金縛りの津波化

「かなしばり」に相当する英語はない、という話。金縛りについて語りたい場合は、どういう現象かを長々と説明しないとなりません。「眠りの中で体は麻痺しているのに心が起きている状態で・・・」みたいな。ということで、「津波」が英語でもTsunamiというのと同様、「金縛り」はKanashibariなのでした。と言っても、Tsunamiと違ってよほどの専門家でなければ知らない言葉ですが。年末にThe Best American Science Writing 2004という本を読んでいて発見。

本の119ページにはこうあります。

Sleep paralysis is a common phenomenon – up to 60 percent of people have at least one episode, in which the brain and body momentarily desyncyronize when waking from REM sleep.  (中略)The Japanese call it kanashibari, represented as a devil stepping on a hapless sleeper’s chest; the Chinese refer to it as gui ya, or ghost pressure.

中国語はあるんですね。

ためしにKanashibariでGoogle検索をかけてみました。やっぱりカナシバリに相当する英語はないよう。最初のほうに引っかかるのはこんなページ:

Joseph Watersという作曲家はKanashibariという曲を作曲したそうで、ご本人のサイトによれば

Kanashibari is the Japanese term that describes an intense and often frightful experience, common in Japan, but rare in the west

とのこと。

イギリスの大学院生はSleepless in Japan: the kanashibari phenomenonという論文を書いてます。(論文の出だしはいきなり村上春樹の引用)

The Journal of Psychologyに発表された論文The structure and correlates of kanashibariでは、kanashibari (sleep disorder)となっています。単なるSleep Disorderか。

ふーむ。しかし、冒頭の本にあるとおり60%の人は経験している、ということは、英語圏にも存在する現象だけれど、単に名前が無いだけなんですね。

まぁ、振り返ってみれば「存在する現象だが名前が無い」というのは往々にしてありますな。たとえば「頭がキーンとする」という状態をあらわす日本語の名詞ってないですよね。英語ではbrain freezeといいます。誰でもが経験する現象なのに「頭がキーンとした」というしかないって、英語を知った時に改めて変に感じたんですが・・・。brain freezeも大差ないけど。和訳したら「脳凍」かな。

ちなみに、冒頭の本のエッセーはCracking the Harvard X-Filesというもので、「宇宙人にさらわれたと主張する人たち」について研究しているハーバードの教授の話。「金縛り」にあった状態で体の自由が利かず恐怖にとらわれているときに宇宙人にさらわれる幻覚(というか夢というか)を見る、という説もあるということで。

そういえば、日本で「宇宙人にさらわれた」って言う人、あんまり聞かないですね。昔は「宇宙人話」といえば、必ずテレビに出てくる矢追純一さんという人がいましたが、彼は今は未知現象研究学部を有するIond大学の学長さんになっておられる模様。なぜかハワイにあります。そして姉妹校はフィリピンのミンダナオ島に。未知現象研究学部にはユーフォロジー学科・超能力学科・心霊現象学科・超考古学科・ 超常現象学科・超科学科などがあるそうです。宇宙人より不思議です。

元の話に戻ると、金縛り現象にあったとき日本人(や中国人)は「幽霊が体の上に乗っている」と思い、西欧の人たちは「宇宙人に手術台にくくりつけられる」と思うということでしょうか。

それにしても、あんまり役に立ちそうも無い英語豆知識ですね。

「昨日金縛りにあっちゃったー」

と英語で雑談したいときには役立つかもしれませんが。

“I felt paralyzed during sleep last night; my mind was fully awake but my body wouldn’t move. ”

とか言うんですかな。もっと良い表現がありそうですが。

金縛りの津波化」への9件のフィードバック

  1. その辺で一言!(金縛りにあったの巻)

    直接聞かれたのではないですが、渡辺千賀さんのブログで、
    「昨日金縛りにあっちゃったー」
    と英語で雑談したいときには役立つかもしれませんが。
    \"I felt paralyzed during sleep last n…

    いいね

  2. MostlyVowelsさんってほんとーに何でもよく知ってますね。是非一度Trackback先のナオタケさんと「オールマイティ、トリビア王座決定戦」を開催していただきたいです。
    ダンナ(Native Speaker)にOld Hagって言ったら何だと思うときいたところ「シワシワで怖い老婆」とのことで、「寝てるとき体が動かなくなるって言うのは?」と質問したら「聞いたこともない」そうです。「金縛り」はニュートラルな響きだから生き残ったけど、「Old Hag」は魔女みたいなイメージが強くて時代とともに消えてしまったということでしょうか。「狐つき」みたいなもんかな?狐つきってまだ生き残っている言葉なんでしょうか?

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  3. いやいや、私も”Old Hag”なんて、最近外人と金縛りが話題になって偶然に出会ったので、「へぇー、英語でもそんな表現あるのか」と、たまたま頭の片隅に残っていただけですので…
    それに、記憶が定かではなかったので、確認するために勿論知ったかぶりには最強のツール、即ちGoogleにまたお世話になりましたし…
    まあ、うろ覚えの知識をGoogleで補足する術にはだんだん長けてきているとは思いますが、その反面ネットアクセスが無ければ、MostlyVowelsなんて中身が無い人物でしか有りません… (汗
    それにしても、”Old hag”とは、あんまりpolitically correctな表現ではありませんね。どうせ普通のネイティヴ・スピーカーに補足的説明無しでは意味が通じないのなら、”kanashibari”と言う表現を使った方が無難かもしれませんね (^^;

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  4. あの・・・私Old Hag Syndrome 体験しました。でも10年前に1度だけアメリカCAに住んでいた時です。
    あの頃疲れてよく金縛りに会っていましたが、1度だけ特別怖い金縛りがありました。それが所謂Old Hagでしょうか。胸の上にお婆さんが正座して座っていて胸を締め付けるように押してくるんです。と言っても、これはすべて金縛り中に見ている幻想なんですが。目を開けてるわけではありません。非常に怖かった!!
    Chika-sanの記事を読むまで、きっと死んだ祖母の霊が出たのかな・・・っていつも恐怖に感じていたのですが、Old Hagを知って驚きました。体験したのは私だけではないのですね。
    でもそれ以来そんな金縛りは経験したことがありませんけど
    (^^)

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  5. smoke-san,
    すなかけばばぁがこなきじじぃ化したら・・・怖いですなぁ。2人一緒に胸の上に座っていたらもっと怖い。
    mostlyvoweles-san
    いやいや、ご謙遜を!
    kima-san,
    一条ゆかりの「有閑倶楽部」という漫画に「みんなで四国(たしか)の旧家に行く」という話しの回がありますが、そのときに悠里(という字だったか?)が変な女の人に胸の上に座られて金縛りになる、というエピソードがありました。「胸の上に女が座っている」というのは文化を超えて怖い体験なんでしょうか。。。
    ちなみに、私は豊富な金縛り体験があります。最初は怖かったのですが、そのうち、「またか」と特に怖くなくなりました。一度呼吸もできなくなってあせったことはありましたが。時差ぼけのときはなりやすいです。

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  6. ピンバック: アメリカで通じないカタカナ英語2 | On Off and Beyond

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