9/11 Commission Report

休暇の帰りの飛行機の中でThe 9/11 Commission Reportを読んだ。

アメリカというのは(やっぱり)たいそう変わった国だ、というのが最大の感想。

以前のエントリーで、

9-11でアメリカが変わったわけではなく、9-11という稲妻で、一瞬本来のアメリカの姿が照らし出されたのだ・・・・アメリカは強力だから変わっているのではなくて、変わっているから強力なのだ。そして、他の国との相違点こそが、アメリカを豊かで強力にしている。

というEconomist誌の記事に触れたが、この「変わっている」ところが遺憾なく発揮されたのが9/11であり、このレポートである。

Commission Reportは、議会と大統領によって設立されたNational Commission on Terrorist Attacks Upon the United Statesという組織が、9/11の顛末、その対応で明らかになった問題点、その問題点への対処方法をまとめたもの。250万ページの資料と、10カ国、1200人以上へのインタビューを元にしている。

さて何が「変わっている」かといって。

1)読み物として面白い

国の委員会がこんな面白い物を書いてくるとは侮りがたし。

いきなり冒頭から手に汗握る展開なのだ。レポート全体が、時系列に沿って淡々と続くのではなく、一番衝撃的なテロの当日から話は始まる。1章目のタイトルは「We have some planes」。複数の飛行機がハイジャックされるという異常事態の中、ハイジャック実行犯のテロリストが言った言葉「We have some planes」から取られている。「a plane」ではなくて「planes」と複数の戦慄。

話はテロの実行犯が搭乗するところから始まり、世界貿易センター、国防省への攻撃、4機目の墜落まで、分刻みで展開する。調べ上げただけあって、まるでその場にいて見て来たような臨場感で、ハイジャックされた飛行機の中の恐怖が手に取るように伝わってくる。

テロリストと戦おうとした乗客がのどを裂かれて殺された、とか、乗務員も殺されたとか、いろいろな情報が客室乗務員からの連絡や、乗客が家族にかけた電話で語られる。世界貿易センターに突っ込んだ一機目のスチュワーデスは、衝突の寸前まで地上と連絡を取っているが、「Oh my God, we are way too low」という言葉を最後に通信は途切れる。

レポートはまた、細かなディテールが満載。たとえば、テロの実行犯の一人はディスコ通いに明け暮れ、ガールフレンドのアパートに入りびたっていたとか、パイロットとしてアメリカでトレーニングを受けるテロリストが、英語が習得できずに脱落、インターネットで花嫁探しに励んだり。

Al Qaedaの組織とBin Ladenについても細やかに触れられている。いわく、9/11自体は40-50万ドルという低予算だったと推定されているが、Al Qaedaを運営するには年間3千万ドルかかるらしい。これはBin Ladenが個人資産でまかなっていると思われていたが、実は彼は年間100万ドル程度しか収入(遺産分配)がなく、Al Qaedaは寄付で成り立っている。ということで、fund raisingが重要な仕事。テロだろうがなんだろうが、組織を運営していくのは大変なのである。(ちなみに、Bin Ladenが、スーダンの仕官と称する人物からウランを150万ドルで買ったら、偽物だったということもあったそうだ。世界は魑魅魍魎にあふれている。)

その後、本では、CIA, FBI, FAAからニューヨークの消防署、警察まで、「どう組織が動いているか」「何が問題だったか」「どうしたらそれは改善されるか」が延々と語られる。

とにかく、Amazonのベストセラーリスト1位になるだけあります。

他人を説得するには、データを並べるよりも、心に訴えかけるストーリーを語りかけることが効果的だが、まさに、9/11という国家の一大事を物語にして、根本的改革を訴えかけるのがCommission Reportなのであります。

長くなってきたので、続きはまた後日。。。。

9/11 Commission Report」への8件のフィードバック

  1. 9-11に関しては、日本でも大変面白い番組をやっていました。
    http://www.tv-asahi.co.jp/konhazu/history/040911/
    ビートたけしのこんなはずではという番組の、4年目の真実~7つの疑惑という放送です。
    乗客が家族にかけた電話ですが、飛行機が飛び立って数分もすると、機内から携帯電話を使う事はできません。これはだれでも簡単に確認できます。これは私の推測ですが、携帯電話の基地局のアンテナは、水平方向のゲインを得るために、垂直方向のアンテナゲインが非常に低くなっている為と思われます。
    また、ペンタゴンに突入した飛行機が4機目目にハイジャックされた旅客機という事になっていますが、乗客の死体がほとんどないので、違う飛行機が突入し、3機目と4機目の飛行機は、米軍に撃墜されたのではないかと、話しを展開させているのも興味を引きます。
    最後に、9-11は政府高官による陰謀で、ブッシュ大統領を戦争に突入させるために行われたのではないかと示唆していますが、荒唐無稽な作り話と笑えない内容です。
    米国内には、陰謀説をとなえるメディアやジャーナリストはいないのでしょうか?(いても消される?)

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  2. こんにちは。
    Bobby-sanを否定するわけではないのですが、一般論として(9/11とは関係なく)、私は陰謀説を疑っています。(陰謀説は話としては本当に面白いんですが・・・「と」学会 http://www.togakkai.com/の本も、昔コンビニで立ち読みして思わずふきだして笑ってしまいましたし・・・。)
    しかし、実際それほど複雑なことができるかな、と疑ってしまうのです。一人とか、せいぜい数名だったらまだしも集団で。しかも秘密裏に。私は人間組織をなめているのでしょうか。
    あと、アメリカでも9-11陰謀説を唱える人はたくさんいます。(9-11 conspiracyでGoogleすると50万件近くヒットします。)
    ただ、Commission Reportのようなファクトに裏打ちされた情報も莫大に提供されるので、ちょっと変なたとえですが「良貨は悪化を駆逐する」という状態になっているようです。
    もちろん、戦争中の国の言うことをどこまで信じるか、という問題はあります。が、やっぱり、「アメリカの誰かが自らしくんで多数のイスラム原始主義者を動かして自国を攻撃させる」というプロットはちょっと無理があるよなぁ、と思うんですが・・・。ただ、過去数年間の過程において、Al Qaedaを助けてしまったことがあった、というようなことは多々あろうかとは思います。(そもそもタリバンを訓練したのはCIAだし)
    とはいうものの、1000人以上が戦死して、いまだに戦争中でありながら(私のダンナ側の親戚も一人アフガニスタン、一人イラクに派兵されています)大統領選で「戦争を始めたのは甚大な間違い(colossal error)だった」と言える候補者が出てくるところは、国としてまだバランスが取れているのでは。(甘いかな?)
    なお、全部細かくは覚えていませんが、Reportでは、機内から乗客が書けた電話は携帯電話ではなく機内電話(アメリカの国内線で席についている、クレジットカードを入れるやつです)と書いてあったところがあったと記憶しています。また、世界貿易センターが二回突入された後、民間航空機を打ち落としていいという大統領命令は出ており、戦闘機が向かっていた、となっています。「そのつもりはあった」と明言してるわけですね。
    多分Commission Report日本語訳されると思いますので、「うーむ、ここまで複雑な嘘は可能だろうか」という観点で読んでみると興味深いかもしれません。

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  3. 我が社では、この本の日本語訳を作成し、役員他関係部署に配れという指示が出ました。時間も無かったので翻訳の会社に依頼をしましたが。。。千賀さんのお勧めもあるので、ちょっとじっくり読んでみます。
    ちなみに我が社はビル経営をしております。

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  4. あきsan
    どうもどうも!
    CIAなどの組織以外にも、ビル運営会社げの言及もあり、全ての関係者に関する「危機管理マニュアル」にもなっていますので、ビル管理会社は必読です。確かに。
    なお、「普通の個人も常に注意を怠ってはいけない」と書いてあり、身につまされます。

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  5. 最近公開されたBin Ladenのビデオテープで、ついにBin Laden本人が9-11は自分たちがやった、と責任と認めてました。これで一応「アメリカが自分でやったのでは」「イスラエルがやったのでは」という陰謀説は影が薄くなったようです。
    選挙直前にテープを公開するということは、Bin LadenはKerryに大統領になって欲しいということかな?(最近の映像が公開されると、9-11から3年たってもBin Ladenを捕まえられないBushの無能が浮き彫りになる、ので。)

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  6. うーん、面白いですね。私は、Bin Laden のビデオはBush の応援演説になってしまうと思っていました(本人にその気は無いでしょうが)。
    平均的アメリカ人の反応が…「やはりアメリカ自体も戦時中なのだ」→「戦時に頼りになるのは、反戦のケリーよりやはりブッシュだ」という具合に。どうでしょう?

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  7. Bin LadenにとってはBushとKerryのどっちが良かったんでしょうね??
    でも、結局選挙の明暗を分けたのは、「ゲイの結婚」という意外な問題であったということで…
    なんだったんだ。
    今はちょうど、重病でパリの病院に入院中のアラファト議長が生きているのか死んでいるのか、ニュースで争っています。ブッシュが追悼の辞を言ったのに、いやまだ生きている、という病院の声明が出たり。でも、とにかくもう死にそう、なんだろうなぁ。パレスチナはどうなるのでしょうか・・・・。

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