債権取立屋と戦う – matter of principle

アメリカの日常生活はワイルド。野生動物が、寝ていても気配だけで起きられるように、普通に生活する時も、常に注意を払わないといかん。警察からの通知すら間違っているという話や、州の裁判所からの通知で、カリフォルニアのつづりが間違っていた話も以前書いた。ま、後者は単なるお笑いですけど。

さて、というわけで、ワイルドな日常生活の一環として、最近私はとある債権取立て屋さんと戦っています。写真は、その取立状であります。

保険の期限が過ぎたので、更新せずに放っておいたら、保険屋側が勝手に更新、「保険料未納」と称して取立屋が催促に来た、という次第。

確かに「期限が来るから、更新する?」という手紙は山のように来たのだが、更新するつもりはカケラもなかったので、普通のDM同様に無視していた。そうしたら、突然Credit Collection Servicesなるところから電話がかかってきた。

たいした額ではないので、一瞬その場で、クレジットカードで払いかけたのだが、
「むむ、ちょっと待て、勝手に更新して、勝手に請求するなんていうことが許されていいのだろうか。」
と思いとどまり、「確認してから電話します」とその場は切った。

そして、保険屋に電話。まずここで一苦労。いくつかの番号に電話するが、どれも、同じ自動音声回答システムに回されて人間にたどり着かない。ま、あれこれあって、やっと人間にたどり着くが、これが、とんでもない威圧的なねーちゃんである。私が淡々と事情を説明しているのに、居丈高に
「キャンセルを書面で申し出ない限り、自動更新と決まっている!!」
と声高。っていうか超大きな声で話すので、耳痛い。受話器を数センチ耳から離して話す。

基本的に、私はこの手の人にはなるべく丁寧に接することにしている。私だって、朝5時起きしてホカ弁屋で働いたこともあるし、マクドナルドでポテトいかがですかと言ったこともあるし、スーパーでヨーグルト売ったこともあるし、駅前でティッシュ配ったこともあるわけで。相手だって仕事なんだから。それに、苦情ばっかりのコールセンターって大変そうだよなー、と思うのですよ。

なので、今回も、淡々と客観的に事情を説明。

が、しかし、温厚な口調でも、私だって一応ちゃんと自分に非がないことを確認してから電話しているのである。30ページある保険の契約書に目を通して、
「最初指定された期間が過ぎたら契約終わり。更新するには書面での通達と受領が必要。」
という項目を発見しておいたのだ。通達しないと自動更新なんてことはどこにも書いてない。

・・・と説明したが、さらにでかい声で、
「いったいどこを見てるの!この契約書を見ろ!ががががが・・・」
とまくし立ててくる。ついに私も切れました。こっちだって素人じゃないんだぞ。で、相手に負けないくらい大きい声、かつひじょーに居丈高な口調で、
「Look at the item J of the common policy conditions!  Are you with me!?  J-3 stipulates that….」
と該当箇所を思い切り読み上げた。

そしたら、
「ちょっと待て!!」
といきなりホールドにされ、しばらくしたら、天使のように優しげな声の別の女の人が出てきて、事情をもう一度説明すると
「あらー、そう、じゃ、バックデートして解約手続きする紙をファックスするから、それにサインして送り返してくれれば全て解決よ。Collection Agencyも私たちのほうから連絡するから大丈夫。」
とのこと。ああ、この絵に描いたようなgood cop, bad copぶり。マニュアルでこうなっているんだろうな。「かくかくしかじかと怒鳴りつけてもめげないやつは、部門Xに回せ」みたいな。この間約30分。

その後一応ちゃんとファックスが来て、送り返した。ここで、ダンナにこの話をし、
「とりあえず解決したけどさ」
と言うと、
「ふ、ふ、ふ、for now (いまのところはね。でもまだ解決しないよ、絶対、というニュアンス)」

で、それから1週間位して、最初の取立屋に電話したら、
「そんな話は聞いてない!そもそも、そんな風に本件は解決しない。あんたが保険屋とファックスのやり取りをしようが関係ない!!」
とでかい声で威圧された。・・・ま、予想された展開ではある。

で、取立屋のおねえさんは、居丈高に解約の経緯を聞いてきた。話し方、話す内容が、保険屋の威圧ねーちゃんとほとんど同じである。同一人物かと疑うほどだ。ということは、同じようなマニュアルで話をしているのであろう。ということは、そろそろ怒った口調でまくし立てると場面が前進するタイミングなのであろう。
なので、
「もう、同じ話しを以前に全てした。Why do I have to repeat it to you!  あれこれあれこれ」
と怒ると、保険屋が同意したという証拠があるか、と聞いてきたので、ファックスが手元にある、といったら、それを送れ、と。
怪しいが送る。で、それから、2週間位したら、冒頭の取立状が送ってきた。で、ちょっとして電話したら
「この件は今Holdで再審査中だからあなたは何もしなくていい」
だと。ま、まだ100%解決ではないが。

一体全体どんな額で争っているかというと、たった100ドルちょっとなのですよ。正直なところ、今回電話して、またギャーギャー言われたら、さっくり払おうと思っていたのだが、さらりと「hold」といわれて拍子抜け。

なお、この手の、
「勝手に更新されて債権取立屋から支払命令が来る」
というの、非常によくある話です。ISP、各種携帯電話会社、長距離電話会社、雑誌など。AOL、AT&T、Business Week、Timeといった大手ですら例外ではありません。で、問題発生時に戦うときは、「紙で証拠を残す」のが大事。(私の例で言えばファックス。)コールセンターの人たちは、多分歩合給。大嘘つきもたくさんいます。「これで、もうあなたは解約できました」なんて穏やかに言われてもさっさと信じちゃいけません。怖いですねー。

ま、日本は、普通の人はこの手のトラブルに巻き込まれないものの、一旦危ない金融に手を出したりすると、裏の世界の人たちがすぐに絡んでくるわけで、どこに国にも怖いことはあるんですが。

ちなみに、この手のCollectionの仕事はどんどんインドに流れているらしい。インドのコールセンター運営会社が、アメリカの大手
collection agencyを買収した、なんてことも最近あった。債権取立てのvertical integrationですね。

***

アメリカに来た当初に、この手のトラブルに出会うと、本当にいらいらしたしがっくり来た。日本で培われた「こうあるべき」という社会の姿においては、企業や警察や電話会社は間違いを犯したりしない。間違ったら菓子折りもって謝ってくるもんである。それが、たくさんのことが堂々と間違っている。しかも、中には明らかに悪意を持った間違い・・・っていうか、虚偽もある。そして、クレームしても、何も解決しない。「こうあるべき」という信念が壊されるのは不快なものだ。それに、「なんで私がこんな目に・・」という不条理には、落胆する。

しかし、今回の債権屋との戦いでは、別にそれほどいらいらもしないし、がっかりもしない。むしろ、ちょっと楽しかったりして。アメリカに来たばかりの私と何が違っているのだろうか。分析するに多分こういうこと。

1.サバイバルが社会の掟であることを理解した。別に私だけが不条理な目にあっているのではなく、この手のミニバトルは、ちゃんと生きていくために必要なスキル。そこで生き残っている自分がカワユイ、ウフ。

2.世の中には(アメリカには特に)利益追求のためなら嘘をつくなどへっちゃら、という悪徳企業がはびこっている。そうした企業の一つである社会悪をやっつけるべく、面倒でも踏みとどまって戦うのが世のため人のため!という正義感。

この話を二人のアメリカ人にしたのだが、「それはmatter of principleだから、戦わないといかん」と二人ともprincipleという単語を使っていた。「信条」というのが一番近い日本語かな?

アメリカでprincipleを守るのは時として面倒くさいことなのです。

債権取立屋と戦う – matter of principle」への8件のフィードバック

  1. [etc.] US債権取立事情

    渡辺千賀さんのBlogより、 http://www.chikawatanabe.com/blog/2005/07/_matter_of_prin.html 結構すごいねぇ。。。 USは生存競争が厳しい社会だけに、しょうがないのかもしれませんが、相手するのは相当面倒そう。 宗教の勧誘と同じで、負けはしないけれど、相手するのが面倒になるだろうな。 まぁ、一喜一憂しないで、やりとりを楽しむ余裕か、気にしない図太さが必要ということか。 …

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  2. アメリカ生活も悟りの境地に入っていらっしゃいますね。
    そこに到達する前に帰国してしまいましたが・・・
    電話を通すのに書類Fax3回したのに届いていないといわれ、電話3回、うち最後は怒り爆発しながら1時間かけて何人かと話したらようやく翌日から通りました(最初の2週間も電話なしで放置でした)。
    そして、これはアメリカ生活入門の入門であることを当時
    知りませんでした。あの日々を思わず思い出してしまいました。

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  3. ニヤニヤしながら読みました。
    確かに米国は「日本人の考える当たり前のサービス」を受けるのにとんでもないエネルギーが必要で、米国に行ったばかりの頃は本当にストレスでした。加えて、文句を言うのはたいてい電話越しになりますから英語も辛いですし。
    旦那様の”For now”というのにも笑えます。最後の最後まで絶対に安心はできませんものね。
    僕の短い米国生活で学んだことは:
    ・請求書、領収書は必ず確認してしっかり保管。
    ・何かで予約したら1週間前、三日前、当日としつこいくらい確認。
    ・”I’ll call you back later”はただの挨拶。言葉通りに受け取ってはならない。
    ・Chikaさんも書いてるようにとにかく紙に残す。加えて、出来るなら応対者のサインも書かせる。
    くらいでしょうか。
    今回のお話はあくまでディフェンスでしたけど、上段者になると、相手会社から何らかの補償をもぎ取ってたりしますよね。

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  4. 先日、とある大手ケーブルテレビに加入したんですが、しばらくして気づいてみると、どうも依頼したのより下の一番ベーシックなサービスになっていました。
    しかしよくよく考えると、オンデマンドやらペイパービューを使うような生活でもなく、それでも70chくらいは見れて満足なわけで、コムキャ○トは自分らの儲けよりも顧客に考え直す時間をくれたという点では、アメリカのサービスもなかなかなのではと思わずにはいられませんでした。
    考えすぎですか?浮いたお金でNetflixに入ろうかと・・・

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  5. 米国に留学を考えており、自分の社会的インフラセットアップで時間がかかるのは良く聞く話ですが、勝手に更新はつらいですね。
    そういえば留学生は帰国時、一様に携帯やネットの環境を解約するときに難儀されています。しかも日本に帰ってくると、日本レベルの普通の生活が出来ることがとてもすばらしいとおっしゃっています。
    うーん、日本の顧客対応レベルぐらいの顧客対応を売りにした保険会社とか携帯会社などインフラ提供会社がアメリカでは出来ないものなんでしょうか?

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  6. freesia-san,
    アメリカの電話会社って本当に、本当に、本当に、本当に、本当に、最低ですよね。私も当初、1ヶ月間くらいかかってやっと何も間違っていない状態になりました。
    最近では、インターネットでの修理申し込みができて、飛躍的に改善しましたけど。(でも、最初の申し込みはまだ大変だと思いますが)
    ふー。
    wakaba-san,
    相手の会社の偉い人宛に思いっきりシビアなクレームレターを書く、というのが「補償をもぎ取」るにはgoodですよね。私の友達では、ユナイテッド航空のCEO宛にクレームレターを切々と書いたら、無料券送ってきた、という人がいました。
    「請求書、領収書は必ず確認」これ、わたし弱いんですよね・。。。今だに面倒で・・・。一台の前の車をディーラーから買ったとき、長さ60センチくらいある請求書の明細をダンナがひたすら一項目ずつ上から確認。既にディーラーの閉店時間は過ぎており、店のマネージャーを目の前に、5分はかけて丹念に確認するダンナにいらいらしたのですが、突然ダンナが「この500ドルはなんだ」とマネージャーに指摘。相手は、それをじっと見て、しばしすると、「これは間違いである。新しい請求書をプリントするので待て」と。ひー、ごめんなさいとかないのかよー、です。それ以前に、私だったら、今だに500ドル余分に請求されたことにすら気づいていないことでしょう。はい。
    ashin-san,
    当たり前田のクラッカー!!てくらい、よくありますよねーその手の間違い。Netflixいいですよー。
    gk-san,
    アメリカは顧客サービスがオロソカな代わりに何でも安いんですよね。。。残念ながらthere is no free lunchってことでしょうか。
    なお、私はよく「日本が世界からコールセンター業務を受託できれば、世界に例を見ない超絶的カスタマーサポートができるのになー」と思います。誰かが自動リアルタイム音声翻訳装置を作ればできますよね。
    ちなみに、日本からアメリカに来て加入する電話に関し、現在の私のお勧めは、まずVirginMobileのプリペイド携帯電話を買う、というのです。
    お店で携帯のハードを買います。「契約」とかそういううるさいことはなし。単なるハードとして買います。で、インターネットで料金を払い込むと、その分通話できる、というしくみ。
    普通の携帯電話で必要なソーシャルセキュリティも必要ないし、国際電話もかけられるし、プリペイド分が減ってきたらインターネットで積み増しできるし、簡単!で、いろいろな生活のインフラが整ってきたらゆったりと普通の携帯を買う。有線電話のほうは、ケーブルが引ける環境だったらケーブルインターネットでVoIPサービスに入って終わりってのでよいと思います。
    http://www.VirginMobile.com
    です!!(別に回し者ではないです。だけど本当に便利。)

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