バイオの超シリアル・アントレプレナー

新日本監査法人のIPOセンサーという季刊誌に最近書いたコラムです。

たくさん起業してしかも成功している人の話。でも、この手の人たちの中には、実際あってみると、「大嘘つきスレスレ」という人が時としているのも確か・・・(全員じゃないですよ)。そういうアントレプレナーを称してDelusionalといっている人がいましたが、まさにそういう感じ。先日、Worldcomの元CEO、Ebbersが25年の判決を受けて奥さんともども涙を流していましたが、「delusionalなアントレプレナーの人が、激しく成功して、どこかで道を踏み外すとこういう風になるんだろうか」と思いました。

というわけで、以下本文。

***
バイオ・メディカルの領域では、「超」の付くシリアル・アントレプレナーがたくさんいる。

シリアル・アントレプレナーとは、連続殺人犯をシリアル・キラーと呼ぶのにもじり、連続して起業し続ける人を指す言葉。ITの世界でも、複数のベンチャー
を起業し上場させたKamran
Elahian氏のようなシリアル・アントレプレナーがいるが、それでも興した会社の数は一桁。ところが、メディカルの領域になると、10社以上の会社を
興した「超」シリアル・アントレプレナーがあちこちにいるのである。

たとえば、Larry Bock氏。一番最近の起業はナノテク・ベンチャーのNanosys。Nanosysは、ナノテク初のIPOを計画して昨年話題を呼んだが、利益どころか製品もないのに上場しようとした野望が市場から嫌われ、上場は取り消しとなった。しかしこのBock氏は、10数年の間に14社のバイオ系ベンチャーを起業、何社をも上場・売却し、40代初めにいったん引退、しばらくしてNanosysで起業道にカムバックしたというツワモノなのだ。一方、Mir Imran氏は、過去25年で起業に携わったベンチャーが19社。うち3社がIPOし、8社は他社に売却というトラックレコード。取得した特許は100を超す。「夜寝る前に問題を考え、夢の中でアイデアを編み出す」というのが本人の弁で、現在は、In・Cubeというインキュベーターも手がけている。さらには、40年で30社起業したというThomas Fogarty氏もいる。業界標準となったFogartyバルーンカテーテルなど、手術関連の特許を70件持ち、今は様々な業界団体や企業の役員を務める傍ら、風光明媚なSanta Cruzで自らの名前を冠したワイナリーを経営。

さて、一体全体なぜ、こんな膨大な数の起業がメディカル・バイオでは可能なのか。

一つにはIPOの容易さがある。もちろん「ITに比べて簡単」という意味で、誰でもできる訳ではないが、バイオ系ベンチャーは利益がなくとも上場できる。動物実験や、臨床試験を経て複雑な許認可を受けた上、さらに保険が適用されなければならない、というハードルの高さから、世に出る製品の数は限られており、 大手の製薬・医療機器メーカーは、常に新しい技術の種をベンチャーから取り入れようとしている。こうした大手企業とライセンス契約や共同開発契約を複数結べれば、前途有望と認められて上場が可能になる。前述のBock氏も「大手製薬会社と5つくらい契約を取り付ければ上場できた」と豪語している。

しかし、超シリアル・アントレプレナー輩出の最大の秘密は人材の希少性だ。バイオ・メディカル業界は、博士号を持った学究的な人が大多数を占め、ビジネス感覚を持って事業を推進できるタイプの人が少ない。そこに、商才を持つ人が乗り込むことで、学級肌の人材と持ちつ持たれつ、効率よく起業に携わっていくことができる。

他人のやらないことをする人には福がある。「医学×ビジネス」は、その好例と言えるだろう。

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