ベンチャー投資におけるバリュエーションの隠し玉:ストックオプションプール

Facebook上場で1000人超のミリオネアが誕生するかも、、、と書きましたが、それはもちろん、みんなストックオプションをもらっているから。

(最近新しく雇用した人については、Facebookは、オプションではなくrestricted stock=制限付き生株を出しているらしいですが)。

して、このストックオプションが、ベンチャー増資において、正味のバリュエーションを引き下げる方向に働くというお話です。ものすごくテクニカルな話なので、興味のある方だけ読んで下さい。

ベンチャー投資におけるバリュエーションと株数計算の基本

オプションの話の前に、まず、ベンチャー投資においてバリュエーションがどう使われるか簡単におさらい。

バリュエーションは、

「pre-money $8M、post-money $10M」

といった言い方をする。(M=million)。

これは、

「投資前の会社の価値が8百万ドルで、(それに2百万ドルの"money"を投資する結果)、投資直後の会社の価値は1000万ドル」

ということ。

投資家に渡す株の数を計算する時大事なのは、pre-money $8Mの方。まず、投資を受ける前に発行していた株式数とpre-moneyで一株の値段を計算する。800万(8M)株を既に発行していたとしたら、それが$8Mの価値があるということになるので、

会社の価値$8M÷8M株=$1/株

で、一株の価値は$1。

ということは、$2Mの投資は

$2M ÷ $1/株 =2M株

ということで、投資家に2M株を渡すことになる。

ここまではえらくシンプルですね。

ストックオプションプールが入る場合のバリュエーション

投資を受ける場合は、まずterm sheetというのをもらうことになる。本チャンの契約書は付随契約や添付書類なども含めると100枚近い(もっとあるかも)長大なものなので、まずは骨子となる事項だけ合意するためのものがterm sheet。通常数枚。

で、そこに、pre-money valuation $8Mと書いてある。

簡易化のためファウンダーは一人で、その人が持っている8M株がこれまでに発行した株の全てだとすると、800万株が800万ドルで

「なるほど、一株1ドルか」

と思うわけです。

しかし、よーく見ると、term sheetに

「一株の値段は$0.875」

との爆弾発言が。

目を皿のようにして読むと、

「$8Mのpre-money valutaionは、投資後の総株式の10%をストックオプションプールとして設定するとして、そのオプションプールを含んだものが対象となる」

と書いてある。

ややこしいのだが、つまり、

「投資を受けたんだから、この先たくさん雇うでしょ?その人たちに出すオプションの分の株は、オプションプールという名前で先に確保した上で、うちらの投資を受けてね」

と投資家が言っているのである。

「それがどうした」

と思うかもしれないが、これが結構バリュエーションに効いてくるのです。

上の例で言うと、post-money 1000万ドルの価値のうち、10%分はストックオプションプール分に割り当てられることになるので、ファウンダーの持分800万株のトータルの価値は、実質、pre-moneyの800万ドルから100万ドル引いた700万ドルしかない。すると、一株の価値は

700万ドル ÷ 800万株 = $0.875/株

200万ドル投資を受けるとなると

200万ドル ÷ $0.875 = 2,285,714株

となって、ストックオプションプールがない場合より、30万株近く余計に渡すことになる。

汎用性のある式にすると、ストックオプションを含まない実質のpre-money valuationは

post-money valuation × ((pre-money valuation)/(post-money valuation)-stock option pool %)

となるわけですね。(めんどくさ)。

昨今は、こういう「ストックオプションプールをpre-moneyの計算に入れるので、実質のpre-moneyは下がっちゃう」という投資契約が普通になってしまったので仕方ないのだが、なんとなく

「えー、でもpre-money $8Mって言ったじゃん」

という文句の一つも言いたくなるところ。月々30ドルポッキリだと思って電話の契約をしたのに、最初の請求書を見たら、いろいろな諸経費が乗って40ドルになっていた的な騙された感がなきにしもあらず。

ですので、term sheetをもらったら、option poolがpre-moneyの計算に入っているのか、入っている場合、指定されたoption poolは、10%なのか15%なのか20%なのか、よーく見て、頑張って下げるべくネゴしましょう。(10%以下にするのは難しいと思いますが)。

先々オプションが余計に必要になったら結局オプションプールを積み増すことになるが、その場合は投資家も痛み分けとなります。(もう投資しちゃった分に関しては株価を下げられないので)。

ベンチャー投資におけるバリュエーションの隠し玉:ストックオプションプール」への5件のフィードバック

  1. OptionとRSUとESPPの違いとかも大きいですよね。自分もこの地に来るまでは(来てからもしばらくは)全く違いがわかりませんでした;;

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  2. chikaです。
    オプション系は、もらう側も勉強しなきゃならなくて大変ですよねー。税金問題とかあるし。
    なお、ESPPは、日本でもやってる会社たくさんあります。「持株会」などと呼ばれるのがそれ。RSU(またはrestricted shares)は、日本では先例がないのであまりやらない方が良い、と聞きましたが本当でしょうか、磯崎さん(って、よそ様に、自分のブログで質問してどうするw)

    いいね

  3. なぜストックオプションを発行すると株数がどんどん増えてしまうのか理解できました。ありがとうございます。

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