書評:タクシー王子、東京を往く

昨年5月に出た本だし、ベストセラーになったそうなので、大変いまさらであるが面白いヨ。

実は去年の春にいただいていた本である。著者は、マッキンゼーで某地獄プロジェクトを共に過ごした戦友の川鍋さんだ。ちょうど引っ越し荷物を詰めている頃に届いたようで、Fedex封筒のまま引っ越し荷物に紛れ込み、最近再度引っ越ししたところで出てきた。「こ、これはっ」と恐る恐る開けたら出てきたのがこの本とご本人からのメモ。川鍋さんごめんなさい。今更ですが書評を書かせていただきます。

さて、何が面白いと言ってタイトル。だって本当に「王子」なんだもん、川鍋さん。

父方のおじいさんは日本最大のタクシー会社、日本交通の創業者、お母さんのおじいさんは藤山コンツェルン創始者で日本商工会議所の会頭も勤めたという人。麻布に生まれ育ち、幼稚舎から慶応、ノースウェスタンMBAでスタンフォードにも留学。絵に描いたような王子ではありませんか。

しかもだ。これが本当に努力家でいい人なんである。

私は、川鍋さんが、やがては日本交通を継ぐことになるのは承知の上でマッキンゼーで修行していた頃ご一緒したのであるが、どれほどひどい上司がいても

「いやー、あの人のいいところをちゃんと引き出せない僕が悪いんですよねぇ」

なんて言っちゃうという。家が大金持ちであることを妙に隠したりもしないし(←たまにいる。かえって嫌みである)、かといって偉そうにするわけでもなく、誰に対しても丁寧で礼儀正しい。体を壊すぐらい実直に努力し続けちゃうという面もある。

一条ゆかりの「プライド」という漫画があって、これは正真正銘の清く正しく美しくしかも努力家のお嬢様と、不幸な境遇に育ち嫉妬に歪むけど努力家の女の子がメインキャラクタなのだが、川鍋さんはこのお嬢様の男版って感じでしょうか。

さて、そんな川鍋王子は現在日本交通の社長なのだが、その社長がなんと1ヵ月も運転手として乗務した、というのがこの本。

しかし、港区からほとんど出たことがない王子は道を知らない。

「西麻布から湾岸習志野経由、稲毛経由、蘇我駅まで」

というスーパーロングが来ても、

「イナゲ、ソガ?全然わからないけど、きっと超ロングだよな、コレ?」

としか認識できない王子。

八王子が国立府中より遠いことも知らない。(川鍋さん、中央高速でゴルフとかスキーとか行ったことないんですか?)

明治通りが池袋を通っていることも知らない。

(東京にお住まいでない方は何のことかわからないと思いますが、その場合は、地元の超メジャーな地名を上記に代入して読んでください。)

それでも、地道に努力して平均を上回る営業実績を上げる。「タクシーの営業成績を上げる秘訣」までリストアップしてあります。都内の著名裏道リストまであるぞよ。

そして、途中、バブル崩壊で1900億円という巨額の負債を負った日本交通を立て直した話しも登場する。お父さんから社長の座を譲られた翌日、お父さんがガンで亡くなるという劇的な交代を経て、ありとあらゆる資産を処分し、自宅まで売却する、というつらい日々を経て会社は復活する。それはもうさぞや大変だったと思うのだが、その辺の話しは淡々と軽く触れられるだけ。

ま、しかし、こうしてタクシー会社の社長が自ら流しで運転手ができるくらい日本の治安はいい、ということでもあるかも。

それにしても、私が知る由緒正しいおぼっちゃまというのは皆さんいい人。超がつく庶民の育ちの私が、そういう慶応幼稚舎的で慶応大卒的な人たちと知り合うようになったのは就職してからだが、いや、みなさん真面目に良く働くこと働くこと。「このくらいでいいや」というハードルが高いんですね。頭が下がります。

書評:タクシー王子、東京を往く」への5件のフィードバック

  1. 本は知らなかったのですが、川鍋さんは30歳ぐらいの人を対象にしたファッション雑誌で拝見した記憶があります。「語学・転職・外資でこんなに地位も給与も華やかに!」というちょっと浮わついた記事に出ていたのが川鍋さんだったかと。
    日本でもマネージメントコンサルタントから、あの若さで大企業の社長に雇われる時代がきつつあるのか、と衝撃を受けましたが、オーナーの親族だったのですね。とはいっても職歴も混みでの抜擢だったと思いますし、結果もだされてらっしゃるので、まずはこういうケースから日本もちょっとずつ評価が移って行くのかもしれませんね。

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  2. 川鍋さんて数ヶ月前に朝日新聞のBeに出てたような・・・
    外見も王子顔のイケメンですよね~
    私も地獄プロジェクトについて知りたいなー。

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  3. お久しぶりです。
    川鍋君、最後に会ったのは友人の結婚式でその時はまだ副社長で余裕があったのか、ちょび髭なんか生やして気さくにオヤジギャグ飛ばしていたのですが、そのあと確か村上龍の「カンブリア宮殿」で社長としての苦労の数々を披露されていて苦労してるんだな。という感じでした。
    今も元気で活躍しているようで、何よりです。早速読んでみます。

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  4. chikaです。
    >地獄プロジェクト
    前ブログにサワリだけ書いたので、そちらから抜粋しますw
    『夜10時に打ち合わせして
    「じゃ、これを各自仕上げてもう一回朝2時に打ち合わせよう」
    てなことがありました。そのプロジェクトでは、72時間ぶっ通しで働いた27歳男子が、そのまま自分の車を運転して帰って、首都高で事故で全損した。もう一人の、やはり20代男子も途中で心身症でいなくなった。そして誰もいなくなった。私は気管支炎になって、セキのし過ぎで肋骨を折った。(ベリッと音がした)』
    元エントリーはこちら http://www.chikawatanabe.com/blog/2004/04/post_10.html
    家に帰ろうと会社を出ると、もうすっかり明るくて新聞配達の人がいる、みたいな。しかし、上記の「せきのし過ぎ」以来、喉が鬼門です。今もひどい喉風邪で2週間以上へたれこんでます。悪霊が喉に住み着いてるのかも。
    >yoshi-san
    お久しぶりです。川鍋さんお知り合いですか・・・w。奇遇ですね。

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