Bay Areaの住宅相場・金利・日本経済

Silicon Valleyの社内紙、San Jose Mercuryの朝刊に住宅価格下落せずという記事が。

この2月のPalo AltoからSan Franciscoの南までのSanta Claraで戸建住宅のmedian価格は$490,000、up 5.4 percent from February 2002 and down 1.4 percent from February 2001だそうだ。約6000万円。景気が最悪というのに住宅価格が下落しない理由がいくつか載っているが、その一つが住宅金利の低さ、と書いてある。

しかし、金利そのものの低さに加えて、その柔軟性にも目を見張るものがある・・・。

まず、最初にキャッシュを払って金利を下げることができる。借入金総額の1%を1pointとして、1point支払うごとに、金利が(一般的には)8分の1%安くなる。頭金とどう違うんだ・・・と思う人もいるかもしれないが、頭金は売り手に支払うお金、pointは金融機関に支払うお金。また、金利分は税控除の対象なのだが、pointもそうなので、借り手にとってはtax meritがあり、貸し手にとってはリスクが軽減できる、という仕組み。

また、自営業の人に最適なstated income loanという「収入自己申告型のローン」もある。stated incomeだからといって、大企業から給料をもらっている人に比べて、ほんの0.5%ほど金利が高いだけ。さらにはno ratio loanなる収入額も雇用先も秘密のまま借りるローンまである。(収入に対する返済額割合を計算できないのでno ratioなんですね)このno ratioでstated incomeより0.25-0.5%金利が高いだけとのこと。

私は自営業でstated incomeが最適なのだが、
「そうか、大企業に勤めているときより0.5%分しかリスクが高くないと思ってもらえるのか」とまず喜び、
「しかし、収入も仕事も言えないような人より0.25%しか安全じゃないなんて・・・」とちょっとむっとするが、いずれにせよ、リスクというのはちょっとした小さな金利差で吸収できるものなんだと意外な気がする。

日本で三菱商事をやめるとき、会社保証の住宅ローンを借りていて、それが借り換えできないと会社が辞められないという、身売り女郎のような状態になったことがあった。全然貸してくれる銀行がなくてしばらく心臓がバクバクした状態で時を過ごした。その頃、金利は2%そこそこで、どこの銀行も空前の低金利を売り物にしていたが、私は
「金利5%くらい払ってもいいから、頼むから貸してくれ」と思った。しかし、そういう「リスクに見合った金利」というものは日本には存在しない。銀行で貸してくれない人は、サラ金にいくしかない。でもサラ金で住宅ローン貸してくれるところもない。

***

アメリカでは、不景気にもかかわらず消費者市場の冷え込みが抑えられているのは、住宅が下支えしている部分が大きい。もちろん、住宅市場と景気相場はタイムラグが何年かあるのが普通だが、それにしても意外なまでに持っている。それには、この「リスクに見合った金利で資金を融通する仕組みがある」ことが、大きな役割を果たしているとされている。

一方、それをそのまま裏返して「リスクに見合った金利で資金を融通する仕組みがない」ことが、日本経済が立ち直らない理由だと思う。

アメリカでは、企業の資金調達でも、株式、債権の市場が充実しているのはよく知られているところだが、それ以外でも、例えば売掛債権を割引して買ってくれるfactoringなんかが普通に存在する。もちろん、リスクが高ければ、その分金利(や手数料)が高いことでバランスが取られている。しかし、日本ではこれは「手形割引」てな感じで電信柱なんかに張り紙がはってある、ちょっとアブナイ金融会社の世界。

日本で総合商社という、世界に類を見ない業種が繁栄したのも、正当なリスクに見合った金利で資金を提供する金融機関がないからだと常々思っていた。おおざっぱに言うと、売り買いの取引の間に入り、売り手には早めに料金を支払い、買い手からは遅めに料金を受領して、ファイナンス機能を提供するのが、重要な商社機能とされている。trade financeというかっこよい言い方をするが、要は手形割引を大々的にやってるだけともいえる。でも、まともな金融機関がこういう機能を提供しないので、人気者になった。

みんなが恐れる「リスク」だが、システマティックに処理すれば、結構ちょっとした金利差で吸収できてしまうものなのだろう。0.5%なんていう誤差みたいな金利差でもちゃーんと機能している。フタを開けてみれば、結構manageableなことが多いのがリスク。でも恐れてフタをしたままでいるとどんどん育って怪物になって手に負えなくなってしまう。うーむ。

全っくの余談だが、大学の同級生が、真夏に炊飯器に炊いた米を入れっぱなしで放置していたら、むくむくと天然色のカビが育ち、ある日フタを押し開けてあふれてきたと、蒼白な顔で語っていたな。彼は、炊飯器ごと捨てていたが。

Bay Areaの住宅相場・金利・日本経済」への4件のフィードバック

  1. うーむ、残念ながらI don’t know who you areなんですが、本はAmazonのカートに入れました。読んでみますね。
    では。

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  2. 渡辺さん、
    いつも、楽しく読ませていただいてます。
    ついこの間、似たような事があったのでコメントしてしまいます。
    >日本で三菱商事をやめるとき、会社保証の住宅ローンを借り>ていて、それが借り換えできないと会社が辞められない
    僕も、マンションを購入する時に頭金を払って一度ローンの審査を通ったものの実際の引渡し(これが半年後)までの間に転職をした為に、ローンが降りなくなってしまい慌てて他の銀行をあたったことがあります。
    審査ってキャッシュフローじゃなくて、未だに勤務期間とか会社の名前で判断する所が多いようです。逆にいうと1年でも働いているとローンが降りたりとかするそうです。普通のローン審査に通るまでの、短い1年間だけ多少高金利でもブリッジで貸してくれる金融機関はないものかと思いましたよ。
    人材が流動化して転職が増えればいずれこういうケースが増えて銀行も勤務歴を絶対視するような審査はできなくなるのでしょうね。

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  3. kshimizu-san,
    ご心労お察し申し上げます・・・。
    日本で私が借り換えしたときは、唯一シティバンクだけが勤務経験に関係なく貸してくれました。
    ところが、バブル崩壊後ゆえ、借り換え前の借金の残高と、シティバンクが貸してくれるといった金額の間に3000万円ちかい落差があって、一瞬気が遠くなりましたが。(もちろん、シティバンクが貸してくれる金額の方が少なく、落差分はキャッシュで返さなければならなかったのでした。webやぎの目 http://yaginome.jp/ 的には、「死ぬかと思った」です。)

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