TikTokのアメリカでの行方とレッドルーレット

TikTok CEOの国会喚問が先週行われた。一部だけ見たが、民主党共和党両方から糾弾されて大変そうでした。なんと5時間も行われたとのことで、CEO氏も疲労困憊したに違いない。

CEOによれば「中国政府がTikTokのビジネスに介入してくることはない」ということだったがなかなかそれは信じ難い・・・と思ったのは米国国会議員のみなさんも同じようで、5時間の努力にも関わらず元通りの「TikTokを米国で禁止するか、または米国企業に買収させる方向で進める」ということになった模様。

TikTokの親会社、ByteDanceは登記はケイマンで、TikTokは中国以外の事業、中国向けにはDouyin という名前にするなど、なんとか「TikTokは中国とは無関係」と見せようと努力はしている。しかし、火に油といいますか、喚問の数時間前に中国政府が「TikTokの売却は認めない」と発表した。ほらやっぱり中国の意向が反映されるわけではないか。さらに、2021年には、ByteDanceの中国子会社、Beijing ByteDance Technologyの1%を中国政府が取得、それに伴い取締役も送り込んでいる。中国政府は1%の持分でも取締役を送り込めるという特例があるようで、元々は公共事業の民営化の際に持分が少なくなっても政府の影響力を残すためにできたルールらしいがそれを拡大解釈して利用しているようだ。

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最近知人に勧められてRed Rouletteという本を読んだ。中国でビリオネアになった人の手記。夫婦で事業を行って成功したが離婚、夫はロンドンに移り住んだのだが、その後中国に残った妻がある日姿を消してしまう。そこまでの顛末を書いた本だ。中国でのビジネスがいかに権力者との密接な関係を持つかにかかっているかがわかる。そしてあまりに成功するとビジネス界から姿を消す。ほとんどのビジネスマンがグレーゾーンの危ないことをしていて、その過去の罪を問われて失脚したりするのだが、贈賄や横領の罪で死刑になる人も出てくる(そして似たような罪を犯していても親族が権力者だと禁固刑だけで免れる)。ビリオネア妻は何年間も行方不明なままで、政府の関与が推定され、もう死んでいるという人もいたが、この本を出版する直前に夫に電話をしてきて「本の出版はやめてほしい」と告げたことで生存がわかった(この顛末は本には書かれていない。)こうしたビジネスの実像以外に、鄧小平の娘は絵描きだがその作品は凡庸だ、とか温家宝の奥さんは整形手術しており不倫もしていそうだ、など「こんなこと書いて大丈夫なの?」という内容が赤裸々に書かれている。(あまり大丈夫ではないらしく、著者はいつ死んでもいいように遺書など整備しているとインタビューに答えていた。)

政府に目をつけられたら失脚どころか命まで危ないということになるというこの本を読んだ後では、「TikTokは中国政府とは関係ない」とCEO氏がどんなに頑張って言っても「とかなんとか言って、やっぱり中国政府に言われたことには逆らえないんでしょう?」という気が大いにするのであった。

Red Roulette、日本語でもそのままレッドルーレットというタイトルで本が出ているので興味のある方は読んでみてください。

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