シリコンバレーの給与水準再び

ちょっと前に、シリコンバレーの給与水準生活水準を書いたが、日本の、特にエンジニアの方の中には
「にわかに信じがたい」
と思われた方もいたご様子。

が、本当の本当に、シリコンバレーのソフトウェア従業者の平均給与は141,972ドル、1600万円超なのであります。Joint Venture Silicon Valley NetworkのThe Index of Silicon Valley 2006をご覧あれ。民間団体によるものだが、データ元は州の労働省(Employment Development Department)です。

何でこんなに日本と差が出てしまったのかといえば
1.日本の過去15年は失われてしまった
2.シリコンバレーにハイスキルな人が集中しつつある
というのが大きな要因なんですね。

1.日本の過去15年は失われてしまった

えー、95年から2005年にかけての実質賃金を日本とシリコンバレーで比べてみました。

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下側の太線が日本、最後にプラスマークが入ってる線がシリコンバレーの平均。95年が起点。実質賃金なので、物価の上下動は既に織り込み済み。(シリコンバレーのほうが物価は上がっているが、それを見込んでも、給与の上昇が高い。)

出典は
・厚生労働省:実質賃金 指数及び増減率-現金給与総額(30人以上)(調査産業計)
・Joint Venture Silicon Valley Network:The Index of Silicon Valley 2006

いや、もちろん日本全国を比べるのはフェアじゃないから東京だけにした方がよいとか、日本のは残業代が入ってないぞ、とかそういう問題はある。が、一方で、日本側は30人以上の会社だけなのに対し、シリコンバレー側は、個人商店のオヤジから、ウェートレスから幼稚園の先生からジムのトレーナーのお兄さんまで全部コミ。

と、いろいろありますが、まぁトレンドとしてはこんなもんでは。

日本が世界一物価が高くて、豊かだった時代から15年たっちゃったので、その間に格差も開こうというものであります。

東芝から80年代半ばに米国HPに転職、現スタンフォード大学の西教授によれば、

「80年代半ばにIT業界で日本からアメリカに転職すると給料が倍になった」

とのことなので、そこからちょっと追いつきかけたが再度引き離された、という感じでしょうか。

(注:このチャート、実はちょっとズルでありまして、シリコンバレー側はグラフの形になったデータしか見つからなかったので、大体の感じで日本の指標をビ
ジュアルに重ねました。くれぐれも学校の宿題とかにそのまま使わないように。元データでは、シリコンバレー側が95年が5万ドルちょいで2005年が
約7万ドル、日本は95年を100として2005年が98.5です。それに本当は1990年からのを比較したかったんですが、使いやすいデータが見つからな
かったので、過去10年分で失礼。)

2.シリコンバレーにハイスキルな人が集中しつつある

シリコンバレー側は、もひとつ重要なトレンドがある。それは、「平均給与はあがっているが、雇用数は減っている」ということ。

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見づらいので拡大して見てください。前述のJoint Venture Silicon Valleyのレポートからのものだが、2002年から2005年にかけて、業種別に、「従業者数」と「平均給与」の増減をグラフ化したもの。暗い緑が授業者数の伸び、明るい緑が平均給与の伸び。

全職種で平均給与は上がっているが、ひとつを除いて全て雇用は減っている。上から2つ目はコンピュータ・通信のハードウェア製造業だが、平均給与は19%伸びているのに雇用は25%減少、上から4つ目のソフトウェアも、平均給与が19%伸びているのに、雇用は11%減ってるわけです。

(雇用が伸びているのは、「Creative and Innovative Services」で、R&Dやコントラクトマニュファクチャリングなど、新技術開発のアウトソースをするような業種だそうな)

San Jose Mercuryの昨日の朝刊にも同様の記事が。

Valley’s new job market: (specific) help wanted

Yahoo’s Sunnyvale campus is feeling so 1999 these days. The company
hired more than 3,000 workers last year — about the same number it had
in all just three years ago.(中略)”We have about 500 openings,” said Heidi Burgett, a Yahoo
spokeswoman. “We’re definitely still hiring. Especially algorithmic
search. If you know anyone looking, tell them we’re hiring.”

Yahooだけ見ても、去年1年で3000人(!)をSunnyvale本社で雇い、今でも500人求人中と。ほかの企業でも同様に雇用はヒートアップ中。

ところが、その一方で、着々とレイオフも進行中。海外にロースキルな仕事は移して、シリコンバレーにはハイレベルな仕事だけ残す、という「構造転換」がどんどん進められているから。

ひとつの会社で同時に大量レイオフと大量雇用が行われることすらある。

Adobe demonstrates why the local job picture can seem confusing. Even
as it cut jobs following the Macromedia merger, Adobe has 630 positions
open, including 240 in San Jose, according to Donna Morris, Adobe’s
vice president of global talent.

Adobeでは、レイオフしながらサンノゼだけで240人分のポジションを募集中と。

しかも、高学歴なら良いってモンでもありません。

Jeri Ann Smith got laid off in August 2003 after 21 years at
Hewlett-Packard. Even with her experience, her MBA from Harvard and an
engineering degree from the University of California-Los Angeles, Smith
struggled to find a job in tech. So Smith got a license to be an
investment adviser and joined a firm her parents started.

ハーバードMBAとUCLAのエンジニアリングの学位を持ちながら、職が見つからずフィナンシャルアドバイザーの資格を取った人の話もでてくる。漠然とした能力じゃなく、求められている条件にぴったりのスキルが求められるわけです。

In our industry, being an active learner is really key.

ということで、一生学び続けるつもりがない人は、業界構造が変わるたびに振り落とされていくわけ。

そこで残った人の平均年収だからシリコンバレーの収入は高いと、そういうことなのでありました。No pain, no gainですか、やはり。。。

シリコンバレーの給与水準再び」への21件のフィードバック

  1. そうは言っても、日本の低賃金3Kゼネコンが、痛みを伴わないかというとそうでもないですよ。ぬるま湯に入っていていつの間にか茹で上がってしまったゆでガエルのような生き方を望むならいざ知らず、技術者として少しでもマシな生き方を求め始めると、どんなにもがいても希望が見えない。少なくとも学歴と実力と資格と実績があれば希望が見える分、なんぼかマシだと思います。

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  2. いつも楽しく読ませていただいてます。
    そうそう日本の(会社に勤める)エンジニアには希望が無い。普通のIT業界(半導体)で出世するのは営業系のみ。
    日本の会社は管理職にならないと給料があがらないので、営業系は給料があがり、技術系は管理職になれないので給料があがらない、という悪循環です。
    もっとアメリカや中国のように転職が自由になれば良いのですが、日本の場合は会社自体が転職に不利なシステムになってます。自由に転職できるようになれば、需要と供給の関係でエンジニアの給料も、お気楽営業管理職より上がるようになると思っています。
    そういう私は、日本で生活していくことにしたので、技術系から営業に転進しました。やっぱり出世は早いです。(笑)

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  3. ハーバードMBAとUCLAのエンジニアリングの学位を持ちながら、職が見つからないとは。
    学び続けて生き残る人っていうのはどういう方なんでしょうかね。やはり超専門職ってことでしょうか。

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  4. こんにちは。
    1番目のグラフのシリコンバレーのデータはソース元PDF22ページ目のper capita incomeのグラフからですか?
    そうすると、日本の平均は就労者のみの給与平均で、シリコンバレーのほうは収入の無い子供や学生も加味した人口の収入平均なので、給与平均にするともっと高くなるでしょうね。
    それにしてもこのPDFのデータは面白いですね。
    2000年を境に、全てがガラッと変わってしまったんですね。

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  5. はじめまして
    ケンタロウです。
    日本では資本の蓄積が15年間されてこなかったということなんでしょうかね?15年が失われたとか失われた10年とか言いますが、その失われた時間と富はどこに行ったの?アメリカに行った?中国が吸い取った?。。。。
    そんなこともないと思うんですけどね。
    アメリカは富の源泉が「頭脳」「知的資本の集積」であると定義しているんでしょうね。なので、国内に限らず世界中の叡智を集めようとしている。だから給与水準が上がっていくのかな~。

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  6. シリコンバレーのすごさには、圧倒されそう。ただ、個人的には、今後の情報技術単独の革新は、そんなに社会にインパクトを与えるようには思えない。ナノ技術、ロボティクス、医療技術などと絡み合いながら、革新を起こしそう。日本は、こうゆう技術が集まって新しい革新を起こす場をシステム化するべきだろう。

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  7. >「その失われた時間と富はどこに行ったの?アメリカに行った?」
    一つの荷物を二人で運ぼうとしています。右の人は右側へ引っ張り、左側の人は左側へ引っ張ります。双方共に渾身の力を込めて引っ張りますが、荷物は微動だにしません。そのエネルギーはどこへ消えたのでしょう?
    SIの開発現場なんてそんなもんですよ。「私達はバグを作るの専門」「私一人がバグを直すの専門」『でもギャラはおんなじ』。漫才のネタにもならない。バグを作る人にまで金を払うから開発現場が疲弊するんです。
    リゾートの名の下に開発された無数のゴルフ場やハウステンボス。使われることのない橋やビジネスとして成り立っていない零細農家への補助金。他にも全く何の価値もない開発にも巨費が投じられてきましたよね。シグマ計画とかGISとか。。。ISDNやハイビジョンも怪しいものです。
    >「アメリカは富の源泉が「頭脳」「知的資本の集積」であると定義しているんでしょうね」
    ことIT分野に関しては全くその通りでしょう。(「定義」じゃなくて「事実」ですが。)「ソフトウエア開発では人によって生産性は10倍以上違う」というのが定説ですから。難易度の高い開発では,この差はさらに開きます。
    またシリコンバレーの賃金や雇用形態はアメリカ国内でも異例ではないでしょうか?他の地域は他の産業があり、産業が異なればビジネスのやり方も変わります。それにアメリカは高賃金の専門家がいる一方で、低賃金で働く不法移民が社会を支えている一面も持ち合わせていると思います。

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  8. 優秀な人が多いのは全くの事実でしょうね。
    ただ、単純に賃金を比較するのは、、、
    為替レートなんて今後いくらでも変わるので。
    ま、日本のエンジニアもいつまでも1つの会社にしがみつかずに、
    広い目で周りを見たほうがいいんでしょう。

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  9. 先日まで就職活動していたんですけれど本当に日本企業のエンジニア職って魅力ないんですよね。
    ゼネコン構造になってて、偉いのはITコンサル、エンジニアは下っ端みたいな。
    数学できない、プログラムもまともに書いた事のない文系出身者がSEとかになって、まともな仕事ができる訳がないと思います。
    Googleの人は、エンジニアは神様だって言ってました。

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  10. [開発][転職]日本のIT業界の失われた30年

    http://www.chikawatanabe.com/blog/2006/04/post_6.html メモ. 何でこんなに日本と差が出てしまったのかといえば 1.日本の過去15年は失われてしまった 2.シリコンバレーにハイスキルな人が集中しつつある というのが大きな要因なんですね。 1と2は関係していると思うなあ. シリコンバレーではハイスキルな人には「相当の対価」を支払う.すると優れた人材がシリコンバレーに集中して生産性を上げる.逆に日本では横並び評価をする.そうするとハイスキルな…

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  11. [模索]社会人こそ勉強しようぜ

    http://www.chikawatanabe.com/blog/2006/04/post_6.html 全職種で平均給与は上がっているが、ひとつを除いて全て雇用は減っている。上から2つ目はコンピュータ・通信のハードウェア製造業だが、平均給与は19%伸びているのに雇用は25%減少、上から4つ目のソフトウェアも、平均給与が19%伸びているのに、雇用は11%減ってるわけです。 個人として考えれば怖い話ですが、業界全体として考えれば素晴らしい話。 ということで、一生学び続けるつもりがない人は、…

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  12. chikaです。
    失われた富はルイヴィトンのバッグとブルガリの時計になったんだと思います。
    80年代バブル→オヤジ儲かる→資本は再投資に向かうことなくオネエチャン(プロ・アマ)へのプレゼントとなる→借金返せなくなる→銀行硬直→ぐちゃぐちゃ・・・ということで:-)
    シリコンバレーは、ITだけじゃないです。ちゃんとナノテクもバイオもありますよ。
    為替レートはある程度は物価に織り込まれてるので、実質賃金ベースでの比較は意味があると思います。
    エンジニアは神様、は翌日のエントリーのタイトルで使わせていただきました~

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  13. 「僕は失われたものとも縁がないのか~。」
    たぶん、あなたがプレゼントする分の金はあなたの上司の懐に入り、あなたの代わりに上司が自分の浮気相手にでもプレゼントしてくれたんじゃないでしょうか。

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  14. シリコンバレーのソフトウェア業界の給料は?

    給料の平均が141,972ドル!! この数字を見たときはびっくりした。 なんたって、オレの給料はこれより全然低いんだもん(笑)。 もちょっとだけ言うと、アメリカで働きはじめた2000年のときはこの平均給料の半分以下ですよ(苦笑い)。
    何かウラがあるのかと原典となった The Index of Silicon Valley 2006 も読んでみたけど、たしかにそ…

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  15. @mibun = reverse @mibun;

    かつて、日本の身分制度は士農工商だった。そう歴史の時間で習った。江戸時代で制度化されたと。もちろんこれは幕府体制の崩壊と同時に改められ、形式上は皆平等ということになって久しい。 しかし尊敬を得たり人気があったり、ポジティブな意味で注目を得たりする点からすると、職業格差は歴然と存在するわけで、現在、これは逆転している。商工農士。 日々、日本企業の商売関連のニュースは絶え間なく見かけるし、好まれて読まれてる。反面、「士」をパブリックな機関の働き手とするなら、本来普遍的に尊敬を得られようはずの官庁や公務…

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  16. 給料は対象となる市場規模と正の相関を持つと思う

    アメリカのゲーム開発会社の給料、環境は?シリコンバレーの給与水準再びとにかく、北米の方が給料がたくさん出るという話。生活にもお金がかかるとかいろいろあるみたいですけど。何でたくさんもらえるのか、何でそれで会社がやっていけるのかというトコにもスポットを当てないといけない気がします。私は、英語圏という市場の規模が、日本語圏のそれより大きいから、同じレベルの商品が、黙っていてもたくさん売れる、ということだと思います。商売が回り易いから、そこへの投資もリスクが低く見積もれて、資金調達が容易になり更に商売がし…

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  17. Googleが日本のソフト業界にもたらすもの

     ITproの記事。
    “長時間労働,能力や負荷に見合わない報酬や社会的評価など,ソフト技術者の労働環境については暗い話題ばかりが行き交っている。だが,Googleのような企業をお手本として,ソフト技術者の「居心……

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