2010/6/19(土) 14:00~16:45、大手町で行われるセミナーで、スピーチとパネルディスカッションに参加します。テーマは「ヒラメキ X ツナガル X ブログ」ということで、「アイディアを創出してビジネスを行っている」「SNS、ブログ、ツイッターなどの周辺ビジネスを行っている」というのがスピーカーの共通項だそうです。
スピーカーは、クリエーターコミュニティー事業のロフトワーク社長の林さん、ブログプラットフォームを提供するシックス・アパートの日本社長の関さん、このブログの右のほうに広告が出てますが、それを提供しているアジャイルメディアの社長の徳力さん。パネルでお話できるのが楽しみです。
さて、で、私は何を話すのか。
「ヒラメキ」として、MVPについて、いろいろ語りたいと思っています。MVPはminimum viable productの略。
「製品として最低限成立するシンプルな機能だけを備えたモノ」
という意味で、インターネット事業をどうやってゼロから生み出すか、という時に語られるコンセプトなり。
だいたいですな、新しいことを始める、というのは大変なことなので、複雑で精緻なものを作り込もうとすると、作ってる間に萎えちゃったりする。また、「これが世に求められるはずだ」と思って作り始めても、蓋を開けてみると、全然違ってたりすることも多い。なので、無駄な時間を、閉じこもってモノづくりにかける「岩窟王型」ではなく、最低限の機能だけを備えたシンプルな製品・サービスを作って、それを世に出し、ユーザーのフィードバックを受けながら、改善・改良していくのが成功につながる、というお話。
ここで大事なのは、
「シンプルだったらなんでもいいわけではない」
ということ。無駄を削ぎ落した機能は、単にシンプルなだけではなく、他にない新奇なものでなければならないのでした。他にはない意外な機能であるが故に、完璧じゃなくても「あー、こういうの欲しかった!」「おーこりゃスゴイ」とわかってくれるアーリーアダプターがついてくる。
そしてそのユーザーとのやりとりを元に、試行錯誤しながら完成度を上げて行く。
試行錯誤するにも全然ユーザーがいないとフィードバックも無いわけで、「新しい試みをしたら、ブツブツいったり喜んだりするユーザーが統計的有意なだけいる」というのが結構大事で、ゆえにMVPには、「新奇で他にない魅力」が求められるわけです。
(この「試行錯誤」をiterationと呼びます)。
アーリーアダプターにすら見向きもされない機能だったらどうするんじゃい、という問題がありますが、その時も何分にも最低限の時間で作ったモノなので、大々的に方向転換して別のモノ・機能を作り出す余力が残っている。
(この「大々的に方向転換する」ことをpivotといいます。)
+++
そしてこのMVPの考え方はまた、インターネット事業に限らず、ありとあらゆる製品・サービス開発にも適用できる。もっというと、キャリアや人間関係の構築にも適用できる「哲学」でもあります。
前にキャリア構築における自分のMVP化の重要性というエントリーにも書きましたが、準備万端じゃなくても次のステップに移って新しい環境に自分をさらすのが大事、みたいな。
ある意味ブログって言うのもそうですな。丸々一冊本に書いてから市場に出すのではなく、考える事の中での「ああ、これってなんか大事だよね」という核だけを書く。最初は短い記事として書かれ、それが反響を呼んだので本になる、というのって結構多いですよね。Chris Andersonのロングテールもしかり。つまり、最初のエントリーがMVPだったわけです。
+++
・・・というようなことを話そうと思います。MVPのついでに、最近のシリコンバレーのアーリーステージのベンチャー起業動向なんかも余談的に織り交ぜるかも。興味あります?
こんなことを聞きたい、などなどご意見があればコメントに書いてください。
イベントは無料。ただし申し込みが必要です。詳細・お申し込みは、こちらからどうぞ。
これはどこの世界でも、言えるんじゃないですかね。シリコンバレーのようなところでなくても、学者の世界もやっぱり共同作業の部分って大事ですね。言い古されたいいかただと、「三人寄れば文殊の知恵」ですか。もちろん、千賀さんのおっしゃるとおり、他の二人が寄ってきてくれないから、自分も切磋琢磨しなくてはいけないのですが。講演頑張ってください。
いいねいいね
最近Appleの取材等でご活躍の林信行さん(nobi)が「永遠のベータ」という言葉で、同様のことを解説されていますね。
ご参考まで。
いいねいいね
(なんか投稿を拒否されたんでもう一回ポストします。二重だったらちょっと編集したんで”さっきのを”消してください)
MVPってなるほどですね。とりあえず始める時は後から考えると冷や汗ものみたいなのでもスタートしちゃって、集まってきてくれたお客さんを仲間みたいにして進んで行くのが大事というのは非常に実感します。これの一個後のエントリの話と繋げると、「DIY的に行動できる態勢」に持っていって、思いついたらすぐ実行→フィードバックでドンドン行くというのはあらゆる世界で新しいことをやるには唯一の道だと思います。
ただまあ、とりあえずアーリーアダプターを集めるとこまで行ったとして、前にどこかのエントリでおっしゃってましたように、そこからは「いろんな人の言うこと聞けばいい」ってもんでもなくて、「捨てる客拾う客」が明確にならないと、あるサイズ以上にはなっていかないとこありますよね。なんか「サイトのインターフェースのこのボタンがもうちょっと大きい方がわかりやすい」とかいうレベルの改善なら聞けば聞くだけ良いと思いますけど、どういう方向でどういう商品にするのかっていうコアコンセプト的なところで言うと。ある意味「捨てる客」の選択をどれだけ明確にできるかが大事だったりする。
コアの世界観が固まる前に露出をむやみに増やすとその客に満遍なく引っ張られて平凡になっていく(というか”直近の表層的なトレンド”に巻き込まれて自分の処ならではのものの蓄積に集中できなくなる)というのはどうしてもあるので、ある程度アーリーアダプターが付いたら、そこから一気に露出を増やして行こうとしないでその中で煮詰めに煮詰めてコアを作るフェーズが必要なこともある気がします。最近雨後のタケノコみたいにネットゲーム(パズルとかの簡単なのじゃなくてRPGとかシミュレーションとか)の広告を見るんですけど、いくらMVPっつっても粗製乱造しすぎだろという感じがログイン画面見ただけで漂ってきたりします(笑)まあ、ああいうのの開発にはコストが多大にかかるので、粘って作れるのは相当恵まれてるプレイヤーだけなのはわかりますが、しかしね。お前虚しくないの?みたいな。そこで「内的基準に従うための金策」っていうのこそ恥も外聞もなくやるべきことだと僕は思います。アメリカだとこういうのが楽そうでいいなあとは思いますね。
青臭いことを言うようですがなんか、ロックバンドがデビューするって言うときに、明日のライブに+10人客呼ぶ方向と、100万人に聞いてもらえる曲を作る方向って正反対ぐらいに違うと思うんですよね。ある意味対象のアーリーアダプターが少人数である方が、そこを深く深く掘っていくことで”普遍的なニーズ”に迫っていけるところがあるような。
個人的な体験としていうと、「どこにもない蓄積してるんじゃね?」っていう活動が出来ている時にはそれ自体が結構健全な興奮を生むので、それが積み重なって行くと「いつかはわからんけどいつか爆発しないわけないだろ」っていうような根拠不明な自信が湧いてきたりします。それが出来ていなくて、小さい範囲で傷をなめあっているだけ・・・発展性は全然ないとかいう状態になる可能性もまあ、なくはないですけど、でもたぶんそういう風になったら自分でわかると思うんですよね。
ま、そんなの何の確証もないじゃないかと言われると全くそのとおりなんですけど(笑)そこはそれ、例のstay hungry, stay foolishで!
ある意味「このまま小さく終わっちゃったらそれはそれでいいや。毎日自分が納得してることやってるし充実してるからいいだろ(しかし同時にこのままでは終わらないだろうという確固たる自信の気持ちはあるがね)」っていうよくわからん矛盾した心境を維持することが、焦らずちゃんと蓄積していくには大事だなと最近は思っています。ダメもとっぽい清々しさはありつつ確信もあるみたいな。
いいねいいね