なぜシェアリングエコノミーは経済を拡大するのか

フォーブスに、フェイスブック広告のパーソナライズがすごい、という対談話を掲載していただいたが、ここ2年本当にフェイスブックかインスタグラムの広告経由で色々なものを買っている。中でも一番画期的だったのはレンタル。そのひとつ、毎月定額のサブスクリプションで洋服を借りられるサービスは1年以上利用を続けている。

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話は飛ぶが、 去年のAndreessen Horowitzのa16zポッドキャストで、「シェアリングエコノミーは経済規模を拡大する」というのがあった。購入方法のバリエーションが増えれば必ずパイが拡大するのが経済の基本、と。

「えーそうなの?」と数分戻して聞き直してしまった。今まで一人一人が買っていたものを複数でシェアできるようになったら、トータルで必要な量が減りそうではないか。

で、その時は2度聞いたのち「うーむ、シェアリングエコノミーを研究している経済学者がそういうならそうなのかな」と思い、「いまいち納得できないが大事そうなこと」として脳内グレーゾーンに格納することにした。

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話を洋服に戻すと、今でも続いている洋服レンタルはRent The Runwayという会社のもので、月139ドル払うと手元に4点のアイテムを借りられる、というもの。*

高いようだが、これによって無駄な服が欲しくなる欲求が圧倒的に減り、結果的には洋服にかかるコストは変わらない感じがする。

Rent the Runwayは誰かが選んだ福袋的なものが届くのではなく、自分がサイト上で写真を見て選んだものが送られて来る。返却・再注文、は何度繰り返しても良い(昔のNetflixのDVDレンタルと同じ)。

最初は

「買うのはTシャツとジーンズだけにして、仕事で人に会うための洋服はレンタルにしよう」

と思ったのだが、これが意外にしっくりこない。結局わかったのは、私の場合「仕事に気合が入る服装」というのは非常に狭いレンジにあって、それ以外のものだと居心地が悪いのであった。

で、あれこれ試した結果、「思いがけない変な服」が一番借りて楽しいという結果になった。わたくし、自慢ではないが「洗練されたクラッシーな服」というのが似合わないのである。「上質のコットンのシャツにオーソドクッスなカシミア・ジャケット」みたいなアレ。自分でそう思っているだけかな、と思ったが人に聞いてもやはりダメなようだ。なぜか制服っぽく、店員さん、またはホテルの受付の人的な感じになってしまう。

一方で(もしかしたら)似合う(かもしれない)「変な服」は買っても頻繁に着るものではない。なので、もう長いことその手の服は買わずに過ごしてきた。しかしレンタルならどんとこいである。

例えば最近借りた変な服。

1)どうみても「ドテラ」だが、Elizabeth and Jamesというブランドの「ジャケット」。
dotera

2)今にも飛び立ちそうなパパゲーナ風フェイクファー。
papagena

洋服だけでなくアクセサリやカバンもある。これは毛が生えているバッグ。
hairy_bag

気持ちはすっかり幼少時の着せ替えごっこである。

また、「変ではないが高い服」というのも借りてみた。1890ドルのジャケット。私個人的には90%オフくらいでなければ絶対買わない。100歩譲って80%オフ。でもレンタル。
derek_lam

あら、楽しい。

そしてはたと膝を打った。

「ああ、これがあのエコノミストが言っていたことだったのか」

と。

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20世紀初頭に、それまで全て手作業だった洋服作りが大量生産できるようになったわけだが、当時ファッションの消費者だった貴族はきっと「そんな安物の服はいらない」と思い、庶民は「洋服なんてそんなたくさんいらない」と思ったのではなかろうか。しかし、製造方法が変わり価格帯が変わることで、「同じデザインの既製服を大勢が買う」というそれまでにない市場が登場した。結果として洋服の市場は拡大した。

余談だが、英語で「技術音痴な人」のことをludditeという。ludditeはもともと自動機織り機ができたときにその導入に反発した機織り職人たちを指したのであった。

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もとい、これまで所有以外に手がなかった洋服市場にレンタルが本格的に広がればその市場は広がるだろう。例えば、私が常に「変な服」を借り続けるように、これまでの大量生産時代とは違う価格帯・デザイン性の、ごくニッチなものが流通するようになるはず。これまでの大量生産型のファッションがなくなるとは思わないが、今まで食べていけなかったような限られた市場しかなかったデザイナーがもっとデザインを仕事にすることができるようになるのではなかろうか。

「洋服レンタル」に限っていえば今後どれくらい一般化するかは謎だが、一応私が利用しているRent The Runwayは、すでに200億円近く調達している。

車、家、その他諸々のシェアリングエコノミーがあるわけだが、きっとどれかは定着し市場規模を拡大するのでありましょう。ということで1年を経てポッドキャストから脳内グレーゾーンに格納されていた知識が私の中で確固たるものになった2017年であった。

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オリジナルの対談記事「誰かに見られている? SNS広告の「公開実験」をやってみた」はこちら。ビヘイビアを圧倒的に開示した結果、フェイスブックに趣味嗜好ががっちり握られている、という、プライバシー信奉者の方からはどつかれそうな内容ではある。

 

* もともと「月139ドルで手元に3点」というものだったが、最近それがなくなって「月159ドルで手元に4点」と「月89ドルで手元に3点、ただし月に一回しか借りられない」という二つのカテゴリに分かれたのだが、昔から使ってたユーザ特典ということで139ドルのまま4点になった。

なぜシェアリングエコノミーは経済を拡大するのか」への2件のフィードバック

  1. ピンバック: シェアリングでパイは大きくなる? - □■ 神戸三宮便り ■□

  2. ピンバック: 1年で480倍になったリップルコインをタンスの裏から見つけた話 | On Off and Beyond

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