人間が人によって全然性格が違うように、猫もいろいろ。そしてそれは、多分遺伝要因と環境要因の両方による(笑)。
日本の実家で飼っていた猫は「巨大・凶暴・王様の風格」という感じだった。当時我が家の主婦だった祖母が近くのスーパーに買い物に行くのを見つけると、付かず離れずの距離で後を追う。途中、彼(猫)のテリトリーの境界まで来るとそこで立ち止まり、その後しばらくの間
「むぅわーを、むぅわーを、むぅわーを、むぅわーを」
と鳴き続ける。これがものすごい大きい声で、近所中に響き渡るというもの。
祖母は「恥ずかしいからやめて欲しい」とよくこぼしていた。
この「むぅわーを」を人間語に推測翻訳すると
「刺身買ってこい、刺身買ってこい、刺身買ってこい」
でしょうか。
というのも、祖母はほぼ毎日「まぐろのなかおち」を買ってきて、猫にあげてたからなんですね。(なかおちは刺身を作る時の余り物みたいな部分で、パックで100円くらいで売っていた)。
で、このなかおちを皿に入れて出すと、姿勢よく座ったまま(でも猫背だけど)、まず手の爪にばしっとなかおちを引っ掛けて、それを口に持って行ってむしゃむしゃと食べる。
最初に刺身をあげた時は、よっぽどおいしかったらしく、一口食べた後、後ろから見守る我々の方を振り返り、我々をしっかと見据えて一言
「ムニャッ」
と言い、さっと皿の方に向き直し、残りを平らげていた。
「ムニャッ」を推測翻訳すると
「旨い!褒めてつかわす。」
王様かよ。
焼き魚も好きで、魚を焼いていると「むぅわーを」といいながら台所にやってくるのだが、それがサンマだと、ふん、とにおいを嗅いだだけで一口も食べずに去ってしまう。(アジなどは大好きだった)。どうしてサンマが嫌いなのかは不明。
夕飯が刺身の時は、台所のテーブルの周りから離れない。人間様は、猫が椅子に乗って来ようとするのを阻止しつつ食事。ある時、私がテーブルの奥の方にある物を取ろうと、ホンの1秒ほど椅子から腰を浮かせて、座り直そうとしたら、既に椅子にはお猫様がデーンと座っており、手で刺身を略奪しようとしていた。(体重12キロ+という猫だったので、「デーン」です)。
さて、で、今飼っている二匹は、刺身など見向きもしない。飼い始めた頃、さぞや喜ぶだろうと、刺身を小さく切ってあげたのだが、しばらく疑わしそうに「ふん、ふん、ふん」と匂いを嗅いだ後、すたすたと歩み去ってしまった。刺身が嫌いな猫がいるなんて・・・・ショック。
白黒のモニモニ猫(7.5キロ・写真参照)のムスビはキャットフード以外食べない。刺身も肉も鰹節も全て興味なし。でもキャットフードは何でもかなりいける。
茶キジトラのチャイは、キャットフードの好き嫌いは激しく、嫌な物を食べると吐いてしまうくらいだが、鰹節は大好き。チキンもちょっとなら食べる。
チャイはムスビを母のように慕っている。(どちらもメス。同じ野良猫シェルターで保護されていたのをもらってきた)。チャイはいつでもムスビの近くにいたいが、ムスビは面倒くさがっていて、すり寄ってくるチャイを「シャー」っと威嚇したり、猫パンチで殴ったり、噛み付いたりする。しかし、時々気が向くと、近寄ってきたチャイの顔を舐めてあげることもある。そういうときチャイは
「至福です〜」
という顔をして、目を閉じてうっとり。この喜びが忘れられず、8割以上の確率で「シャー」「パンチ」「ガブッ」とくるのに、「もしかしたら舐めてくれるかも」と、来る日も来る日もすり寄っている模様。
ちょっと不思議なのは、ムスビは、しばらく愛しそうにぺろぺろと舐めてあげた後、突然凶暴化してガブガブと噛み始めることがあること。愛憎は紙一重、ってことでしょうか?
あと、チャイはどれほどムスビを慕っていても、チャイの方からムスビを舐めることはない。どうもそれはムスビに対して失礼な行為のようである。「舐めてあげる」というのは相手の従属を伴う場合に限られた愛情の発露である、ってことでしょうか。そういえば、犬の群れでもボス犬が手下犬を舐めることはあっても逆はない、と聞いたことがありますが。うーん、深いのぉ。
さて、チャイは外に出て鳥やモグラやトカゲを追いかけることを心から愛しており、よく一人で外に出ている。チャイがどれほど家に帰って来なくてもムスビは全く動ぜず。
(地ネズミを家の中に連れてかえってきてご満悦のチャイ。春先はチャイが外から持ち込む様々な生き物で家の中はスリル満点。)
一方、ムスビは日がな一日ダラダラ家の中で寝ていてあまり外には興味なし。しかし、時々、ムスビが外に出たまま、うっかり閉め出してしまうことがある。最近も、ムスビだけ二階から外に出たまま、私は階下のオフィスで仕事をしていたら、ホンの10分ほどでムスビが大声で文句を付け出した。
「にゃおーん、にゃおーん」
二重防音ガラスで、しかも家の反対側の外で鳴いているのに聞こえる大声。
「ちょっと!家に入れなさいよ、あんた!」
って感じ。(ムスビは普段の行動がオバサン臭いので、ムスビの鳴き声はオバサン語に脳内変換される。)
即座に家の中のチャイが、喉も裂けよとばかりに
「むわを、むわを、むわを」
と鳴き出した。
ちなみに、この「むわを」系の猫の鳴き声は、猫を飼ったことのない人は驚くかもという発音。とにかくものすごい大きな声で、「にゃーん」という感じがかけらもない発声だ。猫は「ぎゃっ」とも言うが(しっぽを踏んだ時とか)、それとも違う「長時間にわたって警告を発するための声」って感じでしょうか。distress callですね。
いずれにせよ、チャイは普段は他の猫と比べても蚊の鳴くように小さい声で「ニャーン」と言うだけなので、こんな大声が出るなんてびっくりするレベル。こちらは
「ママがピンチ!助けて!助けて!助けて!」
と脳内変換。ほんの10分閉め出しただけなのにこの騒ぎか。
ちなみにチャイが大声で鳴くのは、ムスビが外に閉め出された時だけである。ムスビの方が数年年上なんだけど、先にムスビが死んだらチャイはどれほど悲しむでしょうか、と心配なので、あと何年かしたら子猫をもらってきてチャイの愛情の矛先を分散しようかと考えている。
さて、ここからが猫が犬ではないゆえんなのだが、これだけ大騒ぎした後で、私が
「しょーがねーなー」
と2階に行ってドアを開けると、ムスビは
「ふん、遅いのよあんたっ」
という風情を醸し出しつつ、全く無言のまま、何事もなかったかのようにすましてスタスタと家に入ってくる。
チャイは
「は?誰か何かいいましたか?」
というとぼけた雰囲気でソファの上で猫座布団化している(「猫が手足を体の下に格納して四角く座る様」を猫座布団と言う・・・かどうかは知らないが)。
・・・ちょっと、あんたたちがあれだけ大騒ぎしたから、こうしてわざわざやって来てドアを開けてるのに、その何もなかったような顔はなによ、と少しだけ思う私。これが犬だったら、
「わーん、ありがとう、ふがふがふが、わふわふわふ」
とまつわりついて、顔をべろべろ舐めたりするんじゃないかと思うんですが。
ま、猫を飼う醍醐味は、この辺のちょっぴり屈折した猫の感情表現にあるのでした。
(注:写真の著作権はクリエイティブコモンズのAttributionですが、Nさんのように「トトロは実在する」と子供をだますためにこの写真を利用することは固く禁じます。)
chikaさま
いつも猫の話しで笑わせて頂いてありがとうございます。
私の実家にも3匹の猫がおります。
毎朝、規則的に「餌をくれ~」と腹ペコの猫たちは、ベッドにいる母の足を噛みます。
今朝の母の話しによると、最近私が大量に買ったペットフードは
マズイらしく食べてないらしいのですが、皿に沢山はいった状態なので、
猫さまは毎朝足を噛む儀式を中断して、我慢しながら少しずつ食べているそうです。
猫にも律儀さはあるのでしょうかね?(笑)
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猫~ 良いですね~。私は猫派の人で猫派大大大好きです。あの我侭なところが良いんですよね。犬は可愛いんですけど、面倒で。。。主人の家族は全員犬派でその「我侭なところが良い」というのが全く理解して貰えない。。。我侭で、ひねくれてて、人に媚びなくて、それでいて間抜けてて、ところが良いんじゃないですかネエ。
以前飼ってた猫はよく私の家族を舐めてくれました。うれしいんだけど、痛い。。。朝とか、寝てるところを顔を舐められたりすると。。。ギャ!って感じで起きてました。
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チャイちゃんは茶トラではなくキジトラではないですかね?
「至福ですー」の写真がかわいいです◎
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chikaです
>我慢しながら少しずつ
我が家もムスビが食べないまずいカリカリエサを探してます・・・ところが、ドライフードは何でも好きなんだよなぁ・・・。こまったことです。
>よく私の家族を舐めて
これがほんとの「舐められる」? ;)
ムスビは、自分を良くわきまえていて、朝どすんとベッドの上に飛び乗り、人間様の体の上を行ったり来たりします。ムスビの全体重が小さな足先の面積に集中して痛い。ハイヒールで踏まれる、みたいな。それでも起きないでいると、耳の隣に座って、非常に大きな音で「ぐるぐるぐるぐる」と言い続けます。
>キジトラではないですか
茶色で縞だったら全部茶トラかと思っておりましたwww。本文訂正しておきました。
英語だとトラ系は全部ひっくるめてtabbyではないかと思います。
http://tinyurl.com/96ff5m
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