戦後の闇市状態のPPE・人工呼吸器の世界争奪戦、そしてモサド

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Photo by Quino Al

(以下、4/21のtweetのまとめ)

日本でも無いと大騒ぎのマスクだが、もちろん世界でも無い。そして修羅の国もびっくりな争奪戦が世界のあちこちで繰り広げられている。

ドイツはスイスが輸入したマスクの出荷をブロック、一方でドイツに輸送中のマスクはタイの空港で飛行機から飛行機への積み替え中にアメリカが横取り。

アメリカはさらに国内でも、国・州・病院が相互に争っている。アメリカだけで世界の感染者の 1/3〜1/4 がいる状態でそんなことしてる場合ではないのだが、「医療機器、PPEの確保は州が自分でやれ」と大統領が公言していることもあり、国に横取りされるのを恐れた州や病院はマスク等を秘密裏に取り寄せようと画策している。

■マスク争奪戦の例

  • マサチューセッツ州は、3月だけで300万枚のマスクが国に奪取され、アメフトチームPatriotsのプライベートジェットを直接中国に送ってN95マスクを輸入。

  • 州の病院幹部は、KN95 (N95ですらない)とサージカルマスクを独自に輸入、空港まで取りに行き、一部開封して中身を確認した上で送金しようとしたところでFBIが登場して取られそうになったが、ネゴってフードサービスと書かれた2台の大型トラックに積み、1台取られてもいいように別経路を通らせて病院の倉庫へ。

States and Hospitals Are Essentially Smuggling PPE Because They’re Afraid the Feds Will Seize It

  • イリノイ州は一度300台の人工呼吸器を買ったと思ったら支払う前にニューヨーク州に取られてしまった。その反省から、マスク150万枚が輸入できることになった時は「先払い」という州政府購買としては前代未聞の事態に対応すべく、バッチ処理の支払いシステムをストップさせて小切手を当日作成、翌朝に州職員が200キロ離れたマクドナルドの駐車場まで直行し、直接業者に300万ドルの小切手を渡す。Breaking Badの麻薬取引のよう。

How a frantic trek to a McDonald’s parking lot shows the scramble states are facing for coronavirus supplies

  • 上記の「業者」の人のインタビューポッドキャスト↓。ものすごく面白いので聞いてみてください。なんと、医療機器もマスクも扱ったことのないオフィスの引越し業者さんで、しかしやたら人脈があってなんでも解決できるという、Breaking Badに出てくる弁護士Saulのような人。( Thanks to @honten )

Episode 992: The Mask Mover

  • カナダはマスク等取り寄せのため飛行機を2機中国に送ったが、時間内に積荷が来なかったので中国の空港から追い出されて空のまま帰ってきた。(ちなみに、アメリカ人から見たカナダ人は「穏やかないい人」というステレオタイプで、「やっぱりいい人には無理かもねぇ」とこのニュースを読んだアメリカ人たちがオンラインで語っていた。)

Trudeau: Canadian planes sent to China to pick up medical supplies returned empty

■しかしがんばっマスクをゲットしても安心はできない

なお、中国政府に近いメディアとして知られる新華社は「中国が医療製品の輸出を禁じたらアメリカはコロナウィルスの海に沈む」と3/4時点で言っており、大学の時の国際関係論の授業で公文俊平教授が「外交とは脅迫である」と言っていたのを思い出した。

というわけで、戦後の闇市というのはこういう感じだったのではないでしょうか。知らないけど。

■そして極め付け

  • イスラエルは世界最強(かもしれない)自国諜報機関モサドを使って世界から検査キット、人口呼吸器、マスク、防護服などを調達、さらにマスク製造方法ノウハウも諜報活動で入手して国内に月産2500万枚のマスク工場を設営中。

Israel’s Not-So-Secret Weapon in Coronavirus Fight: The Spies of Mossad

■いまこそ世界でものづくり立国

「SARS-Cov-2ウィルスが武漢のラボで作られた」などという証明できない疑惑を追求してる暇があったら、世界の国際機関・諜報機関はモサドのように今役に立つことをすべきではないでしょうか。

戦後の闇市状態のPPE・人工呼吸器の世界争奪戦、そしてモサド」への1件のフィードバック

  1. 日本の公的病院にて麻酔科として勤めています。N95が圧倒的に、そしてPPEも不足しています。世界でもその争奪戦ですが、こういう時は日本のお人よしが出ますね。
    そんなかでコロナ患者に挿管しなければならない状況です。見るに見かねたのか、中国からエアロゾルボックス(手が入いれる穴が2つあるアクリル板の箱、この中に患者の頭をいれて、麻酔科医が穴から手を入れて患者に挿管する)がふたつ送られてきました。
    渡邊さんの記事で、中国の戦略的物流支援に納得した次第です。有難う御座いました。

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