さて、そろそろ、バブルの気配が濃厚に立ち込めてきたシリコンバレーの昨今。テクノロジー企業の上場申請が相次ぎ、未上場ベンチャーの企業価値は上昇し、未上場株の妖しいセカンダリーマーケットも躍進中。
私個人的には、身近でバブルが起こるのはこれで人生4回目です。こんな感じ:
- 1回目:日本の不動産バブル (もしかして近代日本史上、最初で最後のバブル?)
- 2回目:シリコンバレーのドットコムバブル
- 3回目:アメリカのサブプライム住宅ローンバブル
- 4回目:インターネットバブル(なのか?) ← いまここ
以下長いが、サマリーは、「バブルは当面避けられない。いい面もある。シリコンバレー的には、10年に1回のバブルなので、『シリコンバレーで働きたい!』という人は、上向いている今の間にもぐりこむのが吉」ということ。
覚えていますか♪ ドットコムバブルの狂乱
ドットコムバブルの際は、世の余剰資金がどっとインターネットベンチャーに流れ込んだ。Grouponのようなベンチャーが$1 billion (10億ドル)も調達するのは前代未聞と思うかもしれないが、当時も同じレベルで資金が流れていた。
たとえば、インキュベータのIdealabは2000年1月に$1 billion調達(ちなみにバリュエーションは$9 B)、そして、なんと、
8ヶ月で$800 million使ってしまった
ああ、すばらしきかなバブル。(ちなみに、まだIdealabは健在です。これもすごい。)
そのIdealabがインキュベートしたeToysは1999年にIPO、初日のバリュエーションは$7.8 billion。そして2001年に倒産。
グローサリー宅配のWebvanは$1 billionの倉庫システム(と115脚の高価なAeron chair)を発注、そして倒産。
ベンチャー投資だけでなく、公開株式市場でも、ドットコム企業に膨大な資金が流れ、多くはAeron chairやら、サラリーやらとなってバブル崩壊とともに雲散霧消。
行き場のなくなったお金は不動産へ・・・
しかし、ドットコムバブル崩壊後も投資(投機?)資金がなくなったわけではない。
そうしたお金の向かう先として、ドットコムの代わりに出てきたのが不動産。Silicon GraphicsとNetscapeのファウンダーのJim Clarkも、テクノロジーベンチャーから足を洗ってフロリダの不動産開発へ。個人的な知人でも、ドットコムバブルで儲けたお金で不動産投資をしている人があちこちに。
そしてその不動産も、2005~6年ごろにはやばい感じになる。
ドットコムで儲けてない人も、なけなしの資金でぼろぼろの家を買い、気合でリフォームして転売して鞘を抜いたりしはじめた。
旅行先で知り合った、普通の公務員と普通の学校教師のカップルが、
「アリゾナで開発中の住宅3軒に手付金払った。実際にローンが始まるまでに転売する予定」
と、淡々と語る。
テレビをつければ、
「これであなたも金持ちになれる!いまなら、不動産投資がすぐわかるDVDがたったXXドルで!」
みたいなインフォマーシャル。
「さすがにそろそろ終わりかな」感はあった。そして、その「終わり」は、想像を上回る急激さだったわけだが。(日本で「リーマンショック」っていう、あれですね。)
バブル所感
何度か書いてきたが、ドットコムバブルの時は、
「歴史に残るバブルを二度も現地で体験できた私は、人類史に残る稀な人間かも」
と思ったものだ。
が、しかし、その後もバブルが来るわ来るわ。5年に一回ペース。景気循環の法則的には、50年前後を周期とするKondratiev wave、20年前後のKuznetz、10年前後のJuglar、4年前後のKitchinと、周期的にアップダウンがくるらしいが、その最短レベルの入れ替わり立ち代わりぶりだ。
このめまぐるしいバブル到来に思うのは、
「要は、お金が余ってるのね」
ということ。5年前の痛みをうっかり忘れて投機的なものに手を出しちゃうくらいたくさんあるみたい。
お金が多すぎる?
といっても、世界に流通しているお金の量(と物価との均衡)は昔からそれほど劇的に代わっていないと思うのだが、多分、お金が回るスピードが高まってるんじゃないでしょうか。
まず、ローンやクレジットなどが普及し、持ってないお金まで使えるようになった。昔はお金を稼いで、はじめてやっと使う段となり、そこではじめて経済が活性化したわけだが、今や稼ぐ前から経済が活性化する。住宅ローンで家を買って、その家のために家具から何からそろえたりとか。
それに、お金を国際的に移動するのが昔よりとても簡単になった。昔だったら、自分の国で使えないお金はそのまま死蔵されてたのが、「だったら隣の国に投資しとこう」てなことができるようになっている。
ほかにもいろいろあるだろうが、いずれにせよ、お金が世の中をぐるぐる回る速度は、30年前くらいと比べてもとても速くなっている。
で、その影響が、5年に一回の好景気・・・・・・ならぬ、5年に一回の破壊的バブルとなっているのでは、と。
これをコントロールするのはどうするんでしょうね。
国際的な資金の流動化から考えると、世界中央銀行の設立、とか?あと100年くらいすると、「世界中央銀行という機能のなかった2000年前後は、世界規模のバブルが頻発し・・・」なんて歴史の教科書に書かれているのか?
とはいえ、ここ10年、20年でコントロールできる気はしない。ということは、この後も5年ごとくらいにバブルで一喜一憂する覚悟をしておくのが身のためか。
バブル(とその崩壊)は悪いことばかりではない
バブルによって、どっと世の関心が発展領域に集まる。「サブプライムローン」がその対象なのはちょっとアレだが、ドットコムバブル、そして今のインターネットバブルは、大量の資金、大量の頭脳が投入されることで、量が質を生み、きらりと光るすばらしい発展のネタがきちんと誕生している。
とはいえ、「ダメねた」もたくさん登場するわけだが、それは、数年でバブルがはじけた際に粛々と退場となる。これをさくさく繰り返すことで、発展スピードが高速化する。
中のヒト的には痛いが、結構合理的なシステムでもある。
シリコンバレーに来るなら今
で、今やってきつつある新たなバブルにどんな意味があるかというと、
「シリコンバレーで働きたいのだったら、チャンスは今」
ですね。
バブル=雇用、なり。
シリコンバレー地区全体でみると、失業率はいまだ10%近いが、そういうマクロなことは、素敵なプログラミングができるエンジニアや、美しいUIが生み出せるデザイナーや、ユーザビリティの神となれるUXのヒトには関係ない。どの会社の求人ページも求人情報でいっぱいだ。ZyngaとかFacebookとかLinkedInとかは無論のこと。
とはいえ、ビザを取るのは依然として大変なわけだが、エンジニア御用達H1Bも、今年の分はまだまだたくさんある。(移民局が出すビザの総数が年間で決まっており、それに達したら終わり)。大きい会社だったら取ってくれる可能性もなくはない。がんばってください。
以前からブログ拝読させていただいています。
ドットコムバブルがはじけた頃だと思うのですが、その頃にシリコンバレーの近くに数ヶ月いた事があります。気のせいかもしれませんが街に元気がなく、オフィスがクローズしていったりするのをみて大変だなぁ、と思っていました。起業家の方の集まりに紛れ込ませてもらったときも、どちらかというと弁護士や会計士等のプロフェッショナルの人たちのほうが多いみたいな状態でした。
でも、そんな中でも、起業したり、サポートしたりするカルチャーを維持してきたからこそ、今のバブルを享受できているのかもしれませんね。。。
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日本人は貯金好きなので、当面バブルは来ないかもしれませんね。
ベンチャーキャピタルから得たお金がアーロンチェアに化ける。でたらめなお金の使い方をしているベンチャーは大体倒産します。
小さく始めて大きく育てるのが通常の事業ですから、何百億円もの資金調達は本来必要ないのではないかとも思います。
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