AI秘書+カレンダー招待のないミーティングは存在しないミーティング

個人的にはAIとかIoTという名称があまり好きではない。どちらも大雑把すぎるし手段であって目的ではない。Wiredの創業者でフューチャリストのKevin Kellyも「We keep defining AI away. AI in popular usage is anything smart that we don’t have.(世で一般的に語られるAIとは、今できない賢いことだ(つまり、できるようになるとAIとは呼ばれなくなる)」と言っているが。

もとい。AI(というか機械学習)の活用方法として今メジャーな分野の一つが自然言語解析。で、さらに自然言語解析をベースとしたベンチャーの事業領域の一つがAIミーティング設定秘書、である。「ではミーティングを」と決まった後で、相手とメールのやり取りをして実際にミーティングの時間と場所を決める、というもの。

  • AIミーティング設定秘書

ベンチャーとしては、これまでに3400万ドル以上を調達しSoftbank Capitalがシードから投資し続けているニューヨークのx.ai、Y Combinator出身でサンフランシスコのClara Labs、インド工科大の卒業生が集結したシアトル(とハイデラバード)のSkedool、フランスのJulie Deskなどがある。x.ai、Clara Labs、Skedoolはすでに会社単位で活用しているユーザがいるとのこと。

メールに「Let’s have a meeting」とか「We should get together for coffee」といったスケジュール設定を必要としそうな一文を入れ、かつAI秘書にCCしてメールを送ると、その後AI秘書が主導権を持って相手とメールでやりとりしてくれる。

例えばx.aiのサイトにある例。まずx.aiの秘書であるAmyを使っているGregのところにMaryという人からメールがくる。

Hi Greg,

It was nice to meet you during Adweek. Do you have a little time for coffee to continue our conversation? I can swing by somewhere close to your office.

Thanks,

Mary

「この間展示会でお会いしましたが、一度コーヒーでも飲みながらあの続きを話しませんか?」と。

Sure, Mary.

Amy, can you find 30 minutes for coffee at my office?
Cheers,

Greg

「是非。Amy、僕のオフィスで30分コーヒーする予定を入れて」

という返事をGregがAmyにCCして出す。(余談ながら相手からの申し出とはいえオフィスまで呼びつけて30分とは。よっぽど偉い人なのか、Greg。)

Hi Mary,

Happy to get something on Greg’s calendar.

Does Tuesday, Mar 3 at 11:00 AM PST work? Alternatively, Greg is available Tuesday, Mar 3 at 4:00 PM PST or Tuesday, Mar 10 at 11:00 AM.

Greg’s office is at 77 Geary Street, Suite 500, San Francisco, CA.

Amy

それを受けてAI秘書のAmyが候補日程3つと住所をMaryにメールする。

Amy,

Mornings are not so good. So 11am slots are out. 4pm I can do.

Thanks,

Mary

Maryは「午前中は都合が悪いので4時がいいです」とAmyに返事。

Hi Mary,

Thanks for letting me know. I’ll send out an invite.

Amy

するとこんな風に「承知しました。後ほど招待を送ります」となって、下記の招待メールがいく。

 Mary, Greg | Coffee

  • WHEN Tue Mar 03, 2015 4:00pm – 4:30pm PST
  • WHERE 77 Geary Street, Suite 500, San Francisco, CA | Greg’s Office
  • WHO
    • Greg Morgan (Host)
    • Mary Adler (Guest)
    • Amy Ingram (Assistant to Greg)

ちなみに、こうしたAI秘書の名前は基本女性名で、x.aiは上記の通りAmy Ingram。Clara LabsはClara Turing、Julie DeskはJulie(ラストネームはなさそう)。それはジェンダー的にまずいかも、ということで、Skedoolは中性的なAlex Miller、x.aiはデフォルトのAmy以外に男性名のAndrewも選べるようになっている。(参考まで、Clara LabsとSkedoolのファウンダーは女性。)なおIngramはn-gramからとったとx.aiのサイトにあり、TuringはそのままTuringに間違いないでしょう。

使い勝手的には、まだいろいろと微妙なこともあるようだ。x.aiのAmyを使ってみたNew York Timesの記者の体験記では、Andrew Ingramを使っている人とミーティング設定しようとしたらなぜかAmyがAndrewに変身した、という謎のトランスジェンダーバグも報告されている。しかし、Skedoolのファウンダーが「スケジューリングで1週間に5−10時間も費やしている」とことに気付き起業を決意したとインタビューで答えているように確かにスケジュール調整は大変である。重役秘書ともなると、業務のほとんどがスケジュール調整といっても過言ではあるまい。(それを反映してAI秘書さんたちは結構お高い)。なので、少々難があっても工夫して使おうという人は結構いるのではないか。社内ミーティングが大量にある会社だったら社内だけでもこれを使うのは有効そう。

ちなみにClara Labsは「ミーティング設定重要度を伝えるコードワード」というのを設定できて、特定のキーワードで何段階かにミーティング設定の優先度を変えられる。例えば下記のように、メール内に「…」があったら、「ミーティングは先延ばしにして、設定しない」とか。

「Leeさん、それはいいですね。このミーティングの時間調整のためにClaraにCCしました」

という響きのいいメールだが、最後に「…」が入っているので、その後相手がClaraに何度メールしても「忙しい」と先送りされる。現実は厳しいのだ。(上記の説明ページは削除されてしまった。それを予期してスクリーンショットを取っておいたわけではないのだが。)

また、Skedoolをトライアルで使ってみているのだが、AI秘書のAlexにメールしてから返事が来るまでに数時間かかったりする。・・・・これって、向こう側はAIじゃなくて人じゃないのか、という疑惑を持ちつつ、もう一回ファウンダーのインタビューを読んだらこんな発言が。

We believe that a blend of AI and human interaction is required to maintain a flawless user experience with immense scalability. We are not willing to compromise user experience while we continue to improve upon the AI technology.

「AIが十分実用に耐えるまではユーザエクスペリエンスのため人間とAIを混ぜる」・・・やはり。とりあえずはインドにAI「風」Alexがワラワラいるという前提でAlexとの会話を楽しんでみることにする。

  • (念のため)カレンダー招待とは

さて、以上の説明で、一部の方は「なぜ本人に確認しないで予定が入れられるのか?」と思ったかもしれないので、念のため「カレンダー招待」をご説明します。(ご存知の方はとばしてください。)

「カレンダー招待」とはシリコンバレーでは極めてスタンダードなビジネス習慣である。その流れは、1)メールでやりとり、2)日程が決まったら自分のオンライン・カレンダーに予定を入れる、3)その際、自分のカレンダーに、ミーティング相手(のメール)を参加者として登録する、4)相手に参加の有無を尋ねるメールが行く、4)相手がYesと答えると、その人のオンライン・カレンダーにも自動的に予定が入る、というもの。ミーティング時間が変更になったりすると当然自動的に全員のスケジュールが変更になる。

社内ミーティングの場合は、そもそもスケジュールが共有されて誰にでもオープンになっているため、全て省いて勝手に予定を全員に入れられるようになっている会社が多い。

そして、この「カレンダー招待」がない場合、その予定を相手が覚えている(=メールを見て、自分のカレンダーにわざわざ書き込んでくれている)可能性は五分五分。「わざわざ日本から人が会いに来る」といった特殊事情があれば相手も気を使って予定を書き込んでくれる可能性は高まるが、「相手から見てどうでもいいミーティング」の場合は要注意。

時差はカレンダーシステムが自動的に吸収してくれるので、「ロンドンとバンガロールとサンフランシスコ」なんていうミーティングでも、ちゃんと間違いない時間に予定が入る。(ただしそれが人間的な時間である保証はない)。

私のようにうっかりが多く、「水曜日」と口で言いながら火曜日に予定を入れたりすることが頻出する失格人間には「相手もその時間でYesと言っている」という安心感は限りない。

そしてAI秘書は、利用者のオンラインカレンダーにリンクしており、勝手に隙間を見つけて予定を入れていくのである。

  • 日本のIT後進国化

私がここ数年じわじわと衝撃を感じているのが日本企業とシリコンバレー企業のIT化度合いの違いである。10年くらい前は「日本もいつか追いつくでしょ」と思っていたのだが、どうもその差は広がる一方なようだ。

今回の件でも、日本ではカレンダー招待、社内オンラインカレンダー共有どころか、オンラインカレンダーすらない企業も多々あるのではなかろうか。ユーザがいない状態でAI秘書技術が出てくるはずもなく、周回遅れといいますか、2周回遅れといいますか。

「会社を出たらメールがチェックできない」「会社を出たら仕事のデータにアクセスできない」というのもかなり最近聞いたことがある。また、「リモート会議ができない」というのもかなり一般的なようだ。「スピーカーフォンがない」「3点通話できる電話機・回線が会議室にすらない」「リモート会議のためのインターネット接続不可能」など。スピーカーフォンを作っている某日本メーカーさんの会議室にあったスピーカーフォンが1回線しか入らなかった時には驚愕した。

ITガジェットを世界に送り出した昭和は遠くなりにけり、である。

「コンプライアンスとかセキュリティとかいろいろ難しくて」

と皆さんおっしゃるのだが、それはすなわち「ITはビジネスのおまけ」だと思っていることの裏返しでしかない。そしてIT利用者として後進企業のトップが「今後の事業変革の鍵はテクノロジー」などと公言していたら、その方は胸に手を当てて心の底から反省されるべきなのではないかと思います。

 

  • 参考:(重厚長大企業も頑張ってます)

GE CEO Jeff Immelt says all new hires will learn to code

“If you are joining the company in your 20s, unlike when I joined, you’re going to learn to code. It doesn’t matter whether you are in sales, finance or operations. You may not end up being a programmer, but you will know how to code,” GE’s top boss Jeff Immelt wrote in a LinkedIn post Thursday.

GEトップのジェフ・イメルトの先週のLinkedInポスト。「20代でGEに入社する社員には全員コーディングを学んでもらう。営業だろうが財務だろうがオペレーションだろうが関係ない。プログラマにならなくともコードの書き方を知らなければならない」

Letter to Shareholders (2013 GE Annual Report)

“We believe that every industrial company will become a software company”

Jeff Immelt: GE is on track to become a ‘top 10 software company’(2015)

コメントする

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中