ヒューストン動物保護協会

最近DVRを購入したので、やたらとテレビを見るようになった。その前はニュースくらいしか見なかったのだが。DVRは文明の利器ですねぇ。

さて、で、見ている番組の一つがAnimal Cops。前もちょっと言いましたが、全米各地の動物保護活動を追うドキュメンタリー。ニューヨーク、デトロイト、マイアミ、サンフランシスコなどがあるが、私が最も愛しているのがヒューストンバージョン。なんといっても、保護される動物がでかい。馬、牛、豚、ダチョウとか。

どの街にもanimal hoarderと呼ばれる、動物を劣悪な環境でやたらにたくさん飼う人がいる。

hoard=to accumulate money, food, or the like, in a hidden or carefully guarded place

溜め込む、みたいな意味ですな。動物を溜め込むからanimal hoarder。

日本でも時々猫のhoarderがニュースになりますが。ニューヨークなんかでは、hoardする対象はやっぱり猫。しかもせいぜい20匹とかそんなもんです。(それでも、アパートで飼っているので問題になる)。

さて、ヒューストンはテキサスにあり、広大な牧場が周囲にある。ヒューストンでは、人間も含め全てがビッグスケールなのだが、animal hoarderもグランデです。犬50匹、猫30匹、馬10頭、牛8頭、豚20頭、全部あわせて100匹以上の動物をhoarding、なんていう超級が登場することも。

hoarderはたいてい衛生観念がなく、「家の床に動物の糞が20センチ堆積」なんて環境になっていたりして、動物たちは皆病気。そういう動物たちを、裁判所や警察も巻き込んだ上で、全回収、病気は治し、しつけをし直して、もらってくれる人たちを探す、というのがヒューストンの動物保護協会の仕事。Houston Society for the Prevention
of Cruelty to Animals
、略してHSPCA。SPCAは全米に支部があり、その名のとおり動物虐待を防ぐことが目的。寄付で成り立つNPOなり。

HSPCAには、馬や牛をたくさん入れられる厩舎みたいな設備と、24時間営業の動物病院、これまた24時間営業の動物救急車がある。さらに、巨大な家畜運搬用トレーラーもあり、前述の
「牛、馬含め100頭救助」
てな時には、数台のトレーラーでガシガシと向かう。こういう大掛かりな捕り物のときは、常勤の職員以外に、シマシマの服を着た囚人も募って数十人がかりで夜明け前から作業開始。おとなしい動物は、人間に引かれて静々とトレーラーに乗るが、暴れるのもたくさんいる。そういう時は、大勢でバリケードをつくり、

「ハイヤッ、ハイヤッ」

と掛け声をかけながら、だんだん追い込んでいくのでした。

「ダチョウ保護」ってのも、ものすごい大変そうだった。ダチョウに蹴られると命の危険があるそうで、みんなで扉サイズの木材を盾に格闘。HSPCAの施設に連れ帰った後も、獣医に見せるために麻酔をうち、随分弱ったところで、大の男が3人がかりで押さえつける、という始末。ダチョウはその後、「ダチョウ保護園」に引き取られていきました。何でもあるもんじゃのォ。

HSPCAでは、またあるときは、馬のセリにオトリとして参加したりする。

更年期障害のホルモン療法に使われるプレマリンというホルモン薬があるのだが、これが実は馬の尿から取られている。妊娠した(pregnant)雌馬の(mare)尿(urine)から取られているからpremarineというのであった。ひょえー。で、プレマリン製造に使われた雌馬が使い物にならなくなるるとセリに出される。プレマリン用の馬は狭い場所に閉じ込められて育ち、馬として価値が低いので非常に安く買い叩かれた後、すぐ屠殺され肉として売られてしまうそうな。そこで、プレマリン用雌馬の市場価格を人為的に吊り上げるべく、セリに参加、高値で落とすのだ。肉として売るには高すぎる、という市場価格にするんです。(ちなみに、この肉、その後日本にも食用に輸出されているという記載が上記リンク先にありますが、ホンマか。)

オトリ担当者は、顔が知られてはまずいので、ぼかし入り。セリ参加者は、ほぼ1人の例外もなく、みーんなカウボーイハットをかぶっている。テキサスの人は本当に本当にカウボーイハットをかぶってるんですな。

で、競り落とした馬は、ペットとして欲しい人たちに上げるわけです。ヒューストンでは、馬の虐待事例が多く、hoarderではなくとも、数頭の馬をロクにエサもあげずに飼っている人も多い。HSPCAの係員いわく

「テキサスでは誰でも馬を飼っているから、ついつい自分も、とみんな馬を欲しがる。馬の面倒を見る経済的余裕がないなら飼うな、と口を酸っぱくして言ってるんだけどネェ・・・」

そうか、そうなのか。テキサスでは誰でも馬を飼うものだったのか。馬が犬くらいの感じなんですな。ビッグだ。

馬は従順そうだし、乗って走るのは気持ちよさそうだから、まぁペットとして飼いたい気持ちはわかる。しかし、牛とか豚とかってペットになるんかい?特に豚。ものすごく気性が荒そうで、大きい豚だと力も非常に強い。鍵のかかった厩舎(っていうか、動物小屋)の頑丈な扉を力技で押し破ったりして、HSPCAでも、豚の保護はかなり苦労している。が、しかし「pigs as pets」でグーグル検索したら2万5千件もヒットがあり、Pigs as Pets Association(略称PAPA)なんてものまであった。世界は私の知らないことで満ちている。

(追記:その後Animal Copsでは、さらに、HSPCAによる「クマ5頭、トラ2頭保護」とか、「動物600匹保護」、というケースが登場。「クマ、トラ」は「exotic animal問題の氷山の一角」とのことで、この手の動物をペットとして飼ってる人がたくさんいるのだそうだ。人外魔境ヒューストン。)

さて、Animal Copsであるが、これを見ていて、

「ふむ、これは、知らずにアメリカで暮らすと、後ろに手が回る日本人が出そうだ」

ということが。よく、アメリカで子供を車の中に放置して逮捕される日本人の親が出たりするが、そういう「虐待とみなされる基準の違い」が動物にもあるのである。

一番大事なのが

「病気のペットは、動物病院に連れて行く義務がある」

というもの。ちゃんとエサと水をあげていたとしても、皮膚病やら内臓の病気やらで、見るからに衰えてきたペットを動物病院に連れて行かないと虐待とみなされるんですな。(獣医に見せる金がなかったら、Humane SocietyやSCPAなどの動物保護団体に引き渡せばOK。)

「やせ衰えた犬がいる」という近所の人からの通報を受け、動物保護団体が救助、獣医が見たら喉に骨が引っかかっていて、そのせいでモノが食べられなくなっていたのであった。飼い主は

「年寄りの犬だから、もう老衰で死ぬのかと思った」

と抗弁するも、動物虐待で有罪判決となったそう。うーむ、しかし、飼っている犬や猫が病気になっても獣医に連れて行かない、なんて人たくさん、、とは言わないが時々いませんか?しかし、同じことをアメリカですると逮捕される危険があります。気をつけてください。

というわけで、飼う人間も大変だが、飼われる動物の方も大変。SPCAでは、保護した動物が、一般の人にもらわれていっても危険がないか、「気性テスト」をする。で、ちょっとでも凶暴性があるとみなされると、安楽死させられてしまう。

特に犬。いきなり犬の目の前で7色の傘をバッと開いたり、金属のボールをがらんがらんと転がして、どれくらい安定した反応を見せるか調べるなど、入念に性格を審査。特に大事なテストが、「食べ物への執着度」。エサを与え、犬が食べ始めたところで、エサが入った入れ物の中に手を入れて犬が食べるのをさえぎり、入れ物をずずずっと引きずって犬から奪う。手は、棒の先についた「模型」。ここで犬が唸ったらイエローカード。さらに、手の模型を噛んだら、その犬はまず安楽死・・・。理屈としては、

「我々の組織からもらわれていった犬が、その家の子供を噛んで怪我をさせたりしたら困る」

と。確かに時々犬にかみ殺される人の話がニュースになるし、そもそも保護される犬の数もものすごく多いわけで、仕方ないのだろうが。(HSPCAだけでも、昨年1年間で6万匹を保護、8500件の虐待事例を扱ったそうです。この数は、犬だけじゃなく動物全部で、ですが。)

  • 動物虐待で逮捕する法的根拠

さて、動物虐待阻止の法律は、そもそもSPCAの働きで制定されたんだそうです。いわく

On April 10, 1866, the American Society for the Prevention of Cruelty to Animals was founded by an affluent New Yorker named Henry Bergh in New York City. Ten days later, as the head of North America’s first humane organization, Bergh effectively lobbied the New York State Legislature to pass the nation’s first anti-cruelty statute. This law allowed the ASPCA to investigate complaints of animal cruelty and make arrests.

1866年にニューヨークのお金持ちがSPCAを設立、ニューヨーク州に働きかけ、SPCA設立の10日後には動物虐待を禁じる法律を制定させた、と。

実際、どうやって逮捕するかは、county(郡)によって異なり、SPCA自体が警察と同等の権限を持って逮捕まで出来るニューヨークのようなところもあれば、警察と連携する都市もあるそうな。

ま、動物保護の前に人間保護じゃないか、という説もあるが、しかし例えばそのどちらかでボランティアするとしたら、やっぱり動物保護団体の方がいいなぁ、と思ってしまう私は人非人でしょうか。

  • ヒューストン以外のSPCA

さて、番組で登場する米国各地のSPCAで、係員がぬきんでて美形なのがニューヨークでございます。スリムでおしゃれで、お化粧もばっちり、みたいな女性がたくさん。さすがニューヨーク。大都市は違います。

あと、マイアミは、ワニの保護が目玉。フロリダには1~2百万頭のワニがいるそうで、巨大なワニがオフィスビルの隣の沼地を徘徊してたりする。中型犬くらい簡単に食べてしまうというツワモノ。危険なので、捕獲してワニ保護地に放つのでした。特に注目はワニ捕まえのTodd。いつも、デニムシャツにジーンズ、みたいな格好で登場、まずは水面からワニを捕獲しようとするが、ダメだと、

「ワニの首にロープかけてくるから」

とか言って、いきなりそのままの服装で、ゴーグルをつけてドボンと水の中に飛び込んでしまうのであります。「素手で」ロープかけてくるんですなぁ、これが。同じことを何度もしてたので、彼にとっては日常なんでありましょう。Toddさんの活躍が載っているBoston Globeの記事によれば、Toddさんのところに来る「ワニ捕獲依頼」は一日15件だそう。「オーストラリアのクロコダイル・ハンター氏はついにエイに刺されて死んだが、キミもいつか死ぬぞTodd」、と思いながら見ています。はい。

こちらのMiami Animal Police登場人物ページにToddさん載ってます。

ヒューストン動物保護協会」への8件のフィードバック

  1. はい。ヒューストンでは普通にみんな馬飼ってます。小学生のころみんな学校の友達が馬持っててうらやましかったので私も親にほしいといったら’何言ってるの’とだめでした。ちなみにすんでたところは農場ではないです。市内の高級住宅街です。

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  2. 友人が飼っている犬はこれまで数回、人を噛んだために、おとなしくさせるための薬を投薬されているそうです。一時は安楽死かどうかのギリギリの選択だったようです。
    話は変わりますが、先週末のハロウィンパーティ(at Bayarea)でカウボーイハットをかぶってカウボーイの格好をしている人がいましたが、あれはテキサスでは仮装とは言わないってことですね。

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  3. >常勤の職員以外に、シマシマの服を着た囚人も
    ほんとうに囚人も働くんですか?
    それともなにかの比喩ですか?

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  4. >DVRを購入したので、
    たぶん、日本ではHDDレコーダーとかDVDレコーダーと呼ばれているものですよね?
    私の場合も、買った当初は沢山の番組を録画して、片っ端から見るようになりました。でもしばらくすると、録画して溜め込むんだけれど見ない番組が増えてきます。最後にはむしろ見る番組は減ってきたような気も……こういう話はそれなりに聞きます。
    今までのように「今しか見れない」「今回限りの限定版」が持つ緊張感がなくなり、「いつでも見られる」「また今度でもいいや」という安心感が得られたために、本当に見たい番組だけに絞り込んで見るようになり、その結果として見る番組が減ったような気がします。
    その代わり、本当に好きな番組は何度も繰り返して見るんですけどね。

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  5. chikaです。
    momo-san
    市街地でもですか。ひょーーーさすがヒューストン。
    kampachi-san,
    テキサスには本物のカウボーイ、カウガールがいる模様です。。。
    無記名-san,
    シマシマの囚人は、比ゆでなく本物です。横じまのズボンを履いていました。
    とおりすがり-san,
    そうか、やがては減るのですか。私の場合、元のテレビ視聴時間がほぼ0だったので、今のところ分母が0の無限大、というテレビ視聴時間増を示していますが、この後どうなることでしょうか。

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  6. そういえばベイエリアでご近所のWoodsideも、ふつーに家で馬を飼っているような町だった気が。前に通りかかった時「なんで馬が???」と思った記憶あり。
    ちょっとググってみたら、2000世帯に対して飼われている馬700頭。。。単純に平均して3世帯に一頭もいるんですねえ。
    でもあそこなら、貧乏で馬にえさをあげない人なんていなそうですね。

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  7. Texas首都Austinに以前住んでいました。ブッシュがまだ州知事の時代。普通の企業(Texas Instrumentsなど)が多く、さすがに皆がカウボーイハットかぶっている訳ではなかったです。馬も同様。でも、空港では必ず何人かブーツにカウボーイハットというお兄さん発見。着こなしもきまり、あの土地で見ると、数段格好良く見えます。東や西の人からは確かに田舎者扱い。ですが、人が親切で人情味厚く、ごはんもうまい。とくにメキシカン系はおいしかった☆住むにはとてもいいところでした。

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