San Jose Mercury NewsのAdobe readies software upgradeはAdobeが自社ソフトをバンドルして、MicrosoftのOfficeのように販売することにした、という話。
いわく
Adobe plans to announce new versions of its Photoshop, Illustrator, InDesign and GoLive software, elements of its “creative professional” line of products. And for the first time, Adobe will showcase them as if they are one big bundled product.
ソフトウェアビジネスは上手にバンドルした人の勝ちである。これを理解することなくソフトウェアビジネスをすることがあってはならない究極のルールだ。
Adobeはウェブデザイン市場に弱い。自社のInDesignで業界トップQuarkXpressに対抗しようとしてきたが、今までは果たせず。そこで自社の人気製品とInDesignをバンドルすることでQuarkを駆逐しよう、というのが今回の作戦である。ヨーロッパでのトライアルでは、PhotoshopにバンドルされたInDesignを買った人の多くはQuarkからInDesignに乗り換えた、とAdobeは言う。
なぜバンドルしたもの勝ちなのか。
Officeの例で考えてみる。(わかってるよ、という方は飛ばしてください)
Aさん:ワードは1万円でも買うが、エクセルは5000円でしか買わない。エクセルのかわりに競合の1-2-3だったら1万円で買う。
Bさん:ワードには5000円しか出したくないが、競合の一太郎だったら1万円で買う。エクセルだったら1万円でも買う。
という2人がいたとする。Microsoftがワードとエクセルをバラバラに1万円で売ったとすると、Aさんはワードと1-2-3をそれぞれ1万円で買う。Bさんは一太郎とエクセルをそれぞれ1万円で買う。マイクロソフトの儲けは2万円である。そこで、Microsoftがワードとエクセルをバンドルして1万5千円で売ったとする。とAさんもBさんも「だったら」ということでバンドル製品を買い、1-2-3も一太郎も買わなくなる。すると、マイクロソフトの儲けは3万円で競合の儲けは0になる。そこでめでたくも恐ろしくもMicrosoftのモノポリーになるのである。
「そんなこと言い出したらなんだってバンドルした方の勝ちではないか」と思うかもしれないがそうではない。なぜなら
1)多くの製品には製造コストがかかる。通常、製造量を増やしていくと、規模の経済が働いて、大量生産のコストメリットが出るが、ある量まで達すると、管理コストをはじめとしたもろもろの無駄が多くなって、製造コストがかさみはじめる。あまりに大量に売れると、作るコストがかさんで、安く売ると、売っただけ損をすることにもなりかねず、「適切量」を売る競合にコスト構造で負けてしまう。
が、ソフトウェアは開発コストはもちろんかかるが、コピーするのはほとんど無料。
2)多くの製品では、所有コストもある。「車を買ったらトレーラーもプレゼント」といわれても、「そんなの置く場所がない」という人も多かろう。がソフトウェアはまぁ、メモリがちょっと食われる程度。CDに焼いてその辺においておいてもよい。
以上二つの特徴がソフトウェアにはあることが、「ソフトウェアはバンドルしたもん勝ち」を招いている。つまり「大きいことはいいことだ」ということになってしまう。(もちろん「ただでもいらない」というレベルのソフトではバンドルの効果はありません)
とはいうものの、ソフトウェアにはバンドルする製品をたくさん持つ大きなプレーヤーを不利にする(可能性のある)要因もある。
1)レイヤー・アーキテクチャの戦い:アプリケーション、ミドルウエア、OSなど各種のレイヤーのしのぎあい、さらにはサーバ側、クライアント側などネットワークのどこにインテリジェンスをおくのかといったアーキテクチャの戦いがあって、常に戦略地図が流動的
2)すばやいプレーヤーのイノベーション:ソフトウェアは知恵の産物。知恵を最大限に活用するのには小さな会社の方が効率がよい、となれば、図体が大きいこと事態がマイナス要因になる
ということで、「大きなプレーヤー」=絶対優位=モノポリー、という3段論法は成り立たないということで、Microsoftが未だに分割されずに残っているわけだ。
が、しかし。Adobeは今までなんでバンドルしなかったんだろう?それに、Adobe以外にも、「本当だったらバンドルしたら儲かりそうな製品群を持つ会社」というのがありそうだ。どなたか、思いついたら教えてください・・・・。