Megan’s Lawと犯罪者の人権と費用対効果

読売オンラインに「恐ろしい」アプリと称してLife360を紹介した。家族に閉じたロケーションベースのSNSで、登録した家族間では、お互いの所在地がリアルタイムでいつでも筒抜け!という、日本のちょい悪親父(死語?)、DQN奥様、不良少年少女等には耐え難いかもしれないアプリでございます。

我が家のアスペルガー気味ダンナは、自分のポケットの携帯が鳴っても気づかない人なので、Life360で場所がわかると時々便利。海外出張中もどこにいるかわかる。

で、その中でちょっとだけ書いたが、Life360には、「周囲の性犯罪者を見る」という機能がある。

Megan’s Law

前も書いたことがありますが、Megan’s Lawのおさらい。

アメリカにはMegan’s Lawという通称名で呼ばれる法律があって、過去に性犯罪を犯した人の個人情報を司法当局が公開することになっている。どこまでデータを公開するかは州ごとに違うが、基本は、氏名、写真、住所、有罪判決日、犯罪の種類。州によっては未成年(18歳未満)を対象とした犯罪者だけが対象だったり、性犯罪全てが対象だったりする。犯罪者側は、住所や勤務先を変更したらその度に報告の義務がある。報告義務は最低10年で、最長生涯。

なぜこんな法律ができたかというと、Megan Kankaという7歳の女の子がレイプされて殺されたため。近所に住んでいる男性から「子犬を見せてあげる」と言われてついて行ったMeganは、彼の自宅に誘い込まれて殺されてしまった。

加害者は他の場所で過去に2回小さな女の子を襲って逮捕されていたが、近所の人は誰もそれを知らなかった。「わかっていれば防げたのに」ということで、制定されたのがMegan’s Law。カリフォルニアでは、このためのサイトがあり、そこで情報が公開されており、かつその情報は誰でも再利用することができる。

Life360上での見え方

Life360で地図を開くとこんな風になっている。

とても小さな紫色の小さなドットは過去警察が出動した案件。交通事故もあれば車上荒らしもあれば強盗もある。上のイメージはパロアルトのダウンタウン=繁華街(一応)なので、「酔っぱらい収監」みたいなのも結構あるため点が多い。(閑静な住宅街だったりするとオレンジの点は極めて少なく、存在する点々も「不信な人が歩いていると通報があったが、近所の電気工事に来た職人さんでした」みたいなのもあったりする。)

そして、紫色の白抜きドットがMegan’s Lawで登録されている性犯罪者。各マークをタップするとその人の情報が表示される。

近所にこういう人がいたらやっぱり怖いが、時々「19歳の男の子が17歳のガールフレンドといろいろしていたら、ガールフレンドの親が怒って告訴、男子は性犯罪者に」という話しもあるので、そういう人のことを考えると、こんな風に自分の情報がずっと誰にでも見えてしまうのはさぞや恐ろしいことだろうとも思う。(似たようなので逆のケースも読んだことがある。性犯罪者になったのは女の子の方。)

Megan’s Lawの効果のほどは疑問

恐ろしいだけではなく、そのデータベースの管理にえらいコストがかかっていることは想像に難くないMegan’s Lawだが、実はその効果のほどは疑問視されている。2008年のニュージャージーでの調査では、「効果なし」という結果が出てしまった。再犯率が下がらなかったので、既にデータベースに乗ってしまっている人への効果なし。初犯率も下がらなかったので、「こんなデータベースに乗ってしまったら大変だ」という脅し効果もなし。

基本データ好きの私個人としては「効果ないならやめたら?」と思うが、でもやっぱり、「効果がなかろうがコストがかかろうが、絶対に知りたい」という人はたくさんいるわけで、かつ「未成年に性犯罪を犯すような鬼畜の人権など知らん」という人も多いわけで(明らかに犯罪なものに関しては私もそう思う)、いまさら「やっぱりMegan’s Lawのデータベースやめた」とはなりにくいことでしょう。

 

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