シリコンバレーで家を建てるのはオタク

さて、我が家の建替えもそろそろ終盤に近づいてきた。しかし、ここにきて新たな伏兵が。それは階段。スチールでできたスカスカの階段をドンと後付で入れる、というものなのであるが、すぐできる、と豪語していたコントラクターの自信は嘘で、実は誰もできる人がいないので、今から再度設計・業者探しから始まることに。まぁあと3ヶ月くらいはできないと見た。

そんな中、常日頃から目をつけていた近所の建設中の家を観察しに。

我が家はコンテンポラリチックな作りである。しかしながら、カリフォルニアでは、「スペイン・コロニアル風」とか「トスカーナ・ビラ風」が主流。

なので、コンテンポラリ風な家があると、どんな部材を使ってるか、とか、デザインのディテールなど、興味津々で観察しに行くのでした。今日も建設中の家の入り口でどんな窓とドアを使っているか近寄って見ていたら、オーナー家族がやってきた。ちょっと気まずいが、自己紹介。

この家は「スチールでできたスカスカな階段」があったので、

「これは!」

と思っていた我々はすかさず

「どこの業者で作ったのか?」

と質問。すると、「ゼネコンは自分」と豪語するオーナー氏がとうとうと説明してくれた。

「スチールの基本構造はオークランドにあるこの会社、スチールとワイヤでできた手すりはまた別のこの会社、ステップ部分の木はこういうのを使ってうんぬんかんぬん。こうすれば1万5千ドルでできる。全部をお任せで一社に頼むと5万ドル超だ」

階段が一番手間取って、すでに6ヶ月もかかっているが、これができれば家全体が完成、と。(工事完成間近に階段を作り始める我が家はどうなるのでしょうか、というのはさてはおきつ。)

この家は、デザインはロサンジェルスで主に商業建築を手がける建築家に依頼したとのことで、90度以外の角度をあちこちでつかいなかなか素敵。して、建築はオーナー氏が自らゼネコンとなり、下請け業者を駆使して仕上げた、と。

ちなみに、これ、ものすごい大変です。大変だからゼネコンという職種が成り立つわけだな。

しかも、単に図面どおり仕上げるだけなく、隅々までものすごいコストカット努力が払われている。

たとえば、IKEAのクローゼット用のドアがあちこちで使われていたり。(ステンレススチールのフレームの全面に曇りガラスを張ったデザインのもので、実は「安価にハイエンド風デザインを実現できる部材」としてコンテンポラリな家についてのオンラインフォーラムで絶賛されている。私は微妙に好みでないので使いませんでしたが。)

パウダールームひとつとっても、トイレから洗面台、蛇口等々、Philippe Starckデザインで統一されており、定価で買ったら6000ドル+だが、eBayで掘り出し物を探しまくって2000ドル以下で仕上げた、と。

話を聞きながら、

「この人、もしかして本業もゼネコン?」

と思ったのだが、実はスタンフォードのバイオエンジニアリングの教授でした。わははは。でも多分過去1年間くらい、彼の本業は自分の家を建てるほうだったと思う。(それくらい時間をかけないと絶対無理)。

ちなみに、この「突然訪問インタビュー」は我が家の建て替えでは欠かせないツールとなっている。そもそも、建築家選びも、これまたコンテンポラリ風の最近建った近所の家のドアを突然ノックして、

「建築家誰か教えてくれ」

と聞いて見つけた。この家も、ダンナさんが、アジアへの出張が多いのを利用して、中国・シンガポール・日本などあちこちで最安値の部材を買いまくり、中国人のコントラクタをしばきまくって、ハイエンドの仕上がりからは信じられない低単価を実現した、という家であった。

どちらの家でも、突然ノックしてたずねた我々に懇切丁寧にいろいろ教えてくれた。なにをどうしたらどうコストカットできて、誰にどう頼めばいいか、とか。自らの叡智を結集した血と汗の涙の結晶のノウハウを人に開示したい、という欲求もあるやなしや。

いずれにせよ、

「コンテンポラリな家のオーナーは、コンテンポラリな家を建てるためのさまざまなワザをとことんまで追求しており、聞けば懇切丁寧にいろいろ教えてくれる」

ということがわかったのでありました。

それにしてもみんな入れ込みようが普通でない。

思うに、シリコンバレーで自ら家を建てよう、なんていう人は「のめりこみ体質」のオタクしかいないんじゃないかと。

そもそもすでに建った家を買うのが一番楽チン。いくらでも既存の家があるなかで、敢て自分で家を建てる、というところで、オタク的野望でいっぱいなわけです。(素敵な中古が多数流通してますが、どうしても新築がいい、という人には業者が建てた新築の家もあります。)

その上、「スペイン・コロニアル風」とか「トスカーナ・ビラ風」が一般的な中で敢てコンテンポラリにするというのは、「こうしたい」というデザイン的野望、「これはいや」という強い嗜好がありまくり。

そして建築というのは、前にも書いたが、お金をかけようと思えば無限にかけられるわけで、「予算内で最高にスバラシイものを」と思うと、自ら時間をかけて微にいり細を穿ったリサーチを重ねて、コストあたりのリターンを最大化しなければならない。というか、したくなってしまう。

しかも、建築の神様は細部に宿っているので、どんな素敵な部材でもちょっとした施工の仕方で台無しに。望んだイメージを具現化するには自ら現場監督もしないとならない。(タイルのエッジの仕上げとか、目地の色とか、いろいろ。ちょっと違うだけで、頭の中でバッハのトッカータとフーガが鳴り響くぐらい違うものになってしまう。我が家もすでに5箇所くらいで圧倒的なトッカータとフーガが響いてますが、まぁしかたないわな。)

というわけで、我が家も含め、シリコンバレーでわざわざ自分で家を建てる、またはメジャーな改築をするのはオタクだけですよね、というお話でした。

前書いた、豪邸に住むためにどこまでするか、も著しい情熱を燃やしてコストカットしまくって豪邸を建てる人の話だが、こちらは「トスカーナビラ風」でございましたので、何風であっても大変なことに変わりはないのかも。

シリコンバレーで家を建てるのはオタク」への7件のフィードバック

  1. 日本の在来建築では、階段がもっとも大工の腕がわかるところ。一番難しいということだと思う。それと、最後に階段工事は、さらにトータルバランスを難しくするね。そこだけが、異様になるだろうし。屋根がついたら、逆に言えば、最初に階段を作れる職人をみつけて、その人に作ってもらって、内装の大工を紹介してもらうなり。いずれにしても、建物の外と、中の大工は別でもおかしくない。中は、どちらかというと、家具職人の世界。このままだと、3ヵ月後というのも無理で、永遠に職人が現れないとみた。最悪は、ハシゴみたいな階段か、上か下の階で、変な段差がひとつつくかな。で、だれもが、そこでつまずく。難しいというのは、そういうこと。均等に割り付けるのは、階段がすえつけられて、床のつらをあわせることでできるので、もし、床が完成していたら、最悪。床をはがしてやりなおすか。

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  2. chikaです。
    ご心配どうもです。でも、そこまで考えなしでやってるわけじゃなくて、階段はもともとデザイン的に本体とは別ものなのでした。こういう感じ↓
    http://www.hallgate-timber.co.uk/acatalog/The_Scenikl_Chick.html
    写真のはstringer(構造上階段を支えているもの)が木でできてますが、これをスチールで作ると、元来そういう計画。なので家具職人でもできなくて、メタル加工屋さんが必要なのであります。

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  3. chikaです
    >鉄のアーティスト
    おぉ、昔白金にギーガーバーってのがありましたが(ほんもののH.R. Gigerデザイン)、それみたい。すごいですなぁ。ちなみにギーガーバー、「出る」のでも有名でございました。当時の同僚が、男子トイレの個室のドアを開けたら中に青白い女の人がボーっと立っていて、「失礼!」と閉じて、あれ?と思ってもう一回恐る恐るあけたら誰もいなかったと、蒼白な顔で席に戻ってきたのを今でも思い出します。わははー怖いー。
    >推測
    その通りです。直しました。Thank you!
    >フォトのアップ
    うふふ、秘密です。
    >ものすごくスカスカ
    ほんとうにスカスカですね。すごいなぁ。これで落ちて死ぬような間抜けな人は進化できないというsuper-accelerated Darwinian stairs?

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