Paternalism

ついにSchwarzeneggerが州知事になってしまうようだ。とりあえず現状の開票結果では「当確」で、日本だったらダルマに目が入る。やれやれ。

気を取り直して、「Paternalism」という英語について。

先週、ラジオのKQEDでDo Not Call Listの話をしていた。

まず、本題に入る前にKQEDというラジオ局について。サンフランシスコベースなのだが、National Public Radio(NPR)と提携してNPRの番組に加えて、自分の局で作成した番組を流している。

NPRは、全国規模の非営利団体で、良質なニュースとコメンタリーを配信。ニュースも面白いし、科学や政治など最新の深い話題も、その道のプロを呼んで来てわかりやすく興味深く語ってくれる。それに、時の人からそれほど有名じゃない人までいろいろと呼んでインタビューをする「ラジオ版徹子の部屋」のFresh Airも秀逸。人選もDavid Bowieからノーベル賞受賞者までいろいろいてカラフルだし、聞き手のTerry Groseという女性のグイグイと核心をつく質問もよい。運転しながら聞いていて、目的地についてもついつい駐車場にとめた車の中で聞き入ってしまうことも何度かある。

KQEDの独自プログラムでは、朝「Michael KrasnyのForum」というのをやっているのだが、このKrasnyオヤジは中々侮れない。とにかく異常な物知りである。文化芸能から政治、経済、外交、環境問題に至るまで、ありとあらゆる話題でプロのゲストスピーカーを4-5人集めてきて、喧々諤々の討論の司会をする。それも毎日、だ。

一度Michael Krasny本人に話を聞くショー、というのがあって、それで彼自身が言っていたのは、とにかく本を読むこと以外に何の趣味もないんだそうだ。家族には「You don’t have a life」と言われていると。ガツガツとありとあらゆるジャンルの本を読みふけっているんだそうだ。

で、そのMichael Krasnyの番組でDo-Not-Callリスト合憲・違憲問題についての討論があった。「Do-Not-Callリスト」とは、掲載希望者の家にはセールスの電話がかかってこないようにする、というもの。(アメリカの電話セールスは激しいのだ。おちおち食事もできない)最近始動し始めたのだが、リスト掲載希望者の受付を始めるや否や、莫大な数の人が殺到して受け付けの電話もウェブサイトもパンク。あわてたのは、テレマーケティング業界で、死活問題とばかり政治力を激しく行使、さらには「電話をしてはならないとは、言論の自由に反する」として違憲の訴えをし、一旦違憲判決が下されたところ。で、その違憲判決は何を持って下されたのか、いったい何がissueなのか、ということを討論したのが10月1日の回であった。

Michael Krasny: Forumのページで過去の番組のストリーミングが聞ける。10月1日9時からのDo Not Callというのがそれ。で、始まって17分目くらいのところでCode and Other Laws of Cyberspaceの作者で新米パパでもあるLawrence Lessigが「法的にみて何がissueなのか」について語っている。ちなみに、first amendmentと彼が連呼しているのは「言論の自由」のこと。(雑学的に、法律の番号繋がりでいうと、take fifthといったら「黙秘権を行使」という意味。これは口語で時々使われるので覚えておくと便利。)

さて、Lessigのポイントは「Do-not-call listは、リスト掲載者に対し、商業事業者は電話をしてはいけないが、政治家と非営利団体はOK、というルールがある。これが問題。一般消費者の意思ではなく、政府が勝手(Paternalistic)に決めたルールを押し付けるのでは、消費者(国民)の選択の自由を奪う。国民が何を聞いてよくて何を聞いてはいけないかを国が決めるから言論の自由に反するのだ」ということ。

と、ここまで書いてやっと本題のPaternalismであります。
(うーむ、この冗長さは、我ながら、200ページ以上主人公が出てこないアンナカレーニナのようだ・・・)

「Paternalism」と私のClieに入っている研究社辞書で引くとこう書いてある。
「(国民・従業員などに対する)父親的態度、家父長主義《父親的温情を示すが、権威・責任は崩さない態度・主義》」
ううむ、全然違う!こういう意味も恐らくあるのだろうが、通常は悪いニュアンスでしか使われない。例えば同じClieに入っているAmerican Heritageの意味はこうなっている。
「A policy or practice of treating or governing people in a fatherly mannner, especially by providing for their needs without giving them rights or responsibilities
太字にしたところがミソなのである。「相手の自由意志を尊重しないで勝手に決めちゃう」ということがpaternalism。自由意志を認めないということは大いなる罪であるがゆえに、paternalisticなことをしちゃいけないのだ。だから、今回のdo-not-call listも「paternalisticだから言論の自由に反するから違憲!」ということで議論になっている。

常々思うのだが、「言葉がない概念は理解できない」。日本語にはpaternalismに該当する概念がない。だから、みんな気も遠くなりそうなpaternalisticなことをする。(あなたはpaternalisticだ、といわれたら「ふふーん、お父さんみたいで頼れるってことかな」などと悦にいる人もいるかもしれない。)「良かれと思って」本人の選択も聞かずに勝手に何かを選ぶ、ということが平気で行われる。もちろん、「かわいそうだから」「大変そうだから」という親切心で、善意に基づいて取られる行動なのだと思うが、きちんと判断力を持った人間に対し、その自由意志を聞かないのは罪ではないか。

The road to hell is paved with good intentionsという諺がある。直訳したら、善意が積み重なって地獄に行く、ということだ。一生懸命よかれと思ってしたことでも結果が悲惨では意味がない、というようなニュアンス。人間はみんなそれぞれ違う趣向があるんだから、勝手な善意で相手の自由意志を尊重しないのは地獄への直行便なんである。

Paternalism」への5件のフィードバック

  1. Paternalism

    #今日は、徹夜で意識もうろうとしており短めに。
     啓蒙という言葉はとても使うのが難しい言葉だ。その背後にはPaternalismが潜んでいる。
     Paternalismは「家父長主義」とか訳されたギ..

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  2. 私は日本人がpaternalisticであるのは、社会・文化・歴史がコレクティブに発展してきたから(しているから)だと理解しています。

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  3. それはその通りなのでしょう。「農耕民族だから」っていう通俗的説はおいておいて、collectiveな発展は一体全体どこからやってきたんでしょうか?

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  4. ご返答有難うございます。 cllectiveな発展は、伝統的哲学や宗教などの理由もあると思いますが。
    Do-not-call listはpaternalisticだとは思えないのですが、それはさておき、paternalismとinvesting in a populationの関連性についてはどうお考えですか? 

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  5. Do-not-call listがpaternalisticかどうかについては、政府がどうあるべきかという価値観が大きいかもしれませんね。今行われている大統領選でも、「ヘルスケアを政府の手に任せてはいけない」というのがBush側のメッセージ。「政府が大きくなるのは悪いこと。民間の自由意思に任せるのがいいこと」というのが共和党の基本姿勢ですが、よりコンサーバティブな政党が「小さな政府はいいことだ」と言う国というのも珍しいのでは。
    investing in populationとは何のことでしょう。少子化?だとしたら、どういう方法をとるかによるんじゃないでしょうか。
    Lessigも、「勧誘電話を減らす」という目的がpaternalisticだと言っているのではなく、「誰が電話していいかを政府が決めるのがpaternalistic」と言っています。
    「少子化」は確かに国力・経済・社会保障の危機なわけで、それを阻止したい、と思うこと自体は国として当然のことかな、と。ただ、それをどういう方法で行うかがpaternalisticかどうかを決めるのでは。
    もしinvesting in population=少子化というのが間違っていたらすみません。

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