アメリカの政治熱を生み出す大統領選

シリコンバレーのトップ弁護士事務所、Wilson SonsiniのCEOが、アイオワで普通の人の家を一軒ずつ訪ねてオバマ支援依頼をしてまわった、というが今朝の朝刊に載っていた。Wilson Sonsiniは、数百人の弁護士を抱え、主要ハイテク企業をクライアントに抱える大事務所。そのCEOが、わざわざよその州まで行って、知らない人の家をノックして一人ずつ説得して回った訳です。

***

この間サンノゼのセミナーで伊藤穰一さんと話した時のこと。会場のアメリカ人から

「日本のブログでは政治は人気がないと聞いたが、どうして?」

と聞かれた。

答えると長い、、、というか、日本の政治のあり方について考えると気が滅入るので、その時は、

「日本では、『アメリカでは政治がブログの人気テーマ』と聞いてみな首を傾げているんですよね」

とお茶を濁してしまったのだが、まぁ本当にアメリカ人は政治の話が好き。高校生から選挙活動のボランティアをする国だし。で、特に「大統領選」というのが、人々の政治への関心を高める大事な仕組みではないか、と思うのですよ。

例えば、先週あったアイオワ党員大会は、今後の予備選の将来を担う大事なできごと。初戦ながら、ここで負けると巻き返すのは大変。アメリカの大統領選は金
がかかるんこともあって、あちこちの州で点々と予備選をしながら、その結果次第でダメそうな候補は脱落して行く、ということもある。テレビの「サバイ
バー」みたいなシステムなんですね。

で、その、大事な大事なアイオワなのだが、これが日本で言ったら青森県レベル。

アイオワの人口は290万人、ということで、日本の都道府県で同じくらいの人口があるのは茨城、広島。一方、米国全51州(含むDC)のうち、アイオワの人口は30位、上から59%のところにある。同じく上から59%、というと日本だと青森県

(アイオワが大事な意味を持つのは、人口だけの話ではないのだが、ここではたとえとして。)

青森で国のトップの直接投票を行い、それが日本のその後4年間の命運を分ける、となったら青森県民の皆さんは必死に考えるのではなかろうか。少なくとも、必死に考えてもらえるよう、政治家側や、他の都道府県の人々も躍起になってあれこれ策を練るでしょう。

さらにいえば、母集団の数ではなく、総投票者数で言うと、市長選くらいの規模だったりする。

というのも、投票率が超低いんですね。今回の党員集会の投票率は、「歴史的に高い」といいつつ、たった16%。(日本の衆議院/参議院選挙の過去最低投票率は45%)。しかも、大統領選の予備選は、党ごとの代表を選ぶもので、一人の人は一つの党にしか投票できない。今回で言えば、民主党に投票した人24万人、共和党が12万人、という結果

(投票率が低い理由として、そもそも党員集会参加自体、単なる「予備選」なのに加え、あらかじめ、自ら登録しておかないと行けない、ということもある。日本みたいに、住民票と連動した選挙通知が郵送でやってきて、それを持って行くと投票できる、というシンプルな仕組みではないのでした。大統領選の本選になれば50%を超しますが。)

ということで、規模的には、その辺の市長さんの選挙みたいな感じなんですね。その規模にもかかわらず、結果が国の将来を左右する訳で、「一票の重み」がやたらでかい。

今回オバマに投票した人も、

「3人に一人が当日にオバマに投票することを決めた」

ということで、「一軒一軒回って説得する」という草の根作戦も相当重要な訳です。「民主主義!」という感じがかなりするのでありました。

[参考過去エントリー]

  • 今回の選挙

Barack Obama, LinkedInに登場 

  • 2004年の大統領選

大統領選とインターネット(アイオワ党員大会でHoward Deanが予想外の惨敗を期した話。)
インターネットとともに去りぬ(Howard Deanが上記惨敗のあと、奇声を発して激しい演説を行い、その音声がインターネット中に流れて、候補者としての未来が完全に断たれた話。)
米大統領選存在感増すネット (Howard Deanがインターネットを大活用して頭角を現し、インターネットで一気に信頼を失った話)

アメリカの政治熱を生み出す大統領選」への9件のフィードバック

  1. >16%
    政治への関心自体が低いように見えるのですが、『アメリカでは政治がブログの人気テーマ』や政治が好きとリンクしません。
    アメリカではプログ自体が、限られた層の趣味だからですか?

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  2. はじめまして。いつも興味深く拝読しています。
    > ということで、「一軒一軒回って説得する」という草の根作戦も相当重要な訳です。「民主主義!」という感じがかなりするのでありました。
    たしかに、説得がものを言うのは民主主義な感じがするのかもしれませんが、そもそも、
    > 投票率が低い理由として、そもそも党員集会参加自体、あらかじめ、自ら登録しておかないと行けない、ということもある。日本みたいに、住民票と連動した選挙通知が郵送でやってきて、それを持って行くと投票できる、というシンプルな仕組みではないのでした。
    ということは、アメリカの選挙制度(および党員集会の登録制度)は、一般国民にとって「参加しにくい」「めんどくさい」ものなのではないでしょうか? それに大統領本戦にしても、「選挙人」を選ぶわけなので、「自分の一票が重要」という感じが薄れるような気がします。そうやって「めんどう」かつ「投票しても効果ってあるの?」的な選挙制度にしておくことで、「選挙制度を把握している一部の人たち」の意見が通りやすくなっている、ということはないのかなぁ、と思ったりしますが、どうなのでしょうか?
    日本も総理大臣は直接選挙じゃないですけど、ダメなら次の衆議院選挙で与党を追い詰めることはできますし、4年という長きにわたって国のトップが固定されてしまうということはないですよね(政治的安定は損なわれますが)。

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  3. chikaです。
    本文も追加・訂正しましたが、大統領選本選では投票率は5割近くいきます。今回のは「単なる予備選」。でも、連日連夜大騒ぎしてる割にはすごい低いなぁとは思います。(John Edwardsは、過去4年間Iowaにほとんど常駐して選挙準備してたらしい。)。
    わざと複雑にしてるか?それもあるかもしれませんが、共和党、民主党、ともに複雑なので、私にはよくわかりません。(おそらく、複雑な方が、富裕層サイドの共和党に有利なんじゃないかと思うんですが、だったらなぜ民主党も複雑なのか・・・)。なお、アメリカでは、大統領選に限らず、そもそも多くの物事がえらい複雑、ということはあります。(納税とか)。
    大統領選のインターネット活用は、前回Howard Deanがインターネットを通じての「long tail募金集め」で$40 million集めたりしたことで、有効性が明らかになり、今回はフル展開、って感じだと思います。

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  4. 「日本のブログでは政治は人気がないと聞いたが、どうして?」との点に関していえば、ブログ上で政治に関する発言をすることは「やってはいけないこと」であり、この禁を犯した場合には「炎上」させられても自業自得だとされているからでしょう。なにしろ、日本では大手のブログサービス事業者である「はてな」の取締役自らが、「イデオロギーとか政治にかかわることとか、あるいはアイドルをけなすとかはだめ。」(http://sankei.jp.msn.com/economy/it/080101/its0801010826003-n1.htm)として、政治にかかわることとアイドルをけなすことと同格のものと捉えているわけですから。

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  5. chikaです。
    アメリカも政治関係のブログは炎上すること多いです。コメント/トラックバックともフル承認制にしたりして対応してる人もいますね。炎上しがちだったら、承認制にするだけで回避できるものではないのでしょうか?
    ちなみに、アメリカの投票率が低い理由の分析:
    http://en.wikipedia.org/wiki/Voter_turnout#International_differences

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  6. 間違い探しみたいであれなんですが、予備選のシステムにはclosed、semi-closed、open、blanket等がありまして、予め登録していなくても選挙日に集会に行って投票できるようになっております。しかも、open primaryにおいては民主党員が共和党の集会に行って、嫌がらせの投票が出来たりするようです。

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  7. chikaです。
    えっと、わたしも政治の専門でないのですがopen/closeと、投票のための登録の有無は別の問題だと理解しているのですが・・・。
    本選でも、投票できるのは登録している人(registered voter )だけですし。(こちらによると、ノースダコタだけはvoter registrationがいらないらしいですが。)
    http://www.declareyourself.com/index.php?option=com_content&task=view&id=14&Itemid=8#how
    あと、大統領選の予備選にはprimary(選挙型)とcaucus(集会型)があり、アイオワのはcaucusかと(ニューハンプシャーはprimary)。
    で、「特定の党の党員になる」登録とは別に、「特定の選挙で、caucus参加、またはprimary投票をするための登録」を別途しなければならないことが多く。(そういう意味では、党員登録しなくても、primary/caucusの投票ができる州が多いようです。できないところもあるようですが。)アイオワも「集会参加登録」が必要で、とあるcountyの今回の選挙に関する指示を見ると
    participants must be registered to vote with the party whose caucus they are attending. Both parties allow participants to register, update their registration, or change party on caucus night.
    ということで、caucusに先立って、あらかじめ投票する党を登録しないといけないが、当日党を変更することはできる、と。
    http://www.johnson-county.com/auditor/voter/caucus04.htm#Caucus%20Procedure
    おまけで参考:
    http://usgovinfo.about.com/cs/politicalsystem/a/delegateprocess.htm
    なお、「普段とは別の党に投票できる」というとめちゃくちゃなようですが、とあるアメリカ人いわく
    「世の中のあり方は多数あるのに、党は二つしかないので、党の分類はかなり大雑把。状況次第で、普段自分がついているのとは別の党の候補者の方が正しい政治をしてくれそうなこともある。その時に自分が信じる候補者に投票できるのは重要」
    とのことでございました。
    今回のアイオワの結果でも、republicanは、ObamaがClintonがdemocratの代表になった方が、本選での戦いに勝てる可能性が強いと言われており、republican数万人がdemocratのcaucusに乗り込んでいってClintonに投票したら、Clintonが選ばれたかも、です。でも、実際はそうはならず。
    アイオワcaucusというのは、党員集会、というくらいで、近くの小学校とかの会場に詰め込まれ、何時間も物理的に参加しないと投票できないらしいので、相当強い覚悟がないと行けないものらしいです。今回のcaucusに参加した人のレポートはこちら。写真を見るといかに草の根チックかわかると思います
    http://blogs.thestate.com/bradwarthensblog/2008/01/our-man-at-the.html
    うまくいく可能性の低い「陰謀投票」で、これに出るのはかなり厳しいと思われ。(しかもアイオワ寒いし。)
    ただし、「普段はrepublicanだけど、今回はdemocratに乗り換え」とか「普段は無党派」という人が、まじめにObamaを支持し、「obamaに投票するために今回はdemocratのcaucusに参加」という人が多かったようです。
    Obamaのスピーチでも、「党の争いを超え、アメリカという国民として融合させるのが自分だ」といった内容が多いですが、これは、鞍替え組、無党派層が彼の重要なサポーターだからかなぁ、と思います。
    多くの選挙民は、結構まじめに「本当に誰が大統領になるべきか」ということを考えてるみたいです。
    それにしても複雑すぎ、アメリアの大統領選。19世紀の仕組みのまま、という感じがします。(かかる金だけ21世紀。)

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  8. はじめまして、たまたまたどり着いて拝見させていただきました。私、UCSDで脳進化の研究をしております。経歴にネオテニーとあったので思わず笑ってしまいました。
    政治、経済は分野外ですが知っておいたことにこしたことはありませんね。なかなかじっくり学習する時間はありませんがまたお邪魔させて頂きます。

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