アメリカのブロードバンド

以下、2月8日の日経産業新聞掲載のコラムです。インタラクティブTV、コンテンツのオンライン販売、といった市場が見えてきてやっとアメリカのブロードバンドも普及するだろうか、という話。過去10年以上言われ続けていたシナリオがやっと本物になるのか・・・と、昨日から降り続く雨で、ブロードバンドどころか普通の電話も途切れがちなシリコンバレーの傾斜地からのレポートです。

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アメリカのブロードバンド普及は遅れている。加入者数でこそ世界最大だが、普及率では世界のトップテンにも入らない 。国土が広大なこともあってインフラ整備が隅々までいきわたりにくいのも一因。シリコンバレーの只中の我が家ですら、雨が降ると電話すらかかりにくくなるという状態だ。広い国土に点在する家庭の一つ一つにインフラを引く莫大なコストを正当化するビジネスが見えず、投資は見送られてきた。

しかし、「オンラインコンテンツ販売」という市場が視野に入ってくる中、やっとその状況が変わりつつある。映画や音楽は、オンラインで購入、ハードディスク上にダウンロードして保有、という形態が主流になっていくと考えられ、この市場は今後5年で一気に2兆円に拡大 するとされている。その中で主導権を握るべく、「線」「コンテンツ」「箱」といった異なる分野のプレーヤーが入り乱れてしのぎを削っている。「線」は家庭への接続を握るケーブル・衛星放送事業者や通信事業者、「コンテンツ」はレンタルDVD事業者など提供ノウハウを持つ企業、「箱」はテレビ受信機やデジタル・ビデオ・レコーダーなどのコンテンツ受信機企業だ。

まず、「線」対「箱」の戦いの一つの争点にケーブルカードと呼ばれる小さなカードがある。アメリカのほとんどの消費者がケーブル放送に加入しているが、これまではその受信機はケーブル会社が独占的に供給していた。これを、どんなハードメーカーからでも提供できるようにし、特定のケーブル放送を受信するには指定のカードを入れるだけでよくするのがケーブルカード。ケーブル受信機に競争と技術革新をもたらすことを目的に米連邦通信員会が制定したルールで、2006年までには全ケーブル放送事業者にケーブルカード対応が求められている。

このケーブルカード導入にケーブル放送事業者側は強く抵抗している。ケーブルカード導入後も放送受信料は変わらず入ってくるものの、「ケーブル放送事業者は放送コンテンツを提供するだけ。ダウンロード販売などの新たなビジネスはセットトップボックス側でコントロール」というシナリオが可能になってしまい、主導権が「線」から「箱」へと取られてしまう可能性があるからだ。

一方、「箱」であるデジタルビデオレコーダーを提供するティーボは、「線」を蹴って「コンテンツ」とのアライアンスを発表した。契約締結寸前と噂されていた米国最大のケーブル放送事業者コムキャストとのアライアンスを破談とし、その代わりにDVDレンタル事業者のネットフリックスとの提携を発表したのである。ティーボは、これまでの230万台の販売実績の6割を「線」事業者であるディレクTVとの提携に頼っており、本来であればコムキャストとの提携は喉から手が出るほど欲しいアライアンス。しかし強気なコムキャストに主導権を奪われることを嫌い、1年がかりの交渉の末NOの決断を下したというのがもっぱらの噂だ。

「コンテンツ」のネットフリックスは、現在は「注文はインターネット、DVDの配達は郵送」というレンタルモデルの会社だが、これからはインターネット経由でティーボのセットトップボックスにダウンロード販売しようというわけだ。

もちろん、この乱戦にはマイクロソフトも噛んでおり、SBCやベライゾンといった大手通信事業者に対し、光ファイバー経由でコンテンツ配信を行うソフトウェアを提供することを次々と発表している。

こうしてコンテンツ販売というビジネスモデルが見えてきたことで、さまざまな事業者が本気になって参画し始めた。今後5年間で米国のブロードバンド事情がどう変わるのか。現状の粗末なインフラに耐える一ユーザとしても非常に楽しみだ。

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上記のコラムに関連していくつか。(以下は日経産業に掲載されたわけではありませんのであしからず。)

  • 米国連邦通信委員会、ドラえもん盗作
    The FCC Kids Zoneに「Broadband君」として載っています。さすがFCCです。「ブロードバンド大国日本からお借りして来ました」とか言ったらかわいげがあるんだが。

  • P2Pがんばる
    巨大コンテンツをインターネットでみんながダウンロードするようになると、回線容量が足りなくなる可能性が。ミラーサーバーをあちこちにおいて何とかする、というAkamaiみたいのでは、ローカルなニーズに耐えられない(かも)ということで注目されるのはP2Pであります。動画配信を主眼としたP2PベンチャーではKontikiなどあります。NetscapeでVP MarketingをしていたMike Homerがファウンダー。
    おとといのSan Jose MercuryではPLUGGING INTO YOUR HOMEと題して、Konkitiや、その他ビデオコンテンツのオンライン流通用ベンチャーとして 、スマートアンテナ技術でWiFi家庭内ビデオ配信を可能にするVideo54、動画配信高速化のArroyo Video Solutionsなど紹介されておりました。
  • テレコム屋さんがんばる
    Business Week2月21日号のTelecom: To Buy or To Build?は米国通信事業者が積極的な施策に出ているという話。SBCがAT&Tを買収、QwestはMCIを買おうとする一方、BellsouthとVerizonは自社で投資してブロードバンドネットワークを構築中、ということなのですが、この号が発売されてすぐの2月14日、VerizonがMCIを買収することが発表された。投資もして買収もするVerizonが一番積極的ということか。Verizonといえば、テレコム不況の真っ只中の数年前、インフラ構築に数千億円規模の投資をして話題になってましたね。
  • では。

アメリカのブロードバンド」への10件のフィードバック

  1. このコラム、掲載が遅れたのか、2月17日付け掲載ですね。ちょっとフライングかな?

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  2. はじめまして、よしといいます。
    バンコクでITコンサルとして独立すべく
    日々努力中です。
    初めてきましたが、すごいプロフィールですねぇ。
    恐れ入りました。
    アメリカは過ごしやすいですか?
    ここタイもインフラ環境はすこぶる悪く、
    回線も途切れがちです。
    しかし最近は少しずつですがADSLサービスが
    普及しつつあります。
    (日本に比べると遅くて高い。下り1Mで3000円/月)
    高速回線に一度慣れてしまうと遅い回線では
    ストレスがたまりますねぇ^^

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  3. 雨が降ったら回線が途切れるってどーいうことなんでしょう。
    「風が吹いたらオケ屋が儲かる」みたいな輪廻転生・植物連鎖みたいなモンがあるのかしらん。
    おせーて、おせーて O(^-^ )O( ^-^)O

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  4. July4-san,
    やば・・・。半日早く載せてしまったようですね。8日って言われたんですけど。。。
    Yoshi-san,
    1M3000円なら安いです。我が家などちょっと前まで150kで5000円でした。(ADSLでしたが、実効速度が150kだったのです。。)
    makamon-san,
    えー、ご説明いたしましょう♪
    1)電話線は古く、電柱を使った日本でおなじみの形
    2)近隣にはリスがたくさん居る
    3)電柱にはプラスチックのハコがあり、そこにリスが巣を作る
    4)巣を作るために、ハコに穴を開けるので、雨が降ると浸水する
    5)入った水で電話線が浸水し混線・断線が起こる
    ということです。別の説では、リスが電話線を巻いている皮膜を齧って食べるから浸水するというのもあります。いずれも、電話会社の修理の人に聞きました。いずれにせよ「リスがかじった」というところは間違いないようです。輪廻転生というほどのもんじゃないですが・・・。
    ちなみに、今日は午前中一杯「停電」でした。涙。停電もしょっちゅうあるので、相当大規模じゃないとニュースにすらなりません。こちらは、風で木が倒れて電線が切断されたりして起こることが多いですが、今朝は雨も風もないのに突然7時ごろ停電しました。。。。。

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  5. こんにちは
    興味がありましたのでちょっとコメントさせてください。
    韓国でBBが進んだのは、コンテンツが豊富だったからですね。 オンラインゲームが有名ですが、闇コンテンツがユーザを増やしたみたいです。実際に今でも映画とかビデオとかのほとんど公然(?)ダウンロードできるらしいです。 日本やアメリカの有名テレビ・映画もキチンとハングル字幕までOption用意されていました。
    日本では昨年から、万能チューナなる、ケーブルテレビ無料化箱が流行っていまして、社会的な問題になってます。
    私が韓国でそれを最初にみたのは、3-4年くらい前でした。
    無料サービスほどインフラを加速させる手段はないですね。

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  6. 無料に加えて、ポルノっていうのも大きいですよね。無料とポルノががメディアを作る・・・でしょうか。

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  7. ブロードバンド関連機器を作る2Wireで働いていた友達に「アメリカのブロードバンドの定義って何?」と聞いたら、「250k以上」とのことです。日本の皆さん、耳の穴をかっぽじって聞いてください。アメリカでブロードバンドが増加中、とかいうの、まじめに聞いてはいけませんのです。

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