ナノテクとPennsylvaniaと半導体

The promises, perils for nanotechというCNETの記事はNanteroというカーボンナノチューブで半導体を作る会社について。2004年末から2005年初頭にはプロトタイプを完成させたいとしている。ついにカーボンナノチューブが、カッコイイCGグラフィックスの域をでるのか、と期待が広がる。

この記事の後半は、しかしながら、と続く。ファウンダーがインターネット関連事業やら、他のベンチャーのコンサルティングやらをしていた人ゆえ怪しい、という記述で、じゃぁ普通の半導体の会社の人はどこから来るかということでこんな風に書いてある。
Semiconductor execs generally hail from three foreign countries: China, Japan and Pennsylvania.

かわいそうなPennsylvania。そんなにド田舎ではないので、ハイテクがないということだろうか。

さらに毛並みのよさの条件としてこうある。

They are usually engineers by training and had to claw their way up through the ranks of plant management, sales or chip design.

この二つの条件(外国人で、業界出身)を満たすといえばやっぱりNuCOREの渡辺誠一郎さんでしょうか。(渡辺さんのインタビューはこちら)。かっこいいですよ。

Online retailの未来

今日は、Yahooをはじめとしていろいろな企業の2Qの業績発表があったのだが、のきなみよい業績で、この間から時々私が書いているeCommerceの躍進(下記のような・・)が数字に表れてきた。

5月2日 景気
5月14日Ecommerce復活
5月18日シリコンバレーの景気が上向いてきた

さて、これからもecommerceは伸びていくことは間違いない。以前に触れたBtoBのシステムを提供するAribaもTicker symbolのARBAの最後に「危ない会社」を表すEがついていたのだが、それも取れてちょっとずつだが株価も上がってきた。(Yahoo Finance参照

このままecommerceが進むとどうなるか。その将来にあるものの一つは「価格のダイナミックアジャストメント」だと私は考えている。

大学のミクロ経済の講義の最初に出てくる需要曲線と供給曲線は皆さんおなじみだと思うのだが、物を売る側が消費者ニーズを表す需要曲線を算出するのは大変難しい。「その値段だったら買う」という消費者が、数多くの異なる価格ポイントのそれぞれで、どれくらいいるかわかって始めて需要曲線がプロットできる。しかし、一つの製品に違う値段をたくさんつけるのも難しければ、ある値段にしたらこれくらい売れる、という結果をリアルタイムで把握することも難しい。だから、需要曲線は推測の域を出にくい。

ところが、これをリテールの現場で実現し、「最も儲かる価格付け」をすることがオンラインだったら可能になる可能性がある。

そのトライアルをしていると思われるのがAmazon。私がアメリカのAmazonのサイトにアクセスすると右の上に小さくChika’s Gold Boxなるものがピカピカしている。こんな感じだ。

これは個々人にpersonalizeされた特別価格奉仕品、ということになっている。箱をクリックするとある商品が現われる。買わない、という選択をすると、次の商品が登場する。(買わないといった瞬間に、前の商品にはもう戻れない)こうやって順繰りに10数個の商品を見ることができる。箱を空けたら1時間だけその価格は有効、ということで、「今すぐ決断せよ」と迫られるのである。

大抵いりもしないものばかり。しかも、市価より高いものまである。回りの人たちと話しても誰一人Gold Boxを開けて何かを買ったという人に会わない。内容は、なべ釜、キッチンアプライアンス、工具などなど。

なんでこんなものが、、、と思うのだが、実はこれが需要曲線算出のためのギミックらしい。いろいろな属性のユーザーに、異なる価格で商品を提供、誰がどれくらい買うかを分析して需要曲線を出し、最適価格でその商品を売ろうとしているとのこと。正しい需要分析には、
1)確率統計的に有意な数の消費者がその商品を見て
2)そのうちの多くが購入せず、ごく一部だけが買う、という価格ポイントがたくさんある
という二つの条件が必要。だから、ほとんどのユーザーにとって、なかなか欲しいものが登場しないのは理にかなっているのだ。

これは、Amazonに価格最適化ソフトを売り込もうとしたとあるベンチャーの人から聞いた話。消費者の需要弾力性をリアルタイムで測ってそれを価格付けに反映させる、というのは航空券の世界では長いこと行われてきた。航空券というのは、同じ経路が突然高くなったり安くなったりやたらと変動するが、実はその後ろでは大変sophisticateされた数学的処理のプログラムが走っているのである。それを一般のリテールにも利用しようという試みが行われているわけだ。

リテールは利益が薄い。こういうプログラムで価格最適化ができれば、飛躍的に利益構造が改善する可能性が高く、技術を導入する企業としない企業で体力に圧倒的な差が出るだろう。

しかし、こういう技術が発展して、personalizeした価格付けがされるようになると、「あまり買い物をしないかわり、いざするときは値段に無頓着」という私のようなデタラメなshopperは、「こいつは需要曲線がフラットだから、思い切り吹っかけても買うぞ」という分析結果となって、他人よりやたらと高い買い物をさせられてしまったりしそう。困ったことである。

McDonald’s Hotspot開始

マクドナルドがベイエリアの75店舗でWiFi(802.11)ホットスポットを提供すると発表。
McDonald’s serves up wireless Web access

同社のDon Thompsonいわく”The most important part is, ‘Is this relevant to our customers?'”。その通り。全くもってrelevantでない可能性は高いのではないか。アメリカのマクドナルドの客層ははっきり言って低所得者層が多い。

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Economistの6月26日号にBubble trouble:Is the “Wi-Fi” wireless internet boom about to turn into a bust?という記事が載った。

WiFiホットスポットはバブル、ということ。例えばアメリカのStarbucksのホットスポットがいかに利用されていないかという話がある。

Perhaps the best-known network of hotspots is that operated by T-Mobile, a wireless operator, in over 2,000 Starbucks coffee shops in America. Around 25,000 people access the hotspots each week, which works out at an average of less than two users per day per hotspot.

1日1店舗平均2人しか利用者がいないと。

The Wi-Fi hotspot at Amsterdam’s Schiphol airport is used by only a dozen people each day.

オランダのSchiphol空港でも一日せいぜい10人ちょっとしか使っていないとのこと。

とはいうものの今は値段が高過ぎるだけという可能性もある、と続く。
Users may be deterred by high prices. Even after a recent round of price cuts, using T-Mobile’s network of hotspots costs $6 per hour, $40 per month, or $360 per year. Other operators in America charge $40-70 per month. Prices in Europe are as high as euro130 ($150) per month.

それはいくらなんでも高いだろう。ユーザー調査では1時間1ドルにまで利用料が下がったら20%が使ってみたいといっているという結果も(ただし、「技術に詳しいユーザー」を母集団とした場合だが)
Only 3% of tech-savvy American consumers surveyed said they would pay $2 per hour for Wi-Fi access, but 20% said they would pay $1.

ということでEconomistの記事はこんな風に締めくくられている。
Already, though sales of Wi-Fi equipment are booming, prices have tumbled, and margins are now wafer-thin. Wi-Fi will continue to spread, and will remain popular. But, rather like the internet, it may disappoint many investors who hoped to make their fortunes.
(投資については、記事の前半で、2000年来$1.5B(1800億円、か)のVC資金がWiFi関連技術に投資されているとある。)

しかしホットスポットはWiFiの利用形態の中でもかなりニッチ。これをもって「だから802.11がだめだ、というのはちょっと間違い。Economistも筆がすべることがあるんだな、という感じだ。家庭やオフィスでの利用はどんどん進んでおり、こちらの市場は拡大中であることはEconomist自身が数ヶ月前に言っている。

例えば3月27日号のHotspots and friesでは、過去数年の間のWiFiの家庭、大学、オフィスでの利用増はRunway successであり、
According to Jupiter, another market-research firm, 57% of American companies already use Wi-Fi, and another 22% plan to do so within the next year.とのこと。

私も、わざわざマクドナルドでPCを広げたいとは思わないが、家もオフィスも802.11bだ。ということで、アメリカでのWiFi普及に関しては、ホットスポットはNG、家庭やオフィスでの利用はGo、というのが当面の方向性だろうと思っているがどうだろうか。

blog & 言論の自由

メーリングリストの発言は言論の自由で守られる、という判決が下された。これによりやblogでも言論の自由が確保されると考えられている。

PC Magazineの Free-er Speech on the Netに裁判に到った経緯やその判決の意義がわかりやすく書いてある。

The court has, in essence, drawn a line between the opinions of an individual expressed electronically, and the presentation of the same material as fact in a forum such as a newspaper. At its heart, the ruling clears the way for content on the Internet to be treated as dialogue, and not necessarily set-in-stone fact.

雑誌や新聞は、企業や個人を誹謗中傷すれば訴えられる。そこで書かれたことは「事実」として広く理解されるため、「事実」を曲げて書いたとすれば、それは書いた方が悪いということ。一方個人がポストする電子的メディアは単なる「対話」であるからして、言論の自由で守られる、ということ。

判決文はこちら

blog(やメーリングリスト)は、内容こそ玉石混交だが、莫大にリアルタイムに情報発信されるというメリットがある。この判決はその方向性をサポートするだろう。

ということで、ますます求められるのは読み手側の情報精査能力ですね。

Oracle vs. Peoplesoft

今Silicon Valleyのドラマといえば、OracleのPeoplesoft敵対的買収である。今日Justis Departmentが独禁法の中間報告をすることになっていた。もしこれまでの調査で独禁法に触れないことが明らかであれば、これにて調査終了、まだ疑いがあれば調査続行を決定する手はずだったが、結果は「調査続行」となった。

詳しくはローカルテレビ局のサイトのFeds Demand More Info On Oracle-PeopleSoft Dealへ。

ちょっと前の記事だが、Business Weekに掲載されたS&Pのアナリストのものも自体の俯瞰にはよい。Oracle vs. Peoplesoft

とはいうものの、モノポリーの力を縦横無尽に駆使して、敵対する会社を次々に手段を選ばず叩きのめしてきたMicrosoftでさえ分割されずにのうのうとビジネスを続けていることを思えば、OracleとPeoplesoftごときが独禁法に反するのは論理的ではない。ないが、整合性のない判断はいつでも下されるので、まだ結果はわからないが。

そもそも、enterprise application No.3のPeoplesoftがNo.4のJ.D. Edwardsを合意の上で買収しようとした直後に、OracleがPeopleを買うと申し出たのが今回の騒動の始まり。Peopleのトップは、元Oracleで、Larry Ellisonの後継者とまで言われた忠臣の部下だったのが、仲たがいしてOracleを辞めたという経緯があり、積年の恨みがあるとかいろいろ言われている。本当のところはわからないが。今日調査続行となったことで、PeoplesoftのJ.D. Edwards買収が進んでしまうので、OracleがPeopleを買いづらくなるだろうという意見もあれば、いやいやPeoplesoftのJ.D. Edwards買収案件も独禁法調査を厳しく受けることになるだろうという意見もある。さらには、買収が上手く行こうが行くまいが、混乱を嫌う顧客のビジネスを奪える業界トップのSAPが漁夫の利を得るという説もあり、もう何がなんだか、という、まさに昼下がりの複雑な人間模様のドラマの様相を示しつつある。

しかし、まぁすごいなぁと思うのは、Oracleは「Peoplesoftを買収した暁には、Peopleの全プロダクトを叩き潰して、顧客ベースだけ頂く」と公言していることである。全プロダクトを叩き潰すという企業にとっての殺人宣言が明確にあっても、Peoplesoftの株主がOracleに買収された方がいい、と判断すればやっぱり売られてしまう。

日本のような持合ではなく、短期的視野の株主が多いアメリカのcorporate governmanceは、近視眼的だとの批判も多い。しかし自分の味方とは限らない株主をたくさん持つことは、今回の買収のような意外な攻撃に対しても油断せずに防御し、事業をどんどん伸ばすという、常時臨戦態勢のインセンティブを経営陣に提供することで、緊張感ある事業を促すという点は着目に値するだろう。

MIT Stanford Berkeley Nanotech Panel

昨日、スタンフォードで行われたナノテクのパネルディスカッションに行って来た。3つの大学の共催イベントで、Nanotech Business Panel, What are Fortune 500 Companies Doing in Nanotechnology?という長ーいタイトルなのに加えて、イベント案内のURLもwww.mitstanfordberkeleynano.orgと、あしびきの長々し夜をひとりカモネムと百人一首してしまいそうである。大盛況で500人くらいは来ていた。

6-9時というイベントだったので、6時半ごろ会場についたのだが、イベントは7時からでそれまでは表でネットワーキングという予定になっていた。昨日は40度近い気温で異様に暑かったこともあり、人と話すのが面倒だったので、「6時半にはレジストレーションも終わってパネルディスカッションも始まるはず」と見計らって行ったのに。30分も、テンションあげて知らない人とネットワーキングトークしなければならないのか、と内心舌打ち。結局、3年計画で日立に買収される途中のIBMのハードディスクドライブ部門で働くペルー人のエンジニアの人とか、面白い人と話ができたのだが。ネットワーキングイベントって、こういう感じのことが多い。実際いろいろな人と会って話してみれば、結構楽しかったりするのだが、そこに行くまでは気が重かったり。(このあたりで行われるイベントの場合、ほとんどの場合知り合いに出会うということもあって、行ってみれば何とかなるものではある。)

この間空港の本屋で「Brag!」という、どうやって嫌味にならずに上手に自分を売り込むか、というハウツー本的なものを買って、飛行機の中でざっと読んだのだが、その中で「何千人もの観客に対してスピーチするより、ビジネス上の付き合いで出るカクテルパーティーが怖い」という人の話が出てきた。知らない大勢の人とそれほど内容のない会話(small talk)をするのが嫌だと思っている人はたくさんいるんだ、とほっとする。

もとい。

パネルのモデレータはナノテクではもはや定番のDraper Fisher JurvetsonのVCのSteve Jurvetson。スタンフォードでEEの学部を2年半という短期間で1番で卒業、さらにEEのマスターとMBAもスタンフォードで取った。数年前にsuper top tierではないものの、その次ぐらいに位置するであろうVCのDraper Fisherに招聘され、自分の名前も社名に加えて中核メンバーとなる。今では「まだまだサイエンスじゃないの」と皆が疑う中でナノテク投資に邁進していることで知られている。年は私と同じくらいのはず。同じ年といえば、90年代にCiscoで激しいM&Aを繰り広げて注目を浴びた現同社SVPのMike Volpeもそうだ。彼もスタンフォードのMBA。両親はイタリア人だが日本育ちなので、日本語ぺらぺらである。(私は個人的には弟のNick Volpeしか知らないのだが。Nickもスタンフォードのビジネススクールだった。)いずれも±1歳くらいであろう。こういう人が身近にたくさんいると、花でも買って妻と親しみたくなるが、妻がいなくて実行不能なのが残念である。(参照:啄木)

さて、昨日のコンファレンスでは、HPのSenior FellowのStanley Williamsがこんなことを言っていた。将来ナノテクを目指したいと思う人へのアドバイスである。
「ナノテクはbio, chemistry、material science, computer scienceなどの複合領域。いったい何を専攻したらよいのか、という質問をよく受けるのだが、答えは『どれでもいいから、とにかく一つ選んで”become really good at it”。後は、journalismでも勉強して、コミュニケーションを学んで欲しい。』ということ。異なるバックグランドの人たちが協業しないと実現しないのがナノテクだが、皆それぞれ出身領域によって考え方も使う言葉も全て違う。それを融合するのがHPのナノテク研究で最も難しいところだ。自分と違う思考回路の人たちに自分の専門領域を理解してもらうコミュニケーション能力が最も重要だ」と。

FYI….

Estonia Genome Project

以前仕事で知り合った人から、転職の案内が来た。

エストニア人のゲノム情報データベースの独占利用権を持つEGeen Internationalという会社に移ったのだそうだ。といっても、Egeenの本社はシリコンバレーにあって、エストニアには支社があるだけ。知り合いはそのEgeenのBusiness DevelopmentのVPになったという。

エストニアは人口140万人の小国だが、歴史的に移民や侵攻が多いため、遺伝子が交じり合っていて、この国で得られた結果はヨーロッパ・北米に広く通用するのだそうだ。

エストニアでは、2000年12月に議会で正式に法律を制定、遺伝子情報を広く国民から集められる仕組みを整えたとのこと。Estonia Genome Projectのサイトを見ると、いったん集めたデータはコード化して個人とはリンクできないようにするとか、本人が希望したらゲノムデータバンクから永久にゲノムデータを消去するとか、いろいろなルールが書いてある。

このゲノム情報と、医師が診断した個々人の疾病情報をデータベース化、NPOであるEstonian Genome Project Foundationに集積する。ここまでは個人のプライバシーという問題こそあれ、まぁありかな、という感じだが、ここからがすごい。

このNPOとは別にEgeenという会社をシリコンバレーに設立、データのライセンスビジネスで儲けようというのである。ゲノムゲノムといわているが、ゲノムビジネスの肝は「コンテンツ」。遺伝子診断を高速で行うDNAチップは、半導体製造に似た技術でできるため、日本の総合電機企業なども手がけている。短期的には早い安い小さい、といった、「どうやって解析するか」も大事ではあるが、長期的な利益の源泉は「何を解析するのか」、つまりどの遺伝子がどの病気と関連あるのか、という方にあると考えられている。PCで言えば、ハードとOSみたいなものだ。ハードはどんどんコモディティー化するが、優れたソフトは長期にわたってマージンを確保できる。

一方、どの遺伝子がどの病気と関連するのかを割り出しただけでよいというものでもない。単に病気との関連だけではなく、その遺伝子を利用した診断・治療ができて初めて広く利用されるようになるからだ。

例えばハンチントン舞踏病という恐ろしい遺伝病がある。症状の一つが痙攣して踊るように見えることで「舞踏病」と呼ばれているが治療法はない。最後は痴呆状態になり死んでいく。病的遺伝子を持っていればほぼ100%発病するが、それが予めわかっても手の施しようはない。そんなの知りたくないではないか。

というわけで、
1)病気と遺伝子の関係がわかって
2)さらにその遺伝子を用いた治療が編み出される
という二つが必要なわけで、気が長い話ではあるが、実際2)で世に出る薬が出ればそのリターンは大きい。たとえでなくても、各種の製薬会社にリサーチユースで1)のデータベースをライセンスできる。しかも、エストニアでは国民は自分のデータが解析された結果に関しての所有権は持たない、と前述のホームページに書いてある。以前ある疾病者のグループが、自分たちの疾病に関する遺伝子情報の権利を主張したことがあったのだが、そういう事態を避けるためだろう。

・・・というようなことは頭ではわかっても、法律を制定してまで国民データを商用利用しようなんていうことはそうそうできるものではない。しかもその上、そのライセンス営業会社をシリコンバレーに作っちゃうセンス。。。

私は、エストニアと聞いても、Dilbertに出てくる、国家が全て沼に覆われたElboniaしか思い浮かばないという情けない状態にあるのだが、やるなぁエストニア。

DilbertのElbonia人

変な会社

ADAのコンファレンスで変なベンチャーに会ってしまった。超変だった。頭を抱えるくらい。

まずミーティングを設定する時点から変だった。電話で話しはじめるや否や、突然「Which school did you go to?」
と聞いてくる。意表をつかれたので、
「School? My school??」
と鸚鵡返しに聞き返してしまった。アメリカは確かに学歴社会。私の経歴をミーティング前にチェックしてあるミーティング相手から、
「で、スタンフォードはどうだった?」
などと雑談的に聞かれることも結構ある。しかし、面と向かって
「君はどこの学校行ったの?」
とは聞かないのである。普通。

さらに、ミーティングの際にホテルのロビーで待ち合わせるてはずだったので、
「私は身長これくらい、ショートカット」と言ったら
「僕はリチャードギアに似てる」と。
なんですと!?

で、ミーティング直前に確認メールを出して「今回のミーティングはCDAなし」と書いた。(医療関係ではNDAのことをCDAと呼ぶ人が多い。守秘義務契約、ですね)
すると電話がかかってきて「CDAって何の略?」と。

しかも、その会社にはウェブサイトがなぜか二つあることを発見。一つは.org、もう一つは.com。一つの方がより新しい情報になっている。

さらに、突然ミーティングの1時間前にポロシャツで登場、雑談して去っていったと思ったら本番のミーティングには7人ものメンバーを引き連れてやってきた。ところが、やたら大勢引き連れてきているにもかかわらず、全くの手ぶら。紙切れ一枚持たず、PCもなし。

しかも、医療業界の人にもかかわらずRocheのことをローチと発音。ゴキブリじゃないんだから・・・・それ以外でも話が要領を得ない。いい加減な説明が多く、聞きただすと訂正する。変だ。全く持って変だ。決定的に変なのが、科学者チックな外見の人がいないこと。ヘルスケア関係のベンチャーには、かなりの確率で人間離れした顔の人がいる。目が異様に離れていたり寄っていたり、はたまた額が大きく突き出たり。まるでSF映画の未来人類のようなルックスの人がいがち。サイエンスの世界の人は見た目もサイエンスなことが多いのだ。しかしこの会社の人たちはみんな、なんだか胡散臭い地方の酒焼けしたおっさん風(いわゆるRed Neckという感じ・・・)と、なんだか普通っぽい中年のおねーさんである。変だ。全く持って変だ。

しかも、投資家構成が異様。100人の個人投資家なんだそうだ。それってもうpublic company(99人を超したらpublicとみなされる)としてSECに公開企業レベルのファイリングが必要なんじゃないのか、と聞いたら、いやそんなことはない、と。(オフショアに会社設立したらSECのファイリングは逃れられるかもしれないが)

全ての変さ加減もさることながら、手ぶらでミーティングにやってきてデータ一つ準備していないそのアンプロフェッショナルぶりに、怒ってしまった。相当に下準備をしたので他の会社とはみな実のあるミーティングができたのに。

ミーティングが終わったあと、真夜中にホテルの部屋でむらむらと怒りがこみ上げ、インターネットでバックグランドチェックを始めた。すると!!Edgarのデータベースで全く別の会社のSECファイリングの中にCEOとCFOの名を発見。それは、な、なんと、オンラインカジノの会社。そう、彼らは医療機器会社のマネジメント兼、オンラインカジノ会社のマネジメントだったのである。

「やっぱり正真正銘変だった」とその時は部屋でひとりガッツポーズをだしたのだが、よく考えると、さらに謎は深まるばかり。だって、本当にだまそうと思っているんだったらもっと真剣にそれらしくするものではないのか。びしっとスーツでも着て、パワーポイントのプレゼン作って、Rocheをどう発音するかぐらい勉強してくるとか。そのあたりがアバウトということは、実は逆に真剣に医療機器を作っているのか。しかし、だとしたらあまりにずさんだ。

謎だ、全く持って謎だ。。。ちなみに、その会社はミーティングに某有名医大のお医者さんを連れてきたのだが、そのお医者さんが果たして本物か、現在追跡調査中である。(ここまでいくと、単に好奇心だけなんだが)

考えられるのは、彼らは個人投資家からお金を集めることが目的の会社であるということ。大企業とのミーティングは個人投資家への売り込みの際に「こんなに事業も快調」と説明するためのツールでしかないから、実はミーティングの中身はどうでもいい。重要なのは会ったという事実だけ。なお、彼らはミーティングの後でこちら側の参加者の写真を撮っていった(これも変だ)。この写真はやがて大きく引き伸ばされて個人投資家の集まりで利用されちゃったりするんであろう。

ということで、世の中にはいろいろ楽しいことがある、というお話でした。

展示会の使い方

金曜(今日)からNew Orleansで行われるAmerican Diabetes Associationのconference(展示会)に4日間行ってくる。その準備でここの所しばらく忙しかった。

なぜか。

アメリカの展示会は、会場でブースを見て回るよりも、そこに集まってくる企業とのミーティングを近くのホテルなどでひそひそと行うためにある。広大な国土に分散して企業があるアメリカでは、face to faceのミーティングをするのは結構大変。たった2時間程度のミーティングでも、往復で丸一日つぶれることも多い。東海岸の会社だったりしたら2日はかかってしまう。ということで、対象業界のコア的な展示会では、その業界に属するほとんどの企業が集まってくるのを利用して、一気にこれはと思う多くの企業とのミーティングをこなすのが米国企業がよく使う技だ。

重要な展示会であれば、展示や発表をしない企業でも、大抵は出向いてきている。

関連企業が地理的に集結してくるので効率的に多くの会社に会えるというのに加えて、展示会では気楽に会ってくれる企業が多いのもポイント。

通常アメリカの会社はちゃんとした理由がなければ会ってくれない。スタートアップであればあるほどそう。彼らは「マイルストーンが達成できなかったら会社がつぶれる」という切迫感の中で仕事をしているので、無駄なことはしない。

私の仕事は日本の大企業側をクライアントとしてアメリカのスタートアップを相手にするという仕事が多いのだが、スタートアップとコンタクトしようと、メールしても、ファックスしてもボイスメールを残しても、相手側に興味がなければ返事が来ることはまずない。なんとか電話で誰かを捕まえて話しても、会ってどうするんだ、何を話すんだ、どういうメリットがあるんだ、みたいなことを聞かれて、意味がないと相手が判断すればそれでおしまい。こちら側(私のクライアント)がグローバルに名の知れた日本を代表する大企業であったとしても話は同じ。例えば相手が開発に集中している段階で、まだ社外と話す時期にないと考えていたら、まぁ、多くの場合何を言ってもケンもホロロである。

唯一の例外が展示会である。展示会に来るときは、どの企業も他の仕事を一切合財諦めて、よその会社とひたすら会いまくるのが目的。だから、たいしたことない理由でも、時間さえ合えば会ってくれる。最悪、ちょっとお茶でも、くらいの簡単なミーティングはセットできる。展示会をうろうろして相手企業の誰かを捕まえて、何とか引き込むことだって可能だ。(ほとんどナンパのようであるが)

今とある日本企業の医療機器関係の事業開発の仕事をしているのだが、今回の展示会は糖尿病では世界でも代表的なもので、世界から参加者が集まってくる。なんとしてでも会いたい会社が目白押し。

というわけで、過去数週間、ミーティングのセットアップをしていたので忙しかった。ちなみに「ミーティングのセットアップ」をもうすこし細分化するとこんなプロセスになる。

1)相手企業に、私のクライアント企業の紹介・会いたい理由・会うと何が相手にとってメリットになるかの説明を書いたEメールやファックスを送信。

その際、300人までの企業であれば、相手先企業のCEOに連絡するのが基本。ただしCEOから音沙汰がなく、かつBusiness Developmentの担当者(VPかDirector)がいればその人にもトライ。

A)連絡方法については、まず第一にEメールアドレスを何らかの形で発掘する(未上場企業または公開していても小規模あればVenture Sourceなどの有料データベースなどに出ていることがある。もしくは、相手先企業のEメールのパターンを他の人の例から探し出す。IRやPR担当者などのメールアドレスがウェブに記載されていることがあるが、そこでfirst name_lastname@とか、first nameの一文字+last name@というパターンがわかれば、それを当てはめて連絡したい相手のメールアドレスを推測する。)

B)Emailアドレスがわからない場合、もしくはEmailしても音沙汰がない場合、直接電話してCEOかbusiness developmentの担当者を頼む。相手の名前を言わないと取り次いでくれない会社もあるので、予めこれはと思われる人の名前を調べておく。(相手先企業のウェブサイトにManagement Teamなどとして掲載されていることが多い)

C)Email, 電話どちらもダメだったら、ファックス。ここでも、相手の名前を明記するのが基本。

2)連絡が取れ、相手が興味を示してきたら、より詳細な情報を提供。こちら側の参加者リストに加えて、当日の議題と、特に相手から聞きたいと思っていることをメールやファックスで詳細に説明。時には、さらに電話会議を設定して、詳しい話をする。

3)時間を調整し、実際に現地でどうやって会うかを綿密に設定。始めて会う人たちなので、これは大事。相手の携帯電話など非常用連絡先も確認。

・・・というようなことをしていると、あっという間に時間がたってしまう。が、今回は、アメリカは東海岸の上の方と下の方、スイス、イスラエルなどなどの会社とミーティングが設定できた。これを全て相手先企業の所在地までいちいち訪問していたら、1週間では終わらないだろう。(というか、今エルサレム出張を許す日本企業はないだろうから、今回の展示会なくしては不可能なミーティングもあるわけだ)そう思えば涙が出るほど効率がよい。

というわけで、展示会の使い方、でした。会いたい会社があるけどなかなか会えない、遠隔地の会社を一社だけ訪ねるほどの理由もない、という時に活用してみて下さい。

アメリカでNPOを作るということ

時々このBlogにも書いているが、JTPAというNPOを運営している。先週の金曜は1周年記念カクテルパーティーなどというものも開催、スタンフォードのNanotech Fabrication FacilityのDirectorである西教授に講演をお願いし、130人ほどの方に集まっていただいた。

さて、そのJTPAであるが、これまでIRS(アメリカの国税局)にNPOの申請をしていた。周りにNPOの申請をしたことのある人もおらず、全くもって手探りでやたらと遠回りをしつつあれこれと書類を準備、3月に申請して、先月IRSからさらに追加質問を受け、その結果を回答したところ、ついにNPOとして認可されたというレターがやってきた。なんというか、この喜びは受験に受かるのと似てる。やるべきことは全部やったが、だからといって認可されるとは限らず、「人事を尽くして天命を待つ」という感じだからか。

この申請を通じて学んだアメリカのNPOについて。

1)NPOの中に、税金を払うNPOと税金を払わないNPOがある
税金を払うほうのNPOは、「NPOです」と自己申告して会社登録をするだけ。簡単である。それでも、郵便代のディスカウントとか、ちょっとした特典がある。

税金を払わない方は大変だ。

アメリカの税金のシステムはやたらと厳しい。「逃れられないもの」という意味でDeath and Tax(死神と税金)という表現を使うが、税金は死神と同じくらい厳しいんである。そもそも高い。シリコンバレーだと、ごく普通の20代後半-30代前半の人でも、収入の4-5割は税金で持っていかれてしまうと思ってよい。日本にいると、なぜか日本の税金が高いと思いがちであるが実は安い。加えて、アメリカでは日本みたいに会社を作って親類を役員にして給料払って経費にしちゃうなんて言う技も許されない。さらに、大幅な脱税でつかまるとフロリダにある通称「Club Fed」(Club Medをもじったもの。FedはFederal=国の、の略で、国税の脱税というニュアンス)で余生を送ることとなる。

そういう厳しい税金を払わなくていいという認可をIRSがくれるわけだから、その審査は厳しくて当たり前なのだ。当然のことながら。あまりにも当たり前すぎて頭が痛い、という時に私の頭の中ではどこからか「当たり前田のクラッカー」という既に死に絶えた表現が沸いてきてしまうのだが、これが本当の「当たり前田のクラッカー」。
(注:昔、前田という会社がクラッカーを作っていたらしいです。詳細不明。知っている方教えてください。)

2)アメリカのNPOはIRSの認可マターである

NPOかどうかを認める権限はIRSにある。それ以外のお役所は関係ない。考えてみると、大変合理的である。NPOが存在することで被害を蒙るのは税収入が減るIRSだけだ。もちろん、NPOを隠れ蓑に非合法な活動をされては困るが、そういう時は警察が取り締まればよいのである。NPOがあったら最も困る人(IRS)がNPOを許可するというシンプルな制度。ちなみに、日本は各々のNPOの活動内容を管轄とする官庁の許認可マターとなり、よしんば2つの省庁にまたがるような活動をするNPOを設立しようとしてしまったりすると大変なことになる、と日本のとある財団の人から聞いた。

3)税金逃れができないように、という観点でのみ様々な規制がある

もちろん、アメリカでも昔はNPOを隠れ蓑に税金逃れを謀ろうとした人たちがいた。例えば、大金持ちが自己資産でNPOを設立、子孫代々をそのNPOの社員にして給料を払うことにすれば、相続税を払うことなく長期にわたって末裔に資産譲渡ができる。

そこで、そうした不正を防ぐため、次のような大きな二つのルールがある。
-多くの人から基金を集めないとならない:public supportルールというのだが、要は個人資産を基に作られたprivate supportではなく、一般の多くの人たちからお金を集めることが非常に重要。

-活動の対象はなるべく一般大衆でなければならない:多くの人から基金を集めたとしても、その寄付した人たちだけが活動のメリットを享受できるということだと、結局その人たちの税金逃れに使われてしまう。「メンバー制で会費(寄付)を払ったメンバーだけがメリットを享受できる」というのは駄目。ただし、「日本語を話せる人」とか「マイノリティーの女性」とか、そういう特定集団をターゲットとすることは構わない。

上記二つのルールを満たすとなると、基本的には教育活動か宗教活動が対象となる。JTPAは教育活動団体。IRSの申請をする中で「NPOとしてのJTPAのあるべき姿」なるものが浮かび上がってきたのだが、ポイントは「仲良しクラブ」では駄目で、「発展的かつ継続的に多くの人にメリットを享受し続けるグループ」でなければならないということ。

ちなみに、教育でも宗教でもないとなると、それは「税金を払うNPO」となる。業界団体などは普通税金を払うNPOだ。