書評:偽スティーブジョブスの大冒険(Options)

今年の半ばにアメリカギーク業界を賑わせた「偽スティーブジョブス」。

Fake Steve Jobs, 略してfsjと名乗る謎の人物が、スティーブジョブスが自ら書いているという設定の風刺ブログ、The Secret Diary of Steve Jobsを展開。それが大人気になり、あまたのメディアでも取り上げられた結果、「偽スティーブは誰だ」と大追跡が行われ、ついに、本職はForbes誌のシニアエディターのDaniel Lyonsがfsjであることが判明したのでありました。

fsjが誰かわからなかった頃は、コンファレンスのステージでビルゲイツが

「あ、偽スティーブジョブスは僕じゃないから」

と言って笑いを取ったり。そして、そのfsjが書いた小説がこのOptions。「偽スティーブジョブスの大冒険」は、私が勝手につけた邦題です。

今年あった本物の大事件である「オプションのバックデート問題」を巡るシリコンバレーとアップルとスティーブジョブスのドタバタの内幕を勝手にでっち上げた小説なり。

アップルの動向をフォローしてる人だったらかなり笑えると思います。というのも。

ジョブスは今や「天才」の名を欲しいままにしている訳ですが、そのマネジメントスタイルは、自己愛に満ちた強引なものとして有名。で、それをやたらと風刺しているのがこのOptions。

例えば。

出だしに、ジョブスのモノローグがある。いわく

I’m handsome, famous, spiritually gifted genius; and I wipe my ass with money.  No wonder people are jealous of me.  I understand.  I’d be jealous of me,too.

「俺はハンサムで、有名で、高い精神性をもつ天才だ。その上ケツを札で拭けるほどの金持ちだ。世の民草が俺に嫉妬するのも仕方ない。よくわかる。俺が民草だったら俺に嫉妬するぞ。」

本には、スティーブジョブスのパーソナルアシスタントなるJa’Redなる小僧が登場する。このJa’Redは、Jobsがナンパしようとした女の子のボーイフレンドで、たまたま会ったSteve Jobsと握手して泣き出すほどにJobsに心酔している。がしかし、彼は全ての会話が「Dude」で始まる(=知能が疑われる)何の取り柄もない若者。しかし、JobsはJa’Redが自分に心酔している、というだけでパーソナルアシスタントとして雇うのでした。

(実はこのJa’Red、ストーリー展開に重要な役割を持つことになるのですが、それは読んでのお楽しみ。)

ノーベル平和賞をもらえるはずだと信じるJobsが、発表の日は必ず丸一日スケジュールを空け、電話の前でずっと待っている、とか。ノーベル委員会に「アップルの世界貢献」なるプロモーション資料を送ろうとして、会社の広報に止められたり。

自分の部屋にたくさん鏡を置いて、それをじっと見つめるのが楽しみ、とか。

U2のボーノと酔っぱらって車を運転し、むかついた車に(車で)体当たりしたり。(おりてきた相手のドライバーは、ジョブスとボーノを見ていきなり態度豹変、「You guys are awesome!  I am soooo sorry」とひれ伏すのでした。うーむ、絶対ないとはいえないところが恐ろしい。)

本物のアップル社では、ジョブスはがんがん部下をクビにすることでも有名。アップル社内では、「Steve Jobsと同じエレベータに乗ってはいけない」という噂まであるとか。(難癖つけられてクビにされた人がいたらしい。ヤクザと目を合わせちゃいけない、みたいな感じでしょうか。)

これについても本では

fire people on a regular basis for no reason

というジョブスのモットーが語られています。「社員は恒常的に何の理由もなくクビにするべし」。

ちなみに、本には、様々な有名人が実名で登場します。いわずと知れたオラクルのラリーエリソン(実世界でもジョブスと交遊が深い。二人で毎週寿司を食べていたのは有名な話。)、グーグルファウンダー2名、クリントン夫妻、アルゴア、著名ベンチャーキャピタリストのジョン・ドアとか。ヒラリーは

「てめぇら、あたしに寄付しやがれ」

と、シリコンバレーの重鎮が並ぶ部屋でがなり立てる大統領候補として登場します。

が、インテルのアンディグローブらしき人は違う名前だったりして微妙。スティーブジョブスとラリーエリソンは、繰り返しひたすらコケにしてるんですが、アンディグローブは怖かったのでしょうか。

あと、ジョブスの奥さんは何度か出てきますが、子供たちは最後の方で「私学に入れた」という一行があるのみ。さすがに子供までコケにしたらジョブスの逆鱗に触れるのでは、という自制心でしょうか。ま、本人ならまだしも、子供までネタにしたら読む方も不快になりますよね。

というわけで、このOptions、シリコンバレーのあり方、強烈なCEOの個性、そのドタバタぶりのよいカリカチュアとなっております。ただし、元を知らずにカリカチュアだけ読んでも、あくどさばかり鼻について面白くないと思いますのであしからず。

書評:偽スティーブジョブスの大冒険(Options)」への2件のフィードバック

  1. >> コンファレンスのステージでビルゲイツが
    >> 「あ、偽スティーブジョブスは僕じゃないから」
    って言ってたのは、そういう背景があったんですね。
    BlogTVで紹介されてたのをYouTubeで見たんですが、いまいちその意味が分からなくて・・・。
    意味がわかって少しすっきりです☆

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