人間はアイドルを求めてしまうものらしい

ユーザー参加型メディアは、誰にも平等に機会を与える民主的な場になる、と思われていたが、結果的には「普通のヒト」の中から「セレブ」が誕生してしまう、、、という話。

  • 例1:ThreadlessでリアルTシャツデザイン

今日のNew York Times MagazineのMass Appealで紹介されていたThreadless.comというTシャツ販売サイト。

このサイトでは、ユーザーからデザインを公募し、その中からユーザー投票で選ばれたものを製品にして売っている。一日125件ある応募から、数十万人のユーザー投票により毎週5-6枚が製品化。1デザイン1500枚の限定販売。デザインが選ばれると2000ドルもらえる。

で、こうした公平なシステムだと、常に新しいデザイナーが続々と登場し続けるかというと、アニハカランや、固定ファンが付く「スター」が誕生してしまう、と。これまでに17回デザインが選ばれたニュージーランド人のGlenn Jonesサンは、頻繁にファンメールが来るほどの人気とのこと。

  • 例2:IMVUでバーチャルデザイン

IMVUは、3Dアバターのチャットサイト。ごくごく簡単なツールで、ちょっとした洋服やらアクセサリーやらを誰でも作ることができ、それを売ることもできる。人から買ったアイテムにさらに変更を加えて売ることも可能。(ただし、オリジナルアイテムを作った人が、「変更可能」という設定をしている場合のみ。)変更を加えた後のものが売れると、オリジナルアイテムを作った人にも、販売価格の一部が還元される。

IMVUのメインユーザーはティーンエージャーだが、アイテムをゼロから作る必要がないので、「買ってきたTシャツに柄を入れて売る」程度であれば誰でもできる。なので、盛んにバーチャルアイテムの売買が行われている。で、特によいデザインをするユーザーは人気者となり、「セレブ」ステータスになると。

  • 例3:There.comでも

There.comはSecond Lifeと同じ時期に誕生、苦難の歴史をたどってきたバーチャルワールド。ワールド内のクラブ等、人が集まるところの会話の殆どが

「誰がどんなアイテムを作っているか」

ということに終始し、運営する会社の側が驚いた、と。で、「素敵なデザイン」をする人が、やはりワールド内セレブとなる、と。

(上記IMVUとThereの話はVirtual Goods Summit 2007と、運営会社のサイトからの情報です。)

*セレブ誕生は必然?

Albert-Laszlo Barabasiという人が書いたLinkedという本では、ソーシャルネットワークを数学的に解析したりしながら解説している。で、そこでは、

「系が拡大している時にはスーパーノードが誕生する」

という現象が紹介されていた(・・・と思う。もう何年も前に読んだんで、以下少々うろ覚えですが。)

成熟して新たな参加者(ノード)がそれほど入ってこない世界では、大勢を知っている(=リンクしている)人、少数しか知らない人、は程よくバランスが取れた分布となるのだが、拡大している最中で、どんどん新しい人が増えている状態では、ごく少数としんみりつながっている「普通のヒト」がほとんどな中で、突出してく大勢につながった「スーパーハブ」がごく一部だけ誕生する、と。

ということで、ユーザー参加型であっても、系が成長している過程では、「みんなに好かれるスーパーノード」であるところのセレブが誕生してしまうのは当たり前の現象なのかも。

*人気投票だけで「民主主義的社会」は実現しない

冒頭のThreadlessでは、「Tシャツデザイン・セレブ」になると、

「投票の結果に関係なく、製品化するデザインを選べる権利」

を獲得できるそうだ。というのも、「人気投票」では、同じようなデザインばかりになってしまう傾向があるから、と。

せっかく毎週1000近いデザインから数点だけを選ぶ、という方式をとっているのに、なぜか「世の中で人気のあるデザイン」「先週選ばれたデザイン」といった「同じようなもの」が結局いつも選ばれてしまう、と。これぞすなわち時代の精神=Zeitgeist、ってことかもしれませんが、やっぱりそれだけだとつまらない。人気投票というプロセスは民主的だが、結果としてでてくるものがいつも同じではイマイチ。

そこで、セレブが一存で選ぶデザインも製品化する、というシステムを取り入れたそうだ。その理由を会社側はこんな風に説明している。

“We envisioned Threadless at first to be this level playing field,
where everyone gets an equal shot,” Kalmikoff says. “But you start to
realize that leaders and popularity and all those things are quite
possibly an organic, natural part of any community.” What Threadless
has done is try to keep exploiting the benefits of those natural
tendencies while avoiding their potential pitfalls. Even a design
democracy needs a few checks and balances.

「誰でも平等にデザインを採用してもらえる場、としてThreadlessを始めた。しかし、リーダーや人気者の誕生は、コミュニティに元々備わった自然発生的なもの、ということがわかってきた」ということで、逆にセレブに権限を持たせて、ユニークなデザインを生み出す力を残す、と。

たとえデザインの世界であっても、民主主義は、その健全さをチェックして正しいバランスにゆり戻す必要がある、という話し。単に人気投票だけではダメなんですなぁ。

企業経営、政治など、いろいろなものに適用できそうな話しですね。

人間はアイドルを求めてしまうものらしい」への5件のフィードバック

  1. 面白いですね。チャルディーニが「影響力の武器」で書いている「社会性」というものがいかに人に影響を与えるかということなんでしょうね。特にランキング情報があるとランキング上位の物を買ってしまうもんなぁ。

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  2. 働きアリと怠けアリが2割づつ生まれる、というような法則と同じような感じですね。
    人が集まればやることはいつも同じということですね。

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  3. 群衆的な「多数の目」はバグを見つけることはできてもビジョナリー足り得ないんですよ。だから多数決では創造性や本当の革新は望めません。当該分野でのビジョナリー、あるいは「どうすべきか解る人」が自分の意志で活動するしかないわけです。プログラミングやテクノロジーの世界ではその成果が多分に出ていますね。

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  4. こんにちは。アイドルを求めてしまうという人間心理は、テレビ全盛の時代から、ネット興隆時代になっても変わらないんですね。ということは、大スターになるためには女性・子供にもファンを広げていく努力が必要になるでしょうね。山口百恵さんを大スターにするために、ホリプロがそうやってファン層を拡大していったそうなので。

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