話せる・聞ける英語の勉強法5

[インターネットで聞ける英語素材を利用したヒアリング練習サイトListen-ITを作りました。このblogの英語関係エントリーもそちらにまとめてあります(2005年5月)]

「文法は二の次」という話を何度も書いた。大体の基礎を抑えたら、後は細部を完璧にするよりも、たくさん読む。たくさん読んでいるうちに正確になる。(これは日本語も一緒ですが)もちろん、良質のものをたくさん聞けば耳からも「正しい文法」が入ってくる。

で、ある程度読める・聞けるようになったところで、もう一度振り返って「正しい文法」を抑える、というのがお勧めなのだが、その「正しい文法の抑え方」によい本がThe Elements of Style。

スティーブンキングも自伝兼物語を書くコツの著書、On Writingの中で触れている本。小さくて薄っぺらで、おどろおどろしくないところもよろしい。
1. Elementary Rules of Usage
2. Elementary Principles of Composition
3. A Few Matter of Form
4. Words and Expressions Commonly Misused
5. An Approach to Style
の5章からなる。

正確に言うと「文法」の本ではない。もちろん、文法的説明もあるが、それ以外に「間違って使いがちな言葉」や、「別に間違ってはいないが、望ましくない文章」などを「より正しい言葉」「より美しい文章」に書き換える方法が載っている。例文は全て「ダメな例」とそれを変換した「よい例」が併記されていて、それを読むだけでも「なるほど、英語ではこう書くのか」と納得。

また、内容は細分化されていて、例えば2章の中だけでも、11個の項目がある。例えばUse of active voice.とかPut statements in positive form.とか。それぞれは独立しているので、別に最初からみっしり読む必要もなく、適当に興味のある項目だけ読む、ということが可能。なので、最も適切なのは「トイレに置いとく」か。ピラっと開いて、出てきたページを読む、とか。(さすがに全部一気に読み通すほど面白くは無い。少なくとも私にとっては。)

さて、この本で筆者が繰り返し言うのは、「耳で聞いたことのない言葉を書くな」ということ。英語(特にアメリカ)で書かれた文章は、どんなに難しい内容であっても、まるで話し言葉のように平易だ。そして、それがよい文章とされる。(逆に、知的な人の話し方は、まるで書いてある文章を読み上げるようだ)。ということで、耳を良くしてたくさん聞くのは、書くほうにも役に立つ。

****

なお、「正しい文法」は「口語の変遷」とともに変化している。(日本語も同じだが。)例えば、私が中学の頃は「文章の最後に前置詞をおいてはならない」とかたく言い渡された。たとえば店などで「何時まで開いていますか」と聞くのは「Until what time are you open?」が正しい、と。しかし、誰も言わんのですよ、こんな風には。じゃぁどう言うか、というと
「What time are you open until?」
最初聞いたときは、「なんて変な文章なんだろう」とあきれたが、これが普通。

Elements of Styleの5章14. Avoid fancy words.でもこう書かれている。

Years ago, students were warned not to end a sentence with a preposition; time, of course, has softened that rigid decree.  Not only is the preposition acceptable at the end, sometimes it is more effective in that spot than anywhere else.

そして書く文章でも前置詞が最後に来た方がよい例として
A claw hammer, not an ax, was the tool with which he murdered her.より
A claw hammer, not an ax, was the tool he murdered her with.の方がよい、とし、
(後者の方がsounds more violent, more like murderだから、と)、この後さらに
The worst tennis player around here is Iなど、「昔は正しかったが、もはや聞いて変なので書いても変な例」をあげ、それが変かどうかを判断するのは「A matter of ear」(普段耳にするかどうか)としている。
(ちなみに、より「良い」言い方はThe worst tennis player around here is me)

そういえば、ビジネススクールの副学長の教授が授業中に「That’s different thanなんとかこうとか」と言ったのを聞いたこともある。「differentはtoかfromしかつけちゃいけないって中学校で習ったよ」と思ったのだが。あと、よく聞くのは、
I’ve gone to Tahoe many times.
みたいに、「have gone」を「have been」の代わりに使うこと。これまた中学の頃「have gone」はどこかに行ってしまってそのままの時(赤い靴はいてた女の子はhas gone to異人さんの国だ)、「have been」はどこかに居たことがあるが、そこから帰ってきた後に使う(桃太郎はhas been to鬼が島)、と習ったのだが。これも「まぁそんなうるさいこと言わずに」というレベルになってきてるようだ。

とはいうものの、「教養の無い人が頻繁に使う言葉・言い回しだが、それをそのまま書いたら知性を疑われる」類のものはたくさんある。やはり「ちゃんとした人」が話す英語をたくさん聞くのが、正しい英語を書くためにも重要、ということでしょう。

というわけで、一家に一冊文法常備薬:
   

Amazon Japanからも買えます:The Elements of Style         
(日本でAmazon Japanから買う方が、アメリカでAmazonから買うより安い。なぜ?)

***

さて、練習です。
Tech Guru Omar Wasow: Google’s IPOのThe Tavis Smiley Show audioというところをクリック。1分7秒目からのところ。Google IPOがどんな位置づけなのか、という話。前半は簡単め、後半は難しめです。

(司会)Other than all that _____, what else is important about this ______ IPO as you see it?
(ゲスト) Well, I think it’s important to see this in _______ of the sort of _______ of Silicon Valley, so this is really being viewed as comparable to the _____ IPO or _________ IPO in the ’80s or ________ when it IPO’ed in the ’90s, so it ______ is part of an important set of __________. And it also fits a narrative which is kind of this archetypal _____ __ Silicon Valley which is a couple of boys __ _ garage who ____ __ ____ __ ___ industry, and it’s this David and Goliath story, too, where it’s _________ __ remember that when Google ________, every major media company ___ _____ tens if not hundreds __ millions __ dollars trying to establish itself as ___ Yahoo! __ ___ Internet.
(IPO’edはIPOを動詞化して、過去形にしたもの。David and Goliathは旧約聖書に出てくる有名な逸話。こちらなどごらん下さい。)

先週の答え
Jumping sudden attention legislation latest versions grabbed attention legislator porn site motivated on the on the the in the it’s a piece of you’d to a a lot of the trying to write at a(ちなみに先週の文中“And I think the virulence of some of these latest versions has”のところ、一旦、latest versions haveといいかけて、hasといいなおしています。これはhasはthe virulenceが主語だからなんですが、直前がversionsと複数なんでついhaveと言ってしまって、はっと気づいたという感じ。ネイティブの人でも考えながら話しているのがわかると思います。)

話せる・聞ける英語の勉強法5」への13件のフィードバック

  1. こんばんは。Shuheiです。
    私は、穴埋めをしたらすぐに答えあわせをしたいクチ
    なので、いつもは一週遅れで楽しませていただいてお
    りますが、Elements of Styleがでてきたので、
    のこのこ出てきました。
    この本は、GMATのnon-native泣かせの文法問題を乗り切る
    上でも必須とされておるのですが、日本語訳が絶版に
    なってます。そこで、Chikaさんがリンクを張ってくれている
    Amazonにてオリジナルを買い求めたのですが、下記のサイト
    で全文公開されていることを後で知りました。ありゃりゃ。
    もしデータでもかまわんよという方は、ホームページをコピ
    ーするとよいのではないでしょうか。
    http://www.bartleby.com/141/
    もしうまくいかなければGoogleでelements of styleで
    検索をかけてください。ちなみに、Yahooではうまくヒット
    しませんでした。
    Chikaさん
    以前にちょこっと触れられていましたが、速読の仕方
    と速読をしつつもいかに内容を頭に叩き込めるかにつ
    いて次回以降で気が向いたときに教えていただけると
    うれしいです。GMATのリーディングやアメリカの
    大学院で生き残っていくために必須の技術であるよう
    な気がしてきました。

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  2. 全文公開!!すごいですね。Lessigもびっくり、ですね。さすがだ。
    しかし、この本、「nature loverという風にnatureを使うのは極力避ける」など、かなりとんがったことが書いてあります。(漠然とnatureといわずに、景色が好きなのか、動物が好きなのか、一体全体natureのどこが好きなのかを明確に書け、ということ)。私は、直裁で簡潔な文章が好きなので、この本の教えがとても好きですが、項目によっては、えーっそこまで言う?と思う人もいるかも。
    とはいえ、これは英語の文章を書くための教本として金字塔的位置にあるもの。ウェブに公開されていても、加えて紙で持ってて損じゃないと思います。一回読んでも忘れちゃうこともあるし、ウェブにかじりついて必死に勉強するような類のものでもないような気もするし。私は時々思い出したように復習的にあちこちをちょっとずつ読み返しては
    「おっと、そうだった、いけないいけない」
    とか思っています。
    でも、昔ながらの特訓的受験勉強的方法が好きな方は、ウェブからプリントアウトして、暗記しては紙をバリバリ飲み込む、というのも乙なものかもしれません♪
    速読については、「たくさん読むとたくさん読めるようになる」ということで、かつまた、リスニングほど系統化された方法はないのですが、今度ちょっと書いてみますね。
    アメリカの大学院で生き残るためのみならず、知的バリューが望まれる仕事をするのであれば、速く読めるということは必須だと思います。

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  3. The Element of The Styleはアメリカの学生、こぞって持っていますよね。読んでいるかどうかは定かではないのですが。
    日本語版は絶版なんですね。結構いい値段だった記憶があったので8ドルかよ!と驚いたのを思い出します。

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  4. 私は日本に居た頃はこんな本の存在はかけらも知りませんでした。本書はGMAT等の勉強に必要かは不明ですが(私は知らずに終わってしまった)、ある程度の教養があるアメリカ人は必ず一度は通る本、という感じですよね。
    また、言語を超えた普遍の文章の書き方読本としてもすばらしいと思います。
    (例えばinterestingという言葉を使わず、どうinterestingなのか具体的に書け、面白い話があるのだが、などと断らずに、面白い話そのものを単刀直入に書け、とか。)

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  5. 早速読みました。Personallyはしばしば不要であると説明されてあり、I think は I thinkと言い切る必要性を学びました。

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  6. いつも楽しく拝見しております。
    わー、やっとコメントできる話題が!
    私は特許の明細書を書く仕事をしていますが、英語で明細書を
    書くにあたり、アメリカ人の同僚にいちばん最初に
    薦められた本がThe Elements of Styleです。
    この業界の人向けのオタク本だと思い込んでいましたが、
    アメリカでは広く読まれているのですね。
    まじめに読み直そう、、、

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  7. itaru-san,
    「I think は I thinkと言い切る必要性を学びました」
    これを学ぶと、日本の会社の社内文章が書きにくくなる危険があるのではないでしょうか。(既に海外にいらっしゃるとしたら戻れない身になるとか;-) )
    以前日本の会社づとめの頃、よく「社内伺い文章が断定的過ぎる」と直されました。例えば、
    「XYZの市場は大きな拡大が期待される」
    と書くと
    「XYZの市場は大きな拡大が期待されると思われる」
    と書け、とか。
    私としては「期待される」は既に主観的推定が入っているのだから「思われる」とつけるのは冗長だと思ったんですが。
    あと、「ABCを推進したい」と書くと
    「ABCの実施につき、重要顧客先からたっての依頼あり」
    とかけとか。別にたっての依頼なんてされておらず、また、もし依頼されたとしても、頼まれたらなんでもやるんかい、と思いましたが。
    そんな私には、Elements of Styleは砂地に水が染み入るように納得できました。
    maru-san,
    装丁が地味なのでオタクっぽいですが、あれはむしろ「教科書」のノリで地味なんじゃないかと思います。多分大卒でこの本の存在を知らない人はいないじゃないかなぁ、と思います。高校生でもオマセな子は読むらしいです。

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  8. Chikaさん曰く:
    「私としては「期待される」は既に主観的推定が入っているのだから「思われる」とつけるのは冗長だと思ったんですが。」
    全く同感です。
    それに、概して日本人は日本語の文体をカルチャー的な要素を全く考慮せずに外国語にお直訳する傾向がありますね。例えば日本人流の英語では “personally” と “I think” は、文書の著者が話者である、と云うのが明かな場合でもその冗長性を全く意識せず繰り返すので、少々辟易します。私見ですが、よほどの英語の使い手でない限り、”personally”, “I think”等と述べるのは避けるべきでしょう。I think.

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  9. I think, personally,
    というのは、日本語的には言っちゃう気持ちよくわかりますよね。
    多分これは
    「自分の頭で考える」
    の仲間なんでしょうね。
    ちなみに、「自分の頭で考える」という表現は不思議・・というか、聞くと、おかしくて笑いそうになります。
    「他人の頭で考える」なんてできないじゃん、と。
    (いや、一応本来の意味が、「一般的に言われていることに迎合しないこと」というのは知ってるんですが・・・)
    イメージ的には、グリッドコンピューティング風に、人間の頭脳がたくさんケーブルで接続されていて、普段はみんなで分散コンピューティング的状態で共有思考をしており、あえて自分だけで考えたい時には
    、他との接続を分断して
    「自分の頭で考える」
    という感じでしょうか。
    どういうコマンドかな?Ctr-Alt-Dltだとシャットダウンしちゃいますね。mind-your-own-businessかな???

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  10. 「他人の頭で考える」なんてできない。
    これ、もう一つ行為をつけると出来てしまいます。
    —-
    打合せでの一件。
    自信満々のAさんのプレゼン。
    資料もばっちり、説明の仕方も特に問題なし。
    でもプレゼン途中から、あれ?えっ?それはどういう意味?と疑問が頭の中に過ぎる。
    案の定、プレゼン終了後質問の嵐である。
    というのも。。。
    そのプレゼン資料は、過去の資料から今回の件に一番合致しているものを隈なく探し、社名やプロジェクト名、数値を適宜変更しただけのものであった。
    それを恰も「自分の頭で考えた」ように話す。
    つまり、「他人の頭で考えた」回答を「踏襲・変更」した結果である。
    従って、根拠も理由も全く無し。
    (幸か不幸か、前回のプレゼン資料には残っていないから、Aさんの頭の中には詰め込まれなかった。)
    企業もビジネス環境も技術も予算も、時代と共に変化しているわけで、前例を上辺だけ訂正し踏襲しても、全く持って論外なのは火を見るより明らか。(当然、状況が全く変わっていなければ、今回の解も大いに結構なのですが。)
    反対に、前件のプレゼン資料を作るに当たっての「他人の論理的思考」を踏襲し、「自分の頭で考えた」結果を出していれば、その内容がお粗末だったとしても、少なくとも根拠のある(凡そ採用される解とは言えずとも)プレゼンが出来たのではないかと。
    「人間の頭脳がたくさんケーブルで接続されていて、普段はみんなで分散コンピューティング的状態で共有思考をしており」というのは大いに重要。陸の孤島状態では心許ないので。
    だがしかし、最終回答を出すときは、「他との接続を分断して」、敢えて「自分だけで考えて」欲しいものです。
    そして、プレゼンの際も、本当の意味であれば、”I think, personally,”の多用も大いに結構です。ただ、このような類の人に限ってという制約のもとで。
    —-
    以上、実際にあった話です。
    英語の話とは凡そかけ離れてしまいましたが…。
    ネット環境が未整備なところへ出張に行っていました。
    その間の遅れを取り戻すべく、先ず上記紹介して頂いた本の購入を。

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  11. Chiihoさん曰く:
    「そして、プレゼンの際も、本当の意味であれば、”I think, personally,”の多用も大いに結構です。ただ、このような類の人に限ってという制約のもとで。」
    う〜ん、微妙ですね。
    プレゼンの場合、聞く方としてはプレゼンターが当該案件について何らかの検討を行った、と云うのが前提なので、ことさら”personally”,”I think”等と連発されては興ざめです。「I think」だと?「そもそも、”to think”がオマエの役割だろうが」、と「personally・個人的には」だと?「オマエは自分を誰様だと思っているのか」と突っ込みを入れたくなります。(汗
    こちらとしては、資料の中で述べられている分かりきった客観的な事象・データよりは、プレゼンの主観的な部分(分析・予測・類推・提案等)に付加価値を期待しているので、その主観的な部分の無いプレゼンなどには興味ありませんし、且つ主観的な考察だとこちらが既に理解している部分で “I think・私の考えは” と文脈・話の展開からすれば英語では概して冗長な注釈も出来るだけ割愛してもらいたいのが本音です。(^^)

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  12. MostlyVowelsさん
    私が「”I think, personally,”の多用も大いに結構」と書いたのは、本当にそれを多用して欲しいというのではなく、本当の意味で「”I think, personally,”」と言って恥じないような根拠のある説明をして欲しいということです。
    つまり、「”to think”がオマエの役割」を果たして欲しいと。
    また、「資料の中で述べられている分かりきった客観的な事象・データよりは、プレゼンの主観的な部分(分析・予測・類推・提案等)に付加価値を期待している」というのに全く異論の余地はありません。
    ただし、これらの主観的部分が、「他人のものを真似ただけのもの」ではなく、あくまで「自分で考えた根拠のあるもの」であって欲しいということです。
    それを指しての「本当の意味であれば、”I think, personally,”の多用」のつもりでした。
    いや、文章は難しいです。
    誤解を与えるような書き方ですいません。

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