子供は誰のものか

今朝のSan Jose Mercuryの記事で何十年も多くの子供に性的いたずらをしていた男性が捕まったと。

「いたずら」という表現は軽くて嫌なのだが、元記事が「molest」という軽いのから重いのまで全部を含む表現なので、こうしときます。でも、単に「触った」とかそういうレベルじゃないようだ。

どうも、これまで数百人、もしかしたら数千人に「いたずら」をしている、という悪魔のような輩である。名前のリスト、DVD、子供の服など、いろいろな証拠が押収され、証拠物件の中には、なんと高さ2メートル近いサーバーまである。これで、ビデオを編集したりしてたらしい。。。

が、しかし、その徹底振りの恐ろしさもさることながら、目を引いたのが、「被害者の家族からの通報を受けてから、数時間で警察が現場に踏み込んで証拠を回収した」というところ。「数時間」というのがポイント。アメリカという国は、何事もトロトロといい加減にしか進まず、頭がクラクラすることばかりなのだが、こと子供の安全となると、突然異常な有能ぶりを発揮するのである。

とある日本人の知り合いの方も、家から5歳の子供がいなくなり、青くなって警察に電話したら、その電話が終わらないうちに最初のパトカー(か白バイ)が登
場、物の数分の間に何台ものパトカー・白バイが家の前に集結、物々しい雰囲気に包まれたそうだ。その辺中の警官が全ての用事を振り捨ててやってきたのであ
ろう。「子供を守る」ということのプライオリティーがいかに高いか、ということがわかる。

以前も触れたとおり、子供に対する性犯罪を防ぐことを最大の目的とした、「性犯罪の前科者の顔写真、住所、犯罪内容を一般公開するウェブサイト」もある。また、Amber Alertという、誘拐犯を早期に発見するためのシステムもある。政府のAmber Alertのサイトいわく

The AMBER
Alert System began in 1996 when Dallas-Fort Worth broadcasters teamed
with local police to develop an early warning system to help find
abducted children. AMBER stands for America’s Missing: Broadcast
Emergency Response and was created as a legacy to 9-year-old Amber
Hagerman, who was kidnaped while riding her bicycle in Arlington,
Texas, and then brutally murdered. Other states and communities soon
set up their own AMBER plans as the idea was adopted across the nation.

ということで、「誘拐されて惨殺された9歳のAmber Hagerman事件の後できた」ということ。子供が誘拐されたら、とにかく一刻も早く犯人にたどり着くことが解決の鍵、ということで、すばやく誘拐犯の情報を公開し、一般からの犯人情報を仰ぐというもの。背景には、身代金目当ての誘拐、なんていうゆったりしたものより、そのまま殺される、売り払われるといったことが多い殺伐とした誘拐事情がある。また、両親が離婚、親権を失った側の親が子供を誘拐して去る、ということもある。しかし、たとえ誘拐犯が親であっても、親権を失っている親は、精神に破綻をきたしていたり、誘拐した子供と心中しようとしているケースもあり、一刻の猶予もならない。

Amber Alertが発動されて、一番目立つのが高速道路の電光掲示板に、犯人の乗った車の特徴が出ること。いつも、事故や工事の情報が出ているところに、突然
「白のカローラ、98年型、ナンバーXX」
といった表示が出る。犯人が到達している可能性のある地域全域の電光掲示板が全てこれになる。数年前、初めてカリフォルニアでAmber Alertが出たときは、「なんだ、なんだ」とこの掲示板を見るために、スローダウンする人たちが続出し、「Amber Alert渋滞」が発生した。

前述のサイトには、Amber Alertで実際に救われた子供の数は全米で200人、2002年以降だけで160人、とある。カリフォルニアでも、最初の数回のAmber Alertは確かほとんど全て犯人が捕まった、と記憶している。アメリカでは、高速道路に乗って車で逃げるしか逃げ道はないので有効なのだ。さらには、最近、携帯電話のテキストメッセージでAmber Alertを配信する、というのも始まっている。

これ以外でも、アメリカの多くの州で、
「生まれて数日以内の子供は捨てても親は罪に問われない」
という法律もある。一体全体なんのことか、と思われるかもしれないが、要は、生まれた子供を、育てられないからと殺すくらいだったら、消防署や病院など、きちんとした場所においていってくれ、ということ。そうした場所に親が現れ、「この子供を置いていく」と告げたら、親の素性を聞かずに黙って子供を受け取る、という決まりになっている。

とにかく、「親の善意、注意に頼るのではなく、システムとして子供を救う」ということに非常な熱意がささげられている。

数年前、サンノゼで「赤ん坊に暴力を振るって怪我をさせた」ということで、監視なしで子供にあってはいけない、という判決を受けた親が、監視なしで子供に会い、その間にまだ赤ん坊の子供を振り回して、結果としてその子供が死んでしまった、という事件があった。このとき、裁判官は、その親を責めるよりも「監視なしで会ってはならないはずの親がなぜ子供と二人きりだったのか。どこで子供を守るためのシステムが壊れていたのか。その原因を徹底解明せよ」と力説していた。

子供に対する犯罪が著しく多い、という悲惨な現実が、こうした異様なまでにシステマティックな対応を作り出しているということはある。

が、しかし、日本にしろアメリカにしろ、社会はどうしたってゆがんでいるものなのだから、弱者である子供に対する犯罪はなくなることはない。子供に対する犯罪が起こるたびに加害者を個人的に責めるより、社会システムとしていかに犯罪を防ぐかを考えるのが現実的な解なんだろう。そういう意味で、アメリカという国は、日本に比べると「子供は社会のものだ」という感覚が強いなぁ、という気がする。

***
ちなみに、冒頭の数千人molestしたオジサンであるが、その緻密な記録振りはすごい。この手の犯罪を犯す人はなぜか、被害者の記録を克明にとっていることが多いのだが、そのマメさにはちょっと感心する。不謹慎かもしれないが。内容が犯罪とはいえ、数十年間マルチメディア日記を付け、しかもそれを引越しのたびに全て移動しているとは。いい加減な私には絶対できない。その緻密さと行動力を違う面に向けらたらすごいことができそうなのに・・・。

子供は誰のものか」への11件のフィードバック

  1. 社会システムで子供を守るのことは、確かに現実解ですが、事件が起きないという根本的な解はないかと、やはり思ってしまいます。
    「テロか」という言葉に納得です。見方を変えれば子供に対する、社会に対する「テロ」ですね。

    いいね

  2. 在米時、子供がPreschoolかKinderに入る際に、子供の身体的特徴(ホクロとかアザとか)を記入した紙を提出させられました。誘拐殺人などの結果、容姿で判断できなくなった時の識別のため、とのことでした。そういう事態を想定しなければならない社会に住んでいるんだ、という現実を突きつけられたようで空恐ろしくなりましたね。牛乳パックに印刷されているMissing Childrenの写真も同様。
    でも最近は日本もそれに近い状況になりつつあります。うちの子供が通う小学校は、入学時に防犯ブザーが支給されます。

    いいね

  3. 日本でも学校に不審者が侵入して子供を傷付けたりたり、
    下校中に子供が誘拐されそうになる事件が多発しているのに、
    何時まで経っても学校に警官を置いたり、
    子供の送迎が定着する様子も無いですね。
    寧ろ不審者の侵入を前提とした避難訓練や備品(刺股)の整備、
    誘拐に備えた避難場所の指定や通信設備等の普及に重点が置かれ、
    子供に対しては自分の身は自分で守れと言うのが日本の考え方のようです。
    個人的にはかなり無理があるような気もしますが・・。
    要するに日本では何時起こるか判らない事件の為に、
    人手や費用を割くのは無駄だと言う考え方があるように思います。
    この世に神様は居ないとすれば日本の子供は犯罪者のものですね。

    いいね

  4. >冒頭の数千人molestしたオジサンであるが、その緻密な記録振りはすごい。
    たしかに、すごいですね。道徳的には重大問題ですが、
    緻密さと執着心はすごいです。
    オジサン(オトコ)ならではの、オタク趣味が
    間違った(犯罪)の方向に反映された結果なのでしょうか。
    オバサンがこんな風にするのは、私にはなかなか想像できません!
    >その緻密さと行動力を違う面に向けらたらすごいことができそうなのに・・・。
    同感です!
    でも、詐欺師が頭のよさを、社会貢献になかなか
    使えないように・・・パチンコに朝一で並びに行くひとが、
    同じような熱心さを仕事に向けられないように・・・
    難しそう・・・なのが世の中の常なのが悲しいですね。。。

    いいね

  5. >アメリカという国は、何事もトロトロといい加減にしか進まず、頭がクラクラすることばかりなのだが、こと子供の安全となると、突然異常な有能ぶりを発揮するのである。
    まさに仰るとおりです。翻って日本の場合ですが、先日所要にて一時帰国した際に、都内某所のお祭り会場にて人波にのまれて3歳の息子が一瞬行方不明になりました。
    こっちは大慌てですぐそばにいた警官に助けを求めたのですが、「迷子ですか?それでは交番まで来て、書類を作成してください」と言われて、愕然としました。「子供を守ること」に関してはアメリカに学ぶことがたくさんありそうです。

    いいね

  6. ほんと、そのとおりですねえ>k.nakano さん。
    未だに登下校を子供たちだけでやらせているというのは、本当に象徴的です。子供大好き変態野郎にとってはまさに天国ですね。毎日、下校時間になるとワクワクして仕方ないんじゃないですかね。
    確率で言えば、登下校中に誘拐される確率など無視していいほど低いのだから、無視しても大丈夫…なんて思うのは自由ですけれど、私はわざわざ我が子の命を賭けてみたくはないですね。そりゃ、全ての可能性を排除することなんてできませんけれど。
    アメリカみたいな送迎バスとか、システム側でそういうことをやるとえらくコストがかかるから、という理由で消極的なのだとしたら、ああそうですか、それじゃあ私は勝手に送迎しますよ、ってなもんなのですが、実は、そういうことをすると自分の子供がイジメの対象になってしまうという諸刃の剣という文化だったりするのがイタすぎるのですよね。
    って、外から見てると思ったりするんですが、日本の人はこういうことを言ってもあまりなんとも思わないのでしょうかね。被害者になってみるまでは無関心で、被害者になって動き始めても、みんなが無関心でどうにもならないことに気づく。

    いいね

  7. かなり前ですが、民放の番組で、痴漢か何かを切っ掛けに(?)、
    子供を学校まで送迎していると言う親が紹介されてましたが、
    その親も「和を乱す」と言う理由で学校から送迎を止めるように言われ、
    仕方なく学校の傍まで送り、子供が学校に入るのを遠くから見届けるようにした、
    と言う国内の様子が報道されてました。
    こう言う報道を見ると、ほんとに何を考えてるんだと腹が立ちましたが、
    恐らく日本ではイジメなどと同様、被害者に対する偏見も根強いのだと思います。
    詰り狙われる方にも原因があると・・。
    従って結果的に性犯罪に伴うストーカー行為や計画性等が軽視されてしまい、
    被害者に対する偏見と捕まった容疑者の異常性だけがクローズアップされ、
    社会の問題と言うより個人の問題として認識され片付けられてしまう。
    詰り、マスコミの事件や犯罪に対する報道の在り方など、
    社会その物に問題が有り過ぎて、正しい認識が共有されないまま、
    要領の得ない状態が容認されていると言う気がします。
    あと、アメリカは子供の無邪気さと言うのを大切にしていると思いますが、
    日本は如何に世の中が理不尽であるかを教えることの方が、
    子供に取って大切だと思ってる親も多い気がするので、
    送迎などは過保護だと真剣に考えてる人も多いかも知れませんね。

    いいね

  8. shiro-san,
    ダンナに「ハワイでもAmber alertが出たそうだ」と告げたら、「道路に電光表示板がないのに、どうやってalertを出すんだ」と不思議そうな顔をしてました。ラジオだと言っておきました。このあたりでも、ラジオ等でも流れるらしいのですが、気がついたことがありません。
    miki-san,
    「事件が起きないという根本的な解」は、宮沢賢治とInnisfreeにでも行かない限り無理ではないでしょうか。豆を植え、ミツバチを飼い・・・・
    Go-san,
    最近では、地元のフェスティバルみたいなところで、警察が出店を出して、子供の遺伝子登録(誘拐されて遺骨で発見されたりしたときに照合するため)をしてました。ふー・・です。
    k.nakano-san,
    まだそれでも、日本はアメリカと比べれば安全だからでしょう。この先は日本でも学校に警察官が常駐するような時代も来るかもしれませんが、それも悲しいですよね。
    Freesia-san,
    オバサンは確かに緻密に記録しなさそう。手帳に○とか△とか印をつけるくらいでしょうか。
    「この手の犯罪を犯す人はなぜか、被害者の記録を克明にとっていることが多い」
    と本文で書いたのですが、連続殺人犯の例に倣えば、多分記録を見ることそのものが性的興奮を呼び覚ますらしいです。その辺の性衝動のあり方が男性と女性で違う、というのが根本的にあるかも。
    Hiro-san,
    おまわりさんものんびりしてますねぇ。自転車泥棒とかには異様な情熱を燃やすのに。。。このあたり、緻密なところとボロいところが、日本とアメリカでは見事に逆転してるなぁ、と感じます。
    Shintaro-san,
    Google Maps、とどまるところを知らぬ快進撃ですね。
    nh-san,
    とはいっても、まだまだ日本はアメリカに比べれば安全というのも大きいのでは・・・。。。
    k.nakano-san,
    和を乱す・・それはびっくり。なんだかなぁ、ですね。「性犯罪に伴うストーカー行為や計画性等が軽視」というのと関連して、以前日本の痴漢、というエントリーを書きました。われながらよく観察したものだ、エヘンという感じなので、良かったら読んでみて下さい。
    日本の痴漢1
    http://www.chikawatanabe.com/blog/2002/12/post_2.html
    日本の痴漢2
    http://www.chikawatanabe.com/blog/2003/01/post.html 

    いいね

コメントする

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中