たかが広告費ではないということについて

7月27日の日経産業に掲載頂いたコラムです。以下本文。
***
「グーグルはすばらしいといっても、収益源は結局のところ単なる広告費」という声がある。これは大間違いだ。

そもそも、全ての事業は何かを売ることで成り立っている。そして、「売る」という行為には、商流、物流、情報流の三つの流れが必要だ。商流は金の流れ、物流はモノの流れ、情報流は商品に関する知識の流れ。

クレジットカード、プリペイドカード、エスクロー決済といった商流のツール、宅配、コンビニ止めといった物流の新たなあり方の価値は、誰もが認めるところ
だろう。一方、形がないために軽視されがちな情報流。しかしこれは、問屋や商社といった仲介業者が生き残っていくための最後のよりどころとして、過去二十
年さかんに語られてきたもの。「広告」は、その大切な「情報流」を担う重要な機能である。

とはいうものの、これまで広告の効果は曖昧なものだった。世界の広告費市場は約4280億ドルとされるが、そのうち2200億ドル、実に半分以上が無駄に使われているとされる。

インターネットは、こうした広告の無駄を省くのに非常に適した媒体だ。たとえばペイ・パー・クリック。見た人が、その広告をクリックして初めて広告費が発生する。グーグルの膨大な売り上げの基盤はこれ。とはいっても、クリックした人が必ずしも買うわけではない。この無駄を省くため、クリックした人がさらに商品を買ってはじめて広告費が発生する成功報酬型の検索サイト、スナップドットコムも誕生した。

また、世の中にはネット販売をしない事業者もいる。たとえば地元の商店、医者、会計士。こうした広告主のために、クリック以外の方法で成功を計る手法も誕生している。たとえば、サイト上に「チラシ」を置き、それを見た人がプリントした時点で広告費を取るペイ・パー・プリント、サイトから広告主に電話が入った時点で広告費を取るペイ・パー・コールがそうだ。ペイ・パー・コールでは、スカイプなどのボイス・オーバー・IPを使ってパソコンから直接電話する方式もあれば、見た人がサイトに自分の電話番号を入力すると、その番号と当該広告主の電話を直接つなげてくれる面白い仕組みもある。

インターネットのインタラクティブ性により、成功の計測が容易になった結果として、情報流に大きな革命がもたらされているのである。

このインターネット広告、果たして今後どれくらい伸びるのか?米国では、消費者がメディアに接する時間のうち23%がインターネットに費やされているのに、オンライン広告はまだ全広告費の6%にしかなっていない。また、従来、多くの企業は自社製品の5-10%しか広告してこなかったとされるが、成功報酬型の広告であれば、どんなにニッチな製品でも情報発信をすることができるため、広告のニーズそのものがさらに広がるとされる。インターネットによる情報流革命は、まだ著に着いたばかりなのだ。

たかが広告費ではないということについて」への14件のフィードバック

  1. ずっと前に、「資本主義は気持ち悪い」というエントリ
    http://www.chikawatanabe.com/blog/2004/03/post_8.html
    で「おぐらじお」という名前でコメントさせていただき、chikaさんから温かいアドバイスをいただいた小倉です。(メールアドレスが変わりました)
    その節は大変ありがとうございました。
    さて、今回の「情報流の革命」について思ったことですが、キーワードは「パーソナライズ」だと思います。
    つまり、個人を特定することです。
    それに関して、プライバシーの問題があるということについてコメントさせていただきます。
    情報流の革命の成否は、主に個人消費者からなる取引の参加者たちが、自分の個人情報をどの程度販売業者に提供するかにかかっているように思います。
    これはプライバシーの問題ですが、個人が自分のプライバシー情報の流通範囲を自分でコントロールできるような(ユーザー主権の)、満足できる情報流通のシステムは、そう簡単には作れないと僕は思っています。
    個人情報は結局のところ、誰も守ってくれないと思います。
    自分で守るしかないのです。
    そうなってくると、今後予想される広告革命に伴うパーソナライズされたサービスを目の前にしたとき、多くの消費者は自分の個人情報を提供することを躊躇するでしょう。
    これは個人情報の提供に対して何か別のもので報酬を与えることによって釣り合いを取ることができる性質の問題ではないと思います。
    個人情報は何にも代えがたいということです。
    僕はGoogleを敵視しているわけではありません。
    むしろ積極的に利用しています。
    しかし、この問題を考えるとき、現状のインターネットでは、個人情報が不当に安っぽく、過小評価されて取り扱われているような気がしてなりません。
    これはインターネットの領域を超える問題なのかもしれません。
    そうだとしたら、このプライバシーの問題は、インターネットに関わる人たちだけでは解決できない難しい問題なのかもしれません。

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  2. はじめまして。いつも神妙な姿勢で拝読さえて頂いております。とても勉強になります。
    ググる・・と、ネットをしていらっしゃる方には浸透しておりますが、個人的に、むしろ、日本人の趣向情報を無料提供している気がします。
    検索ヒット数が多いほど、それは関心を意味するでしょうし。日本に限ったことではありませんが。
    たとえば病気について調べるとき、調べた件数が多いものが、日本人はその病気に何かしらかかわっていることが多い・・ということになるのではないでしょうか・・。どんどんリアルタイムに最新の、日本の傾向とか趣向の情報が流れている気がしています。考えすぎかも知れませんが。
    主旨からズレてしまって申し訳ありません。
    日本でも暑くなってまいりました。アメリカでも、NYなどではすごい熱波だそうですね。どうぞ、ご自愛なさってください。

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  3. いつも興味深く拝読してます。
    この前、ビジネスコンテストの審査員にインターネットの広告価値を低く見誤っていると思われるコメントを頂いたことがあります。
    やはり、日本ではまだネット広告の価値に関する認識は常識とはなっていないようです。

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  4. 世界の国はわからないのですが、日本の場合、パイが広がるものは歓迎するが、パイが小さくなるのは歓迎しない雰囲気があるような気がします。(あくまでイメージ)
    お話を聞いていますと、より効率的な広告ができる代わりにパイ(全体の広告費)が小さくなるような気がするのです。
    なんだかんだ、いちゃもんをつけられて他国よりインターネットでの広告の扱いが日本では遅れそうな気がします。
    そして、ある程度根付いたときにキープレイヤーは今までと同じというパターンな気が…。
    #仕事で失敗続きでちょっと弱気・・・

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  5. インターネットデフレ!?

    今日のエントリは、インターネットによるデフレ動向について。 きっかけは、渡辺千賀さんの『On Off and Beyond』の『たかが広告費ではないということについて』というエントリから。 ※この猫と千賀さんは関係ありません。(猫 by Flickr) by 渡辺千賀『On Off and Beyond…

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  6. 折りしも、「テレビCMの崩壊」が日本で翻訳発売されていて、よく売れているらしく、Amazonでも結構上位にいるようです。
    今後、広告の総予算はそれほど変動しないと思いますが、キー媒体は対象(媒体を見る人)の嗜好や行動様式の変化に伴い、いわゆるマス4媒体からオンラインへ大きくシフトしてゆくと思われます。日本では、まだ大きな変化を感じることはできませんが、オーストラリアのFosterビールのコンペでオンライン媒体のみを提案した代理店が勝利したなど(通常、飲料のプロモーションではテレビCMのないプランは考えられない)確実に変化が起きています。
    ただ、日本においては、テレビCMなどの媒体の扱いが少なくなくなることで利益に大きく影響の出る電通などの広告代理店がこの潮流に乗ることができるかは疑問。でも、効果検証可能な広告媒体にシフトは避けられないでしょうから、この2-3年の動きが見ものです。

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  7. 小倉-san,
    どうもです。その後元気になりましたか~。
    私は、自分の個人情報、そんなに大事だと思ってないんですよね、実は。口座番号とかそういうセキュリティにかかるものはもちろん守りますけど、行動様式については別にいいか、という感じです。その結果自分の好みに合った情報をプッシュしてもらえるなら、と。ただ、スパムに類したものがどーっとくるのはいやだなぁ・・・と思いますが、アレは逆に個人の行動様式をきちんと研究してないからくるもの。私がバイアグラにも、香織様のスリーサイズにも興味がないことを研究してほしい、と思います。
    ruri-san
    Googleでは、毎年そういう検索動向から世界の動向を考えるコンファレンス、みたいなのを開催してます。。。
    SOO-san,
    そして気が付いたときには遅いという・・・;-p
    isayama-san,
    そうでもないと思いますよ。小倉sanがリンクしてくださっている、私の昔のエントリーをご覧ください。。。
    http://www.chikawatanabe.com/blog/2004/03/post_8.html
    snowbees-san, cocoon-san,
    電通は、結構危機感あるでしょうねー。昔Economistに「電通は日本の媒体のモノポリーを持っている独占事業者」みたいなことを書かれて、電通の人が反論の手紙を出してましたが。
    数年前に、電通の友達が、「最近の若い人はテレビ見ないからテレビ宣伝の効果が薄れてきた。なのでそれ以外の媒体開拓」というようなことを言ってましたので、いろいろトライはしてるんだと思います。

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  8. 広告から各告、そして共告へ

    もはやそれを「広告」と呼ぶのはおかしいのだろう。
    On Off and Beyond: たかが広告費ではないということについて
    このインターネット広告、果たして今後どれくらい伸びるのか?米国では、消費者がメディアに接する時間のうち23%がインターネットに費やされているのに、……

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  9. いつも、新しいエントリーを楽しみにしています。
    「単なる広告」という言葉にこんなことを思ってしまいました。
    業務に直接使用されるアプリケーション・サービスの場合、生産性・ライフスタイルで多くの人々に影響します。公共の業務であればさらに重要ですね。
    人々の生活に関わるものであれば、単純にサービスの売上金額だけではかれない価値であると思います。
    確かにグーグルは、マーケティングの分野で革命的な存在です。実業務の分野で同じように革命的なサービスは出て来たでしょうか?
    AJAXのオフイススートがそういうものになりうる?これはPCの環境がこっちから向うへの違いだけですね。ライフは変わらない。
    業務を変えるようなサービスをつくってみたいです。

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  10. いつもたのしく拝読してます。
    さて、広告費用が効率化されるといいますか、成功に応じて発生するという仕組みは、経営者の苦労を少し軽くしてくれる要素があると思います。
    経営者にとって広告費はビジネスが成功するかどうかの重要な要素であるにもかかわらず、投資にみあう成果はとーっても不透明です。
    その点、Amazonの様に売上げに変動して発生する広告費は変動費扱いとしてあらかじめ組み込むことができます。これってとーってもわかりやすいです。
    広告費のリスク軽減として、こうしたこともインターネット広告が延びる理由のひとつになるのでないでしょうか。
    ただし、いまのインターネット広告は「暇だから新聞のチラシでもめくってみるか」的手軽さも、「おっと、今日はお肉がやすい」的ローカル情報や新鮮さも薄い。この点はまだまだ新聞やTVに負けています。
    そういう生活密着型広告を集約したり、検索できたりする仕組みを備えていれば、もっとインターネットで購買情報を得る人が増えて、インターネットオンラインショッピングの効果ももっと大きくなるはずです。

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  11. <<チラシ広告の存在>>
    新聞を購読することで忘れてはならんのは、チラシ広告の存在や。これを目当てに新聞を購読するという人も相当数いとる。
    チラシ広告には安売り情報や割引情報、特典などがあるものが多い。ワシの良う知ってる主婦なんかは、それを上手く活用すれば、新聞代程度は簡単に浮かせられると言う。
    これは、WEBサイトで見ても望めんことや。その地域特有のものやからな。ある意味、これは、生活に密着した問題やから切実かも知れん。これなくしては、実際に生活にも困るという主婦もおるさかいにな

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  12. うちの近所のスーパー(そこそこ大きいチェーンだけど)は、チラシをWebで見れるようにしています。作ったチラシをスキャンして載せるだけだから、コストもかからないし、ニーズは明らかにあるので、他の店にも広がる可能性はあるでしょう。もうちょっと気が利くとこなら、特売情報をRSSで流し始めるかも知れません。
    そもそも、Webは、低コストなので、地域や嗜好などドメインに特化した情報発信に向いたメディアです。主婦が、新聞からチラシを得るという行動様式を、もっとコストの安いWebの閲覧に切り替えたら、簡単に置き換えられてしまうのでは?
    http://www.santoku.co.jp/digital_chirashi/
    うちの嫁がこれ利用してるかは知りませんけどw

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