通訳と英語の勉強

翻訳(通訳)は難しい」というエントリーを書いたが、読み返すと、「外国語は難しい」と書いてあるように読めることに気づいたので、追記。「外国語が難しい」のではなく、「一度に二つの言語で考えることが難しい」のであります。

なので、「翻訳(通訳)」が難しいわけ。なぜなら、二つの言葉を行ったり来たりしないとならないから。

ということで、こういう感じでしょうか。

  • 簡単: 母国で話す
  • 習得するまでは困難:外国語で話す
  • 外国語を習得した後でも超困難:一つの言葉で考えなら別の言葉で話す。二つの言葉を行ったり来たりする

つまり、通訳とか同時通訳と言うのは、単に外国語ができる以上に難しい訳です。

ここからわかることは何かと言うと、「日本語で考えならそれを訳して話す、というのは著しく難易度が高いのでやめた方が良い」ということ。

以前誰かが「日本語の文章を逐一単語ベースで英語にする訓練をすることで英語を習得しよう」みたいなことを書いていたのを見てたまげた。そんな、最もイバラの道で外国語を習得する人がいるなんて・・・・。いや、別にやってもいいですけど、いきなりエベレスト登山を目指すみたいな。

じゃーどうしたらいいの、というと、英語は英語のままフレーズで丸暗記するのであった。

日本語のものを英訳する、というのはプロに任せて、英語の勉強では、最初から英語のものを丸々覚えてくのであります。そして暗記したものをそのまま言う。

難点は、「聞いたことあることしか言えない」ということですが。

英語でプレゼンしないとならない、など、「これまでに聞いた英語」をはるかに凌駕する話をしなければならない時は、先に日本語で書いたものを英語がネイティブな人に訳してもらって、それを丸暗記すべし。

余談ながら、「英語が聞き取れるようになるってこういう感じ!」というビデオがこちら。

ピアノの和音が英語の文章のように聞こえる、という不思議な「演奏」なのだが、最初は単なる不協和音の嵐にしか聞こえない。それが字幕を見ながら何度か聞くと突然

「おお、たしかに英語で話してるよ」

という瞬間が訪れ、それ以降は字幕なしでも英語の文章に聞こえる。脳内の回路がピピッとつながる感じです。空耳みたいなもんですが、でも英語が聞き取れるようになるってこういうイメージです。

通訳と英語の勉強」への8件のフィードバック

  1. 通訳の勉強をすることが英語の勉強につながった口です。
    通訳養成校に通っていたので、そこでのトレーニング方法をブログにのせてます。
    http://www.ladolcevita.jp/blog/global/2008/07/toeic965-1.php
    基本的に通訳は、
    1. 日本語を使いこなす
    2. 英語を使いこなす
    その上に、
    3. 日⇆英通訳という技術をかぶせる
    というものなので、2.なくして3.はありません(いきなり3.を目指してもエベレスト登山というより頂上にたどり着けないかと・・・)。
    2.と3.は別物のオバケです。
    ブログでは2.しか書いてませんが、3.にはまた別の技術があります(同時か逐次か、によって随分異なる)。 なお、国際会議の同時通訳は3人交代で1人の担当時間は20分以内が通常(というくらいすさまじい集中力が必要)。 母は通訳でしたが、精神的な体力勝負なので50になる前に引退してたと思います。
    企業通訳など一般人が行うことが多い逐次通訳は、いかに二言語を行き来しながら意訳ができるかですね。
    私もこの前、日本の銀行との面談を同僚のイギリス人にウィスパリング通訳しましたが、ビジネス日本語は無駄な(?)尾ひれが多いので、1分くらいしゃべっている内容が10秒くらいの英語になってしまい、「本当にそれだけか?」と疑われました。

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  2. >二つの言葉を行ったり来たりしないとならないから
    脳の中でもそういう現象が起きているようです。Google Scholar で “bilingual” “switch” “fMRI” などというキーワードで検索すると、バイリンガルの脳には二つの言語を切り替えるスイッチがある(スイッチの切り替えにエネルギーがいる)、スピーキングというタスクはライティングなどよりスイッチの切り替えが大変(同時通訳は特に大変)などという研究がいろいろ出てきて面白いです。
    http://scholar.google.com/scholar?hl=en&scoring=r&q=bilinguality+switch+fmri&as_ylo=2004&btnG=Search

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  3. このピアノ面白いですね。カラオケの大好きな父は英会話が上手で、音痴で音楽にあんまり興味のない母は、父より難しい本とか読みこなすけど、話すのは下手。だから外国語で話すのと音楽が出来ることって、何か関係あるだろうって思っていたのですが、このピアノのヴィデオ・クリップを見て、そうかやっぱり話し言葉も音楽と,本質的には同じような形で分析できちゃうんだなと思いました。
    あと、Shimaさんのメッセージも、面白いと思いました。バイリンガルの脳に関する研究って、色々あるんですね。私自身、中学のころバイリンガルになって、大人になってからトライリンガルになったのですが、モノリンガルからバイリンガルになるほどは、バイリンガルからトライリンガルになるのは大変でなかった気がしてました。漠然と外国語習得の要領がつかめているからだろう、って思ってたけど、脳の仕組みという形でも説明できるんだな、って思いました。

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  4. ベイエリアで通訳を生業とするものです。
    渡辺さんのように理解のある方がいらっしゃるだけでも、涙がでるほどありがたいものです。
    通訳に対する誤解は多々あり、日々、それとの格闘ですから・・・.

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  5. 英語での会議の最中で、日本人に「今なんていったの?」と聞かれて日本語で考えた瞬間に、その間の英語が聞き取れなくなくなることがあります。本エントリにまさに納得です。
    ちなみに、このビデオをネイティブのアメリカ人に画面なしになんて言っているのか聞いてもらいましたが、全然わかりませんでした。その後字幕をみせると、なるほどといった感じ。要するに、このピアノはイントネーションのエミュレーションのみで、発音は再現できていないようです。でもchikaさんのご指摘の通り、言語の理解のプロセスが良く分かりますね。人間は聞いた音と脳内のテーブルをつき合わせて意味を理解するわけですが、テーブルが参照できない間は理解できず、字幕というヒントによりテーブルが参照できると、発音そのものが聞こえるかのように理解できるのですね。言語習得とは、いかに効率よくテーブル参照できるようになるかということなのでしょうが、これがなかなか難しいです。

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  6. はじめまして。
    驚愕!のピアノですね。字幕つきで見るとまさにそのように聞こえて吹き出してしまいました。音楽専門なので、こういうトピックはとても興味深いです。以前ポーランド人の友人がポーランド語で自分の名前を言ったとき、あまりの音の複雑さに驚いてしまいました。と同時にショパンの和声ががあれだけちょこまかと複雑なのは、これだけ複雑な音が絡み合ってる言語が母国語だからなんだとまさに目から鱗の落ちるような思いをしたものです。自分で作曲してるんだから当たり前なのでしょうが、あれが全部聞こえてるなんて!!!!と絶望的な気分になったものです。

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