に
    気づかされます。
    Google自走車がタクシー業界を変えてしまう日も遠くないんでしょうねー

    いいね

  3. ピンバック: 階級闘争としてのシェアリング(またはオンデマンド)エコノミー | On Off and Beyond

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