Corporate VC is not dead!

Wall Street JournalのAOL Time Warner Keeps Venture Investing in Strategy(すみません。有料です。)

AOLは、1998年にVC投資のファンドを2億5千万ドルで設立した。アーリーステージの技術企業に投資するためのもの。投資先の中にはTivoなども含まれる。70社投資したうち、20%が上場したか買収され、今のところ1億5千万ドルのリターンがある。残っている40社のうち、さらに上場する企業もあるので、まぁとんとんかな、というところ。

で、このファンドの位置づけはというと:
The venture fund, which typically invests between $2 million and $5 million per company, barely registers a blip on AOL Time Warner’s bottom line.

ちっぽけな額なので、投資利益は関係ない、と。

But it plays a key strategic role on behalf of its parent: making sure AOL Time Warner keeps its finger on the pulse of promising new technologies.

が、戦略的には大事、と続く。将来が期待される新たな技術の会社の「脈をはかる」のが目的だと。

企業による戦略的なベンチャー投資は、いろいろな会社がやっている。数十億円くらいの小さいものから数百億円とかかなり大規模なものまでいろいろ。それも、時流にしたがって「はやりすたり」があるのだが、はやっているときにどっと投資して、すたっているときにやめる、というのはもちろん危険。

そもそも「はやっている」ときは、投資先の企業価値も高くなるから高買いすることになる。「すたっている」ときは、安くいい会社に投資できるチャンス。

さらに、戦略的投資先のベンチャーの技術をうまく自社事業に活用するには、それに適した人材を組織のあちこちに配置、経験を積んでもらう必要もある。例えば、「社内の技術と、社外の技術を冷静に比較できる能力」と、「社外のものの方がいいとなったときに、自社の開発をやめさせられる力」の両方を持った人材が欠かせない。前者の「比較能力」を持った人材を突然どこかから連れてきても、後者の「社内での信頼または政治力」を得るには時間がかかる。それ以外にもいろんな社内システムが構築されている必要があり、その実現には「組織的ラーニング」の蓄積が必要なのである。

ということで、企業のベンチャー投資は、本気で、かつ淡々とそうめんのようにながーくやっていくことで、いぶし金的効果が出てくるものなのだ。

インテルキャピタルも、今だに250人の人材を世界において投資をし続けているとのこと。

Z会も言っている通り「継続は力なり」なのであります。

Google・Friendster・星新一の世界

Googleが出会い系ベンチャー(というと超胡散臭い響きだが)のFriendsterを買うのではないかという噂。CNETのGoogle in need of a Friendster indeed?などなど。噂の元は「FriendsterのCEOがGoogleの社食で複数回目撃されたから」と。Googleの社食といえば、Greatful Deadのお抱えシェフだった人が料理をしているので有名(とういうほどでもないが・・・)。

Friendsterのポイントは、自分のプロファイルが知り合いの知り合いだけに公開されるところ。Match.comのように不特定多数と出会うのではなく、「友達の友達(のそのまた友達)」だけの閉じたネットワーク。

アメリカ人のカップルというのは、似たような経歴と収入レベルということが多く、玉の輿も逆玉もあまりない。カップル単位で行動することが基本なので、話が合わないと友達の輪に入れないという問題もあるし、まぁ、カップル=究極の友達、というコンセプトがあるので、友達になれないようだとカップルにもなれない、ということもある。クリントン夫妻のようにダンナ=政治家、奥さん=弁護士、みたいなのが普通。付き合っているだけのカップルでも通常はそういう感じ。

加えて、友達の友達、ということであれば、少なくとも最低限のチェックが済んでいるということも大きい。Match.comで知り合った人とデートしたら、変な人で怖かった経験がある、というシングルの友達は結構いる。

ちなみに、アメリカの出会いサイトは、日本のような合コン友達探しではなく、真剣にパートナーを探そう、というシリアスなものが多い。(以前書いたDiversity and Dating in Silicon Valley をご参照下さい。)

ということで密かに爆発的人気を呼んでいる(らしい)Friendster。デートだけでなく、州知事選で選挙活動に使った候補もいたとのこと。(Schewarzeneggerではなく、Arianna Huffingtonという人。彼女は昨日選挙戦から脱落したが。)

ちなみに、Googleは今年になってBloggerサイトをやっているPyraを買収、さらに昨日9月30日には、6月にStanfordからスピンアウトしたばかりのKaltixを買収。どちらも恐らく数億円(もしかしたらそれ以下)のミニミニディール。Friendsterもエンジェルから100万ドル集めただけで無料サービス中だから、かなり小ぶり。しかもどれも数名のチームの会社なので、買収先のチームを社内に統合するのも楽。(実際、新入社員を採用するのとそれほど大きく違わないはず)中々お買い物上手だ。

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星新一のショートショートに、全ての人が個人情報入りの携帯端末を持っている、という未来社会が出てくるものがあった。知らない人と会ったら、携帯端末(もしかしたらカードだったかも・・・)を取り出して、相互のプロファイルをシンクすると、共通の趣味や話題が検索され、それをネタに話をする。話の中では、バーで出会った見ず知らずの2人が、「まずはお近づきに」みたいな感じでシンクするのだが、「共通項なし」で「だめか」と会話もなく黙々とそれぞれ酒を飲む、というものだったと記憶している。

Friendsterも共通の知り合いがいて、何らかの話題があることが保障された人の中から、自分と気が合いそうなプロファイル(とルックス)を持った人とだけ知り合う、というシステムなわけで、子供の頃に読んだSFの世界がじわじわと実現していることを感じます。

Bundling is king

San Jose Mercury NewsのAdobe readies software upgradeはAdobeが自社ソフトをバンドルして、MicrosoftのOfficeのように販売することにした、という話。

いわく
Adobe plans to announce new versions of its Photoshop, Illustrator, InDesign and GoLive software, elements of its “creative professional” line of products.  And for the first time, Adobe will showcase them as if they are one big bundled product.

ソフトウェアビジネスは上手にバンドルした人の勝ちである。これを理解することなくソフトウェアビジネスをすることがあってはならない究極のルールだ。

Adobeはウェブデザイン市場に弱い。自社のInDesignで業界トップQuarkXpressに対抗しようとしてきたが、今までは果たせず。そこで自社の人気製品とInDesignをバンドルすることでQuarkを駆逐しよう、というのが今回の作戦である。ヨーロッパでのトライアルでは、PhotoshopにバンドルされたInDesignを買った人の多くはQuarkからInDesignに乗り換えた、とAdobeは言う。

なぜバンドルしたもの勝ちなのか。

Officeの例で考えてみる。(わかってるよ、という方は飛ばしてください)
Aさん:ワードは1万円でも買うが、エクセルは5000円でしか買わない。エクセルのかわりに競合の1-2-3だったら1万円で買う。
Bさん:ワードには5000円しか出したくないが、競合の一太郎だったら1万円で買う。エクセルだったら1万円でも買う。

という2人がいたとする。Microsoftがワードとエクセルをバラバラに1万円で売ったとすると、Aさんはワードと1-2-3をそれぞれ1万円で買う。Bさんは一太郎とエクセルをそれぞれ1万円で買う。マイクロソフトの儲けは2万円である。そこで、Microsoftがワードとエクセルをバンドルして1万5千円で売ったとする。とAさんもBさんも「だったら」ということでバンドル製品を買い、1-2-3も一太郎も買わなくなる。すると、マイクロソフトの儲けは3万円で競合の儲けは0になる。そこでめでたくも恐ろしくもMicrosoftのモノポリーになるのである。

「そんなこと言い出したらなんだってバンドルした方の勝ちではないか」と思うかもしれないがそうではない。なぜなら
1)多くの製品には製造コストがかかる。通常、製造量を増やしていくと、規模の経済が働いて、大量生産のコストメリットが出るが、ある量まで達すると、管理コストをはじめとしたもろもろの無駄が多くなって、製造コストがかさみはじめる。あまりに大量に売れると、作るコストがかさんで、安く売ると、売っただけ損をすることにもなりかねず、「適切量」を売る競合にコスト構造で負けてしまう。

が、ソフトウェアは開発コストはもちろんかかるが、コピーするのはほとんど無料。

2)多くの製品では、所有コストもある。「車を買ったらトレーラーもプレゼント」といわれても、「そんなの置く場所がない」という人も多かろう。がソフトウェアはまぁ、メモリがちょっと食われる程度。CDに焼いてその辺においておいてもよい。

以上二つの特徴がソフトウェアにはあることが、「ソフトウェアはバンドルしたもん勝ち」を招いている。つまり「大きいことはいいことだ」ということになってしまう。(もちろん「ただでもいらない」というレベルのソフトではバンドルの効果はありません)

とはいうものの、ソフトウェアにはバンドルする製品をたくさん持つ大きなプレーヤーを不利にする(可能性のある)要因もある。

1)レイヤー・アーキテクチャの戦い:アプリケーション、ミドルウエア、OSなど各種のレイヤーのしのぎあい、さらにはサーバ側、クライアント側などネットワークのどこにインテリジェンスをおくのかといったアーキテクチャの戦いがあって、常に戦略地図が流動的

2)すばやいプレーヤーのイノベーション:ソフトウェアは知恵の産物。知恵を最大限に活用するのには小さな会社の方が効率がよい、となれば、図体が大きいこと事態がマイナス要因になる

ということで、「大きなプレーヤー」=絶対優位=モノポリー、という3段論法は成り立たないということで、Microsoftが未だに分割されずに残っているわけだ。

が、しかし。Adobeは今までなんでバンドルしなかったんだろう?それに、Adobe以外にも、「本当だったらバンドルしたら儲かりそうな製品群を持つ会社」というのがありそうだ。どなたか、思いついたら教えてください・・・・。

Microsoft – Schwarzenegger – 宇宙人

Microsoftを批判したセキュリティのスペシャリストが、コンサルティング会社を首になった。
Microsoft critic dismissed by @Stake

批判の内容は別に目新しいものではなく「MicrosoftのようにモノポリーのITインフラ会社がいると、セキュリティの脆弱性が増す」という議論を繰り返したもので「CyberInsecurity: The Cost of Monopoly」というのが問題のレポート。首になったのは、@Stakeという、セキュリティの世界では結構名の知れたコンサルティング会社のCTO。Microsoftは@Stakeの重要顧客ゆえ首。

CTO氏もナイーブだが、セキュリティの世界の人たちは理想論に燃えるこういう人たちが多い。セキュリティに限らず技術に関してディープな人はナイーブなことが多いが、まだセキュリティはそういう技術にディープな人=Geekが扱う初期ステージにある、ということもあるかもしれない。あと、セキュリティは、プライバシーとか、国際関係とか、いろいろと政治・主義的なものも絡むということもある。

さて、言わずもがななことを口にして首になった人もいれば、突付かれる弱みが一杯あるのに、メディアコントロールでしのいでいる人もいる。カリフォルニア州知事候補、Schwarzeneggerだ。過去のいくつかの女性蔑視発言、乱交や薬物使用など、いろいろと問題はあるのだが、立候補してから、とんとその手の話がゴシップ紙で取り上げられない。ゴシップを扱うメディアとしては、日本では週刊誌だが、その代わりにアメリカではタブロイド新聞があるあけで、スーパーのレジのところにズラーっと並んでいる。今だったら、時の人Schwarzeneggerをボロクソに叩く記事が満載でもおかしくないのだが、どれもこれも賞賛ばかり。その理由は・・・・
TABLOIDS STARRY-EYED FOR SCHWARZENEGGERをご覧あれ。Schwarzeneggerのビジネスパートナーがメディアに顔が利くので、しっかり圧力をかけている、という噂。

笑えるところではこんなのもある。
・・・one American Media tabloid, the Weekly World News, this week ran an “exclusive” about a politically savvy space alien throwing his otherworldly support behind Schwarzenegger. Under the screaming headline “Alien backs Arnold for governor!” the extraterrestrial not only lauds the actor, but vows to help amend the U.S. Constitution so the Austrian-born candidate can someday run for president.

タブロイド紙と言うのはもう滅茶苦茶なのが多いのだが、上の記事の出元のWeekly World Newsは宇宙人や魔法使い(!)などがネタの多くを占めるという、特に滅茶苦茶度が高いもの。そのWeekly World Newsによれば「エイリアンがSchwarzeneggerをバックアップ」している上、同じエイリアンたちが「米国憲法を改正して、オーストリア生まれのSchwarzeneggerが大統領に」とまでたくらんでいるんだそうだ。(外国生まれだと大統領にはなれない)恐るべしエイリアン。

それにしてもこの新聞、ヘッドラインを見ても「魔女が世界制覇の陰謀」「ブッシュの丸秘計画:月侵略」とかものすごい。人生相談は「鏡で自分を見ると、右肩の上に悪魔がいるんですがどうしたらいいでしょう」という質問に「それは死後の世界で苦しむ悪霊がパラレルワールドから時空の破れを通じて見え隠れしているもの。でも心配無用、あなたの守護霊に報告しておきました」てな答えだったり。

しかし、こんなものを読んでSchewarzeneggerに投票する人がいるんだろうか・・・結構いそうな気もする。あな恐ろしや。

イースター (RedEnvelope & Red Herring)

昨日24日水曜日にSan FranciscoのRedEnvelopeが上場した。RedEnvolopeは高級ギフトのオンラインショップ。そして今日25日にはRed Herringのオンライン版が復活。ECommerceの復活については何度か書いてきたが、その付随現象とでもいいましょうか。「復活祭」ということでイースターというタイトルにしてみました。

RedEnvelopeはこの6月までの3ヶ月の売上げが1770万ドルということだから、まだ年商1億ドルに届かない。しかも赤字。Googleなどの大規模上場が始まって錦鯉の池に紛れ込んだ金魚のようにかすんでしまわないよう、今のうちにGo!ということなのか・・・・ホンマに上場して大丈夫かね、という感じではあるが、健闘を祈る。1株14ドルで上場して、今after hours marketで14.51ドルだから、ちょっぴりだけ値上がりはしている。危なっかしい感じだが。

Red Envelopeは一般投資家もIPO株を購入できる、OpenIPOというプロセスを利用。詳しくはSan Jose MercuryのOpening up the IPO to smaller investorsへ。IPOというと、ある会社がどっと通常の市場に株を放出するかと思いきやそうではない。underwriterである投資銀行が、あちこちの機関投資家を回って、「こんな会社ありまっせ。お宅、いくらで何株くらいだったら買いますか」と聞いて回り、その感触を元に価格を設定して、割り当て販売するのだ。(この「聞いて回る」ツアーをRoad Showという。ちなみに、新作映画上映という意味でRoad Showという言葉を使っても、アメリカでは通じませんのであしからず)で、その機関投資家(年金ファンドとか、信託ファンドとか)は、一旦IPOする会社から直接株を買い、そのあとで株を市場に出す。こういうプロセスだから、一般人はIPO株を買うことは普通はできない。

バブル期には、このプロセスで悪人が暗躍した。まず投資銀行は、ごひいき先の機関投資家に優先的にIPO株を割り当てる。で、IPO価格をあえて低く設定する。そうすると、IPO後株価は急騰する。ごひいき先はここぞとばかり株を売り払って(flipする、という)、あっという間に巨万の利益を得る。でその利益の一部を手数料など様々な形で投資銀行に還元する。たくさん還元すると、次のIPOでまたたくさん割り当ててもらえる、という仕組みになっていた。OpenIPOを考案したBill Hambrecht氏いわく、flipで得られた利益の30%は投資銀行に還元されていたそうだ。

投資銀行側は低めに値付けするインセンティブが働くわけで、そうすると上場した企業の取り分は少なくなる。(市場に出てから第3者間で行われる取引のあがりは上場企業には入ってこないので)ひどい話だ。

「正直者が馬鹿を見る」という世界だったんである。ま、とはいうものの、結局最後には大事件になり、何人もの人が検挙され、粛清がかかったが・・・。

こうした不透明なIPOプロセスの代わりに、オンラインオークションでIPO株を一般投資家・機関投資家双方に平等な条件で売ろう、というのがOpenIPO。考案したBill Hambrechtが設立したブティック投資銀行WR Hambrechtの登録商標。

GoogleもOpenIPOを検討したが、それはもしかして一般の大手投資銀行に対して、IPOのunderwriting feeを値切るための手段かも、と記事は続く。IPOのunderwriting feeは通常7%。7千万ドル位が「大きいIPO」と「小さいIPO」の境目なので、「ちょっと大きめ」で1億ドルをIPOで集めると投資銀行の取り分は700万ドルという、莫大な額になるので、1%下げるだけでも意味がある。

一方、Red Herring to resurrect Web siteによれば、結局Red Herringの商標はDasarというフランスの会社が買って、そこがエディターを雇ってこれまで再開の準備を進めていたらしい。一時期200万ドルでも買い手がつかない、といわれていたから、もっと安く買ったのだろうか。とすれば、相当なお買い得だったのではないか。これからどれだけ事業を伸ばせるかにかかってはいるが。フランス人のお手並み拝見、というところか。

というわけで、OpenIPOという目新しい手段を使って、ECommmerce企業が上場、Red Herringは復活という、幸先のいい感じのする2日間でありました。

不景気と独立して働くこと

Business WeekのU.S.: Consumers Will Keep Carrying the Ball

景気の様々な指標は回復してきているのに、8月の雇用状況が悪化したことについて。
いわく”After all, consumers can’t possibly keep leading this recovery without a pickup in job growth, can they? ”

その一つの理由として独立・起業する人が増えている、ということが挙げられている。

・・・although the Labor Dept.’s survey of businesses shows continued layoffs, its survey of 60,000 households shows an increase of 868,000 jobs over the past year・・・558,000 jobs reflected people listing themselves as self-employed.

企業側は首を切っているのに、働く側の仕事は増えていて、その理由の一つは、実は55万8千人が独立事業者(というのか、要は誰かの会社で働いているのではなく、自分が自分のボスということ)だから、となっている。

It might be easy to dismiss the rise in self-employment as merely a way for some to deny their unemployed status. But the trend in proprietors’ income — earnings derived mostly from privately owned businesses — supports the idea that this jobless recovery is pushing more people to become successful entrepreneurs. Nonfarm proprietors’ income was up 9.1% in the year ended in July, a pace equal to the gains posted in the 1990s boom. These earnings, while 10% of all personal income, have accounted for nearly a quarter of the increase in overall income over the past year. Those gains partly explain why consumer demand is strong even while businesses are reluctant to hire.

最初の一文をちょっと解説すると、最近半年とか1年とか、長期にわたって仕事のない人が増えていて、プロジェクト単位で仕事を請け負ってしのいでいることも多い。で、さらには、何のプロジェクトもこなしていなくても、「職探し中」というにはあまりに長い失業は聞こえが悪いので、「失業中」という代わりに「consultant」という人もたくさんいる。

もちろん、本職のキャリアとしてコンサルタントをしている人たちもいる。私もそうなのだが、この間もそういう人たちと食事をしながら、「Consultingをしているというと、職探し中かと思われるのが困りもの。」という話題になった。私は自己紹介をするときは「I’m a consultant」といわずに、「I own a consulting company」とか言ったりするようにしたりと、いらぬ気苦労が必要な昨今である。

もとい、景気の悪さで、起業家が増えている、というのが記事の内容。私の周りを見ても、転職活動に見切りをつけて、自分の会社を作った、という人がたくさんいる。そういう人の中には、景気が良くなったらまた勤めに出る人もいるだろうが、このまま独立してやっていくという人生を選ぶ人もいるだろう。

「企業」の形が変わり、人々の意識が変わる中で、勤労形態も今後変わっていくことは間違いないが、その中で「独立して働く」という生き方を選ぶ人も増えるのではないか。

Free Agent Nation: The Future of Working for Yourselfという本もあったりする。アメリカで独立して働く人たちについてフィールドワーク的に調べた本だ。ちなみに、狭義には「独立して働く人」はentrepreneurとは言わない。あくまで「狭義には」だが。雇用を生み出すのがentrepreneur。自分でフリーランス的にやっていくのは気持ち的にはentrepreneurialだが、entrepreneurではない、ということ。でも、それはそれで中々味のある働き方なのである。組織でやっていくことが必ずしも効率的でない仕事もたくさんある。

ボスもいなきゃ、部下もいない、働く相手はみんなパートナーという形態を好ましいと思う人たちにはうってつけの働き方だ。

Microsoftの帝王学

Business2.0のBaby Billsは次世代の卓越したリーダーがMicrosoftの社内で育っているという話。タイトルは、アメリカの地域電話会社がBaby Bellsと呼ばれるのにもじって。

取り上げられている人材は
Eric Rudder 36才/Microsoft勤続14年
Chris Jones 34/12
J.Allard 34/12
Yusuf Mehdi 37/12
Steve Sinofsky 38/14
Martin Taylor 33/11
Tami Reller 39/19(Microsoftに買収されたGreat Plainsの生え抜き)

Eric RudderがSenior Vice President、Martin TaylorがStrategistというのを除くと、他はCorporate VPで、その上にGroup VPがいて、その上はCEOのSteve Ballmerである。つまり偉いんである。Microsoftといっても、イマイチ大企業という実感が薄い人もいるかもしれないが、営業利益が132億ドル、実に1.5兆円。ドコモの営業利益が1兆円、トヨタで1.3兆円といえば、どれくらいすごいかわかるだろうか。

そういう大企業の部長、本部長クラスが30代。といっても、日本も80年代初頭ごろまではそうだったんじゃないか。今となっては信じがたいが、その頃の日本は、大企業でも社員平均年齢20代後半なんていう会社がざらだったんである。

そういえば、「YASHA」というタイトルの吉田秋生の少女マンガがあった。遺伝子操作によって生まれた天才の双子が、老人を集中的に殺すウィルスをばら撒くという陰謀をめぐって戦う、というものだが、「ある年代以上の人がどうしても会社に来たくなくなるウィルス」を作ってばら撒いたら何が起こるだろうか・・・。

もとい。

ハイテク企業としてMicrosoftが異色な点は、生え抜きの人材が多いこと。人事に力点を置き、傑出した人材を生み出すので知られるGE並みのプログラムを実施して次世代リーダーを育成しているんだそうだ。もちろんずっと勝ち続けている企業だから辞めるインセンティブが低いということもあるが、ワシントン州Redmontにあるというのも異質。Silicon Valleyに本社を置かないことで、半ば人材の真空隔離状態を実現、社員流動を抑えている。もちろんその代わりに周りの会社から人材を引き抜きにくいのも真実ではあるが。会社所在地は戦略的に考えよう、というのがtake awayか。

MBAのトホホ

Business Week9月22日号の記事、What’s an MBA really worth?。オンラインでは有料だが、このリンクのところに近々記事に関してのオンラインchatの書き起こし原稿が無償でアップされるらしい。(chat自体は9月15日に済んでいるが、こちらもまだ。)

昨日紙媒体のほうの記事を読んでクラーイ気持ちになった。92年にMBAを取得した人の平均年収、というのを見たからだ。Stanfordの場合、サラリーが26万5千ドル、ボーナスが30万ドルとなっている。合計で56万ドルだ。トップ30校全部の平均でも、それぞれ16万8千ドル、27万3千ドルで合計44万ドル。Harvardで21万5千ドル、63万2千ドルで85万ドル、Georgetownで13万7千ドル、57万5千ドルで71万ドルであります。

もちろん、データの信頼度に関してはいろいろと突付けるところがあって、トップ30校の卒業生トータル5700人中、4800人にコンタクトして、うち回答したのは31%だけ。人生イマイチな人は回答を避ける、ということもあろうし、嘘をついてるヤツだっているだろう。それに平均の求め方は、この手の統計ではより有効と思われるmedian(中央値:回答結果を大きいほうから全部並べて、真ん中の数字を取る)ではなく、average(全部足して、人数で割っただけ)だ。これだと、一部の人が莫大に稼いでいると、全体としてひどく高いほうに偏った結果になる。例えば、Georgetownの例では、一人がボーナス1100万ドルで、46人分の合計ボーナスの40%以上をたたき出している。あと、92年卒というのがバブルのいい時期にいい場所にいた、ということもある。例えば、私の友人で、30半ばで引退してゴルフ三昧という枯れた暮らしをしている人も、Harvard MBAの92年卒だ。

とはいうものの、やっぱり平均は平均。

92年卒といえば卒業して10年目をちょっと過ぎたあたりである。10年目といえばアメリカの大学はどこもreunionで世界から卒業生が集まる。私は5年目のreunionにおととし行ったのだが、「人生イマイチで行きたくないから行かない」と参加しなかったクラスメートも結構いた。(別に仕事だけではなく、異性関係、結婚関係、子供関係など、イマイチの理由はさまざまであったが。仕事がイマイチでも、それ以外でとってもシアワセなことがあって本人が納得できていればそれでOKなのだが・・・・。)

昨日の夜、このBusiness Weekの記事を読んで、「そうかー10年目のreunionに堂々と参加するには、年収56万ドルか、それに見合うシアワセを構築していないといけないんだな。うちは夫婦で卒業生だから二人合わせて112万ドル、1億3千万円かぁ。。。それでまだ『平均』だもんなぁ。ハードル高いなぁ・・・」と思ってしまったのであった。

とはいうものの今朝になって「うーむ、私は根が暗い」と思い直した。
1)へへん、こんな統計嘘だねと笑い飛ばす
2)まぁ、平均くらいの能力はあるはずだから、淡々とやってれば平均くらいは楽勝、と楽天的に捕らえる
などなど、様々な考え方があるはずで、10年めのreunionに堂々といけるか、などというセコイことでため息ついてしまうのは、あまりに暗い。(暗いのも、それはそれで努力の源泉でもあるのだが・・・)

ちなみに、記事は、「MBAは役に立つ」という論調。集計結果の一部を紹介すると、平均年齢38歳ちょっと、平均部下数93人、一番多い勤め先は投資銀行で22%。89%がもう一度選択するとしてもbusiness schoolに行くと言い、80%はもう一度同じ学校を選ぶとのことです。

日本

ご無沙汰しました。日本出張中なのであります。明日帰りますが。短期間、かつ東京以外で1日半ということで、あまり人にも会わず。

1年以上ぶりの日本である。久しぶりに来ての感想は、「人間を健康にする日本というシステム」。

いやー。歩いた歩いた。。。PCの入った重いかばんで、ヒールのある靴で駅の階段やら地下街やらを歩くと5分10分でもよい運動だ。当たり前だが。歩く&電車コンビネーションの方がタクシーよりも早い。これも当たり前だが。超健康的である。

しかも、羽田から国内線に乗ったのだが、チェックインの際にちょっとした変更をしようとしたところ、担当の人が「確認してまいります」と消滅。10分たっても20分たっても帰ってこない。やがて離陸10分前を切り、掲示板から私の出る便の表示が消える。それからさらに2-3分して担当の方が戻ってきた。が、そこで「走りましょう!」といわれ、ゲートまで走ることに。しかも全速力です、全速力。重いカバンとヒールでこちらはハンディキャップ36という感じだ。ゲートにつくころには吐き気がして、心臓が痛いという情けないことに。

体が鍛わってしまう日本、であった。

一方、せっかく久しぶりの日本なので当地で最近はやっているらしき本を読もうと霧の桐野夏生の「グロテスク」という本を読んだ。本当にグロテスクであった。家柄、容姿、金持ちかどうかで如実にランキングが決まる私立高校(Q高校、と書いてあるが、モデルは明らかに慶応だ)に通った4人の女の子が、社会から足を踏み外していく様が書いてある。一人は総合職として大企業に入り、その中で挫折、娼婦になる。(これは街娼をして殺された東電OLがモデル)ほかの3人の人生も大差なく悲惨。うち2人は娼婦。

ちょっと前には、田口ランディの「コンセント」という本もあったが、こちらの主人公も女性で、最後に孤独に苦しむ現代人を癒すシャーマンのような存在になる。というのは比ゆで、実業のほうはこちらも娼婦。

「神のいない国の孤独」ということなのか。人間は何かと繋がっていると信じられることが、生きていくために必要なのだろう。宗教は、人を神と繋がっていると信じさせる究極のシステムであるが、日本人のほとんどが無宗教である。

一方で、娼婦とは、究極的に人と繋がることであり、タブーを自分の中に飲み込むことで、現世的問題を突き抜けた聖域に達するという暗示もある。カーマスートラの国インドでは、女装で共同生活をするヒジュラというアウト・カーストがあるが、その多くは男娼でもあり、しかもアウトカーストとして蔑まれつつ、宗教儀式にかかわることもあって畏敬されていると聞く。タブーと宗教は表裏一体なんである。

日本は人口密度が高い。いつでも人と袖振り合わせて生活している。しかも、多くの価値観を共有している。(いやいや、最近は日本も、、、と言う人も多かろうが、たとえばアメリカとの比較で言えば、まだまだ言わなくても通じること暗黙の共有概念がたくさんあるはずだ)それだけ多くの人と物理的にも心理的にも近しくあるのに孤独、という救いのなさが現代の日本の不幸なのではないか。そういう不幸が、グロテスクとコンセントというベストセラーが生まれる背景にとぐろを巻いている気がする。

ちなみに、日本に住んでいて、そういう不幸に押しつぶされそう、という人はカリフォルニアで暮らしてみるとよいかも。人口密度が低いから楽。「周囲の人々が、物理的にも心理的にも遠くにあるから孤独」っていうのは、論理にねじれがなくて健康的なのである。

ということで日本版、体の健康と心の健康でした。