チャットもメールも通話も国に監視されてましたーPRISMとイランのISPの昔話

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ただ今アメリカを揺るがす最大の話題はWWDC・・・じゃなくてPRISM。国がこっそり国民の通信データを監視してたことが明るみに出た。収集されていたデータはAT&TとVerizonの通信データに加え、Google、Apple、Facebook、Yahooなど9社のもの。収集情報は、メール、チャット、ビデオ、写真、格納データ、VoIP通話、ファイル転送、ビデオコンファレンス、容疑者のアクティビティ(ログイン等)、ソーシャルネットワーク活動の詳細、その他特別に要請した内容、となっている。年間運用費用2千万ドルこんな超巨大データセンターまで建設してデータ解析にいそしんでいるらしい。そのプログラムの名前がPRISM。やばいよねぇ、これ。

国家機関NSAのコントラクタとして働いていたSnowdenという29才がマスコミにリークしたことで明るみに出た。

ちなみに、NSAはNational Security Agencyの略で、通信・暗号などのIT的情報活動を行う国家機関。CIAより秘密度が高く、1952年設立だが90年代半ばくらいまでは存在自体がほとんど知られていなかった。しかしDCに巨大な本部ビルがあり、NSAの表札こそ出ていなかったものの「秘密の機関とかいって、国の首都にこんな巨大なビルがあったら秘密でもなんでもなくね?」と笑っているローカルの人たちはいたらしい(その頃DCに住んでいたダンナ談。)CIAについては、辞めたエージェントが本を書くケースが多くかなりいろいろわかっているが、これまでNSAエージェントが同様の情報開示をしたことはなく、それなりの秘密を保ってきた。私はと言えば、映画007で、ハリーベリーがNSAエージェントとして登場するのがあり、ああいう人間離れした肢体の人がたくさん働いているところという印象が拭えないのですが、さすがにそれはないですよね。

そしてNSAの仕事を大量に受注していたのがブーズアレンハミルトンというコンサルティング会社。なんと社員の4人に3人が国家の機密情報を扱う資格(security clearance)を持っており、諜報・防衛機関向けがメインの仕事とのこと。・・・えー、そうなんだ。ブーズアレン、昔就職活動した時に面接に行ったことあったんだけど、そんな会社とは知らなんだ。

そしてそのブーズアレンの社員としてNSAのシステム管理者をしていたのが今回リークしたSnowden。経歴は、特殊部隊希望で軍に入隊→NSAで秘密施設の警備員→CIAでITセキュリティ従事→日本の米軍基地内NSA施設でコントラクタとして勤務→ブーズアレンで現職。ということで、かなり一貫したキャリア。日本にもいたのね。つか、日本にもNSAの施設があるのね。

そして、国家が国民のプライバシーを秘密裏に侵害しているのは許すまじき行為、という義憤に燃えて今回のリークとなったという趣旨のインタビュー行い、ただいま香港に潜伏中。(本人は、潜伏しているのではなく、香港の法律に則って公式にアメリカ政府と戦う、としている)。

・・・・というのがこれまでの流れ。近々NSAのトップが「我々の収集しているデータ詳細」を発表するらしいがどうなることやら。しかも、Snowdenがリークしようとしたのは41ページのパワーポイントの資料で、そのうち公表されているのは表紙を含む5枚のみ。残りはリークされたワシントンポスト等が、これはちょっとヤバすぎるから公表できない、と保留している。えー、残りはなにー、と誰もが気になるところ。リーク後の香港でのインタビューでは、「NSAはこれまでに世界で6万1千件のハッキングを行い、うち数百件は中国が対象。ルータなどネットワークのバックボーンがターゲットで、一件のハッキングで数十万コンピュータ分の情報が得られる」とか。Snowden死ねばいいのに、とNSAは思っていることでしょう。相手が国家諜報機関となると冗談じゃないから怖いのだが。

ちなみに、私が心を奪われたのは、リークされたパワーポイント資料の90年代風なインパクトあるビジュアル。ごちゃごちゃとロゴを貼付けたうるさいヘッダー、色も形も統一性の無い枠や線、言いたいことをベタうちしただけの論理性に欠ける表記(例:冒頭のチャートの緑の矢印はだんだん右上がりだが、縦軸には意味が無い。意味が無いなら水平の横向きの線にして欲しい。じゃなかったらデータ量を縦軸にして欲しいぞ)。見た瞬間に変な汗がにじんだ。21世紀にこのようなものを作る人がいようとは・・・。表紙の発表者の名前が消されているので、これはSnowden作ではないのでありましょうか。まさかプロのブーズアレンのコンサルタントが作ったんじゃないよね?(5ページはこちらで見られます)。

なお、こちらのWiredの記事によれば、別のNSAのオペレータは、広範な電話の盗聴が行われている、と語っているとしている。それには海外特派員と国内の家族の会話などの非常に私的なものも含まれるとのこと。上述のPRISMでは「収集しているのは、誰が誰といつ通話しているかというデータだけで、何を話しているかという内容は含まれない」というのが現状の国の公式発表だが、この先どうなることやら。

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余談ながら、時は遡って1997年のこと。スタンフォード大学院の卒業式を前に、スイス人のクラスメートが帰国してしまった。なんで卒業式まで待てなかったのかな、と思っていたのだが、後から衝撃の事実を噂で聞くこととなった。

いわく、クラスメート君はイランに彼女がいた。2人は毎日時間を決めてメールをやりとりすることで疑似チャットをしていた。(まだチャットが一般的で無かった時代のことです)。するとある日彼女から、「あなたはひどい人」「新しい彼氏ができた」「あなたのことなど好きじゃない」というような破壊的メッセージが次々に届き、彼は半泣きでルームメートに相談。ルームメートが、「もしかしたら何か大きな誤解があるかもしれない。電話してみろ」と言うと、「電話代高いし」。「いや、そんなこと言っている場合じゃない。今を逃したら二度とその彼女とやり直せないかもしれないぞ」といういことで、スイス人君はイランの彼女に国際電話をかけた。すると、電話の向こうで彼女も怒っている。彼女の方にもスイス人君から、「新しい彼女ができた」「もう別れよう」みたいなメールが届いている、と。2人は最初は感情的な言い争いになったのだが、話しているうちに「本当に相手が書いたのではないメールが届いていたらしい」ということに納得がいき、イランのISPで誰かがメールをリアルタイムに書き換えて相互に送信しているのではないか、と推測。イランの警察にそれを通報し、翌日、同じ時間に彼らが通信をはじめ、おかしなメールが行き交ったところでイラン当局がISPの担当者のところに現れ、現行犯で逮捕した・・・という話。ということで、変なメールは偽造だったことがわかったのだが、それでも2人の間はぎくしゃくしてしまったので、彼女に会うため彼は卒業式を待たずに出国となったそうだ。以上、噂なので、細かいところは間違っているかもしれませんが。

この話を聞いた時は「ISPに即座に介入して逮捕するって、イランの警察もすごいな」と思ったのだが、これって、実はイラン政府が海外(またはアメリカ)との通信を全部監視しており、たまたまその担当者が退屈に負けていたずらした、という事件だったのでは、と今にしてみれば思う。

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プライバシーなんてないも同然ですな。っていうか、このPRISMに関する私のブログエントリーも、CIAか何かの方がせっせと英訳させられているかもしれませんが、つまらない話ですみません。翻訳って大変ですよね。お疲れさまです。

 

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チャットもメールも通話も国に監視されてましたーPRISMとイランのISPの昔話」への3件のフィードバック

  1. すみません。
    >国家が国民のプライバシーを秘密裏に侵害しているのは許すべき行為

    …許されざる行為、ですよね。

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  2. ギャング映画で、「電話はまずい」、で、直接あって話をつけたり、政治映画で、「家の外で話そう」とか、で、とうぜん、「ネットはまずい」という映画ができそうですね。あと、伝言ビジネスとかできるかも。頭の中に記憶して伝えるだけの仕事なんだけど、世界中を飛び回るとか。

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  3. chikaです。
    >許されざる行為
    そうですorz 「許すべき行為ではない」、というのを推敲して変なところを削除してしまいました・・・ご指摘ありがとうございます。
    >頭の中に記憶して伝えるだけの仕事なんだけど、世界中を飛び回る
    Johnny MnemonicのKeanu Reevesの仕事ですね。

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