- 先週のベンチャー投資総額:6億6165万ドル
- 投資額最大のベンチャー:Pathology Partners – 今回の増資額:1億2000万ドル(最初1200万ドルと書いてあったのは間違いです。訂正しました。) (recap round)
- 面白いベンチャー:SpikeSource – 今回の増資額:1,290万ドル シリーズA
- 最大のインサイダー取引:SiebelのChairman Thomas Siebel、575万ドル ゲット
(情報ソース:VentureWire, San Jose Mercury News)
先週は結構投資額が多かったですね。700億円くらいか。Memorial Dayで5月30日が休みとなる3連休の前だったからかも。今週は休暇という人もちらほらいて、「その前に投資してしまえ」という駆け込みもあったかと。
ちなみに、日経新聞によれば
日本の主要ベンチャーキャピタル20社の2004年4-9月のベンチャー投資総額は714億円ということなので、大雑把に言って日本の半年分がアメリカ(プラスUKの一部などなど)の1-2週間分ということでしょうか。
- 投資額最大のベンチャー:Pathology Partners – 今回の増資額:1億2000万ドル (recap round)
投資額1位はPathology Partners。recap roundです。recap=recapitalizationで、直訳すると「株主再構成」。平たく言うと、
「かなり増資しちゃったけど、思ったほど事業は進まない。だけど、このままがんばれば、目が出る可能性のある優れたネタ(技術とか)はある。とはいうものの、今のつりあがった企業価値ではとても新たな増資はできない。しかもこれまでの投資家はもう飽き飽きして、清算したいといっている」
といった状態のときに、企業価値をいったん限りなく小さく(0ということもある)してもう一回やり直す投資、のこと。
とはいうものの、Pathology Partnersの場合は、これまで、98年の2000万ドルの増資を皮切りに、99年、2002年にそれぞれ200万ドルずつ集めただけ。それで、今回1億2000万ドル集めているわけだから、既存投資家にとっては、結構よいリターンになったはず。今回の増資発表のプレスリリースを見ても:
Pathology Partners Inc., theindustry leader in comprehensive gastrointestinal (GI) diagnostic services and technology support systems, and Caris, Ltd., an investment partnership founded by David D. Halbert, founder and former Chairman and CEO of AdvancePCS, today announced that Caris has completed a $120 million recapitalization of Pathology Partners and has become a majority shareholder in the company. The cash proceeds of this transaction, net of transaction expenses, have been used to redeem the equity securities held by Pathology Partners’ early investors, including Sprout Group, Salix Ventures and Alliance Technology Ventures. Current management is retaining a minority interest in the company.
ということで、1億2000万ドルは既存投資家の株を買い取るために使われたそう。ちなみにSprout GroupはCSFB(Credit Suisse First Boston)のベンチャーキャピタル。2000年に11億ドルのSprout Ⅸをスタートしております。
Pathology Partnersの事業内容はというと、胃腸の病気の診断サービス。
患者から採取した検体をホルマリン漬けにしてPathology Partnersに送ると、48時間以内にテスト結果が戻ってくる。1200人の医師が顧客とのこと。さらに、単なる診断のアウトソースのみならず、診断から診療費請求、調剤など、関連するプロセスを電子化するソフトウェアシステムも提供してます。
アメリカの病院でも、いまだに医者は手書きで薬の指示を出していて、その字が読み取れに間違った薬を出してしまう、といった困ったことも多々起こっています。さらに、健康保険も、老人と貧困層以外対象のものは民間で運営されているので、健康保険会社が1600社以上あって、保険料請求も複雑怪奇。こうしたいろいろな医療プロセスの電子化は今後望まれるところ。
(Hackensack University Medical Centerのような先進的な病院もありますが、これは例外)
- 面白いベンチャー:SpikeSource – 今回の増資額:1,290万ドル シリーズA
Kliner Perkins(KP)がインキュベートした会社。2003年に当時Entrepreneur-in-residenceだったMurugan Palと、同じくKPのパートナーだったKen Rayが生みの親で、Palは現CTO。CEOはMarimbaのKim Polese。今回の増資のリードはFidelity。KPももちろん加わってます。プラス、eBayファウンダーのOmidyar、Intel Capitalなど。AdvisorにはTim O’Reillyなどなど。
事業内容は、オープンソース・ソフトウェアの検証、認定、および企業に対する導入サービス。Linuxでよく聞いたモデルですが、やっぱりKPがインキュベートしたら皆注目。
- 最大のインサイダー取引:SiebelのChairman Thomas Siebel、575万ドル ゲット
最近苦しいSiebelのファウンダー。Siebel株は、ずっと低迷。↓(下は過去5年分の株価。Yahooより)
「会社をオークションに出せ」という一部株主からのプレッシャーや、Oracleによる買収話も根強い、「会社が買収されたら、社員全員に対し、退職時の一時金・健康保険を増加する」という買収対抗策を打ち出しているが、どうなることでしょうか。

インサイダー取引については、SECのfilingを引っ張って来て集計して表示するサイトを知人がやっています。御参考(になるかどうかわかりませんが)迄。
http://insidernewswire.com/
いいねいいね
初めまして、私のサイトをブックマークしている人のところから逆引きしてここに来ました。短い期間ですが、シアトルでベンチャーキャピタリストをしていたこともあるので(Ignition Partners)、この手の話題は大好きです。今後ちょくちょく寄らせていただきます。
ちなみに、このPathology Partners の recap は興味深いですね。$120M (1200万ドルではなくて、1億2000万ドルですよね)で株主から株を買うっていうことは、たぶん会社の Fair Market Value を $200M 以上と見ているっていうことですよね。さすがバイオです。ITの世界だったら、上場間近の企業ならいざ知らず、目の出ない企業に $200M は付かないですね。数年前に PacketVideo という会社が、押せ押せの時期に $200M 超の evaluation で増資したのを覚えていますが、あれは完全にバブルでした。
いいねいいね
Shiro-san,
お、これは便利。ありがとうございます。
Satoshi-san,
1200万ドルご指摘ありがとうございます。後、見たらSproutも2桁も間違っていた。。。1.1Billionドルといいたかったのです。。。$1Billion=1000億円に引っ張られて1100億ドルと書いてしまった。。。
ドル表示を日本語に直すのが非常に苦手なのでした。危険な私。
今回の歯直しましたが、危険だから、やっぱり今後全てMillion/Billion dollarという表示にします・・・。
これに懲りずに今後ともよろしくお願いします。
バイオでは、去年、シリーズAで$250Mという増資をした会社もありました。(バリュエーションではなく増資額が)
いいねいいね