特にコンピュータサイエンス(CS)系を専攻した人の初任給相場がとんでもないことになっている。椅子から転げ落ちそうになった・・・というのは嘘だが、目が丸くなるくらいには驚いた。情報元はシリコンバレーの人事コンサルタント。
一流どころのCS系専攻の4大卒(Stanford, Berkley, Princeton+同等レベル)の初任給が9万ドル。同様の大学のCSの修士は12万ドルとか行っちゃうこともあるらしい。博士はさらに+1〜2割は軽く行くでしょう。
1ドル90円として4大卒が800万円、修士が1100万円ってこと。1ドル110円だったら・・・・というのは遠い目をしながら暗算してみて下さい。
2006年に給与相場のエントリーを書いたが、そこからまた3割くらい上がった感じ。
いわく、2008年にストックオプションスキャンダルがあって、オプションを減らす企業が増え、そのかわりにキャッシュを厚くするようになったのでキャッシュ部分の相場が上がってしまったらしい。
とはいえ、初任給以降の相場は「やや上向き」程度で抑えられていて、「3割も上がる」という風にはなっていない。
ということは、多くの会社で、
「ううむ、経験5年の社員と、新入社員が同じ給料になってしまった」(または逆転してしまった)
といった悩みが生じていそう。(なお、プログラマ以外はここまでの暴騰はしてないと思います。詳しい方がいたらコメントください。)
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「2008年に給与相場が上がったとはいえ、その後の不景気で下がっていないのか」
と疑問に思う方もいるかも知れない。
しかし、前より低い給料の仕事につくのは失業して困っている人だけ。しかし、そうして低い給料に甘んじた人も、職探しを続ける「仮面浪人」状態になるだけで、結局はよりよい給料の会社に転職してしまうケースが多い。よって、全体の相場は高止まり。
むしろ、レイオフがあると、パフォーマンスの悪い人から切られはじめる傾向がある。もちろんレイオフされる人が必ずしもパフォーマンスが悪いわけではなく、特定の部門まるごとレイオフ、なんてこともよくある。なのでハイレベルな人がレイオフされることもあるのだが、そういう人はなんだかんだと次の仕事があるので、元の給与レベルに収斂する。一方、どうしても仕事が無い人は別のエリアに移っていくか、これまでとは全く違う仕事(家の改築屋さんとか)に移ったりする。
つまり、
「景気が悪くなると、ローパフォーマーができる仕事自体が消えていく。」
「ローパフォーマー」には二種類あって、個人的にスキルレベルが低い人もいれば、属する業界そのものが縮小傾向・低利益化にあるため本人のスキルがどれほど高くてもパフォーマンスを上げられない人もいる。そのいずれにおいても、景気が悪くなるとパフォーマンスの低い仕事が消える。
でもハイレベルな人の仕事、成長傾向の仕事は消えない。
結果として、
「景気が悪くなると、給与水準が上がる」
ということが起こるのであった。
2006年に書いた給与水準に関するエントリーで参照したグラフに如実に現れてます。
シリコンバレーの業界ごとの雇用者数と給与水準が2002年から2005年にかけてどう変わったか、というもの。暗い緑が雇用者数の変化、明るい緑が給与水準の変化。殆どの業界で雇用が減ったのに給与水準は上がっているのがわかると思います。
この時と同じ変化が過去2年くらいでも起こった、という感じかと。ただし、今回のシリコンバレーの不景気はドットコムバブル崩壊後に比べれば軽いですが。
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ちなみにこの「不景気になると給与水準が上がる」というのの前提としては、
1)企業はどれほど景気が悪くても打って出ることを考えてイノベーションを続ける
2)異業種間も含めた人材の流動性がある
というのが大事。「今いる人が小さくなっていくパイを奪い合う」ということだと、不景気になったら当然給与水準は下がりますので。
シリコンバレー住民です。
IT業界ではないのですが、「その仕事ができる人の数>ポジションの数」というエリアがあって、そこでは08年以降給与水準は下がっている印象が強いです。
自社と限られた近隣同業者の相場しかわからないんですが、08年以降はそれまで企業に属さずにやっていた人々からのアクセスが増えてきて、競争が激しくなった結果、こちらから見ると良い人が安い水準で獲得できる状況だったと思います。(今年に入ってからはやや上向きのようですが。)
相対的に高スキルの要求されるポジションについて、その数が減るかわりに給与水準は維持ないし上昇することについては全く異論ないのですが、たとえば、これから職を得ようとする人が以前と比べて(確率的に)高い給与が得られる状況か?というと、そのおいしいポジションを取れる確率が下がっている&そこから外れた場合は給与水準が以前よりは下がっているということから、決してうれしくはないということではないかと考えます。
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シリコンバレーの給与相場情報は、いつも興味深く拝見させて戴いてます。
日本は、パイの縮小にデフレが加わり、イノベーションなんて全く感じない状況ですが。
シリコンバレーでは、最初に人財にも大きく投資し、後は結果次第って感じですかね。いかにもシリコンバレーらしい!
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初任給で9万ドルって、年収だといくらになるんでしょう・・・。すごい世界ですね。
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あ、失礼、初任給か。でもすごいですね。
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こんにちは。
「景気が悪くなると、ローパフォーマーができる仕事自体が消えていく。」
まさしくその通りだと思います。
日本で働いていますが、最近は、(ローパフォーマーでもできるような)時間が必要な仕事はどんどん無くなってきており(クライアントが依頼しなくなった)、誰もやっていないことや特定の人にしかできない(パフォーマンスが求められる)仕事の量は少しずつ増えています。
いつも興味深く拝見させて頂いておりますが、今回のエントリーは最近感じていたことが整理できて、すごくためになりました。
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シリコンバレーはパラダイスだなあ。
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「景気が悪くなると、ローパフォーマーができる仕事自体が消えていく。」
というのは、ちょっと言い方をかえると、大学の世界にも使えそう。大学の場合、先生のランクは大きく分けて、3種類。
終身雇用権(テニュア)を持っている人。
終身雇用権向けのコース(テニュア・トラック)に乗っている人。
1年契約の非常勤講師。
テニュアを持っている人を首にするのは至難の業なので、まず切られるのは、1年契約の講師と、テニュアトラックの新しいポジションを作るためのお金。次にテニュアトラックの人が、テニュアに上がれない人が増える。と同時に、テニュアもらっている人には、「お前らのポジションは守ってやってるんだから、一クラス辺りの学生を増やすように!」とプレッシャーがかかる。
要するにアメリカの大学で起きていることは、日本の企業に似てる? ランク、あるいは年齢が上の人を温存し、若い人のポジションを作らない。。。これが長期化しないといいのですが。。。
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日本だとハイパフォーマーが斬られて、ローパフォーマーが居座るというのが日常ですね。ハイパフォーマーは高級取りでもあるので、パフォーマンス意識のない経営者にとっては高コスト人材でしかありませんから。
そしてコストパフォーマンスは悪化の一途を辿っております。
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確かに高い給料標準ですが、シリコンバレーは渡辺さんがいつも書かれているように生活費が高いですよね。。。税金で30%以上無くなってしまうし。アパートも一人暮らしをしたければ13万/月以上がすぐに家賃に消えるし。シリコンバレーで育った人達と話していましたが、初任給それぐらい貰っている人でもアパートに住むのが高くてもったいないんで25歳(男性)でもいまだに親と2人の妹と育った家で住んでいるそうです。その実家も過去20年で値があがり、アメリカの標準でははっきり言ってそんなに良い家でもなく、周りの家族もいまだにアンテナが家の上に立っていて(役には立たないでしょうが)車だって本当に庶民用で、周りは全てアジア圏の人ばかりですが、ななんと1億2千万円の価値があるそうです。最近近くに引っ越してきた若い子持ちのカップルの旦那さんは医者で年収8千万円だそうです。(それぐらいないとそのあたりの家を買えない。。。)いくらお金があっても「足りない。。。」と思ってしまうのシリコンバレー。どうなんでしょうねえ。。。
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chikaです。
>以前と比べて(確率的に)高い給与が得られる状況か?
何をしても同じように高い給料がもらえるようでは誰も工夫しなくなります。「特定の求められるスキルを得た人だけが高収入」という構造があることで、「自分は何をすべきなのか」ということを個々人が真剣に考えるのが大事なのだと思います。
>それぐらいないとそのあたりの家を買えない
さすがにそんなことないですw あと、医者で8000万円貰っているのは、相当高収入です。脳外科医とかは相当高収入ですが、その中でも高い方じゃないかな?小児科医なんかだと1000万円+くらいです。
では、年収いくらだったら家が買えるか。以下大雑把に1ドル100円で説明します。
まず、仰る通り、1億円あれば普通の家が買えます。場所を選ばなければ結構素敵なのが買えます。場所を選ぶと、仰る通り「これが1億かorz」という感じですが。
さすがにちょっとは頭金があるとして1億円のローンを5%X30年ローンで借りると、月々の支払は60万円くらい。(うち金利分は税控除あり。)手取りで月100万円あれば暮らせます。12倍して税金分があるので2倍して、2400万円。
家計年収2000万円くらいないと家を買うのはかなり大変ですが、多くの家が共働きなので、一人の年収はその半分でOK。最近の一流大学の卒業生だったらマスター出た初任給で充分です。
あと、若い人はルームメートとシェアして住むのが普通ですので、月6~10万円もあれば借りられます。最近のアパートは、たいていルームシェア出来るようそれぞれのベッドルームにバスルームがついてたりするので、かなり快適ですよ。年収9万ドルで親と住んでるのは・・・・・うーん・・・・アメリカンスタンダード的にはかなり変です。
税金も3000万円を越したあたりからアメリカの方が日本より安かったはず。ちゃんと比較したデータは5年くらい前のものしか見たことがないのであやふやですが。
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どうなんですかね、半導体系エンジニアで勤続10年(うち半分はシリコンバレー)でマネージャタイトルですけど、12万ドルはもらってないです。NCGのCS専攻マスターの方が収入高いというのはへこみますねぇ。
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うーん、採用時に新卒を優先したい動きがあるのでしょうか?逆に非新卒の供給が不足しているのでしょうか?ハイパフォーマー対ローパフォーマーの議論は経験者では成り立ちますが新卒ではどうでしょう?もちろん優秀な新卒は当然それなりのインターン経験とかがあるのでしょうが。マネージャ的にはすでにいるチームとのバランス取りが難しいですね。
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中西部の田舎だと、1千万円ちょっとで、小さめの家なら、買えます。だから、そういうのと比べると、シリコンバレーは、やっぱり高いですよね。
シリコンバレーの不動産が急上昇した1990年代、モンタナ大学の文系の先生が、スタンフォード大学のオファーを受けたけど、家の値段の割りに給料が安すぎるということで、オファーをけって、先生たちをものすごく驚かせたという事件がありました。今はスタンフォードの文系の先生のお給料、上がったのかな?
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日本だと4大卒の初任給は350万くらいでしょうか。修士で400万くらい?
やっぱり半分くらいですよね。
博士に至ってはそれ以前に雇ってもらえないそうで。高学歴ゆえに企業が嫌って就職できないってどいうこと?
こんなに日本は人件費が安いんだけど、中国の方がもっと安いので開発の等の同じ仕事させるなら、日本より中国に頼んじゃうんですよね。英語出来るし。
このままでいいのか、日本?
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シリコンバレー在住です。
たしかStanfordでの2006年CS修士卒業の平均は8万ドル台半ばでしたよ。2008年あたりでCS修士10万ドル台もちらほら聞こえてきましたが平均はそこまで行かなかったでしょうね。
私の知り合いも13万ドルの仕事からレイオフされてから同等の給料でした働こうとはしてませんね。
個人的にはいまシリコンバレーには仕事はたくさんあると思いますがシリコンバレーがあうかどうかは人それぞれだと思います。日本でうらやましがっている皆さんはどう思われるかわかりませんがここはやっぱりアメリカ社会でも特殊な場所で頭のいい人はソフトウェアにしかいくしかほぼ選択肢がありません。というわけでソフトウェア会社採用側にとっては最高の環境ですがそれが個人の幸せに結びつくかは別の問題ですね。
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どなたも指摘しないので、、、
リーマンショック以降、シリコンバレーからそれ以外のテキサスとかノースカロライナとかに仕事が移っているそうです。このまえオースチンに行ったら3,4年前とくらべて小型車増えていてびっくりしてたら、「みんなカルフォルニアから移ってきたんだよ」と現地の知人がいってました。
カルフォルニア以外は気候がきびいしいのです。ITや半導体系で仕事がありそうなテキサスやアリゾナは夏は尋常じゃなく暑いし、シアトル、オレゴンは秋冬は雨ばっかりだし。せっかくシリコンバレーで職を確保したら職場が移転してしまったとかも考えられるので、そういったリスクも考えておきましょう。
そうなったら転職すればいいじゃないかって?次の職場がすんなり見つかればよいですが、ビザの関係で、ゆっくり職探しはできないので、給料や仕事の内容で妥協するはめになる可能性も高いです。
決してシリコンバレーへの転職を否定しているわけではありませんし、若い人はどんどんチャレンジすべきだと思いますが、シリコンバレーの気候に「ここしかない!」と思って行ったら、「陰鬱な雨がつづくシアトルに行きになってしまった」というリスクもあるのでご注意を。
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皆さんご存知かもしれませんが一ヶ月ほど前の記事です
http://www.nytimes.com/2010/02/11/technology/11valley.html
友達を見ていると、シリコンバレー辺りだと Electrical Engineer PhD 修得直後で100k前後ですかね?でもEngineerのままだと150k~160kで頭打ちかな。それ以上欲しいならManagerにならないと。
最近、大学院卒業直前の学生目当てで大学にコンタクトをとっている企業が増えつつある話を聞き始めました。持ち直すといいですね。それにしてもサンノゼの物価高すぎ。
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うーん ベイエリアといっても
バークレー周辺だと
物価は高くて一人暮らし用のSTUDIOでも軽く
1200USD
2ベッドルームを探すとなると2000ドルくらいは必要。
たとえば年収1000万円アメリカでもらっても 税金と健康保険を引くと手取りは結局月40万円くらいでその中から家賃と生活費を引くとほとんど貯金はできない額になります。
UCバークレーのMBAやロースクールを1000万円近くかけて出ても就職あるかどうか
かなり怪しい経済状況で
ベイエリアの暮らしが必ずしもパラダイスとは
(ちっとも)思えません。
実際多くの中国人は中国に帰りつつあるし
この前はベトナム人にベトナムで何でもいいから仕事会ったら紹介してほしいといわれたし。。
逆に今は中国とかインドとかアジアの新興国にいるほうがずっとリッチな生活ができるとおもうんですけれど。。。
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