Online retailの未来

今日は、Yahooをはじめとしていろいろな企業の2Qの業績発表があったのだが、のきなみよい業績で、この間から時々私が書いているeCommerceの躍進(下記のような・・)が数字に表れてきた。

5月2日 景気
5月14日Ecommerce復活
5月18日シリコンバレーの景気が上向いてきた

さて、これからもecommerceは伸びていくことは間違いない。以前に触れたBtoBのシステムを提供するAribaもTicker symbolのARBAの最後に「危ない会社」を表すEがついていたのだが、それも取れてちょっとずつだが株価も上がってきた。(Yahoo Finance参照

このままecommerceが進むとどうなるか。その将来にあるものの一つは「価格のダイナミックアジャストメント」だと私は考えている。

大学のミクロ経済の講義の最初に出てくる需要曲線と供給曲線は皆さんおなじみだと思うのだが、物を売る側が消費者ニーズを表す需要曲線を算出するのは大変難しい。「その値段だったら買う」という消費者が、数多くの異なる価格ポイントのそれぞれで、どれくらいいるかわかって始めて需要曲線がプロットできる。しかし、一つの製品に違う値段をたくさんつけるのも難しければ、ある値段にしたらこれくらい売れる、という結果をリアルタイムで把握することも難しい。だから、需要曲線は推測の域を出にくい。

ところが、これをリテールの現場で実現し、「最も儲かる価格付け」をすることがオンラインだったら可能になる可能性がある。

そのトライアルをしていると思われるのがAmazon。私がアメリカのAmazonのサイトにアクセスすると右の上に小さくChika’s Gold Boxなるものがピカピカしている。こんな感じだ。

これは個々人にpersonalizeされた特別価格奉仕品、ということになっている。箱をクリックするとある商品が現われる。買わない、という選択をすると、次の商品が登場する。(買わないといった瞬間に、前の商品にはもう戻れない)こうやって順繰りに10数個の商品を見ることができる。箱を空けたら1時間だけその価格は有効、ということで、「今すぐ決断せよ」と迫られるのである。

大抵いりもしないものばかり。しかも、市価より高いものまである。回りの人たちと話しても誰一人Gold Boxを開けて何かを買ったという人に会わない。内容は、なべ釜、キッチンアプライアンス、工具などなど。

なんでこんなものが、、、と思うのだが、実はこれが需要曲線算出のためのギミックらしい。いろいろな属性のユーザーに、異なる価格で商品を提供、誰がどれくらい買うかを分析して需要曲線を出し、最適価格でその商品を売ろうとしているとのこと。正しい需要分析には、
1)確率統計的に有意な数の消費者がその商品を見て
2)そのうちの多くが購入せず、ごく一部だけが買う、という価格ポイントがたくさんある
という二つの条件が必要。だから、ほとんどのユーザーにとって、なかなか欲しいものが登場しないのは理にかなっているのだ。

これは、Amazonに価格最適化ソフトを売り込もうとしたとあるベンチャーの人から聞いた話。消費者の需要弾力性をリアルタイムで測ってそれを価格付けに反映させる、というのは航空券の世界では長いこと行われてきた。航空券というのは、同じ経路が突然高くなったり安くなったりやたらと変動するが、実はその後ろでは大変sophisticateされた数学的処理のプログラムが走っているのである。それを一般のリテールにも利用しようという試みが行われているわけだ。

リテールは利益が薄い。こういうプログラムで価格最適化ができれば、飛躍的に利益構造が改善する可能性が高く、技術を導入する企業としない企業で体力に圧倒的な差が出るだろう。

しかし、こういう技術が発展して、personalizeした価格付けがされるようになると、「あまり買い物をしないかわり、いざするときは値段に無頓着」という私のようなデタラメなshopperは、「こいつは需要曲線がフラットだから、思い切り吹っかけても買うぞ」という分析結果となって、他人よりやたらと高い買い物をさせられてしまったりしそう。困ったことである。

McDonald’s Hotspot開始

マクドナルドがベイエリアの75店舗でWiFi(802.11)ホットスポットを提供すると発表。
McDonald’s serves up wireless Web access

同社のDon Thompsonいわく”The most important part is, ‘Is this relevant to our customers?'”。その通り。全くもってrelevantでない可能性は高いのではないか。アメリカのマクドナルドの客層ははっきり言って低所得者層が多い。

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Economistの6月26日号にBubble trouble:Is the “Wi-Fi” wireless internet boom about to turn into a bust?という記事が載った。

WiFiホットスポットはバブル、ということ。例えばアメリカのStarbucksのホットスポットがいかに利用されていないかという話がある。

Perhaps the best-known network of hotspots is that operated by T-Mobile, a wireless operator, in over 2,000 Starbucks coffee shops in America. Around 25,000 people access the hotspots each week, which works out at an average of less than two users per day per hotspot.

1日1店舗平均2人しか利用者がいないと。

The Wi-Fi hotspot at Amsterdam’s Schiphol airport is used by only a dozen people each day.

オランダのSchiphol空港でも一日せいぜい10人ちょっとしか使っていないとのこと。

とはいうものの今は値段が高過ぎるだけという可能性もある、と続く。
Users may be deterred by high prices. Even after a recent round of price cuts, using T-Mobile’s network of hotspots costs $6 per hour, $40 per month, or $360 per year. Other operators in America charge $40-70 per month. Prices in Europe are as high as euro130 ($150) per month.

それはいくらなんでも高いだろう。ユーザー調査では1時間1ドルにまで利用料が下がったら20%が使ってみたいといっているという結果も(ただし、「技術に詳しいユーザー」を母集団とした場合だが)
Only 3% of tech-savvy American consumers surveyed said they would pay $2 per hour for Wi-Fi access, but 20% said they would pay $1.

ということでEconomistの記事はこんな風に締めくくられている。
Already, though sales of Wi-Fi equipment are booming, prices have tumbled, and margins are now wafer-thin. Wi-Fi will continue to spread, and will remain popular. But, rather like the internet, it may disappoint many investors who hoped to make their fortunes.
(投資については、記事の前半で、2000年来$1.5B(1800億円、か)のVC資金がWiFi関連技術に投資されているとある。)

しかしホットスポットはWiFiの利用形態の中でもかなりニッチ。これをもって「だから802.11がだめだ、というのはちょっと間違い。Economistも筆がすべることがあるんだな、という感じだ。家庭やオフィスでの利用はどんどん進んでおり、こちらの市場は拡大中であることはEconomist自身が数ヶ月前に言っている。

例えば3月27日号のHotspots and friesでは、過去数年の間のWiFiの家庭、大学、オフィスでの利用増はRunway successであり、
According to Jupiter, another market-research firm, 57% of American companies already use Wi-Fi, and another 22% plan to do so within the next year.とのこと。

私も、わざわざマクドナルドでPCを広げたいとは思わないが、家もオフィスも802.11bだ。ということで、アメリカでのWiFi普及に関しては、ホットスポットはNG、家庭やオフィスでの利用はGo、というのが当面の方向性だろうと思っているがどうだろうか。

Multimedia- symphony & Sony Clie

San Jose Mercuryの日曜版のhttp://www.bayarea.com/mld/mercurynews/6222412.htmはConcert Companionという、classicのコンサートで解説を聴衆に配信するシステムの話。ただいま開発中。

It works this way: Each person is handed a device; Valliere has been customizing Sony Cliés for use in focus group tests, which began in Kansas City in March, drawing positive feedback from the small number of participants. As the music begins, a technician seated at a laptop in the back of the concert hall, pushes a button at predetermined points in points in the score. The information is then transmitted simultaneously to the Cliés, which run on a Palm operating system, appearing on their screens as a continuous “play by play” about the music.

カスタマイズしたClieを利用してワイヤレスで音楽・作曲者・楽器などの解説をタイムリーに送信するというもの。

賛否両論だが、classic離れが進んでいる中でより多くの人々を引き付けられるのでは、という期待がある。

以前に絵を見るって・・・というエントリーでGerhard Richter展で音声での解説用ヘッドフォンの話を書いたが、私はこういう類のオンサイト解説が好きだ。最近では、解説自体が刺し身のツマ的存在を越え、ちょっとした評論本くらいの価値をもっていると思われるものも多い。

芸術ではないが、例えば、Alcatraz島の牢獄は今は観光地となっているが、そこで借りられる解説ヘッドフォンでは、囚人として実際にAlcatrazに収容されていた人の肉声で当時の思い出が聞ける。「独房で全くすることもないので、毎日じっと夢想にふける。だんだん慣れてくると、頭の中にカラーテレビがあるようにくっきりとある場所を思い浮かべることができるようになり、いながらにして世界のいろいろなところに旅ができるようになった」みたいな話が淡々と語られて、単なるコンクリートの箱でしかない牢獄の残骸が急に生々しいものとして見えてくる。

とはいうものの「芸術の解説」は邪道では、という迷いが以前はあったのだが、それが吹き飛んだのはAndrew Wyethが自らの回顧展の作品を解説したAndrew Wyeth: Autobiographyという本。圧倒される。絵を何倍も楽しめるというのもさることながら、芸術家の頭の中ってのは、普通の人とは次元が違う構造なんだなぁ、と圧倒された。例えば、奥さんの絵がある。ちょっと紅潮した頬で、やや斜めを向いているが、それは夫婦喧嘩の最中に彼女が激昂して顔が赤くなって激しく彼をなじった瞬間に、「これだ、私は妻の本質を掴んだ」と、それを後日絵にしたのだそうだ。(別に怒っているのが彼女の本質というのではなく、感情が激した瞬間に何か本質的なものが内部からほとばしり出た、と、そういうことであろう。)夫婦喧嘩の最中にそんなことを思うダンナを持った妻は大変ではないか。それ以外にも、ふとした瞬間に「ある人間・動物・風景・その他もろもろの何かの本質を掴み取った」と感じ、それを絵にするということが繰り返し出てくる。(逆に「本質」が掴み取れず、なかなか絵がかけずに苦労したなんて話も出てくる)そうやって何かの「本質」に突然迫られ続ける人生というのは、息苦しいものではないのか。

内田善美の「星の時計のLiddell」という漫画がある。その中で、登場人物の一人が美しい風景を見て「僕は画家でも作家でもなくてよかった。画家だったらこの美しい一瞬を切り取って自分の中で絵に昇華してしまう、作家だったらこの風景を言葉にせずにはいられない。でも僕は芸術家ではないから、この美しさを美しさとして享受できる」みたいなことを言うシーンがある。(20年前に読んだものを記憶からたぐっているので、ちょっと違うかもしれないが、とにかくこういう意味のことだった。)きっとそうなんだろうなぁ、と思う。Wyethの見る世界はWyethの絵のような緊迫感に満ち溢れているのであろう。

ちなみに、Wyethの本のカバーになっている、夜の室内で犬が半眼を開いている絵は、15年位前に朝日新聞の日曜版に大きく載ったことがあった。元のタイトルは「Night Sleeper」というのだが、朝日新聞は「夜の眠り」と訳していた。が、この本を読むと「窓から差し込む月の光が、よく乗っていた夜行列車(night sleeper)を思い出させたので、このタイトルにした」とあり、誤訳だったということがわかる。重箱の隅をつつくようだが。いずれにせよ、この本はWyethファンでなくても楽しめるはずです。

blog & 言論の自由

メーリングリストの発言は言論の自由で守られる、という判決が下された。これによりやblogでも言論の自由が確保されると考えられている。

PC Magazineの Free-er Speech on the Netに裁判に到った経緯やその判決の意義がわかりやすく書いてある。

The court has, in essence, drawn a line between the opinions of an individual expressed electronically, and the presentation of the same material as fact in a forum such as a newspaper. At its heart, the ruling clears the way for content on the Internet to be treated as dialogue, and not necessarily set-in-stone fact.

雑誌や新聞は、企業や個人を誹謗中傷すれば訴えられる。そこで書かれたことは「事実」として広く理解されるため、「事実」を曲げて書いたとすれば、それは書いた方が悪いということ。一方個人がポストする電子的メディアは単なる「対話」であるからして、言論の自由で守られる、ということ。

判決文はこちら

blog(やメーリングリスト)は、内容こそ玉石混交だが、莫大にリアルタイムに情報発信されるというメリットがある。この判決はその方向性をサポートするだろう。

ということで、ますます求められるのは読み手側の情報精査能力ですね。

B級グルメ続きの続き

今週の金曜はJuly 4thで休日。日本だと連休がたくさんあって、またか、という感じだが、アメリカでは年間にほんの数日しかないので希少感がある。

この連休にかけて夏休みをとる人が多い。今日は水曜だが、もはやみな休暇に入っているらしく、どこの会社に電話しても連絡が取れない。やっとコールバックをくれた某スタートアップのCEOも「今僕Tahoeにいるんだけど」。別の会社は「弊社は木曜から連休です」との録音が流れるばかり。まだ水曜なんだけどなぁ。。。。道もガラガラだ。というわけで、すっかり気分は夏休み。こういうときにせっせと雑用を片付けないとイカン。

雑用ついでに、この間書いたシリコンバレーB級グルメの続きのそのまた続き情報。ベトナムサンドイッチだが、Story RoadのLee’sより別の店の方がうまい。101をStory Roadよりさらに南に二つほど行ったCapitol Express WayをEastに出て、最初に左折可のある信号(ガソリンスタンドがある)を左に曲がって、すぐ左手のサンドイッチ屋。Lee’sはパンは上手いのだが、味がアメリカンナイズされているので。

とはいうものの、もっとおいしいところがありそう。誰か知っていたら教えてくださいませ。

B級的には、Mountain ViewのLos Charrosでタコスというのもオツなもの。ビーサン、短パン、Tシャツで出向き、ChorizoやCarne Asadaのタコスなど頼み、Tecateでもクイっと。トマトと玉ねぎとチラントロと唐辛子を刻んで混ぜただけのメキシコでは定番のサルサもシンプルで美味い。854 W. Dana St. (between Bryant St. and Castro St.) です。その場で絞ってくれるオレンジジュースもよいし、Agua Fresca(フルーツジュース、、なのかな)もGood..私はスイカ味か、米味(甘酒のアルコール抜き、シナモン味、みたいなものですね)が好き。(Tacos以外のメインディッシュはあんまりぱっとしないので悪しからず)

そういえば、先日のPho情報には、Hitoshiさんが渾身の突撃レポートを書いてくれています。ベト麺’s Clubなる組織を結成しているらしく、その気合の程はすごい。Hitoshiさんは、スイスのビジネススクールを出た後、シリコンバレーで起業、現在はSVJENという組織をやっているのだが、料理への気合の入りようはすごく、我が家では尊敬をこめて「Salmon Guy」と呼ばれている。以前、アラスカから取り寄せたサーモンを自分でさばいて作った刺身をくれたからである。吉田兼好も言っている、知恵のある人より医師より、もっと素晴らしいのはモノクルル友と。

Oracle vs. Peoplesoft

今Silicon Valleyのドラマといえば、OracleのPeoplesoft敵対的買収である。今日Justis Departmentが独禁法の中間報告をすることになっていた。もしこれまでの調査で独禁法に触れないことが明らかであれば、これにて調査終了、まだ疑いがあれば調査続行を決定する手はずだったが、結果は「調査続行」となった。

詳しくはローカルテレビ局のサイトのFeds Demand More Info On Oracle-PeopleSoft Dealへ。

ちょっと前の記事だが、Business Weekに掲載されたS&Pのアナリストのものも自体の俯瞰にはよい。Oracle vs. Peoplesoft

とはいうものの、モノポリーの力を縦横無尽に駆使して、敵対する会社を次々に手段を選ばず叩きのめしてきたMicrosoftでさえ分割されずにのうのうとビジネスを続けていることを思えば、OracleとPeoplesoftごときが独禁法に反するのは論理的ではない。ないが、整合性のない判断はいつでも下されるので、まだ結果はわからないが。

そもそも、enterprise application No.3のPeoplesoftがNo.4のJ.D. Edwardsを合意の上で買収しようとした直後に、OracleがPeopleを買うと申し出たのが今回の騒動の始まり。Peopleのトップは、元Oracleで、Larry Ellisonの後継者とまで言われた忠臣の部下だったのが、仲たがいしてOracleを辞めたという経緯があり、積年の恨みがあるとかいろいろ言われている。本当のところはわからないが。今日調査続行となったことで、PeoplesoftのJ.D. Edwards買収が進んでしまうので、OracleがPeopleを買いづらくなるだろうという意見もあれば、いやいやPeoplesoftのJ.D. Edwards買収案件も独禁法調査を厳しく受けることになるだろうという意見もある。さらには、買収が上手く行こうが行くまいが、混乱を嫌う顧客のビジネスを奪える業界トップのSAPが漁夫の利を得るという説もあり、もう何がなんだか、という、まさに昼下がりの複雑な人間模様のドラマの様相を示しつつある。

しかし、まぁすごいなぁと思うのは、Oracleは「Peoplesoftを買収した暁には、Peopleの全プロダクトを叩き潰して、顧客ベースだけ頂く」と公言していることである。全プロダクトを叩き潰すという企業にとっての殺人宣言が明確にあっても、Peoplesoftの株主がOracleに買収された方がいい、と判断すればやっぱり売られてしまう。

日本のような持合ではなく、短期的視野の株主が多いアメリカのcorporate governmanceは、近視眼的だとの批判も多い。しかし自分の味方とは限らない株主をたくさん持つことは、今回の買収のような意外な攻撃に対しても油断せずに防御し、事業をどんどん伸ばすという、常時臨戦態勢のインセンティブを経営陣に提供することで、緊張感ある事業を促すという点は着目に値するだろう。

MIT Stanford Berkeley Nanotech Panel

昨日、スタンフォードで行われたナノテクのパネルディスカッションに行って来た。3つの大学の共催イベントで、Nanotech Business Panel, What are Fortune 500 Companies Doing in Nanotechnology?という長ーいタイトルなのに加えて、イベント案内のURLもwww.mitstanfordberkeleynano.orgと、あしびきの長々し夜をひとりカモネムと百人一首してしまいそうである。大盛況で500人くらいは来ていた。

6-9時というイベントだったので、6時半ごろ会場についたのだが、イベントは7時からでそれまでは表でネットワーキングという予定になっていた。昨日は40度近い気温で異様に暑かったこともあり、人と話すのが面倒だったので、「6時半にはレジストレーションも終わってパネルディスカッションも始まるはず」と見計らって行ったのに。30分も、テンションあげて知らない人とネットワーキングトークしなければならないのか、と内心舌打ち。結局、3年計画で日立に買収される途中のIBMのハードディスクドライブ部門で働くペルー人のエンジニアの人とか、面白い人と話ができたのだが。ネットワーキングイベントって、こういう感じのことが多い。実際いろいろな人と会って話してみれば、結構楽しかったりするのだが、そこに行くまでは気が重かったり。(このあたりで行われるイベントの場合、ほとんどの場合知り合いに出会うということもあって、行ってみれば何とかなるものではある。)

この間空港の本屋で「Brag!」という、どうやって嫌味にならずに上手に自分を売り込むか、というハウツー本的なものを買って、飛行機の中でざっと読んだのだが、その中で「何千人もの観客に対してスピーチするより、ビジネス上の付き合いで出るカクテルパーティーが怖い」という人の話が出てきた。知らない大勢の人とそれほど内容のない会話(small talk)をするのが嫌だと思っている人はたくさんいるんだ、とほっとする。

もとい。

パネルのモデレータはナノテクではもはや定番のDraper Fisher JurvetsonのVCのSteve Jurvetson。スタンフォードでEEの学部を2年半という短期間で1番で卒業、さらにEEのマスターとMBAもスタンフォードで取った。数年前にsuper top tierではないものの、その次ぐらいに位置するであろうVCのDraper Fisherに招聘され、自分の名前も社名に加えて中核メンバーとなる。今では「まだまだサイエンスじゃないの」と皆が疑う中でナノテク投資に邁進していることで知られている。年は私と同じくらいのはず。同じ年といえば、90年代にCiscoで激しいM&Aを繰り広げて注目を浴びた現同社SVPのMike Volpeもそうだ。彼もスタンフォードのMBA。両親はイタリア人だが日本育ちなので、日本語ぺらぺらである。(私は個人的には弟のNick Volpeしか知らないのだが。Nickもスタンフォードのビジネススクールだった。)いずれも±1歳くらいであろう。こういう人が身近にたくさんいると、花でも買って妻と親しみたくなるが、妻がいなくて実行不能なのが残念である。(参照:啄木)

さて、昨日のコンファレンスでは、HPのSenior FellowのStanley Williamsがこんなことを言っていた。将来ナノテクを目指したいと思う人へのアドバイスである。
「ナノテクはbio, chemistry、material science, computer scienceなどの複合領域。いったい何を専攻したらよいのか、という質問をよく受けるのだが、答えは『どれでもいいから、とにかく一つ選んで”become really good at it”。後は、journalismでも勉強して、コミュニケーションを学んで欲しい。』ということ。異なるバックグランドの人たちが協業しないと実現しないのがナノテクだが、皆それぞれ出身領域によって考え方も使う言葉も全て違う。それを融合するのがHPのナノテク研究で最も難しいところだ。自分と違う思考回路の人たちに自分の専門領域を理解してもらうコミュニケーション能力が最も重要だ」と。

FYI….

Estonia Genome Project

以前仕事で知り合った人から、転職の案内が来た。

エストニア人のゲノム情報データベースの独占利用権を持つEGeen Internationalという会社に移ったのだそうだ。といっても、Egeenの本社はシリコンバレーにあって、エストニアには支社があるだけ。知り合いはそのEgeenのBusiness DevelopmentのVPになったという。

エストニアは人口140万人の小国だが、歴史的に移民や侵攻が多いため、遺伝子が交じり合っていて、この国で得られた結果はヨーロッパ・北米に広く通用するのだそうだ。

エストニアでは、2000年12月に議会で正式に法律を制定、遺伝子情報を広く国民から集められる仕組みを整えたとのこと。Estonia Genome Projectのサイトを見ると、いったん集めたデータはコード化して個人とはリンクできないようにするとか、本人が希望したらゲノムデータバンクから永久にゲノムデータを消去するとか、いろいろなルールが書いてある。

このゲノム情報と、医師が診断した個々人の疾病情報をデータベース化、NPOであるEstonian Genome Project Foundationに集積する。ここまでは個人のプライバシーという問題こそあれ、まぁありかな、という感じだが、ここからがすごい。

このNPOとは別にEgeenという会社をシリコンバレーに設立、データのライセンスビジネスで儲けようというのである。ゲノムゲノムといわているが、ゲノムビジネスの肝は「コンテンツ」。遺伝子診断を高速で行うDNAチップは、半導体製造に似た技術でできるため、日本の総合電機企業なども手がけている。短期的には早い安い小さい、といった、「どうやって解析するか」も大事ではあるが、長期的な利益の源泉は「何を解析するのか」、つまりどの遺伝子がどの病気と関連あるのか、という方にあると考えられている。PCで言えば、ハードとOSみたいなものだ。ハードはどんどんコモディティー化するが、優れたソフトは長期にわたってマージンを確保できる。

一方、どの遺伝子がどの病気と関連するのかを割り出しただけでよいというものでもない。単に病気との関連だけではなく、その遺伝子を利用した診断・治療ができて初めて広く利用されるようになるからだ。

例えばハンチントン舞踏病という恐ろしい遺伝病がある。症状の一つが痙攣して踊るように見えることで「舞踏病」と呼ばれているが治療法はない。最後は痴呆状態になり死んでいく。病的遺伝子を持っていればほぼ100%発病するが、それが予めわかっても手の施しようはない。そんなの知りたくないではないか。

というわけで、
1)病気と遺伝子の関係がわかって
2)さらにその遺伝子を用いた治療が編み出される
という二つが必要なわけで、気が長い話ではあるが、実際2)で世に出る薬が出ればそのリターンは大きい。たとえでなくても、各種の製薬会社にリサーチユースで1)のデータベースをライセンスできる。しかも、エストニアでは国民は自分のデータが解析された結果に関しての所有権は持たない、と前述のホームページに書いてある。以前ある疾病者のグループが、自分たちの疾病に関する遺伝子情報の権利を主張したことがあったのだが、そういう事態を避けるためだろう。

・・・というようなことは頭ではわかっても、法律を制定してまで国民データを商用利用しようなんていうことはそうそうできるものではない。しかもその上、そのライセンス営業会社をシリコンバレーに作っちゃうセンス。。。

私は、エストニアと聞いても、Dilbertに出てくる、国家が全て沼に覆われたElboniaしか思い浮かばないという情けない状態にあるのだが、やるなぁエストニア。

DilbertのElbonia人

MBA doesn’t help….or does it?

Business Weekの6月30日号のFor Gen X, It’s Paradise Lost(subscriptionが必要です)は、Generation Xと呼ばれる、1965年ごろから1975年ごろに生まれた世代が、超ウキウキの楽しい90年代を過ごした後、今となっては高失業率に苦しんでいるという話。Harvard, Stanford, WhartonなどのMBAや、i-bankなどで高給取りだった人たちなどが、どんな不遇を囲っているかというようなことが実例つきで書いてある。

Wharton MBAの例では、Pottery Barn(おしゃれな家具屋兼雑貨屋ですね)で時給8ドルで働いたり。Harvardのビジネススクールを優等で卒業した人の例は、こんな感じ:

Michael Laskoff made all the right moves. Graduating early from the University of Chicago with honors, he married his college girlfriend and went on to finish his Harvard University MBA in ’94 in the top 10% of his class. He quickly landed a cushy job in New York at the tony boutique investment bank Furman Selz (ING ) For the über-achieving golden boy, it seemed as if nothing could ever go wrong. Back then, he even had hair.

(überはドイツ語の「上」であるが、高等な、至高の、といった意味で使われるものの、今回みたいにちょっと馬鹿にしたニュアンスを含むこともある。)

そんな彼だが、、、

Today, the 35-year-old Laskoff laughs about the absurdity of his rise and fall. His risk-averse best friend from B-school, who stayed put at Goldman, Sachs & Co., is now a managing director, pulling in compensation in the millions every year. Laskoff, on the other hand, has the kind of bungee-jumper résumé corporate recruiters often wince at. He’s hoping to make a new career out of a field he knows well — getting canned — by ministering to the only growth market he sees: the unemployed. For a book advance estimated at $50,000, he’s writing Landing on the Right Side of Your Ass: A Handbook for the Recently Fired, due out in January from Random House Inc.

ということで、じっとGoldman Sachsで働き続けた友達が年収数億円となるなか、あちこち点々とした彼は、どこにも行く先がないというもの。で、失業者向けの本を書くことにした、というオチ。

確かにこういう感じの人は私の周りにもいる。。。。。何でもできるばっかりに、バブル時にいろいろな職を点々としたため、これといって決め技となるスキルがないため景気が悪くなったら仕事が見つからない、という人たちである。「何でもできるばっかりに」がポイントで、「地頭さえよければどんな人材でも喉から手が出るほど欲しい」という求人側がたくさんいた好景気の時に得られた収入と、どんぴしゃのスキルがなければ職がない今とのギャップが激しい。記事では

It might be hard to muster sympathy for the same dot-com wunderkinder who made you feel hopelessly lame

ということで「景気のいいときにブイブイ言わしてた人たちに同情するのは難しい」ということだけど、(またドイツ語チックにwonder kidをWunderkinderと称している)こればかりは運だから、そんな厳しいことを言わないでも、と思うんだけど。

But as far as making enough for a decent living and a secure retirement goes, no generation since the Great Depression has had the odds so stacked against it

同情に値するのは、「まっとうな暮らしをしてかつ老後のたくわえをする」という大学院まで出た人の望みとしては相当ささやかな幸せと言ってもいいことですら厳しいという現実。こんなにひどいのは大恐慌以来ということ。確かに私のクラスメートでも、データエントリーのバイトしている人がいるしなぁ、、、、と思っていたら

One Stanford University MBA scooped sherbet in a Palo Alto ice cream shop.

おお、これは私のクラスメートではないか!!!Stanfordに程近いTown & Countryというショッピングモールの一角で最近アイスクリーム屋を始めたのだ。アイスクリーム屋の店員ではなくて、夫婦でアイスクリームのフランチャイズを買って店主になったのではあるが、しかしそれでも結構衝撃的ではある。以前、私のオフィスの大家の息子がドライクリーニング屋になったという話を書いたが(息子殿はStanfordのPh.Dだのマスターだのを複数持っており、バブル前は某大手クレジットカード会社のVPだったにもかかわらず)・・・「仕事がないなら、自分で始める」ということとは思うが、いきなりリテールというのはかなり驚きである。

ちなみに、このアイスクリーム屋は私のオフィスのすぐそば。明日暑かったら、アイス食べに行ってみようか・・・。

B級グルメ続き

昨日書いたPho屋と同じ通りの、ちょっと101寄りにはベトナムサンドイッチ屋があるのだが、その店のことが今朝のSan Jose Mercuryの朝刊のBusiness Mondayという紙面のトップに。

Vietnamese Food Enterprise Enters Mainstream

ベトナムで事業をしていた家族が、ベトナム戦争後いくばくかの資産を持ち出してボートピープルとしてアメリカに脱出、家族経営のレストランチェーンを経営しているが、今後ベトナム人以外もターゲットにして全国展開してIPOするというプランと、今までどおり家族経営でやっていこうというプランの間で揺れている、という話。

アメリカに住むベトナム人は大別すると3種類。軍人を中心とする終戦前に脱出した第一陣、商人を中心とする終戦直後にボートピープルとして脱出した第二陣、最後が米国軍人との混血などでベトナムから合法的に米国に退去してきた第三陣だ。このサンドイッチ屋の主は、第二陣である。

ちなみに、ベトナムサンドイッチというのは一度食べたら癖になる味。その中身は、
1)表面はカリっとサクサクだが、簡単に噛み切れるくらいのやわらかさのバゲットに
2)ニンジンと大根の甘酢漬け(日本で言うところのナマス、ですね)とフレンチのパテ、サーディンを核として、さらにしょうゆをパンに塗る
3)おまけで野菜(トマトなど)や肉類(チキン・ビーフの薄切りとか)をはさむ

ポイントは1と2。かりっとサクサクながら簡単に噛み切れるという二つの条件を満たすバゲットなどそうそうないので、まずはベトナムサンドイッチ専門店に行かないとならない。2は意外な組み合わせなのだが、なんとも言えず美味である。しかも激安。2ドルをきるのはざらだ。普通のアメリカンなサンドイッチは7-8ドルすることもあるのに比べると、目からウロコの価格付けとなっている。

ベトナムに行くと、自転車の後ろに木の箱を載せただけの簡易屋台があちこちの道端にあって、バゲットとパテと野菜でサンドイッチを作って売っている。そういえば、香港に長期滞在していた時、ローカル新聞を読んでいたら「ベトナムからの難民が、難民キャンプとなっている集団住宅の一室でバゲット屋を開業、大繁盛しているが、危険な場所なのでドアも開けられず、郵便受け越しにバゲットと料金のやり取りをしている」というニュースが載っていたこともあった。

Cafe Sua Da(カフェスエダー、を東北弁風に発音する)というベトナム風アイスコーヒーもGood。ガラスのコップに氷とコンデンスミルクが入ったものがやってくる。別途自分のテーブルで濃厚なエスプレッソをドリップして、それをダーっとコップに注いでかき混ぜて飲む。

ベトナムは中国とフランスの影響が交じり合って、こういうアジアとヨーロッパ味のミックスの食べ物がたくさんあり、大変素晴らしい国なのでありました。