Bundling is king

San Jose Mercury NewsのAdobe readies software upgradeはAdobeが自社ソフトをバンドルして、MicrosoftのOfficeのように販売することにした、という話。

いわく
Adobe plans to announce new versions of its Photoshop, Illustrator, InDesign and GoLive software, elements of its “creative professional” line of products.  And for the first time, Adobe will showcase them as if they are one big bundled product.

ソフトウェアビジネスは上手にバンドルした人の勝ちである。これを理解することなくソフトウェアビジネスをすることがあってはならない究極のルールだ。

Adobeはウェブデザイン市場に弱い。自社のInDesignで業界トップQuarkXpressに対抗しようとしてきたが、今までは果たせず。そこで自社の人気製品とInDesignをバンドルすることでQuarkを駆逐しよう、というのが今回の作戦である。ヨーロッパでのトライアルでは、PhotoshopにバンドルされたInDesignを買った人の多くはQuarkからInDesignに乗り換えた、とAdobeは言う。

なぜバンドルしたもの勝ちなのか。

Officeの例で考えてみる。(わかってるよ、という方は飛ばしてください)
Aさん:ワードは1万円でも買うが、エクセルは5000円でしか買わない。エクセルのかわりに競合の1-2-3だったら1万円で買う。
Bさん:ワードには5000円しか出したくないが、競合の一太郎だったら1万円で買う。エクセルだったら1万円でも買う。

という2人がいたとする。Microsoftがワードとエクセルをバラバラに1万円で売ったとすると、Aさんはワードと1-2-3をそれぞれ1万円で買う。Bさんは一太郎とエクセルをそれぞれ1万円で買う。マイクロソフトの儲けは2万円である。そこで、Microsoftがワードとエクセルをバンドルして1万5千円で売ったとする。とAさんもBさんも「だったら」ということでバンドル製品を買い、1-2-3も一太郎も買わなくなる。すると、マイクロソフトの儲けは3万円で競合の儲けは0になる。そこでめでたくも恐ろしくもMicrosoftのモノポリーになるのである。

「そんなこと言い出したらなんだってバンドルした方の勝ちではないか」と思うかもしれないがそうではない。なぜなら
1)多くの製品には製造コストがかかる。通常、製造量を増やしていくと、規模の経済が働いて、大量生産のコストメリットが出るが、ある量まで達すると、管理コストをはじめとしたもろもろの無駄が多くなって、製造コストがかさみはじめる。あまりに大量に売れると、作るコストがかさんで、安く売ると、売っただけ損をすることにもなりかねず、「適切量」を売る競合にコスト構造で負けてしまう。

が、ソフトウェアは開発コストはもちろんかかるが、コピーするのはほとんど無料。

2)多くの製品では、所有コストもある。「車を買ったらトレーラーもプレゼント」といわれても、「そんなの置く場所がない」という人も多かろう。がソフトウェアはまぁ、メモリがちょっと食われる程度。CDに焼いてその辺においておいてもよい。

以上二つの特徴がソフトウェアにはあることが、「ソフトウェアはバンドルしたもん勝ち」を招いている。つまり「大きいことはいいことだ」ということになってしまう。(もちろん「ただでもいらない」というレベルのソフトではバンドルの効果はありません)

とはいうものの、ソフトウェアにはバンドルする製品をたくさん持つ大きなプレーヤーを不利にする(可能性のある)要因もある。

1)レイヤー・アーキテクチャの戦い:アプリケーション、ミドルウエア、OSなど各種のレイヤーのしのぎあい、さらにはサーバ側、クライアント側などネットワークのどこにインテリジェンスをおくのかといったアーキテクチャの戦いがあって、常に戦略地図が流動的

2)すばやいプレーヤーのイノベーション:ソフトウェアは知恵の産物。知恵を最大限に活用するのには小さな会社の方が効率がよい、となれば、図体が大きいこと事態がマイナス要因になる

ということで、「大きなプレーヤー」=絶対優位=モノポリー、という3段論法は成り立たないということで、Microsoftが未だに分割されずに残っているわけだ。

が、しかし。Adobeは今までなんでバンドルしなかったんだろう?それに、Adobe以外にも、「本当だったらバンドルしたら儲かりそうな製品群を持つ会社」というのがありそうだ。どなたか、思いついたら教えてください・・・・。

イースター (RedEnvelope & Red Herring)

昨日24日水曜日にSan FranciscoのRedEnvelopeが上場した。RedEnvolopeは高級ギフトのオンラインショップ。そして今日25日にはRed Herringのオンライン版が復活。ECommerceの復活については何度か書いてきたが、その付随現象とでもいいましょうか。「復活祭」ということでイースターというタイトルにしてみました。

RedEnvelopeはこの6月までの3ヶ月の売上げが1770万ドルということだから、まだ年商1億ドルに届かない。しかも赤字。Googleなどの大規模上場が始まって錦鯉の池に紛れ込んだ金魚のようにかすんでしまわないよう、今のうちにGo!ということなのか・・・・ホンマに上場して大丈夫かね、という感じではあるが、健闘を祈る。1株14ドルで上場して、今after hours marketで14.51ドルだから、ちょっぴりだけ値上がりはしている。危なっかしい感じだが。

Red Envelopeは一般投資家もIPO株を購入できる、OpenIPOというプロセスを利用。詳しくはSan Jose MercuryのOpening up the IPO to smaller investorsへ。IPOというと、ある会社がどっと通常の市場に株を放出するかと思いきやそうではない。underwriterである投資銀行が、あちこちの機関投資家を回って、「こんな会社ありまっせ。お宅、いくらで何株くらいだったら買いますか」と聞いて回り、その感触を元に価格を設定して、割り当て販売するのだ。(この「聞いて回る」ツアーをRoad Showという。ちなみに、新作映画上映という意味でRoad Showという言葉を使っても、アメリカでは通じませんのであしからず)で、その機関投資家(年金ファンドとか、信託ファンドとか)は、一旦IPOする会社から直接株を買い、そのあとで株を市場に出す。こういうプロセスだから、一般人はIPO株を買うことは普通はできない。

バブル期には、このプロセスで悪人が暗躍した。まず投資銀行は、ごひいき先の機関投資家に優先的にIPO株を割り当てる。で、IPO価格をあえて低く設定する。そうすると、IPO後株価は急騰する。ごひいき先はここぞとばかり株を売り払って(flipする、という)、あっという間に巨万の利益を得る。でその利益の一部を手数料など様々な形で投資銀行に還元する。たくさん還元すると、次のIPOでまたたくさん割り当ててもらえる、という仕組みになっていた。OpenIPOを考案したBill Hambrecht氏いわく、flipで得られた利益の30%は投資銀行に還元されていたそうだ。

投資銀行側は低めに値付けするインセンティブが働くわけで、そうすると上場した企業の取り分は少なくなる。(市場に出てから第3者間で行われる取引のあがりは上場企業には入ってこないので)ひどい話だ。

「正直者が馬鹿を見る」という世界だったんである。ま、とはいうものの、結局最後には大事件になり、何人もの人が検挙され、粛清がかかったが・・・。

こうした不透明なIPOプロセスの代わりに、オンラインオークションでIPO株を一般投資家・機関投資家双方に平等な条件で売ろう、というのがOpenIPO。考案したBill Hambrechtが設立したブティック投資銀行WR Hambrechtの登録商標。

GoogleもOpenIPOを検討したが、それはもしかして一般の大手投資銀行に対して、IPOのunderwriting feeを値切るための手段かも、と記事は続く。IPOのunderwriting feeは通常7%。7千万ドル位が「大きいIPO」と「小さいIPO」の境目なので、「ちょっと大きめ」で1億ドルをIPOで集めると投資銀行の取り分は700万ドルという、莫大な額になるので、1%下げるだけでも意味がある。

一方、Red Herring to resurrect Web siteによれば、結局Red Herringの商標はDasarというフランスの会社が買って、そこがエディターを雇ってこれまで再開の準備を進めていたらしい。一時期200万ドルでも買い手がつかない、といわれていたから、もっと安く買ったのだろうか。とすれば、相当なお買い得だったのではないか。これからどれだけ事業を伸ばせるかにかかってはいるが。フランス人のお手並み拝見、というところか。

というわけで、OpenIPOという目新しい手段を使って、ECommmerce企業が上場、Red Herringは復活という、幸先のいい感じのする2日間でありました。

Microsoftの帝王学

Business2.0のBaby Billsは次世代の卓越したリーダーがMicrosoftの社内で育っているという話。タイトルは、アメリカの地域電話会社がBaby Bellsと呼ばれるのにもじって。

取り上げられている人材は
Eric Rudder 36才/Microsoft勤続14年
Chris Jones 34/12
J.Allard 34/12
Yusuf Mehdi 37/12
Steve Sinofsky 38/14
Martin Taylor 33/11
Tami Reller 39/19(Microsoftに買収されたGreat Plainsの生え抜き)

Eric RudderがSenior Vice President、Martin TaylorがStrategistというのを除くと、他はCorporate VPで、その上にGroup VPがいて、その上はCEOのSteve Ballmerである。つまり偉いんである。Microsoftといっても、イマイチ大企業という実感が薄い人もいるかもしれないが、営業利益が132億ドル、実に1.5兆円。ドコモの営業利益が1兆円、トヨタで1.3兆円といえば、どれくらいすごいかわかるだろうか。

そういう大企業の部長、本部長クラスが30代。といっても、日本も80年代初頭ごろまではそうだったんじゃないか。今となっては信じがたいが、その頃の日本は、大企業でも社員平均年齢20代後半なんていう会社がざらだったんである。

そういえば、「YASHA」というタイトルの吉田秋生の少女マンガがあった。遺伝子操作によって生まれた天才の双子が、老人を集中的に殺すウィルスをばら撒くという陰謀をめぐって戦う、というものだが、「ある年代以上の人がどうしても会社に来たくなくなるウィルス」を作ってばら撒いたら何が起こるだろうか・・・。

もとい。

ハイテク企業としてMicrosoftが異色な点は、生え抜きの人材が多いこと。人事に力点を置き、傑出した人材を生み出すので知られるGE並みのプログラムを実施して次世代リーダーを育成しているんだそうだ。もちろんずっと勝ち続けている企業だから辞めるインセンティブが低いということもあるが、ワシントン州Redmontにあるというのも異質。Silicon Valleyに本社を置かないことで、半ば人材の真空隔離状態を実現、社員流動を抑えている。もちろんその代わりに周りの会社から人材を引き抜きにくいのも真実ではあるが。会社所在地は戦略的に考えよう、というのがtake awayか。

Silicon Valleyの空洞化-続き

Silicon Valleyで職探し中の方からこんなメールを頂いた。

Silicon Valleyの空洞化はまさに感じていたことを言葉にしてもらった感じです。San Jose Mercury Newsも読みました。

Webで広告している電子通信関連の求人を見ればすぐわかりますが、「スーパーエンジニアを求む」としか読めません。エントリーレベル、ジュニアレベルを見つけることは困難です。したがってアメリカ人の新卒も相当苦労しているようです。

特にスタートアップはずば抜けた人しか雇いませんね。以前からそうでした。

スーパーエンジニアのマーケットは確かに存在します。これからも存在しつづけることでしょう。しかし問題はスーパーエンジニアになるまでのキャリア形成を行う土俵がアメリカに少なくなりつつあることです。

私の勤めていたシリコンバレーの大企業は製造が東南アジアに移管することで、真っ先にプロダクション関連の人が減りました。製造に携わるジョブマーケットはどんどん縮小していることはもう常識でしょう。ソフトの開発もすでに移管中です。ソフトの外注管理はまだしばらくアメリカにあるのかもしれません。ソフトの設計を習得するならインドです。しかしソフトの設計、プログラミングをしたことのない人間がソフトの外注管理などできるものでしょうか。

製品設計、開発も外に出て行っています。中国では生産だけでなく、設計も活発です。ソフトだけでなくハードも海外です。あちこちのソース(互いに関連なし)から聞いた情報もそれを裏付けています。

しかしアメリカはまったく空洞化してしまうことはありません。軍事関連のハイテク産業は外に出て行きません。新卒はそこでスキルを鍛え、やがてスタートアップなどの先鋭的なエンジニアリングに挑戦すればよいのでしょう。アメリカ国籍のない日本人にはこういうことはできません。

もしかしたら、インドや中国で就職し、エンジニアとしての技術を高め、その後アメリカで就職するのが今後のながれになるのではないでしょうか。現に私の友人(携帯電話のソフトエンジニア)はフランス、日本、アメリカ、日本、中国の順で職場を渡り歩いています。」

一方で、最近シリーズAのファンディングを受けたばかりで、まだ10人くらいのベンチャー2社の人たちが、異口同音に「良い人が雇えない」とぼやくのを聞いた。いずれも、Mobiusとか、MayfieldとかBessemerとか、メジャーどころのVCから投資を受けているにもかかわらず、である。どちらも「スーパーエンジニア」を探しているのだ。いわゆる「スターエンジニア」という人たちである。彼らいわく

1)ぴかぴかの人は引く手あまたであり
2)既に何度か成功している経験者は、ファウンダー並みのストックオプションでも与えなければ来てくれない
3)一方で、失業中の人は山のようにいるので、採用情報を出すと莫大に応募が来てしまうが、スターエンジニアの絶対数は限られているので、応募数が二倍になったからスターエンジニアの応募も二倍になるわけではない(一人は「Noise-to-Signal ratioが悪い」と表現していた)

雇用側、雇用される側、同じことを言っているわけだ。

エンジニアじゃなくても、かなりスターじゃないとなかなか仕事を見つけるのは難しい。例えばNeoterisという会社で知り合いがプロダクトマネージャを募集している。条件はこんな感じだ。

■Must have 3+ years of product marketing experience in the remote access, enterprise applications, security, or networking space and knowledge of emerging web infrastructure technologies.
■Must have managed 5+ releases through the entire lifecycle from definition to pricing, sales support, and deployment.
■Must have demonstrated successful experience managing product strategy for a similar company and/or in an emerging market.
■Must be able to excel in a fast pace, startup environment where action and initiative are prerequisites to survival.
■Excellent written, verbal and presentation skills.
■Strong technical and market knowledge of the networking and security technology spaces.
■Proven analytical and problem solving skills.
■Must have a BA/BS degree, MBA preferred.

初心者お断り、なんである。(ちなみにNeoterisは盛大に雇用中。同社のサイトにあれこれ乗っているし、加えて、な、な、なんとMountain Viewの映画館で採用広告まで出していた。バブル期はあきるほど採用広告が映画の前に流れたが、バブル崩壊後、ベンチャーでは初めてではないだろうか)

今日、Electronic ArtsでVP Technologyをしている橋本さんとランチをして、以前何度か私のblogにコメント頂いたShiroさんの話になった。Shiroさんは偶然私のblogを見つけていただいたのだ(と思う)が、もと橋本さんと一緒に働かれていたのである。・・というのは、以前橋本さんの話をblogに書いたときに判明した。Shiroさんはハワイ在住。橋本さんいわく、「ShiroにぜひともEAに来て欲しい、とラブコールを送っているのだが、なかなか来てもらえない。腕一本でどこでも引く手あまたの凄い人材なのに、、、」と残念がっていた。

やっぱりこういう風に前の職場の人に見込まれて引っ張ってもらえないと厳しいんだなぁ・・・・。

PeopleSoftとM&A

PeopleSoftがアナリスト向けの発表をして、ドラスティックな人員削減と、華々しい利益ゴールをぶち上げた。
CNet:PeopleSoft details layoff, product plans
San Jose Mercury:PeopleSoft to trim up to 1,000 jobs

もちろんOracleの敵対的買収対策である。アメリカの会社経営というのは緊張感がある。Oracleに買われるより、PeopleSoftとして存続した方が、ずっといい、ということを株主にアピールしようと必死なわけで、Conwayは「If there’s ever been a better opportunity for a software company, I’ve never seen it」と。そこまで言うか。しかも、「なるべくがんばります」では誰も納得しないので、従来以上の数値目標を掲げざるを得ない。掲げた以上、そこに向かって走っていくしかない。

前にも書いたが、Oracleは競合であるPeopleSoftを叩き潰すためだけに買収をしようとしている。Larry Ellisonは、「一旦買収したらPeopleSoftの製品は全てつぶして、人も全員切り、顧客ベースだけ頂く」と公言しており、それを受けてPeopleSoftのCEOのConwayは「『お前の犬を10ドルで売ってくれ。すぐ撃ち殺すから』といわれているようなものだ、誰が売るか」と応戦。(対してEllisonは、「Conwayと、Conwayの飼い犬が一緒にいて、どっちかを撃ち殺すとしたら、それは犬じゃないのは確かだ」などとさらに応戦。。。子供みたいだ。)

「Conwayは一度Oracleに身売り話相談に来たんだぜ」などとLarry Ellisonはインタビューで暴露してConwayを激昂させたりしているようだ。ちなみに、Larry Ellisonは突然Tom Siebel(Siebel Systemsの社長ですね)に電話して「うちのCRM部門のトップにならないか」と言ったこともあるという噂だ。この3人はみなOracleで直属の上司部下で働いた関係。

かようにOracle人脈(特にセールス出身者)はシリコンバレーのエンタープライズ・ソフトウェア業界を牛耳っているのだが、しかし、これはまたこの産業の弊害にもなっているのでは、という説がある。というのも、Oracleといえば、営業同士の競争が厳しいので有名。が、それゆえにOracleのセールス出身者は成功者としての強烈な自負心を持つのに加え、周囲からのrespectを集めている。そうした人たちが、「成功体験者」としてOracle流セールスプラクティスをシリコンバレー全域に広めた。おかげで、「エンタープライズソフトウェアのセールスといえば、攻撃的でうかうかしていると食われてしまう」という認識が客側にも根付いてしまい、セールス活動が闘争的になりがち、というのは知り合いの嘆き話。。。

余談だが、Larry Ellisonといえば、Charlie’s Angelに出てくるサウナで殺されてしまう少々間抜けな役の男は、明らかにEllisonがモデル。大金持ちで、ハイテク企業の社長で、日本趣味、傲慢だけどちょっとギャグ、というもの。本もののEllisonは日本で女子大生と遊ぶのがお好きという噂もある。京都で芸者さんと遊ぶ会をセットしようとしたら、芸者より女子大生がいい、と言われたとか言われないとか・・・・・。噂は噂なので、鵜呑みにしないで下さいませね。

R&Dのマーケットプレース

Innocentiveという面白い会社がある。製薬大手のEli Lillyが出資して作られたスタートアップで、フリーランスの研究者と企業のR&Dのマーケットプレースを運営している。

世界125カ国に広がる2万5千人の研究者がsolverとして登録されている。(サイトは、中国語、ロシア語、ドイツ語、スペイン語、英語、となっている。日本語はありません。)企業側は、R&Dの課題を2000ドル払ってポスト、問題が解けた暁には数千ドルから10万ドルの懸賞金を払う、という仕組み。ポスト料に加えて、InnoCentiveは懸賞金の60-100%を受け取る。今までの実績では、40%の問題が解けたそうだ。

もちろん問題がピンポイントに明確化されていなければ使えない仕組みだが、世界の知恵をあまねく活用するという意味で面白い試み。研究者側のインセンティブは、先進国では腕試しが主だが、中国やインドでは懸賞金も魅力的で、7万5千ドルの懸賞金の問題に、インドの会社がチームを作って挑戦したこともあったとのこと。

ミスミという日本の会社は、人材のオープンマーケット制をとったことで有名になった。必要な人材があるときは、社内外両方から広く募集することで人事を活性化する。同様に、InnoCentiveを使ってR&Dを活性化、というのも楽しそうだ。(これまでのんびりやってきた社内の研究者にはつらく苦しいかもしれないが)Innocentiveと似たような会社でNinesigmaというのもあります。

来年のbig IPO候補

最近黒字転換しているベンチャーの噂が増えて来ている。黒字で成長率が高ければIPOできる。どんな会社があるか。

いわずと知れたGoogle。売上げは$200Mから$800M(1000億円近い)までいろいろな数字がささやかれているが、どちらかといえば上のほうらしい。IPOしたらmarket cap $1 billion (約1200億円)以上となるとも言われる。なかなかIPOしない最大の理由はemployee retentionとも。「IPOしたら大金持ちになってやめてしまう社員がたくさんいるから」と。。。

Salesforce.com。sales force automationのASP版だ。Business Weekの9月1日号には5-7月の3ヶ月の売上げは$21.6Mで利益が12万7千ドルと。とすると、2003年1年間の売上げは多分$100M(120億円)は超すだろう。

$100M超の売上げといえばBlue Nile。ダイヤモンドをオンラインで売る、という超シンプルなビジネスモデル。今年は$100-120Mの売上げ予測らしい。これはFounder & CEOが私のビジネススクール時代の同級生。

共通項は「シンプル・簡単・わかりやすいビジネスモデル」。さてさて、どうなりますか。。

サーチエンジンVivisimo

少し見ない間に、メタサーチのmetorはなくなり、Vivisimoがパワーアップしていた。Vivisimoはサーチ結果をクラスタに分けてくれる機能が楽しい。対象ページの中に含まれる言語を解析して、グループ分けしてくれるのである。例えばこのたび正式にカリフォルニア州知事に立候補した”Arnold Schwarzenegger”で検索すると結果はこんな感じ。
Arnold Schwarzenegger (204)
Fan (23)
Terminator (28)
Celebrity (16)
Bodybuilding (15)
6th (10)
Governor (9)
Hollywood (7)
Filmography (5)
Photo Gallery (4)
True Lies (7)
カッコ内は検索結果数で、やぱりまだ州知事よりターミネーターの方が上だ。

ページの上のほうのDEMOというところをクリックするといろいろ楽しいことが出てくる。例えばVivisimoのアラビア語版、Arabisimo(!)のトライアルで、CNNのアラビア語ページを解析したものはこうなる。イラクよりイスラエルが上、アフガニスタンよりワールドカップが上、とか。。。。(といっても、アラビア語があっているのか検証できないのだが・・・・)

CNN Arabic (1490)
إسرائيل (Israel) (529)
العراق (Iraq) (261)
كأس العالم (The world cup) (117)
الهند (India), كشمير (Kashmir) (97)
أفغانستان (Afghanistan), القاعدة (The rule) (79)
شركة (A company) (59)
قمة (A summit), الأرض (Earth) (55)
كراتشي (Karachi), الباكستانية (The Pakistani) (38)
السودان (Sudan), المتمردون (The rebellious) (27)
الفلبين (Philippines), أبو سياف (Abu Sayyaf) (26)

仕事での使い方としては、何か調べたいタームを入れてみて、そこで出てくるカテゴリー名からインスピレーションを受けて、さらに深く調べる、というようなことができる。日本語も検索できるが、クラスタリングの成果はイマイチ。

ちなみにVivisimoはカーネギーメロンからできた会社。カーネギーメロンはAIとか言語解析なんかではとても有名な大学なのである。

ちなみにChika Watanabeと入れたら、1位がJapanで、3位がBlog, 4位がanimeだった。(Chikaというアニメの声優さんがいるらしい)自分の名前でGoogleすることをVanity Googleというらしいが、VivisimoだったらVanity Vivisimo、となんだか華やかな感じですね。

Siebel develops dinosaur

ウェブをブラウズしていて見つけて笑った。Siebel develops dinosaur complex

Siebelが、dinosaur complexというお茶目なコードネームで新製品を開発した、という話かと思ってしまった。冗談のわからなそうな人だと思っていたら、結構キッチュな人だったんだTom Siebelって、、、、と思っていたらそうではなくて

Tom Siebel, chief executive of software maker Siebel Systems, and his wife (donated) $2 million to a Montana natural history museum to expand its dinosaur exhibit.

仇敵salesforce.comのCEOは、すかさずこんなコメントを。

“Perhaps they will also be able to display some of their dinosaur client/server software there as well?” said Salesforce.com Chief Executive Marc Benioff.

salesforce.comとSiebel(とOracle)の話としては、こちらもどうぞ
http://blog.neoteny.com/chika/archives/002378.html

アメリカの会社同士のライバル意識って、表面に出てくるので笑える。昔Kimberly ClarkとProcter Gamble(どちらも紙の会社ですね)の戦い、という記事で、どちらかの会社の社長が「毎朝鏡を見て、『どうやってあの会社を叩き潰そうか』と真剣に考える。うちの社員全員にそういう風に思って欲しい。」と真剣に語っていたが、これもおかしかった。歯を磨く手に力が入って口が血だらけになりそうだ。

In the Blink of an Eye(カンブリア紀の謎)

休暇に持っていったもう一冊の本はIn the Blink of an Eye. Oxford大学のZoologist、Andrew Parkerによるもの。

カンブリア紀が始まる5億4千4百万年前には、動物のPhyla(分類学上「門」と訳される種類)はたった3つしかなかったのに、たった5-600万年のカンブリア紀の間に一気に38にまで増え、その後は増えることなく現在に至る、という「カンブリア・ビッグバンの謎」を追ったものである。

筆者が提唱する謎の答えは、「カンブリア初期に視力を持った動物が初めて誕生、これがその視力を武器にpredatorとして他の動物をがんがん食べ始め、それと対抗するために、他の動物も保護色の獲得など様々な変貌を遂げたために、一気に爆発的進化が起こった」というもの。

本としては、著者の方には申し訳ないのだがちょっと退屈。Natureかなにかで数ページの論文で発表してくれればそれでOKという感じだ。結論を最後まで引き延ばして「進化ってなんだろう」「視力ってなんだろう」「光ってなんだろう」と、延々と冗長な説明が続く。そこまでカンブリア紀に興味のないシロウトにとってはかなりつらいものが。

が、アナロジーとしてはとても面白い。「小さな、でも決定的な変化が一つ起きたために、その周囲の全てが圧倒的に変貌してしまう」という「特異点」が、何事にも存在するんじゃないかと思うからだ。

例えばシリコンバレーという場所は常に技術の「特異点」を探している場所だ。「半導体」がそうだったし、「インターネット」もそうだっただろう。社会全体のあり方にインパクトを与えるような「一つの小さな変化」を常に追い求めている。そして、その変化の起こり方もtry and errorとsurvival of the fittestという生物の進化に似た動きをする。

そしてまたその「小さな変化」は、それが起きた当初は、小さいがゆえに本当に決定的かどうかわからないという、これまた生物の進化と似たところがあるのが、面白くも難しいところ。カンブリア紀の最初に視力を手に入れたtrilobiteという動物も、trilobiteに見つかって食べられてしまった他の視力のない動物たちも、よもや「ふふふ、これで世界が圧倒的に変わるぞ」とは思わなかったことでありましょう。

今日この瞬間も、どこかで将来の劇的な進化をもたらす「小さな変化」が生まれているのかもしれない、と思うと結構うきうきしませんか。