今日は、8年続いたHouseというテレビ番組の最終回。Gregory Houseというハスに構えて辛辣なことばかり言う医者が主人公のドラマです。
Houseに限らず、アメリカのテレビドラマはかなーり面白い。
そして、新しいドラマが始まるたびに感心するのは、極めて演技のうまい役者さんが次から次へと登場することだ。
しかも、そのほとんどが、それまで見たことも聞いたこともない無名な人。(時々、うっすら見たことある人やすごく見たことある人も出てくるが、通常はこの人誰?という感じの俳優さんがずらっとキャストに並ぶ。)そして、そのドラマが当たらないと、上手な無名の俳優さんたちは、また無名のまま消えていく。
いやはや、層が厚いのぉ。
単に俳優さんを輩出する母体となるアメリカの人口が多いというだけでなく、最近は外人俳優さんも多い。
たとえば、Houseを演じるHugh Laurieはイギリスの役者さんである。しかし、完璧なアメリカ英語で、彼をアメリカ人と信じている視聴者も多い。というか、そもそも、オーディションの時に、
「さすがにこの役はアメリカ人の役者じゃなきゃ無理だね」
とか制作側スタッフは思っていたらしいが、Hugh Laurieがイギリス人だと気づかずに惚れ込んだらしい。
また、6月にシーズン5が始まるTrue Bloodというドラマは、ルイジアナが舞台で、登場する人の多くがコテコテの南部訛りで話す。
南部訛りとは、「アイ」が「アー」になる、というすごい方言で、ロシア(とか)のspyと、マッサージしてもらえるspaが、どちらも「スパー」と同じ発音になってしまう。白ワインはホワートワーンである。
で、この南部訛りの主人公、Sookieを演じるのはカナダ生まれでニュージーランド人の女優さん。その恋人役のBillを演じるのはイギリス人。恋敵Ericを演じる俳優さんの出身地はスウェーデン。英語圏ですらない。(Ericは南部訛りではないですが、滑らかな英語です)。
いや、もう、「中国人の俳優さんが、東北弁でドラマ熱演」みたいなかんじ?
多くの俳優さんが、複数の訛りを自在に使い分けられるらしく、さらに彼らに訛りを教えるコーチもこれまたかなりいるらしい。
鍵となる俳優を海外からも惹き付け、訛りを教えるコーチまで抱えられるのは、アメリカのエンターテイメントがグローバル市場に向けて作られているからと思われ。大きな売り上げ→大きな資金力→人材の厚さ、と。
ちなみに、どれくらいコストをかけているかというと、1話当たり数億円、モノによっては10億円超らしい。1シーズン22〜24話あるから、高いものだと年間300億円近い制作費。もはや高予算映画レベル。(こちらに、2008年と少し前の数字がありました)。
前回日本に行ったとき、Terra Novaというアメリカのドラマのポスターが新橋駅にたくさん貼ってあったが、これは1話400万ドルとか。1シーズンでキャンセルされちゃいましたが。
「金をかければいいってもんじゃないぞ」
と思う人もいるだろうが、テレビドラマ制作者の方の中には
「それくらい予算があれば、俺(私)だって・・・」
と思う方もいるかもしれませんね。
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英語の母音を聞き分けてアメリカドラマを字幕なしで見よう↓
オーディションの時に「じゃあNYCアクセントでやってみて」とかよくありますね。ジャパニーズアクセントしかできない私はお呼びじゃないですが (でもジャパニーズアクセントには自信がある! と思っていたらこないだ「ちょっとこの役としては英語が滑らか過ぎる」と言われてしまいました。)
なお、これだけ予算がかけられるだけあって競争も熾烈です。企画、脚本段階でセレクションがあるのはもちろんですが、ある枠につき数本に絞られた後、パイロット版が作られます。1〜2話分、本放送と同じようにキャスティングから撮影から何からやって、それをexecutiveや限られた視聴者に観せて反応を見て最終的にシリーズになるものが決まります。パイロット版だけでほとんど人目に触れず消えてゆく企画も数知れず… そこでキャスティングされても本放送にならなければ役者としてのキャリアには加算されませんし。TVシリーズのレギュラー役になるってのは大変です。
もうひとつ、層の厚さとして、多くの州立大学にTheatre departmentがあり、多くの地方都市で劇場が演劇文化を振興している(演技のクラスが継続して開かれている)ってのもあるんじゃないかと思っているんですが、それも育てた人材を吸収できる産業規模があるからかもしれませんね。
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「これぞハリウッド」な『スターウォーズ』にしろ、
主要な役は殆ど(全部?)外国人ですね。
アナキン カナダ人
オビワン スコットランド人
パドメ(アミダラ姫) イスラエル人
ヨーダ(の声) イングランド人
クワイガンジン アイルランド人
ドゥークー伯爵 イングランド人
パルパティーン スコットランド人
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chikaです
shiroさん、出演CMの動画いつ送ってもらえるのか・・・まだ待ってますw(何年待ち?)
アメリカの高校生や大学生で、将来の夢が舞台芸術(or 舞台衣装)ってな人に時々会います。大学でも、ちゃんとそれを専攻してる。ダンナに聞いたら、「そんなの昔からありがちな夢でしょ」とのことで、結構びっくり。「教える学校がある」って大きいですよね。
>スターウォーズ
おおなるほど〜あれもそうでしたか!しかし、イギリスは芸達者な役者さんが多いですよね。シェークスピアの流れである、と聞いたことがあるのですが本当なのでしょうか。
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うわごめんなさい>chikaさん。メールします。
ひとつだけ、最近のやつがyoutubeに上がってます。
http://www.youtube.com/watch?v=FHisFt4j3hA
日本だと演劇科がある大学自体が少なくて、キャリアの入り口としては劇団や事務所の養成所などが多いでしょうか。色々な道があること自体は良いのですが、大学という拠点があると教育のノウハウが体系だてて蓄積されるという大きなメリットがあります。日本だと芸事は「教わるもんじゃない、修行して師匠から盗め」っていう空気があって、ノウハウを汎用的なテクニックとしてまとめようとする方向にいかないのかもしれません。
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なるほど、たしかに私が勤めてる中西部の大学にも、演劇のプログラムはあって、学生はそれを専攻して卒業することができます。また1度、その公演見に行ったことあるけど、結構レベル高かったです。あと小中高生の習い事として、子どもが放課後地域のChildren’s Theaterに通い、お芝居のトレーニングを受け、それがそのうち「公演」として街の人にお披露目するというのもあります。チケットは安いけど、一応有料で、それなりに経験のある大人が演出していて、舞台装置もちゃんとしてるから、日本の学芸会よりずっとプロっぽい。千賀さんのこの項を読むまで、そういう風に考えてはいなかったけど、確かにこういうローカルな活動の積み重ねが、ハリウッドの底力になっているんでしょうねー。
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