アメリカの保険制度はめちゃめちゃだ。しかし高度医療は目を見張るものがある。対する日本は、整然とした保険制度と、目を覆うような医療が横行する。(もちろん全部のお医者さんがひどいわけではないが)どちらがいいかは個人の好みによるだろう。
保険はとにかく複雑。会社勤めの人は会社が保険を準備してくれるのはよいのだが、システムによって医者を自分で選べたり選べなかったりする。また、転職者が多いにも関わらず、pre-existing condition(前からかかっている持病)があると、転職した後、転職先の保険に入れないのこともあるので、長期的な病気を持っている人は現在の会社をやめられない、ということもある。しかも高い。保険料も結構高いのだが、医療費そのものも高い。三日入院して、保険で8000ドルカバーされたけど、それでも自己負担1000ドル、というのが我が家の最も最近の医療支出である。
一方高度医療のほうは、まぁいろいろエピソードはあるのだが、今日とある日本人の人と話していたら、子供が2歳半の検診で軽度の自閉症と診断された、とのこと。その人は市民権はおろか、グリーンカードすらない単なるビザ滞在者なのだが、「自閉症には、早期治療開始が肝心」と、公的負担ですばやく自閉症児用の様々なプログラムを受けることができるようになったとのこと。「アメリカの懐の深さを感じた」と。
かなり軽度で「言葉の習得がやや遅い」などの症状なので、日本だったらおそらく「とりあえずもうしばらく様子を見てから考えましょう」といわれる可能性が非常に高いらしい。ところが、自閉症はなるべく早く、できれば3歳前に治療を始めるのが鍵なのだ。だから、2歳半で「しばらく様子を見る」ことは一生取り返しの付かない貴重な時間を無駄にしてしまうことになる。
この話だけでなく、アメリカという国に住んでいてよく思うのは「日常的なことはことごとくすんなり行かないけれど、有事の際には底力を発揮する国だ」ということ。電話のとりつけ、家の修理、ちょっとした家具の注文、そういった「普通のこと」は全く持って正しく遂行されない。頼んだタクシーは来ない、特別注文した家具はなくなる。でも、9月11日という国家にとっての「有事」、2歳児の自閉症という家庭にとっての「有事」には、非常に力強い。
日常的なことがすんなり進んで、有事の際には力強いというのがいいに決まっているが、まぁどっちか選ばないとならないんだろう。私個人の好みとしては、有事に強い方に税金を払いたい、と思うのであったが、まぁ、これは本当に個人の好みの問題である。
日本の保険制度にも重大な欠点があります。その第一は、誰が診療しても料金が同じだと言うことです。大学教授が診療しても、同じ病院なら、卒業間もない研修医が診療しても料金は同じです。また経験豊富な良心的な医師と、金の亡者に成り下がり、本当は、全く病気でない患者を、口先三寸で、病人に仕立て上げるような医師とは名ばかりのペテン医師の診察代も全く同じです。
このような、矛盾を突き詰めて考えていくと、その大きな原因は保険制度にあると言わざるを得ません。私は、公的な保険制度を一つの選択しに残し、民間の保険業務への参入を認めるべきだと思います。そうすれば、その民間団体によって、医療機関の評価がわかりやすく公表されます。もっとわかりやすく言えば、cost-performanceが一般の患者に医療機関を選ぶ際の参考になります。高度医療や、難病にお金がかかるのは、当たり前です。しかしながら、風邪や切創などの比較的簡単な疾患に対して、現在は、医療機関の間で、甚だしい医療費の差があります。このような疾患には、多額の医療費はかかるはずがありませんし、長期間治療する必要がありません。しかしながら、現在の日本の保険制度では、医師側にとっては、出来るだけ沢山の薬を出し、出来るだけ沢山の検査をし、出来るだけ治癒を長引かせれば、儲けが増えていくのです。これを許しておいてよいのでしょうか?
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日本ではどこのお医者さんにかかっても平等に保険がおりる、ということを逆に利点として活用し、ユーザーである患者自身がよいお医者さんをきちんと選ぶことで市場原理を働かせるのが当面の防衛なのかもしれませんね。(アメリカの保険では、患者側の医師の選択肢は限られています。)
San Franciscoという雑誌があるのですが、その中の医療に関する記事の中で、Sturge-Weber syndromeという難病の子供を持つ人が、同じ病気の子供を持つ人に”How do you trust what doctors tell you?”と聞かれて、こんなことを答えています。
“You don’t. I double- and triple-check everything doctors tell us. They are unlikely to spend the same hours online or reading through research papers to find new or salient information. You, however, have a tremendous vested interst in knowing as much as possible. Find a doctor you are comfortable with and provide them with as much information as you can. In the end, remember that doctors are only people looking at a hopelessly complicated organism and making a best guess as to the right course of action.”
医療の進歩は、医師が学ばなければならない知識量のオーバーフローをもたらし、結局自分の身を守るのは自分、という厳しい現実に戻ってきている、ということなのでしょう。厳しいですが・・・・。
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