Born to Kvetch

Born to Kvetch : Yiddish Language and Culture in All Its Moods

Yiddishというのは、ユダヤ人の言語。イスラエル語、じゃなくって、モーゼの十戒とか、ああいう話の頃に国を負われたユダヤ人たちが、以降数千年、様々な国を転々とするうちに培われた言語である。

とはいっても、ユダヤ人でも話せる人は限られる。が、Yiddishの単語はアメリカ英語の語彙に食い込んでいるので、それと知らずに耳にしていることもあるかも。ニューヨークなんか特に。

この本は、そのYiddishについて、大学講師兼コメディアン兼小説家兼自らを「Yiddish National Treasure(Yiddish国宝)」と名乗る作者が書いたもの。(もちろんYiddishには国はない。)

なかでも、Yiddish的表現の根幹を成す「Kvetch(クヴェッチ)」=「不平をたらたら言う」、について、ありとあらゆる角度から書かれているのである。

例えば、旧約聖書の時代からユダヤ人はKvetchしまくり。エジプトでの奴隷生活から解放されたユダヤ人たちが、せっかく解放してくれたモーゼに
「こんな砂漠でひどい生活をするくらいなら奴隷だった方がよかったのに。食い物が悪い。肉がない」
などとクドクド不平を言う。ついにモーゼは

God’s going to give you meat and you’re going to eat it.
Not one day,
  Or two days,
    Not five days,
      Or ten days,
         Or twenty days,
But for a month you’re going to eat it, until it’s coming out of your noses.

「そんなに言うなら、食べ過ぎて鼻から出てくるまで、神が肉をくれるだろう」と語る。ユダヤの民は、その後死ぬほど肉を手に入れるが、肉と一緒に疫病ももたらされる。

・・・というめでたい出だしのユダヤの歴史だが、その後も懲りずにひたすらkvetchし続ける。

第5章のサンプル会話集が笑えます。こんな感じ。

How was the movie?
Eh.

How are you?
Old.

How’s your brother?
Dead.

スバラシィ!こういう人と是非お友達になりたい。何を聞いても「Fine」「Great」「Beautiful」と、万年躁状態のアメリカン。当たり障りのなさではきわめて優れているのだが、中々本心が知れない人たちでもある。時には、Yiddish風の皮肉に満ち満ちた人と、サシで心から辛らつな話しをしたい。

「どうやって、相手をののしるか」という章もおかしい。特に「身体的・解剖学的特徴や病状により相手をののしる」というのがYiddishでは好まれるのだそうである。ののしり言葉の例はこんな感じ。

may your gallbladder burst (胆嚢が破裂すればいいのに)
you should have angina (狭心症になっちまえ)
your brain should dry up (脳みそが干上がっちまえ)
may your eyes crawl out of your head (目が頭から這い出しちまえ)
you should turn yellow and green (黄色と緑になっちまえ)

ま、「お前の母ちゃんでべそ」というのと似たようなもんでしょうか。

また、こんなトンでもない格言もあるそうな。

oni khoshev ke-meys = a poor person is considered as dead

「貧乏人は死んだも同然」。ユダヤ人の面目躍如ともいえる表現ではないか。

さて、Born to Kvetch、買って読むほど面白いか。

うーむ、私は面白いと思ったが、かなり粘着質な中身なので、
「他民族の習性について、ハタから見たら殆ど異常なまでの、執拗な興味がある」
という人以外にはお勧めしません。はい。

Born to Kvetch」への5件のフィードバック

  1. >「貧乏人は死んだも同然」。
    ぐわぁぁぁ。。瀕死かも。。。
    ボクの好きなユダヤ人のことわざを。

    他人を幸福にするのは、香水をふりかけるようなものだ。
    ふりかけるときに、自分にも数滴はかかる。

    この本とはだいぶ趣が違いますね。。ではでは。

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  2. こんばんは
    確かイーディッシュってドイツ語の影響が強い言語でしたね。
    アシュケナージという東欧系ユダヤ人の言葉でした。
    ユダヤ教って基本的には神様との契約なので、それを守って救われる
    というのが最終目標なのですが、実行するに当たってとにかく理屈っぽい(^^)
    くどい人達です。

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  3. ご無沙汰してました。
    この本面白!!読みたいです。笑
    全く違うけど大好きなユダヤ人ジョーク。
    ホノルルでタクシーの運転手に聴いたうヤツ。
    ユダヤ人の鼻は何故デカイか?
    =>空気はタダだから♪

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  4. こんにちは。すごいな。ここまで、調べ上げる根性が。この本の著者は、興味のあることには忍耐強いんでしょうな。
    そういえば、あの長い源氏物語を分析し、源氏物語の構成には曼荼羅の思想が隠れている、という卒論をかいた学生を思い出した。源氏物語を分析しようという根性に頭が下がった。
    曼荼羅の意味はいまだに知らない私だが、個人的には、平安時代のハーレクイーンのような感じもする。じゃあ、ハーレクイーンにも曼荼羅の思想があるのだろうか。

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