アメリカ人の交渉インターフェースは意外にマイルド


まだかわいかったLindsay Lohanの出世作、Mean Girlsより

国連で、くすくす笑われたのに対し、声を荒げてシャラップといった上田大使様におかれましては、その後いかがお過ごしでしょうか。

さて、自己主張が強くて議論好きで声がデカい印象の大きいアメリカ人だが、意外にも交渉の場では感情抑えめ。お店に苦情を言うのから、ビジネスのネゴまでいろいろあるが、その多くの場で、日本的な「怒りをあらわにする」というシーンにお目にかかることは滅多に無い。

議論が白熱、感情が高ぶって来た人の声が大きくなり、相手が話そうとしているのを遮って自分の論点を話しまくる、というのはあるが、逆に言えばそれくらいが「感情的な対応」の限界であって、「笑うなっ。黙れ!」なんて叱りつけるような口調で言ったらかなり異常な感じ。日本で、会議の途中でモノを投げつけたり、立ち上がって相手の胸ぐらを掴んだりしたらかなりクレージーな感じがすると思うが、それに匹敵するでしょうか。

これはなぜか、というに、アメリカで感情的で高圧的な態度を取ると、相手も反撃して来て、大変なことになるからではないか、と思うのでした。

昔ビジネススクールにいた頃、日本のとある国際的に著名な方が特別講師として1学期間授業を行ったことがあったが、かなり悲惨なことになってしまった。というのも、彼のものいいが、非常に上から視点で高圧的だったからだ。「世界でXXという業績を上げて来た私から見て」的な枕詞があちこちに。(といっても、日本の偉い人としては極めて普通のレベル。むしろ、軽妙洒脱な感じだった。)ジョークに至るまで、「僕って神様だけど」みたいなものだったりして、鼻っ柱の強いビジネススクールの学生は俄然戦闘モードに入った。

そもそも私が行っていたスタンフォードのMBAコースは、学生の教師に対する態度がひどいので有名なところだった。ノーベル賞候補(その後本当にノーベル賞をもらった)の教授に「You are wrong!」と言い切る学生もいたし、つまらない授業では教師をおちょくる発言続出。授業中にトイレ行ったり食事したり傍若無人。(あまりにボロボロな扱いを受けたため自分の母親にヘルプを出し、母親が授業に出て生徒に圧力をかけようとした新米の男性教師までいたらしい。「教師の母親」ですよ。その教師はさすがにクビになったようだが。)ハーバードのビジネスクールから遊びに来て聴講した友達が「おまえたち、なんなの?」と驚愕していた。

そういう「サメの海」みたいなところで「僕って神様」発言をしてしまった特別講師。彼が一言発言するたびに、嵐のようなチャチャが入った。「こういう反証もある。だからあなたの論理は間違っている」「あなたが言っていることは単なる1エピソードに過ぎず普遍性が無い」などなど。「偉い人」としてのキャリアが相当に長くなっていた彼は、そんなベーシックな反論を矢継ぎ早に受けることに慣れていなかったのだろう。上手く切り返しができず、2時間の授業で用意したチャート数十枚のうち3−4枚しか話すことができず、ひたすら攻撃を受け続け、憮然とした面持ちで授業を終了していた。(それ以降何度も授業があったが、毎回似たようなことになり、本当にお気の毒であった。アメリカ人の生徒でも「教師叩きに必死な生徒たちはひどい。業績ある教師の良い経験をもっと吸収できるようにした方が自分たちのためなのに」と言っている人たちはいた。)

アメリカは、

「偉そうにすると周りがへりくだってくれる」

のではなく

「偉そうにすると周りから突き上げを食らう」

という傾向が強い。これは「出る杭は打たれる」とは別の話で、きちんと成果を出せば尊敬される。しかし、非論理的な「偉そう」は反発される。日本と違って、人間関係的に下の人からも強い反発を食らう。そして、学校、仕事と、成長のいろいろな側面で「偉そうにしてボコボコにされる」という試練を経て、「偉そうにせずに相手を説得する」か、または、「偉そうにするが、その結果として雨霰とやってくる反論に対応するための強力な論旨や証拠を身につけ完全武装する」というどちらかを身につけていくのでありましょう。

+++

そういえば、何年か前、サンフランシスコの市内で、路上に停めた自分の車の横に近くのクリーニング屋の車が二重駐車していて出られなくなった若い男性が、驚くほどの大声で

「F–king s–t!  Jesus Christ! F–k! F–k!」

と怒鳴り散らしていたことがあった。(無理矢理和訳すると「くっそ野郎!っざけんな!!ばっかやろー!!」みたいな。)しょえーと思っていたら、そのままクリーニング屋に入って行った彼は、声の大きさだけ同じまま、

「Hi, I think you’ve parked your van next to my car.  Can you move it? ….OK, thanks! 」

(どうも〜、そちらのバンが僕の車の横に止まってるみたいなんだけど動かしてもらえます?・・・ありがとう!)

と朗らかに言っていて、「うーむ、さすがアメリカ人、怒鳴り散らすほど怒っていても相手にはマイルドに伝えるわけね」と思ったことがありました。クリーニング屋も血の気が多くて、いきなり銃で撃たれたりしたら嫌だものね。

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Steve Jobsの最後の公的なスピーチ。Cupertino市議会での、本社ビル建設許可を受けるためのもので、Jobsが市に3万人の新しい雇用をもたらすと言っているわけだが、13:20で「ついでに市に無料無線インターネットを提供して」という議員からの図々しい申し出に、「いや、それ、我々が払った税金で市が提供するものでしょ?税金払わなくていいなら提供してもいいけど」と切り返し。こういう楽しい切り返しがスタンダードですなぁ。ちなみに、建設まだ本格的に始まってないです。

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Steve Jobsのスピーチ聞き取れますか?

リスニング向上のためのiPhoneアプリ:Listen-IT

アメリカ人の交渉インターフェースは意外にマイルド」への3件のフィードバック

  1. ジョブズのプレゼンテーション、楽しませて頂きました。
    彼は最後まで地元の英雄だったんですね。
    両親が肺がんでなくなっていたなんて知りませんでした。
    それと、その会社がある街に世界中の超優秀な人々が集まってくる…なんて、そんな会社、日本にあったかなあとちょっと考えてしまいました。
    一番驚いたのは、クパチーノの役人の側の人達がアジア系ばかりだったこと。
    また面白い映像があったらご紹介ください。

    いいね

  2. 私もこの、ビデオ、とても面白かったし、アジア系が多いんだな、と思いました♪
    ビジネススクールの先生、確かにアメリカ人の学生とコミュニケートする仕方を間違えた感じもするし、そんなに授業の進行に影響が出てるんだったら、「この先の質問はオフィスアワーにしてください。」と言って先に進めてしまえば良かったと思います。ただ千賀さんが、シャラップ大使は問題があったけど、その先生は別にオーケーだと思ったとしたら、学生側の人種差別とか外国人差別もあったかもと思います。
    そのあたり、教育学とかに研究があるだろうと思うけど、教師の人種とか訛りとか性別とか、想像以上に学生は反応するもんなんですよね。もちろんずば抜けて優秀な教師の価値を見抜く力は、アメリカ人の学生にもあると思うけど、中間の人に対する厳しさは、やはり差別されている人に対しての方がひどい感じがします。

    いいね

  3. ピンバック: ギャルのコミュニケーションスタイルの日米差 | On Off and Beyond

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