
Stripeはペイメントのベンチャー。アメリカのEコマースサイトの支払いで多用されている。一時は最も価値あるプライベート企業とも言われていたが、今行っている資金調達は相当苦戦したようだ。
一つには増資金額が多いということがある。$4 billion(5200億円)を調達中なのだが、これはStripeがこれまで調達した金額の2倍に当たる。(調達金額は$6 billionという説もある)。
さらに大きな理由としては、今回調達する資金の使い道が成長資金ではないということがある。
では何に使うかというと、「税金」なのです。社員に出したRSUの期限が近づいており、それを延長すると給料を払ったとみなされて源泉徴収として税金を払わなければならない。
ちなみにRSUとは日本語では譲渡制限付株式ユニットと訳され、一定期間経過後に株式を受け取ることができる形態の報酬。
そして社員がそのRSUを株として受け取るとその時点で税金が発生する。会社が上場していれば株を売却して払えばいいわけだが、未上場だと税金だけが発生して株を売ることができない、という状態になる。
それを避けるためRSUの期限を延長する必要があり、そのためにStripeが収めなければならない源泉徴収分の税金が$3.5 billion、4500億円以上となる。これ以外に$600 million、800億円前後を、社員のRSUを会社が買い取るために使うとしている。ということで計$4.1 billion、5000億円以上が会社の成長に関係ない資金として必要になるわけである。
ちなみに、Stripeの企業価値は2021年3月の$95 billion(13兆円)から大きく下がり、今回の増資ラウンドでは$50 billion(6.5兆円)となるようだ。
2021年頃はビジョンファンドのような大型ファンドから多額の調達ができたので、上場する代わりにそうしたところから資金調達をしたベンチャーが多いが、そこには税金という思わぬ伏兵がいたのであった。
Stripeの業績であれば2018年前後には上場は十分に可能で、その頃上場していればRSUの延長などしなくてもよかったのに・・・というのは振り返ってみて初めてわかることではあります。
ちなみに「振り返ってみればわかること」は英語ではhindsight is 20/20。hindsightで「過去を振り返る」。20/20は視力の数字で「目が良い」ということ。後の祭り、と訳した方が良い場合もありますが。