米国最大の暗号通貨取引所CoinbaseのSEC上場届出書を読み解く

Photo by Ewan Kennedy on Unsplash

2月25日にCoinabaseがS-1(証券登録届出書)をSEC(米証券取引委員会)に提出したので読んでみました。

ポイントとしては

  • 昨年の売上は1300億円、利益340億円
  • 利益Coinbase上の取引の半分以上が機関投資家によるもの
  • Coinbase上に世界の暗号通貨の11%がある
  • 機関投資家のリスクヘッジとしてのビットコイン投資が2020年に加速した

■上場方法

ダイレクトリスティング(直接上場)で、新株を発行せずに既存株主の株を売り出す。ストックオプション等で株を取得した社員も株が売れるようになる。通常ある「既存株主は6ヶ月売れない」といったロックアップはない。既存のIPOでは、アンダーライター(引受人)となる投資銀行への手数料が莫大で、かつ上場してすぐ株価が跳ね上がることが多いためアンダーライターが最初に割り当てた機関投資家が得をするという「インナーサークルの金持ちがお互いの間で利益を持ちつ持たれつする」という悪き慣行があった。もちろん、アンダーライターや機関投資家の皆さんも言いたいことはたくさんあると思うが。ダイレクトリスティングではそれを回避できる。SpotifyやAirbnbなどもこの方法で上場した。

株式はGoogleが昔取り入れて当時は注目を浴びたデュアルクラスで、一株で20投票権を持つクラスの株と、一株に1投票権しかないクラスの株がある。

■Coinbaseとは

2012年5月創業の暗号通貨取引所で、これまでに$550 million(約600億円)調達した。合法で信頼性の高い金融機関を暗号通貨界にもたらし、それまでMt.Goxなどの怪しいところでしか売買できなかった暗号通貨のメインストリーム化したベンチャーでもある。

取り扱う暗号通貨は米国で「証券」とみなされないものに限られる(証券とみなされると規制が厳しくなりそれを満たしている暗号通貨は少ない。)現在15種類のブロックチェーンと90種類の暗号通貨アセットを取り扱いしている。

さらに2018年後半からサブスクビジネスも始めた。暗号通貨の預かり、ステーキング、貸借など。

昨年末時点で世界の暗号通貨トータル価値の11%がCoinbase上にある。2019年は8.3%、2018年は4.5%と、Coinbaseの寡占率は高まっている。

2020年は機関投資家がインフレのヘッジとしてビットコインに投資する傾向が強まった。第四四半期の取引高の60%以上が機関投資家によるもの。

S-1書類より、Coinbaseの取引収入の内訳と暗号通貨ボラティリティ↓

  • 2020年売上は$1.28 billion(約1300億円)、前年比139%増。創業以来の通算で売上は$3.4 billionとなった。利益( Net Income)は$322 million(約340億円)で、2019年は$30 millionの赤字だった
  • 取引収入が96%
  • 年間取引高は$193 billion(約20兆円)
  • 取引高の56%がビットコインとイーサリアム
  • プラットフォーム上にある暗号通貨のうちわけはビットコインが70%、イーサリアムが13%
  • 登録ユーザ数:4300万人(前年比 +34%)
  • 1ヶ月の間に取引をするユーザ(MTU):280万人(+180%)
  • プラットフォーム上のアセット:$90 billion(+432%)
  • ユーザー所在国:100カ国以上

■リスクファクター

59ページにわたって延々と述べられている(ただしこれは最近どこの会社もそうで、AirBnBは73ページある。上場してすぐ株価が急落した際の株主集団訴訟を避けるため「これでもか」と考えつく限りのリスクを並べ立てるのがお作法。)

いわく「暗号通貨価格は大きく変動しそれに売上が強く引きずられる」、「レギュレーションが変わるかも」、「ハックされたら大変」といった、そりゃそうだ、ということ以外に目についたものとして

1)業界動向

  • イーサリアム・リスク:予定通りEth2.0が始動するか、イーサリアム全体がPoSモデルに移行できるか
  • Decentralized noncustodial platformの台頭:Coinbaseのように運営母体のある中央集権的な取引所ではなく、「資産預かり(custodial)」をしない分散型取引所が競合になりうるということ。(まぁCoinbaseのビジネスが危うくなるほどに分散型がメインストリームになるには少なくとも5年、おそらく10年はかかると思いますが。)
  • 量子コンピューティングの進歩:ビットコインとイーサリアムに利用されている暗号技術のセキュリティ・効果が劣化する

量子コンピュータの実現はかなり近い未来のものになった。とはいえ、実現しても最初のうちは「これ、何に使おうか」的な感じだと思うのだが、明らかに活用できるのが現在世の中で利用されている暗号を破ること。既に量子コンピューティング耐性のある鍵保管・運用システムも作られつつあるが、「こっそり〇〇国だけで量子コンピュータができました」みたいな事態が起こるのはとても怖い。まぁそうなったら暗号通貨以上にやばいものがたくさんあるわけだが。

2)おおなるほどリスクファクター

そういうリスクもあったか、というところでは、

  • サトシナカモノの正体がわかる
  • サトシナカモトが保有するビットコインが売られる

というのがあった。

サトシナカモトは、ビットコインのアイデアを世に出し最初にビットコインネットワークを始動させた個人またはグループなのだが、その正体は今に至るまで不明だ。確かにサトシナカモトがロシアのスパイ組織だったりアメリカのスパイ組織だったりしたら相当アレである。

また、ビットコインが誕生してから最初の7ヶ月に「サトシナカモト」がマイニングして手に入れた110万ビットコインは手付かずのまま。現在の相場で約6兆円分ある。これが一気に売りに出されたら大変ですね。

(そういう意味では「サトシナカモト」は少なくとも計算上は「トリリオネア」である。今何をしているのだろうか・・・・)。

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